【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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あいも変わらずネタが半分も伝わっていない気がしますが、ほぼひと月ぶりの更新です


奥義73 樹海へいこうよ 亜人族の森。後、読者キャラ募集始めました。詳しくは活動報告にて

「完敗ですわ!!」

 

 それは、トレイシーがシアに倒され、しばらくしてから目を覚ました直後に、見たものが思わず感嘆してしまうほど明るい笑みを浮かべながら、発した第一声だった。

 その笑顔の通り、彼女は清々しさを覚えるほどにあっさりと、ハウリアの要望を全面的に受け入れ、ガハルドに誓約をさせた。彼女は約束を違えるつもりは一切なかった。

 勿論、それでも抵抗を企む帝国の重役は何人もいたが――

 

「権力者の風上にも置けませんことよ。己が欲望に忠実で非常に無様ですわ」

「まだ抵抗できると思ってるんだね。可愛いな♡ ロクでもない国だな死ねよ」

 

 というトレイシーとカムの容赦ない言葉責めに恐怖し、彼らはついに諦め、恭順の道を選ぶことにした。

 とは言っても、それはあくまでこの場にいる帝国人のみ。一般市民は何も知らず、今日も亜人族を奴隷にしている。

 その奴隷を解放させるべく、ガハルドはこれから新たな法整備を行い、それを市民に布告しなければならない。

 労働力など様々なものを亜人族の奴隷に依存している帝国民からすれば、たまったものではないだろう。特に、商売で奴隷を扱っているものからすれば、店を畳めと命令されるに等しい。大変な反乱が予想されるのだが、それでもやらねばならないのだ。ガハルドのみならず、文官も頭を抱える現状である。

 

「そうですわ!」

 

 この状況を理解しているトレイシーが、名案を思い付いたとばかりに手を叩きながら叫ぶ。

 

「お父様の首を刎ねて、明朝に城下で晒しましょう! これをハウリアの行いと喧伝すれば、どんな愚図でも敗北を悟りますわ!!」

「な、何でこの王女様はやたらと人の首を刎ねたがるんだ……?」

 

 トレイシーの口から飛び出す恐ろしい発言に、ドン引きしながら光輝が思わず呟く。

 そんな何気ない呟きにも、彼女は律義に返答した。

 

「育ちが悪いからですわ」

「皇族なのに!?」

「俺のせいみたいに言うなよ!?」

「そんな怒りっぽいあなたに」

 

 トレイシーの言葉に光輝のみならず、ガハルドも驚く中、ユエがあるものを持ってやってきた。

 

「はいこれ。トマトジュ――」

「カルシウム取れぇ! ゲロ吐くまで牛乳で取れぇ!!」

「ごぼっ!? ごぼぼぼぼぼぼ!! この牛乳、美味いッ!!」

 

 そしてユエがトマトジュースを渡そうとしたところで、首領パッチが牛乳をトレイシーに流し込み始めた。

 それはさておき。

 

(さておくの!?)

 

 雫の内心でのツッコミも無視して、この状況で一言も台詞を発していない天の助はふとある疑問を抱き、呟く。

 

「そういえば、サービスマンはどこに行ったんだ?」

「私としてはもう出てこなくていいくらいなんですけど」

 

 天の助の何気ない疑問に対し、辛辣な言動を重ねるシア。

 その横では、ここまで同じく言葉を発していなかったハジメがあることを呟く。

 

「ゴ〇ラvsコ〇グ見てきたんだけどさ、何でモンスターバースの人間はやばい奴しかいないの?」

「知らないわよ!?」

 

 ハジメのどうでもいい感想に雫がツッコミを入れた次の瞬間に、入口のドアが音を立てて開かれる。

 すると、そこには件のサービスマンが立っていた。

 

「私はここにいるぞ」

『サービス! サービス! サービス!』

 

 ただし、彼の後ろに多くの帝国兵を従えた状態で。

 

『どうですか師匠、我々のサービスは!?』

「まだまだ甘い!!」

(変な師弟関係が出来上がってるですぅ――――――――――!?)

 

 兵士達はサービスマンと同じく、懸命にサービスの素振りをしていた。

 なぜなら、彼らはサービスマンのサービスに感銘を受け、サービスを受けたものは一人残らず弟子になったからである。

 

「さらっと俺の勢力奪いやがった!!」

「この皇帝、カリスマ無いな……」

 

 斬首したがる皇女、サービスに魅了された兵士達など負債を抱えながら、ハウリアの要望に従うべく行動を始めるガハルド。

 まずは明朝、一般市民達に奴隷解放の布告をする。当然、受け入れられるわけもなく反発はすさまじかったが、帝国の実力主義やハジメ達が神の使徒という権威でごり押して了承させた。途中、それでも逆らおうとした奴隷商人もいたが――

 

「斬首しますわよっ。こいつは、死んでいい奴ですわ」

「何やってんだミカァァァァァアアアアアアアア!!」

 

 トレイシーが抵抗した商人を斬首し、その商人をハジメ達がメカに改造することで事なきを得た。

 

「これ事なきを得てます?」

「多分得てないわよ」

 

 そして三日後、ついに亜人族の奴隷達は解放された。

 無論、全ての奴隷ではないだろう。まだ亜人を隠している市民はきっといるだろう。それでも、これは亜人達にとって大いなる一歩であり、残っているかもしれない亜人奴隷は非合法となり、所持者はいずれ摘発される運命へと変わったのだ。

 

「うずうずいたしますわ……」

 

 一人獰猛な笑みを浮かべ、首狩りの衝動に取り憑かれている皇女がいるが、この光景に関しては誰も口を挟まなかった。

 後、エヒトの真実についての説明や、その他細かい後始末もあったが、それらはリリアーナ王女や魚雷ガール、サービスマンや一部のハウリア達に任せ、ハジメ達は解放された亜人族と、亜人族達に敗北宣言をしに行くガハルドを連れて、フェアベルゲンへ向かうことにした。

 そのまま特筆すべき出来事も起こらないまま到着。ハジメとカムはガハルドを連れて、長老衆が集まる広間へと連れていった。なぜか首領パッチもついてきた。

 

「さあ、負けを認める宣誓をしてもらおうか」

「ガハルドガハルド敗北者!」

「ゴミ山皇帝敗北者!!」

「こいつらうぜぇな!?」

 

 ハジメと首領パッチの煽りにキレつつも、ガハルドは長老衆に向けて負けを認める宣言をする。

 

「ああ分かってるよ。俺はハウリアに敗北した。あーいとぅいまてーん」

「恐ろしく雑な謝罪。私でなければ殺していたな」

 

 敗北宣言のついでに、全くと言っていいほど心の籠っていない謝罪を口にするガハルド。

 カムはこれを適当に流すが、他の長老衆はそうはいかない。何せ、彼らは長い間帝国に民を攫われ、奴隷にされ、殺され続けてきたのだから。長老衆の中には、殺意が具現化しそうな程憎しみを滾らせ、ガハルドを睨みつけるものすらいる。

 だがガハルドは怯んだりしない。彼の論理では、そもそも攫われ、奴隷にされるほど脆弱な方が悪いのだ。故に彼は何も悪いことをしたと思っていない。自分は敗北したからこうしているだけである。

 その思いは正確に長老衆に伝わり、もしこの場に彼ら以外の誰かがいれば、一触即発の危機だと感じるかもしれないが、現実は違う。

 

 ポン

 

 と首領パッチがガハルドの肩を叩くと、そのまま優しい声でこう言った。

 

「君。今日は直帰でいいよ」

「え? 俺もう帰らされるのか!?」

 

 首領パッチの台詞に驚くガハルド。彼としては、もう少しここでハジメ達の勧誘など色々やりたいことがあった。

 しかしそんな思いは知ったことじゃないとばかりに、彼の後ろにはいつの間にかロケットが用意され、さらになぜか彼は既にロープで縛られていた。

 

「いつの間に!?」

「12F(フレーム)前にやっておきました」

 

 またも驚くガハルドに、今度はハジメがサムズアップしながらいい笑顔で告げた。そして彼はロケットのエンジンを点火し、そのまま発射する。

 

「いざ、地球(テラ)へ!!」

「あああああああああああああああああああ!!!」

 

 悲鳴を上げながら空へ消えていくガハルドを、敬礼で見送るハジメとカム。*1

 その横では、首領パッチが駄々をこねていた。

 

「ハジメ~! ボクもあのおじさんみたいにロケット乗りたい~!!」

「首領パッチはおっきくなったら乗ろうね。あれ身長制限あるから」

(身長制限!?)

 

 


 

 

 夜。具体的に言うなら、ガハルドを帝国に送り返した後、カムは長老衆に新たな長老になるかならないかでもめているが、そんなことは露知らず、ハジメ達は奴隷の帰還を祝っているフェアベルゲン市民に交じり、宴会に参加していた。

 

「かんぱ~い!」

「きんぱ~い!」

「ぐんぱ~い!」

「けんぱ~い!」

「こんぱ~い!」

「色々とおかしい!!」

 

 だがハジケリストの大半がまともに乾杯しない。ちなみに上から、鈴、ティオ、ユエ、ハジメ、首領パッチの順である。

 すると、天の助がふと名乗りを上げた。

 

「一発芸やります! 極上料理!!」

 

 そう言うと天の助は自身を皿に盛り、ポン酢をかけてハジメ達に自身を食えと迫る。

 

「お前そればっかじゃねえか!!」

「ぐばぁ!?」

 

 首領パッチはそんな天の助を容赦なく蹴り飛ばした。

 すると天の助は、元奴隷だった一人の亜人族の女の子の近くに蹴り飛ばされる。

 

「オレを食うかい? 嬢ちゃん」

「うん……」

 

 少女は戸惑いながらも天の助を一口食べる。すると――

 

「おいしい……おいしいよぉ……!」

 

 涙を流しながら、天の助を絶賛した。これに慌てたハジメとユエは、彼女に優しい言葉をかけ始めた。

 

「大丈夫だよ。これからはもっとおいしいもの、いくらでも食べられるからね」

「そんなドラ〇エ5の主人公みたいな悲哀背負わなくていいから」

「うん……うん……!」

「天ちゃんショック!」

 

 涙を流し続ける少女を見て、天の助を除く一同は少々物悲しい気分になりつつも、彼らは概ね楽しく宴を過ごす。

 ちなみに天の助は違う理由で悲しかったが、それはそれである。

 

(肺を切られて、もう立てないの)

「関係ありません立ちなさい。天柱、ところ天の助」

「あの世でオレに詫び続けろハジステッド――――ッ!!」

 

 こうして、楽しいまま彼らの宴は終わった。

 

「地の文と台詞噛み合ってないですぅ――――――――――!!」

 

 翌日の朝。ハジメ達はハルツィナ樹海を目指し、霧の中をよどみなく歩いていた。

 途中、雑魚の魔物が襲ってくることもあったが

 

「納豆真拳奥義、最近作者が映画見に行った時は絶対フードコートでラーメン喰ってる!!」

 

 ハジメの納豆真拳であっさりカタがついた。

 そのままハルツィナ樹海に到着。

 

「す、すごい……」

「でけぇ……」

「うん、シズシズの胸よりおっきい……」

「鈴は何と比較してるのよ!?」

「でも本当に大きい――って透明!? 何で私だけ!?」

 

 ここで光輝達は初めて見る枯れかけの大樹を見て、思わず圧倒される。

 それを横目に見ながら、ハジメは今まで攻略した迷宮の証を、大樹の前にある石板に嵌めていく。

 そして最後に再生の力を大樹に向けて、ユエが籠めようとしたところで

 

「天むす!!」

 

 首領パッチが天むすを先に叩き込む。すると、枯れかけていたはずの大樹の葉が徐々に瑞々しさを取り戻し、ついには一気に生い茂り若々しさを取り戻した。

 

「天むすで良かったんですか!?」

「木々が若返っていく……! これがアンチエイジングじゃな……!!」

 

 シアの驚愕とティオの戦慄を背景に、大樹の葉が動いたかと思うと正面の幹が割れ、内部に入る為の通路が彼らの眼前に現れた。

 

「さあ、攻略開始と行こうか」

「ラストセリフは鈴が貰うよ!!」

「いいや、私が貰う」

「!?」

*1
ガハルドはちゃんと帝国に送り返されました。




タイトルでもいいましたが、読者キャラを募集したいと思います。
詳しくはリンクを貼っておきますので、そこを参照してください。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=264570&uid=229601
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