【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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奥義75 ドキッ! 男だらけの魔物変化祭!!(注:パッケージ詐欺です)

前回までのあらすじ

 

 

ユエ(私は知らなかった。

   温もりとはどんな感じなのか。

   優しさとはどういうものなのか。

   慈しみとは何なのか。

   そして何よりも、愛という物が、私には理解できなかった)

 

大体こんな感じだった。

 

シア「何でハッピーシュ〇ーライフ!?」

ユエ「7巻のスカートのホックのくだりが、私には結構キツかった」

シア「知りませんよ! そういうのはツイッターで言ってください!!」

 

 


 

 ユエと合流してから三十分後。首領パッチと龍太郎を探すハジメ達は、新たなゴブリンの群れに遭遇した。

 否、これを群れと呼んでいいのか、彼らは悩んでいた。

 それもその筈。なぜなら彼らの目に映る光景は――

 

Attack me like there’s no tomorrow(死ぬ気でかかって来い)!」

『グギャギャギャギャ!!』

 

 一匹のゴブリンが、十匹以上いるゴブリンの集団に向けて宣戦布告を行っているのだから。

 

「これどういう状況ですか!?」

「あの宣戦布告してるのが首領パッチかな?」

「いや、よく見ろ」

 

 ハジメが叫んでいるゴブリンを指さして正体が首領パッチだと考えるが、天の助はそれに首を振り、代わりに目線で群れに属するゴブリンの内一匹へ視線を向ける。

 

「シャオ! シャオ!!」

 

 そこには、体色がオレンジ色で更に心なしかトゲトゲの、北〇の拳のレイの声真似しながら手刀の素振りをしている、ゴブリンがいた。

 

「あっちじゃね?」

「どうだろ?」

 

 うーん、と互いに呟きながら頭を抱えるハジメと天の助。

 しかし、そんな二人を見てユエは呆れたように嘆息した後

 

「“凍雨〟」

 

 氷の雨を降らせ、全てのゴブリンを一掃した。

 

(諸共やった―――――――――!?)

 

 雫が内心でツッコミを入れる中、一堂に倒れ伏すゴブリンの群れ。

 とりあえず、これで起き上がってきた奴が首領パッチだろう、と適当な判断をしたハジメ達は、ゴブリンの蘇生を待つ。

 しかし五分待っても、ゴブリンは一匹たりとて起き上がってこなかった。

 ハジメはゴブリン全員の首に手を当て、脈を計る。その結果――

 

「……ご臨終です」

 

 ゴブリンは全滅していた。

 それを見ていた鈴は、ユエに対し手錠を掛ける。

 

「午前九時二十五分、殺ゴブの現行犯で逮捕」

「待って、違う……これは罠。ニアが仕組んだ罠!!」

「話の続きは署で聞くのじゃ」

 

 ティオはユエの手錠が掛かった手首にそっとワカメを被せ、鈴と二人で連行していこうとする。

 

「引っかかったな! オレはここにいるぜ!!」

 

 その刹那、上から首領パッチの声が響いた。

 皆が上を向くと、そこには何一つ変わっていない首領パッチの姿が。

 そう、実の所、ここにいるゴブリンの群れは首領パッチと何一つ関係ない。

 あれは一匹のゴブリンによる、悲しい反逆のサーガだったのだ。

 

「ハジメ~~!! 会いたかったわ~~!!」

「ぼくも――――!!」

 

 両手を広げながらハジメの元へ落下していく首領パッチに対し、ハジメもまた両手を広げ受け止めようとする。

 

「羅生門!!」

「ごふっ!?」

 

 しかし次の瞬間、ハジメは落下してきた首領パッチに向けてバットを振るった。

 そしてそのまま首領パッチは連行されていくユエと、警察役の鈴達の元へ吹き飛ばされる。

 

「「「「ぎゃああああああああああああ!!」」」」

「身構えている時には死神は来ないものさ、首領パッチ」

 

 こうして、一つの悪が滅んだ。

 

「悪!?」

 

 一方、この光景を見ていながらも話に入れなかった光輝は、一人小さく呟く。

 

「……なんだこれ」

「いやそれより、私また台詞もなければ地の文での言及もないんだけど!? なんで!?」

「求めている時に出番は来ないものさ、ハサウェイ」

「ハサウェイじゃない!!」

 

 


 

 

 首領パッチと合流してから数分後、あてもなく迷宮を探索していると、何らかの打撃音が聞こえた。

 ハジメ達が音のする方へ向かうと、そこには直径十メートル、高さ三十メートルほどの木の魔物トレントと、それに相対する雄叫びを挙げながら戦うオーガの姿があった。

 オーガの戦い方は、ハジメ達が知るものとは大きく異なり、このオーガは空手を用いて巧みに戦っていたので、すぐにただの魔物ではないことに気付けたのだ。

 トレントは弾丸の如く木の実を放ち、鞭のように枝をしならせ、地面から根が槍の様に襲い掛かる。

 この脅威に対し、オーガは拳、払い、蹴りなどあらゆる手段を用いていなしていたが、限界を感じていたので、ハジメ達に気付きすぐに助けを求めた。

 

「皆、来てくれたのか! 一人じゃ無理だ、助けを――」

「やってみせなよ、マフティー!」

 

 しかし、オーガの助けに対し鈴はなぜか激励の言葉を掛ける。

 

「なんとでもなるはずだよ!」

「トレントじゃと!?」

 

 更には香織とティオまで乗っかる始末。そして最後は――

 

「「「鳴らない言葉をもう一度描いて~」」」

 

 三人はカボチャの被り物をつけ、全身黒タイツで踊り始めた。

 彼女達のダンスはやたらとキレキレだが、ハジメ達には何の影響も与えない。というか普通にイラつく。

 

「ハジメ、次はどうすればいい? いや、分かってる」

 

 その為、ユエは巨大なメイスを振りかぶり、三人に向けて叩き下ろした。

 

「ただ、聞きたかっただけだ」

「「「ぎゃあああああああああああああ!!」」」

「何やってんだミカァァァアアアアアア!!」

 

 吹き飛ばされる三人を見てハジメは思わず叫ぶが、彼の横では天の助が一人、オーガの姿を見て戦慄し、腰を抜かして震えていた。

 

「あ、あなたはまさか……B級グルメ界の巨匠、ヤキソバーバリアン様では!?」

「誰だよ!?」

 

 とんだ人違いに思わず叫ぶオーガ。ちなみに彼の正体は、分断された仲間の内最後の一人、坂上龍太郎である。

 しかし誤解は止まることなく、どんどん加速していく。

 

「あの、ヤキソバーバリアンって有名なんですか?」

「シア知らないの?」

「ヤキソバーバリアンは紀元前、ハルルシャッケ帝国において一大勢力を築いた、B級専門のグルメレポーターよ」

「凄さがよく分からないですぅ!?」

 

 話について行けず質問するシアを揶揄するハジメと、親切に解説する雫。

 しかし、誤解の波紋は味方のみならず、敵にすら広がっていた。

 

「ヒイイイイイイ! アナタガアノ、ヤキソバーバリアンサマダッタナンテ……!!」

「敵も知ってたですぅ!?」

 

 オーガの正体をヤキソバーバリアンと誤認したトレントは、必死に土下座をしながら攻撃した無礼を許してもらおうとする。

 当然オーガ、それからオーガの正体を龍太郎だと気づいている光輝は、容赦するつもりはなく、攻撃を仕掛けようとするがここでユエが止めに入った。

 

「待って。ここからトレントが遺憾の意を表明するから」

「いや、表明されても困るんだが……」

 

 ユエの発言に対し、弱いツッコミを入れる光輝に構わず、トレントはどこからともなく大皿を取り出し、オムソバを盛った。

 

「ドウカ、ワタシノオムソバヲヒヒョウシテクダサーイ」

「割り箸もあるのじゃ」

(何でこのタイミングで食レポ頼むのよ!?)

(全然遺憾の意を表明してないですぅ……)

 

 内心でツッコミを入れるヒロイン二人。だが龍太郎はこの空気に負け、ティオから割り箸を受け取りオムソバの実食に臨む。

 

 パァン

 

 しかしその刹那、いきなりオムソバが弾け

 

「そこまでだ。残念だったな!!」

「!?」

 

 中から首領パッチが飛び出す。

 その光景を見て驚いているトレントに向かって、ここでハジメは隙をついて攻撃を仕掛けた。

 

「納豆真拳奥義、ベチャベチャ納豆マリアージュ!!」

 

 ハジメが伸ばした納豆はトレントの身体を幾度も強打し、最後は壁に叩きつけることで動かなくなる。

 それを見たハジメはここで決め台詞。

 

「これぞ大人のラブロマンス」

「何その決め台詞!?」

 

 一方首領パッチはトレントから目をそらして龍太郎達の方を向いたかと思うと、オムソバが盛られた皿に座り込み、彼らに向かって強く宣言した。

 

「味の保証はしねえが、自信と勝算はある。たべりゅ?」

「食わねえよ!!」

 

 龍太郎のツッコミを受けて残念そうな顔をしながら、オムソバの残りを集め、ユエの口に押し込む首領パッチ。

 その後ろでは、メキョメキョという音をたてながらトレントが起き上がったかと思うと、幹が左右に割れて中に空間が生まれた。

 更には、割れた幹を指す矢印が周りに大量に現れた。おそらく、次はここに行って欲しい、ということを示すサインだとハジメは推測する。

 

「ここにきてえらく親切ね!?」

「いらない所で足踏みされるのはGM的には鬱陶しいからしょうがない」

 

 雫のツッコミに擁護するようなユエの発言。

 しかしハジメ達はそんなことはどうでもいい、とばかりに割れた幹の中へと進んでいく。

 中は何の特徴もない空間だった。しかし、全員が中に入ると同時に入口がマンモスで塞がれ、直後に地面が光り輝く。

 この輝きは最初ハルツィナ樹海に入った時と同じ、転移の魔法陣の光だ。

 それにすぐ気づいた皆は、諦めてこの光を受け入れた。

 

 


 

 

 チュンチュン チュンチュン

 

 爽やかな朝を演出するかのように、窓の外で小鳥達が歌う。

 だが窓の内にいる人間、南雲ハジメに、爽やかな気分は何一つ存在しない。なぜなら、眠くて仕方ないからだ。故にベッドの上で布団を深く被り、もう一度寝直そうとする。

 しかし、そこで部屋の扉が開く音が小さく鳴る。

 すると、同級生にして同居している金髪紅眼の美少女、ユーエスエー・ニャクタロウ・ハジケニウム、通称ユエがハジメを起こしにやって来た。

 彼女は必死に揺さぶって起こそうとする。

 

「あ、やっぱ起きなきゃダメ?」

 

 これに観念して、ハジメはいつものこととはいえ、お礼を言いながら起き上がろうとするが――

 

「ありが……」

 

 ドパンドパンドパン

 

「だからよ、止まるんじゃねえぞ……」

 

 ユエに射殺された。

 しかしこの程度はよくあること。ハジメはすぐに蘇生して起き上がり、挨拶をする。

 

「おはよう、ユエ」

「ん。おはよう、ハジメ」

 

 これが彼の日常。いつも通りの出来事である。

 

(ん? そうだっけ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?)

「ハジメ飯だぞ! 今日の朝飯はところてんの回鍋肉だ!!」

「絶対食べたくない」

 

 小さな疑問がハジメの脳内に思い浮かぶが、天の助がふざけた朝食メニューを提示したせいですぐに消え去った。

 ちなみに、今日の朝食は首領パッチ和えのスクランブルエッグだったが、ハジメは首領パッチだけをよけて食べた。

 

 

「サーイクリング サーイクリング やっほーい!」

「サーイクリング サーイクリングできない! 私にはそんな残酷なこと!!」

「そうだよね。あの自転車は破壊神KOBAYASHIの形見だもんね……」

 

 朝食を終え、ハジケながらユエと二人並んで通学路を歩くハジメ。

 雑談しながら学校へ向かう二人だが、ハジメの心の中にはどうにも違和感があった。

 

(あれ? 僕、いつからユエと同居なんてしてた?)

「ハジメ?」

 

 考え込み始めるハジメに対し、ユエが心配そうな顔をして声をかける。

 

「何でもないよ」

「……爽」

「僕はスーパー〇ップ派」

 

 やがて、さっきまで抱えていた違和感も消えたハジメはスタスタとユエより先を歩く。

 だから気付かなかった。

 

「……微睡んでいて。幸せの中に」

 

 ユエが小さく、優しい笑みを浮かべながら呟いていたことに。

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