【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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奥義78 今回半分以上遊戯王だけど愛さえあれば関係ないよねっ!

 ゴキブリを撃破したハジメ達は、テクテクと登っていき頂上までたどり着く。すると、そこにもまた洞があり、中にはおなじみとばかりに転移魔法陣があった。

 彼らが魔法陣の光に包まれ転移し、たどり着いた先は庭園だった。

 広さは学校の体育館程で、澄んだ空気とチョロチョロと流れる水路、芝生、あちこちから伸びる小さな樹々と白亜の建物は、この場所がとても神聖であることと、迷宮のゴールであることをなんかいい感じに醸し出している。

 

「ふわふわした言い回し止めてもらえます!?」

「ど、どうしたのよいきなり……」

 

 地の文に向けて思わずツッコミを入れるシアに、驚いてしまう雫。

 一方、ハジメ達は庭園の最奥にある、中央に大きな樹と枝が絡みついている石板がある小さな小島へ向かって歩き始めた。

 

「バブーバブー」

「あんよが上手! あんよが上手!!」

 

 ハジメが赤ちゃん、鈴がお母さんをしている最中、彼らの背後から新たに三人の人影が現れる。

 人影は全員マントで全身を覆い隠しているせいで、性別も種族も読み取れない。

 

「分かりやすく言うと、キ〇肉マンのミステリアスパートナーのマントつけてる感じ」

「そこで躊躇なく版権作品を例えに出すのは、小説としてどうなのじゃ」

「今更じゃね?」

 

 ユエとティオ、そして天の助が思い思い、というかメタな会話をしていると、マントに身を隠した三人の内一人がどこからともなくデュエルディスクを取り出し、構える。

 それに呼応し、首領パッチも同じくデュエルディスクを構え、叫ぶ。

 

「「決闘(デュエル)!!」」LP4000

「ライフまでちゃんと表示されてるですぅ!?」

「散々遊戯王ネタやってきたこの小説初めての架空デュエル」

 

 首領パッチと人影はじゃんけんをし、先攻後攻を決める。

 先攻を取ったのは首領パッチだ。

 

「オレの先攻、ドロー!!」

「マスタールール2なのじゃな」

 

 デッキからカードを引いた首領パッチは手札を見て、勝利を確信し醜い笑みを浮かべる。

 

(オイオイこれじゃ……Meの勝ちじゃないか!!)

「どう聞いても悪役の台詞ですよ……」

 

 シアの呆れたような態度など目にも入らず、首領パッチは魔法カードを発動した。

 

「オレは手札から(いにしえ)のルール*1を発動! 来い、真紅眼の黒竜(レッドアイズブラックドラゴン)*2!!」

 

 首領パッチがデュエルディスクにカードを叩きつけると、紅い瞳を持つ漆黒の竜がフィールドに現れる。

 胴体、翼、手足、尻尾。瞳以外の全てが黒で構成された竜は、ただそこにいるだけで相手デュエリストを威圧する。

 

「くっ……!!」

 

 レッドアイズの威圧感に怯む相手の人影。そこに追い打ちをかけるように、首領パッチは更に魔法カードを使用した。

 

「魔法カード、黒炎弾*3を発動!」

「くううううう!!」LP1600

 

 首領パッチが魔法カードを発動すると、レッドアイズの口から黒炎で出来た弾が発射され、相手の人影を吹き飛ばす。

 それでも相手は必死に立ち上がるが――

 

「ほい、もう一枚黒炎弾」

「え?」

 

 首領パッチが同じ魔法カードを再び使い、無慈悲にトドメを刺した。

 

「ぐわあああああああああああああああ!!」LP0

((何のドラマもなく先攻ワンキル決めた――――――――――っ!!))

 

 シアとハジメに人影は再び吹き飛ばされ、同時にマントを剥ぐ。

 その中身は、器に入った宇治金時に細い手足が生えている、謎の生物だった。

 

「お前は、宇治金TOKIO!!」

「誰?」

「それは、こうもりだけが知っている」

「いや、オレと首領パッチは普通に知ってるけどな」

 

 宇治金TOKIOを知らないハジメ達に天の助は、彼がコンバット・ブルースと同じ旧毛狩り隊の隊長で、彼はFブロックの隊長だと説明した。

 

「つまり、前に戦ったあのコンバット・ブルースより弱いってことじゃな?」

「うん」

「じゃあ楽勝?」

 

 天の助の説明を聞いてあからさまに宇治金TOKIOを見下し始めるティオとユエだが、当人はただデュエルに敗けたことを悔やみ続けていた。

 

「先攻が……ワイが先攻取れとったら、この手札なら絶対勝っとったのに……」

「どれどれ?」

 

 宇治金TOKIOの言葉の真意が気になり、彼の手札を覗き込むハジメ。

 そこにあったカードは、以下の五枚だ。

 

・火炎地獄*4

・連続魔法*5

・デス・メテオ*6

・魔法石の採掘*7

灰流(はる)うらら*8

 

「いやこの手札でワンキルは無理でしょ!?」

「トイレに三十九分引きこもって、戻ったらデス・メテオだけ使えばワイの勝ちや」

「まさかのトイレワンキル!? 制限時間とかないのに!!

 

 宇治金TOKIOの発言にツッコミを入れるハジメ。

 その光景を見ていたシアは、こっそりこう思った。

 

(凄い、ハジメさんがツッコミに回ってるですぅ……)

 

 


 

 

第二回 ユエさんの豆知識

 

「このコーナー、第二回*9とかあるんですか?」

 

 戸惑う生徒役のシアをよそに、女教師風なスーツを着て、眼鏡をかけたユエが黒板の前で仁王立ちしながら、解説を始める。

 

「今日教える単語はトイレワンキル。これは海外の公式遊戯王OCG大会において実際に使用された戦法。でもその前に、まずは海外の大会ルールについてこれだけは前提として把握しておいてほしい」

 

 試合時間は最大四十分。エクストラターン*10はなし。

 時間までに終わらなかった場合、その時点の残りライフの差で勝敗を決める。

 

「そんな変なルールはなさそうですね」

「ここからが本題。この試合時間が最大四十分なのを逆手に取ったのがトイレワンキル。下に実例を出す」

 

 先攻プレイヤー、トリックスター・マンジュシカ*11を召喚。

  ↓

 先攻プレイヤー、ここでトイレに行く。

 三十九分後、先攻プレイヤー戻ってくる。

  ↓

 後攻プレイヤー、ドローフェイズでドロー。

 マンジュシカの効果で後攻プレイヤーに200ダメージ。

 四十分経過、時間切れで試合終了。

 後攻プレイヤーが200ダメージを受けているので、先攻プレイヤー勝利。

 

「大体こんな感じ」

「これ本当にあった話なんですか!?」

「あった。要するに、先攻とって時間切れ寸前までトイレ行って、後はバーンカード使ってダメージ与えて時間切れ勝利」

「えぇ……」

「ちなみに対策としては、先攻プレイヤーがいない隙に、審判にバレないよう相手のデッキを一枚抜く窃盗カウンター*12が有名。後は、ルール改訂で公式ルールだとトイレに行く際、審判と相手プレイヤーに許可を求めないとトイレに行けなくなった」

「つまり、相手がトイレワンキルしてきそうだと思ったら、トイレに行かせないこともできると?」

「そう」

「それ、本当にトイレに行きたいときはどうするんですか?」

「……半端な気持ちで入って来るなよ、デュエルの世界によォ!!」

「漏らせってことですか!?」

 

 


 

 

 デュエルに敗北し、打ちひしがれる宇治金TOKIOを見て、今まで後ろに控えていた人影二人がマントを脱ぎ捨て、ハジメ達の前に立ちはだかる。

 一人目は和服を身に纏った灰色のロングヘアの男で、頭には編み笠かと思いきや蕎麦せいろを被っている。

 

「あっしの名前は蕎麦の銀次郎。あんさん達とは縁もゆかりもねえが、恵理の姐さんに雇われたんで、きっちりしごらせていただきやす」

「「「に、任侠だ……」」」

 

 銀次郎の挨拶を耳にしたハジメ、鈴、天の助の三人は、始めて見る任侠の人に驚いた後

 

「「「怖ぇ~~!!」」」

 

 ビビり倒していた。

 

(えぇ――――――っ!?)

「任侠……?」

 

 内心でツッコミを入れる雫をよそに首領パッチは任侠という言葉を聞いて、色は赤、形状は四角、手に持てるほどの大きさのポケ〇ンのデータを記録する機械を一人イメージしていた。

 

「面白え……」

「それポ〇モン図鑑ですよね!?」

 

 勝手にテンションを上げた首領パッチに対しツッコミを入れるシア。

 一方、最後の人影もまたマントを脱ぎ捨て、その姿を露わにした。

 そこにいたのは、人の形をしたスライムだった。しかし次の瞬間スライムは形をなくし、そのまま地面に崩れ落ちる。

 

「うっ、持病の腰痛が……!」

「腰あるの!? スライムなのに!?

「心の中に、あるのですよ」

「心!?」

 

 よく分からない理由で崩れ落ちるゼラチンマン。そんな彼*13は、ふと目線をあげた。すると、そこに映ったものは――

 

「「ウフフフフフ、アハハハハハ」」

 

 互いに手をつなぎながら笑いあう、首領パッチと天の助の姿。

 この時、ゼラチンマンは恋をした。

 

「あなたに恋をした。跪かせてほしい、花よ」

 

 そして彼の行動は早い。

 次の瞬間には、彼は首領パッチの元へ移動し、既に跪いていた。

 しかし、跪かれた当人の反応は思わしくない。

 

「嫌ぁ――――っ! 痴漢よ――――――っ!!」

 

 首領パッチはゼラチンマンを殴り飛ばした。

 なすすべもなく飛ばされる彼だったが、すぐに起き上がるとそのままなぜか天の助に詰め寄る。

 

「オイコラァ!! お前は私の舎弟だろ!? 恋のサポートしろや!!」

「いや知らねーけど!?」

「急にガラ悪くなったですぅ――――――――――!?」

「そのへんにしときな、ゼラチンのあんちゃん」

 

 暴走するゼラチンマンの一部を掴み、諫める銀次郎。

 すると掴まれた方も渋々納得し、すごすごと宇治金TOKIOの元へ戻っていく。

 そして三人が並び立った時、彼はハジメ達にこう告げた。

 

「さて、ワイら三人とそっちで3狩リアと行こうやないかい。勝った方が神代魔法をゲット、でどうや?」

「その勝負、乗る意味ないでしょ」

「全員でボコっちまおうぜ」

 

 しかし、ハジメと天の助はそれぞれドスと鈍器を取り出しながら3狩リアを拒否する。

 だがその程度は宇治金TOKIOの予想の範疇だ。

 

「そう言うと思って、スペシャルゲストを呼んどいたで」

 

 彼が見下したかのように告げた後、指をパチンと鳴らすと、空から檻が降って来る。その檻の中にいたのは――

 

「クルックー! クルックー!!」

 

 一匹の鳩だった。

 当然、こんな鳩は一切知らないシア達。しかし――

 

『ヤマシタ――――――――――――――――!!』

「「誰!?」」

 

 ハジメ、首領パッチ、天の助にユエとティオ、そして鈴のハジケリスト六人は涙を流しながら、(ヤマシタ)の安否を心配していた。

 

「よくもヤマシタを!!」

「許せない……!!」

「いや誰、というか何なんですかあの鳩!?」

 

 シアのツッコミもなんのその。気づけば話は3狩リアを受ける方向で話が進んでいく。

 最初に名乗り上げたのはユエだ。

 

「ここは私と首領パッチがいく。最後の一人は――」

「俺に、やらせてくれないか?」

 

 ここで話に入って来たのは、今回これが初めての台詞の男、坂上龍太郎だった。

 龍太郎は頭を下げて頼む。

 

「頼む。ここで何もしなかったら、俺はお前らにおんぶ抱っこのまま終わっちまう! だから……」

「まあいいけど」

「足引っ張んなよ」

 

 龍太郎の懇願を軽く受け止めて、ユエ達は戦場に向かう。

 それを見て、彼もまた二人を追い掛けた。

 

「龍太郎! 頑張れよ!!」

「ところで、私と光輝君の台詞がここしかないことについて、雫ちゃんは何かコメントある?」

「コメント求められても困るわよ!?」

*1
手札のレベル5以上のモンスターを特殊召喚する効果

*2
レベル7 攻撃力2400

*3
自分のフィールドに存在する真紅眼の黒竜の元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。この場合は2400

*4
相手に1000、自分に500のダメージを与える魔法カード

*5
自分が通常魔法を発動した時、手札を全て捨てることで、このカードの効果は直前に発動した通常魔法の効果と同じになる魔法カード

*6
相手に1000のダメージを与える魔法カード。相手ライフが3000以下の時は発動できない

*7
手札を二枚捨て、自分の墓地の魔法カード一枚を手札に加える魔法カード

*8
相手がデッキからカードを手札に加える効果、デッキからモンスターを特殊召喚する効果、デッキからカードを墓地に送る効果のいずれかを発動した時、このカードを手札から捨ててその効果を無効にするモンスターカード

*9
第一回は奥義55

*10
日本版には存在するルール。相手ターンから数えて三ターンデュエルを行い、勝敗が決したら通常通りデュエル終了。決しなかった場合、ライフポイントが多い方が勝ち。

*11
このカードがモンスターゾーンにある限り、相手の手札にカードが加わる度に、カード一枚につき200のダメージを相手に与える

*12
遊戯王のデッキ枚数は四十枚以上六十枚以下とルールで決まっているので、デッキ枚数がそれ以上でもそれ以下でもルール違反で敗北となる。

*13
便宜上でこう称する




今回より、以前募集した読者募集キャラを登場させました。

採用したのはマジカルポンポンさんの『蕎麦の銀次郎』と、お通しラー油さんの『ゼラチンマン』です。
応募ありがとうございました!
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