【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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今までやっていた遊戯王がどの程度分かるかのアンケート、これ以上やっても結果が変動しないと思うので終了します。
予想以上に票が割れましたが、遊戯王DMまでなら七割以上の人が分かるみたいなので、そこまで見れば問題ないようにします。
が、基本ボーボボとありふれなので遊戯王分からなくても大きな問題はありません。

ちなみに、全部分かるの票が多かった場合、シンクロやエクシーズ召喚を何の説明もなく使うつもりでした。オーバーレイユニットに関する説明もするつもりはありませんでした。

ではこれからもこのSSをよろしくお願いします。


奥義7 奈落の底の少女

 焼きうどんとの激闘は終わった。

 幾匹もの魔物が犠牲となったが、ハジメ達は勝利した。そして今、戦いに参加した皆で焼きうどんを食べている。

 

「うーまーいーぞー!!!」

「素晴らしい! 思い出したぞ、聞こえるぞ! 私は料理を作りたかった! ただ美味しい物を作りたかった!!」

「お茶漬けポリポリサーラサラ! お茶漬けポリポリサーラサラ!」

「そんなに美味いですかねえ……。この焼きうどん」

 

 バカ三人の焼きうどんを食べたリアクションのテンションの高さに、ちょっと引いている蹴りウサギ。

 

「「「は? 何言ってんのお前?」」」

「じゃああのテンションは何だよ!?」

 

 しかし見事なまでに梯子を外され、思わず叫ぶ蹴りウサギ。

 やがて皆が焼きうどんを食べ終わる頃、ハジメはずっと気になっていた事を皆に尋ねる。

 

「ところで僕らはさ、このオルクス大迷宮から出たいんだけど、出口ってどこか分かる?」

 

 ハジメとしては普通の質問。首領パッチや天の助もそういや聞いてなかったなと呟く。だが問われた魔物達は、一斉に気まずそうな表情を見せる。

 

「どうしたの? そんな揚げパンがいきなり意志を持って反逆して来たみたいな顔して」

「どんな顔だよ!?」

「昔一回あった」

「あったの!?」

 

 ハジメの言動にツッコミを入れる蹴りウサギ。それを遮って爪熊が話し出した。

 

「ハジメさん。ここから出るには最下層まで行くしかありませんぜ」

「え、そうなの?」

「そもそもオルクス大迷宮は二つあるんでさあ。一つは上で人間達が今現在必死こいて攻略している表の大迷宮。そしてその下には真のオルクス大迷宮があるんでさあ。ハジメさん達が今いるのは真のオルクス大迷宮。一度入ればクリアまで出られない超難易度のダンジョンでさあ」

「何それクソゲーじゃん。クリア後に攻略すべきダンジョンだよそれ」

「ペーパーマ○オRPGでいうなら百階ダンジョンみたいな物か」

「うわめんどくせぇ」

 

 爪熊の説明に、バカ三人は滅茶苦茶愚痴っていた。が、しばらくすると立ち上がり、ブーブー言いながらも出発を決意した。

 

「よし行こう! 首領パッチ、天の助、蹴りウサギ!」

「「おう!」」

「何で俺も!?」

 

 勝手にメンバーに加えられキレる蹴りウサギ。当然の反論だった。

 

「……ツッコミが、ツッコミが必要なんだよ僕らには……!」

「このSSがどうなってもいいってかぁ!?」

「変な方向に暴走するぞコラァ!?」

「わ、分かったよ……」

 

 しかしハジメ達に凄まれて、蹴りウサギはしぶしぶ同行を決意した。

 

「出発ぅ、進行ぉ!!」

 

 こうしてハジメ達は出発した。

 その間、彼らは暴れまくった。

 

「ところ10(テン)! ところ10(テン)!!」

「オリゴ10(トウ)! オリゴ10(トウ)!!」

「オレは後藤じゃない! オレは佐藤なんだ!!」

 

 力の限りはしゃぎまくった。そうして一体どれだけの時間が経ったのか分からないが、気付けばハジメ達は五十層に到着する。

 五十層をしばらく探索していると、変な空間に出くわした。

 高さ三メートル程の荘厳な両開きの扉の両脇に、二対の一つ目巨人の彫刻が壁に半分埋まっているのだ。

 天の助は扉を開けようと、押したり引いたりしているが欠片も動く気配を見せない。

 

「駄目だ、全く開かねえ。どうするハジメ?」

「力づくでぶち壊す!」

「強引ね……。でも素敵」

 

 ハジメがぶち壊す宣言をした後、懐からピアニカのような物を取り出した。

 

「何だそれ」

「王城の宝物庫から貰ってきた。その名も救世鈍器ピアニカソード!」

「何だその名前!?」

 

 蹴りウサギのツッコミを背に、ハジメは扉を何度もガンガンと音を響かせながら叩く。

 そして五分後

 

「駄目だった」

 

 扉は開かなかった。それどころか無傷だった。

 

「使えねえ!」

「ぐばっ!」

 

 首領パッチに腹パンされ、その場に倒れ伏すハジメ。

 それを無視して首領パッチはデュエルディスクでカードを発動する。

 

「マジックカード発動、サイクロン! これで扉を破壊するぜ!」

 

 カードの発動と同時に、強力なサイクロンが発生。そのまま扉を吹き飛ばした。

 

「サイクロンは魔法や罠を破壊するカード。扉も魔法で塞がっているなら破壊できる思ったが、大当たりだぜ!」

「パチ戯の奴、そこまで考えて……」

「ふぅん。それでこそオレのライバルだ。さあ決着をつけるぞ、パチ戯!」

「ああ、行くぜとこ馬!」

「「決闘(デュエル)!」」

「いきなり!?」

 

 首領パッチと天の助がデュエルを始めたと同時に、壁に埋まっていた一つ目巨人の像達が動き出す。その様はまるでファンタジーに出てくるサイクロプスだ。

 サイクロプス達は最初に壊れた扉を見て、次にハジメ達を見て、また扉を見る。見事な二度見だった。

 そして、お前何してくれてんの!? と言いたげな表情で再びハジメ達に向き直ろうとした所で

 

「納豆真拳奥義、納豆インチーズフォンジュ!!」

「プルプル真拳奥義、ところてんワンダーランド!!」

「ハジケ奥義、しめ鯖天国インロンドン!!」

 

 バカ三人の総攻撃を受け、サイクロプス達は何もできないままやられてしまった。

 

「どんな攻撃か全く分かんねえ!」

「納豆インチーズフォンジュをぶつけただけだよ」

「心をところてんワンダーランドにしただけさ」

「しめ鯖天国インロンドンに精神を転移させただけだぞ」

「詳細聞いても分かんねえ!!」

 

 蹴りウサギの疑問は解消されないまま、四人は扉の中に入る。しかし中は扉があった部分の外からの明かりを差し引いても、暗闇で何も見えない。

 

「前が見えねェ」

「首領パッチ、発光して」

「あいよ」

「お前光んの!?」

 

 ハジメの頼みで首領パッチが光ると、中が薄暗いながらも少し見えるようになった。

 中は、外にさっきまで合った扉に負けない程に荘厳で、艶やかな石造りでできていた。その中央には、巨大な正方形の石が置いてある。

 四人がその石に近づこうとすると

 

「血、血、血、血が欲しい」

 

 歌っている少女の声が聞こえた。

 

「歌怖っ!」

「マリィ!」

「ミカァ!」

 

 四人が声のする方へ向かうと、巨大な正方形に埋め込まれている少女の姿があった。

 上半身から下と両手が埋め込まれて、顔だけが出ている状態で長い金髪が垂れ下がっていた。見た目十二、三歳位の少女の紅顔の瞳が、四人を見つめている。

 長い間閉じ込められていたのか随分やつれているが、美しい少女であることがよく分かる。そんな少女に見つめられ、ハジメは照れたのか目を逸らした。

 

「おいおい、何照れてんだよ~」

「何よ何よ! この世界ハジメを誘惑する女が多すぎるのよ!!」

 

 照れているハジメをからかう天の助と、少女に嫉妬する首領パッチ。二人を無視してハジメは少女に話しかけた。

 

「えっと……。君はこんな所でどうして封印されてるの?」

「まさかこれは、封印されしエクゾディア!」

「絶対違えよ!」

「分かったぞ。こいつはカツオ神の末裔だ!」

「カツオ神って何だよ!?」

「チェストオオオオオオオ!!」

「「GUWA!」」

「ジャクソン風!?」

 

 話が進まないのでバカ二人を黙らせるハジメ。それを見て少女はポツリポツリと語り始めた。

 

「私、先祖返りの吸血鬼で凄い力持ってるの。だから国の皆の為に頑張ってたけど、ある日家臣の皆が、お前はもう必要ないって言って。おじ様がこれからは自分が王だって……。それでも良かったけど、私に凄い力があるから危険だって。それで殺せないから、封印するって……」

「それでここに?」

「うん」

「君はどこかの王族だったの?」

「そう」

「殺せないってのは?」

「勝手に治る。怪我してもすぐに治る。首落とされてもその内に治る」

「成程。君もハジケリストなんだな」

「それは知らない」

「どういう判断基準だよ!?」

「後、私は魔力を直接操れる。魔法陣もいらない」

「マジかよ……」

 

 最後の少女の言葉に驚く蹴りウサギ。

 この世界、トータスの魔法は体内の魔力を詠唱により魔法陣に注ぎこまなければ発動しない。それは人間族も魔人族も共通である。魔力を直接操る術を持つのは魔物だけである。

 それを魔物以外が持つという事は、ある種この世界の規格から外れるということだ。だから蹴りウサギは驚いていた。

 ちなみに、もっとこの世界の規格から外れた力を持つバカ三人は特に何も思ってなかった。

 

「ま、とりあえず助けてやるか」

「そうだな。こいつはところてん主義に目覚めそうだし」

 

 いつの間にか復活した首領パッチと天の助が、少女を助ける方向で話を進める。しかしその前に、と首領パッチが前振りしてから少女に向かって一言。

 

「おいガキ、助けるのはいいけどこのSSのヒロインはオレだからな。それを忘れるなよ」

「金平糖がヒロインなんて笑止千万。ヒロインの座は私の物」

「ああ!? やんのかこら!?」

「ヒロインはどっちがいいかハジメに決めてもらえばいい」

「それだ! よしハジメ。どっちがヒロインにふさわしいかはっきり言ってやれ!」

 

 少女と首領パッチに問い詰められるハジメ。その問いに彼は刹那の間もおかず即答した。

 

「そりゃこの子だよ」

「フッ……」

「……ドスケベ」

「!?」

 

 ハジメが少女を選んだせいで荒れる場。その状況を無視して天の助は魔法陣を書き、少女を封印している正方形に手を置き、魔力を流して魔法を発動した。

 

「錬成!」

 

 錬成を発動する天の助。しかし正方形は魔力に抵抗するかのように錬成を弾く。それでも天の助は諦めず錬成を続ける。

 しかし正方形の形を変える前に、天の助の魔力が尽きそうになる。このままでは魔力が尽き、天の助は無為に魔力を使うという結果に終わってしまうだろう。しかしその前に助けは来た。

 

「オラオラオラァ!」

「五月は節分だ――――っ!!」

 

 ハジメと首領パッチの二人が、納豆を天の助にぶちまけていた。これぞハジケ流魔力補充である。

 

「嫌がらせにしか見えねえ――――っ!?」

「おおおおおおおお――――――――――っ!!」

 

 魔力補充の甲斐あってか、少女を封印していた正方形は少しずつ融解していき、少女の枷を外していく。そして全ての枷が外れたと同時に、封印していた正方形は『ね』の形になっていた。

 

「ね!?」

「ねの野郎……!!」

 

 変形した立方体に怒りを燃やす天の助。

 その横では、枷から解放された少女が、服すら纏わず佇んでいる。それなりに膨らんだ胸部にハジメの目が行くより前に

 

「奥義、墨汁バルス!」

「目が、目がアアアアアア!!」

 

 首領パッチに視界を墨汁で塞がれ、悶絶していた。その隙に天の助が少女に、青地の生地にぬの文字が大量に書かれた、ぬのパジャマを着せた。

 やがて視力が戻ったハジメが、そのパジャマを見て思わず呟く。

 

「「パジャマ、クソダサい……」」

 

 奇しくもその呟きは目の前の少女と噛みあい、二人はどちらともなく握手をした。

 その直後、少女がハッと目を見開いてハジメ達に尋ねる。

 

「……あなたたち、名前は?」

 

 そういえば名乗って無かった、と気づいた三人は名乗る。

 

「僕は……Z団団長ハジメ・イツカだぞ……」

「パチ月・オーガス」

「私は天ギリス・ファリド」

「真面目に名乗って」

 

 ドパンドパンドパン

 

「「「だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」」」

 

 少女が発砲して、バカ三人に希望の花を咲かせたところで、見かねた蹴りウサギが三人を紹介した。

 

「それで、君の名前は?」

 

 少女はハジメ、首領パッチ、天の助と大事な物を刻み込むかのように三人の名前を繰り返し呟く。そして、問いに答えようとしたが、思い直してハジメ達にお願いをした。

 

「……名前、付けて」

「付けてって……。名前忘れたの?」

「違う。もう前の名前はいらない。……新しい名前が欲しい」

「急にそう言われてもねえ……」

 

 裏切られた過去を忘れたいのか、心機一転したいのか、とにかく新しい名前を求める少女。ハジメ達はその気持ちを汲んで、考えに考えてそれぞれ新しい名前のアイデアを告げる。

 

「ユーエスエー」

「ニャク太郎」

「ハジケニウム」

「「「さあ好きなのを選べ!!」」」

「ロクな選択肢ねえ――――――!?」

 

 ハジケリスト達が出した名前に、ちょっと首をひねりながら考える少女。

 やがて少女は、自らの名を宣言した。

 

「私は、ユーエスエー・ニャクタロウ・ハジケニウム。普段は略してユエと名乗ることにする」

「まさかの総取り!?」

 

 選択肢とは提示された物以外もある、そんなことを思い知る蹴りウサギだった。


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