前回までのあらすじ
ユエ「抱かせろ」
雫「っ……!!」
首領パッチ「女の人っていつもそうですね……! 私達のことなんだと思って――」
ユエ「そっちじゃない座ってて」ドパンドパンドパン
首領パッチ「」チーン
こんな感じだった。
シア(最近広告でよく見るヤツ!!)
ハジメ「僕はゲーム版より漫画の方が絵柄好きかな」
天の助が目覚め、全員が琥珀から出た途端、またも地面が転移の魔法陣で輝き、ハジメ達は別の場所へ転移させられる。
転移先の空間は、最初に飛ばされた所と同じような樹海だった。ただしそことは違い、上には天井が、この空間の一番奥にはゴールらしき大樹がそびえ立っている。
というか、なんだったら大樹に『次のゴールはここです』と書かれていた。
「さっきから親切過ぎるわよ!?」
「さっきと言っても二十時間前じゃぞ」
「二話前でもある」
雫の言い分にやんわりと反論するティオとユエ。
最も、反論した二人以外は雫の言い分に賛成だったが、迷宮攻略の難易度を自分で無駄に上がるのもおかしな話なので、特に何も言わなかった。
一行がとりあえず樹海を進んでいくと、ポツリと天の助の肩に上から水滴が落ちてくる。
「ん? 雨か?」
「いや、天井あるのに雨なんて降るわけ無いだろ」
「なぜ? バグか……」
ハジメが雨について疑問に思ったと同時に、上から乳白色の雫が土砂降りとなって一行を襲う。
これを見たハジメは敵の攻撃と判断して、首領パッチに指示を出した。
「首領パッチ! 防いで!!」
「おう! オレは手札から速攻のかかし*1を捨てて効果発動!!」
首領パッチがカード効果を発動させると、彼らの周りに透明なバリアが発生し、空から落ちてくる乳白色の雨を防ぐ。
こうしてしばらく雨を凌いでいると、バリアに沿って雨がドロリと垂れていることから、粘性を持っていることが分かる。
「この雨、『ネバい』ッッ!!」
更によく見ると、雨がウゾウゾと動き、雨が意志を持っていることも見て取れる。
そう、雨の正体は乳白色のスライムだったのだ。
やがてスライムが降り止むと同時にバリアも消え、大量に降り注いだスライムが一斉に襲い掛かる。
「「ぎゃああああああああああああ!!」」
ユエと天の助だけに向かって。
「何でよ!?」
「これが……集中豪雨!」
「違いますよ!!」
まず雫がツッコミを入れ、次に鈴がよく分からない納得をして、最後にシアが鈴にツッコミを入れるという謎ムーヴを披露。
一方、ユエと天の助はスライムに集られすぎて、スライムに埋もれていた。さながら、ようがんげんじんの色違い。
彼女は集っていたものを振り払い、雄叫びをあげた。
「
「い、いかん! あれはユエの発情モードじゃ! ああなると誰かの血を吸い尽くすまで元には戻れぬぞ!!」
「あれ発情なの!?」
「吸血鬼族の名物じゃ。極限まで発情するとああなるのじゃ。妾も初めて見る……!」
ティオが解説している横で、ユエは吸血鬼特有の筋力を以って地面を踏みしめ、一瞬でハジメの元へ近づき首元へ噛みつき、血を貪る。
「
「何でさっきから二人ともディ〇様風なんですか!?」
ハジメは苦悶の声をあげるが、ユエは構わず血を吸い続け、ついには
~~ー~―~―~
上記のように、やたら長細い糸くず同然の姿になってしまった。
「いや細っ!?」
一方、ユエと同じように天の助もまたスライムに集られていた。
ユエとは違い、スライムを振り払えないままだがそれでも天の助は叫ぶ。
「うおおおおおお! こんにゃく好きだ――――っ!! お前が欲し――」
「ホットコーラ!!」
しかし、天の助の叫びは、なぜか急にテンションを上げた首領パッチの拳で止められ、ここからは止めた側が叫び始める。
「コーラを……コーラを温めなきゃオイラ死んじゃう!!」
「ラリらないで!!」
「ぶほぉ!?」
ラリってる首領パッチを杖で殴り飛ばす香織。
そのまま彼女は首領パッチの足を掴み、振り回して天の助に取り付くスライムを追い払う。
そして鈴はスライムが追い払われた直後の天の助を、ティオは未だ発情しているユエを装備し、残りのスライムへ振るいながら、一行はゴールである奥の大樹へと走り出す。
「というか、誰か僕を運んでほしい。今なら軽いから」
「その余裕があるなら自分で走ってください」
途中、ハジメが自分の扱いについて愚痴をこぼしたが一行は無視し、彼らは大した問題もなく目的地である大樹の前に到着した。
「「「
「胡散臭いですぅ」
二度目の裏切りを敢行しそうなセリフで己の正気をアピールする、ユエと天の助、首領パッチの三人。
そんな彼らをシアは胡乱な目で見るが、それ以上のことは特にしなかった。
ドパンドパンドパン
一方、まだ元の状態に回復していないハジメは、面倒くさいので一旦殺せばいいや、という結論で纏まり、射殺された。
「デスベホマ感覚で殺されるの、すっごい不本意……」
「次はなるだけ面白く殺すから」
「じゃあ許せる!」
(いいの!?)
ハジメとしてはその程度の理由で殺されるのは不満だが、香織が申し訳なさそうに謝ったので、勢いよく許した。
これで全員が回復し、一行は大樹の中に入ると、三度目の魔法陣が光り転移。
転移先は桐の中だったが、すぐに外に出ると、そこにはフェアベルゲンによく似た光景が広がっていた。
大樹から生えた枝が通路となり、また別の枝が絡み合うことで空中回廊が生まれている。
「凄い……」
鈴が感嘆した声を出すが、他の勇者一行も声が出ないだけで思いは同じらしく、ただ茫然と目の前の光景に目を奪われていた。
一方、シアは兎人族特有のウサミミが、現在地より下から何やら気味の悪い音を捉える。
「ハジメさん。下から変な音が聞こえるんですけど、どうしましょう?」
「うーん……」
シアの言葉にハジメは頭を一瞬捻るが、すぐに結論を出した。
「じゃあちょっとティオ見てきて」
「あああああああああああああ!!」
(落とした―――――――――!?)
ハジメはティオを通路から蹴り落とした。
すると三十秒後、ティオは汗まみれで息絶え絶えになりながら、クロールで戻ってきた。
彼女は珍しく怯えた表情で、ハジメ達に見てきたものを伝える。
「はぁ……はぁ……あれは、駄目じゃ。下には、悪魔がおる」
「悪魔? クリッターとか?」
「モリンフェンじゃね?」
「デビル・フランケンだろ」
「なぜ遊戯王の悪魔族モンスター限定……? いや最後のは名前だけ悪魔の機械族ですけども」
ハジメ達が予測する的外れな悪魔に対し、ティオは息を荒げながら首を横に振ってから、正解を口にした。
「あれは……ゴキブリじゃ。ゴキブリが数百万匹単位でおる」
「あのゴキカブリが正式名称なのに誤植がきっかけでゴキブリが定着した!」
「英語で言うとcockroachの!?」
「妙に詳しいわね!?」
ハジメと天の助が披露した豆知識はともかく、ティオがもたらした情報は、首領パッチすら閉口するほどにおぞましい光景であった。なお、これは日本人だけでなく、トータス出身の面子も同様の感想を抱いている。
「もし迂闊に騒がしくすれば、下のゴキブリの群れが一斉にこっちに向かって来るやもしれん」
「成程、つまり僕らがやるべきは、決して走らず急いで歩いて行ってそして早くゴールへ……ということか」
「注文が難しいですぅ」
「ボスケテ」
こうしてハジメ達は、通路を道順に沿って、樹海の上に向かって慎重に進み始めた。
そうしてしばらく進むと途中にある、枝がいくつも絡まることで大きな足場となった枝にたどり着いた。
刹那――
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!
大量の羽ばたき音が彼らの耳に届いた。
皆が下を見ると、予想通り数えきれないほどのゴキブリが一行の元へ飛んでくるのが見える。
「納豆真拳奥義、
「“絶禍〟!!」
「“嵐焔風塵〟!!」
「“天爪流雨〟!!」
遠距離攻撃できる面々が、ゴキブリの群れに向けて一斉攻撃を仕掛けるが焼け石に水。
ゴキブリの群れは何も変わることなく、一直線にハジメ達を目指す。
「ここは鈴が! “聖絶〟改め奥義、自走式高級蕎麦屋『鈴蘭亭』!! さあ入って!!」
「蕎麦屋!?」
鈴が奥義を発動させると、虚空から蕎麦屋『鈴蘭亭』を出現させ、彼女は皆を中に誘導する。
やがて全員が鈴蘭亭に入ったのを見ると、鈴はホッと息を吐いた。
「鈴。お前いつの間にこんな技を……?」
「これも“聖絶〟のちょっとした応用だよ」
「そんな次元連結システムみたいに言われましても……」
鈴の説明にシアがツッコミを入れる一方、首領パッチとユエは窓から外を見る。
そこは数百万匹のゴキブリが、視界を覆うほど飛び回る地獄絵図だ。二人はすぐに窓のブラインドを下ろした。
「この光景、アニメ化は無理だな」
「ありふれの三期やるならここは差し替えか、カットだと思う」
二人が思い思いの感想を告げる中、鈴は鈴蘭亭を発進させた。
「鈴、行きまーす!」
この蕎麦屋は自走式なので、床から足を生やして移動ができるのだ。ちなみに屋根から大砲を出現させることも可能なので、戦闘もできる。
「これ本当に蕎麦屋なの!?」
「蕎麦屋の、
雫と香織が性能に驚いている最中も、鈴はゴキブリに対し散発的に攻撃をしながら蕎麦屋を進めていく。
すると、ゴキブリの群れが魔法陣を作り出し、そこから三メートルほどの巨大なゴキブリが召喚された。
「この迷宮を作った人はゴキブリにどんな感情があるのよ!?」
「偏執的な愛を感じる」
雫が巨大ゴキブリを見て思わず叫ぶ中、当のゴキブリは自身の体に赤黒い燐光を纏う。すると他のゴキブリが、まるで巨大ゴキブリに従うかのような規則的な動きを見せ、別の魔法陣を作り出した。
「全砲門、
鈴が蕎麦屋の大砲で必死に攻撃し、魔法陣の発動を阻止しようとするが、他のゴキブリが盾になったせいでそれも叶わない。
健闘むなしく魔法陣は発動。激しい光が放たれ、ハジメ達の視界は一瞬奪われる。
しかし光が収まった後も、変わった様子は特にない。
一体何が、と思いながら近くにいるユエを見るハジメ。その瞬間――
「廬山昇龍覇――――ッ!!」
ハジメはユエを殺しにかかっていた。
しかしツッコミは入らない。それもそのはず、なぜならさっき発動された魔法陣の効果は好感度の反転。大切な人ほど忌み嫌い、憎らしい相手ほと愛おしく思えるようになる、恐るべき魔法である。その為、ハジメはユエを殺しにかかったのだ。
そして魔法陣の効果は彼だけに及ばない。
「ところてんなんて! ところてんなんて――――っ!!」
天の助はところてんである自分自身を何度も痛めつけ
「マミーポコ……マミーポコ……」
首領パッチはハジケる気力を七割ほど失っていた。
他の皆は、仲間に嫌悪感を抱きながらも、これが敵の策略だと分かっているので傷つけないように距離を取る。
しかし、蕎麦屋の操縦桿を握る鈴だけは違った。
「鈴だってザビ家の女だ……! 無駄死にはしない……!!」
「ザビ家!?」
今すぐゴキブリの群れに生身でダイブしたくなる衝動を必死にこらえ、操縦桿の近くにあるボタンに拳を叩き込む。
すると、足場を自走している蕎麦屋が変形。鈴蘭亭は巨大ロボへと姿を変え、鈴はそのまま巨大ゴキブリに向けてロボを突撃させた。
「ジオン公国に栄光あれ―――――――――!!」
「完全にこれガルマですぅ!!」
「「「ジーク・ジオン!!」」」
ハジメ、首領パッチ、天の助の後押しを受けて鈴蘭亭ロボは巨大ゴキブリに体当たり。
そのまま上昇し続け最後には――
ドッゴオオオオオオオオン!!
天井にぶつかり、爆発した。
これにより巨大ゴキブリは撃破したが、乗組員も当然無事ではない。全員が吹き飛ばされ、近くの足場に叩き落される。
この時、鈴以外の全員の思いが一致した。
『爆発オチなんて最低――――――――――っ!!』
「坊やだからさ」
これでR-18作品のネタやるのは四回目だったり