前回のあらすじ
鈴(夢を……夢を見ていました。週七で)
雫「それただ寝てる人でしょ!!」
ティオ「眠り浅そうじゃな」
融合を使い混ざり合っていたユエと首領パッチが今、一つとなり新たな姿でこの場に降り立つ。
その姿はユエより背が少し低い美少女で、オレンジ色の髪をツインテールに結わえ、フリルをふんだんにあしらった白いゴシックロリータな衣装を纏い、手には布団叩きを持っている。
そんなどこか異様な姿に、場にいる全員が何も言えなくなるも、当の本人は一切構うことなく名乗りを上げた。
「は~い! わちき、ユエパッチって言うにゃん♪ この姿は一分しか保てないけど、魔法の力で悪い奴を思いっきりやっつけちゃうにゃんからね♡」
(((うわぁ……キャラ滅茶苦茶キツい……!)))
ユエパッチの自己紹介に龍太郎、宇治金TOKIO、銀次郎の三人が内心でドン引く。しかしただ一人、この流れに乗らない男がいる。
「な、なんという尊み……我が姫君に匹敵している……! これは推さねばなりませんね」
「一人だけ限界オタクになってるですぅ!?」
「さてと」
勝手にユエパッチを推し始めたゼラチンマンを無視して、彼女当人は布団叩きを龍太郎に向けて奥義を使用した。
「奥義、マジカルチェンジビーム♡ 龍太郎にゃん、マスコットになって力を貸して!」
「アバババババババババババ!!」
ユエパッチが奥義を発動すると、布団叩きからビームが出て龍太郎を痺れさせる。
すると、彼の姿が彼女のマスコットへと変貌していった。
その姿は、頭には鉄仮面を被り、肩にはトゲの付いたショルダーアーマー。そして腹部には北斗七星と同じ並びをした、七つの傷が目立つ。
「俺の名を言ってみろ……!!」
「ジャギ様じゃないですか!! どこがマスコット!?」
まさかのマスコット枠にジャギが入るとは思わず、あまりの展開に敵三人は付いていけなくなる。
しかし、そんなことはユエパッチ達には関係ない。彼女は龍太郎に命じ、容赦なく敵を責め立てた。
「やっちゃえバーサーカー!」
「バーサーカー!?」
「北斗羅漢撃――――――!! この早い突きが躱せるか――――――ッ!?」
「「ぎゃああああああああああ!!」」
まずは早い突きの連打で、宇治金TOKIOと銀次郎にダメージを与える。
だがゲル状のゼラチンマンは一人マスコットの攻撃を回避していたので、龍太郎は代わりに毒を塗った仕込み針を放ち命中させた。
「ぐわああああああああ!! な、なぜこれほどマスコットである彼に対し胸が高鳴ってしてしまうのですか……? まさか、恋!?」
「それ多分毒よ!?」
ゼラチンマンは龍太郎が放った仕込み針に塗られていた毒と恋の高鳴りを勘違いした。そのことに雫はツッコミを入れるが、話はその間にも容赦なく進んでいく。
「さあ、奥義で一気に決めるにゃん!!」
ユエパッチが布団叩きを天に掲げると、その先にどどめ色の輝きが集っていく。
そして光がある程度の大きさになったと同時に一気に解き放たれ、新たな世界が誕生した。
「奥義発動! 開設、魔法少女ユエパッチチャンネル!!」
その世界は、辺り一面に様々な動画が映し出された画面が宙に浮かび、いずれの動画にもユエパッチの姿が映し出されていた。
「な、何だこれは……!?」
「動画が、いっぱい……!?」
「領域支配系奥義……! 私も初めて見るわ……!!」
突如世界が変わったことに驚きを隠せない光輝と香織に対し、状況は理解しつつも体感するのは初めてなので戸惑う雫。
その横ではユエパッチが奥義の説明を始めていた。
「この世界はYoutuberになったわちきの動画チャンネルが具現化したものにゃん。これからあにゃた達は
「今さらっとリスナーのことゴミ扱いしませんでした!?」
「中々にロックじゃな」
「大きなシノギの匂いがする……!!」
ユエパッチの発言にシアが驚き、ティオとハジメは彼女の可能性を垣間見る。
それはそれとして、ユエパッチは最初の動画を再生した。
「まずは自己紹介動画にゃん! わちきのこと、たっぷり知っていってほしいにゃん♡」
魔法少女YouTuber
ユエパッチ
|
「いやこれ政見放送よね!?」
「時期ちょっと遅くね?」
雫と天の助のツッコミを尻目に、ユエパッチの自己紹介が始まった。
「
「言ってることが超物騒ね」
「だから
「何ですかそのスク水押しは!?」
ユエパッチの自己紹介にツッコミを入れ続ける雫とシア。
だがその後ろでは、ハジメ達がある話し合いを始めていた。
「表面は普通の魔法少女衣装で、裏面が白スクのユエパッチ抱き枕カバーってどう思う?」
「悪くねえんじゃないか?」
「いや抱き枕カバーは良いと思うのじゃが、裏面は肌の色と対比させて紺の旧スクの方が映えるじゃろう」
(商品企画会議してるですぅ――――――――――!?)
ハジメ達の商品企画会議は未だユエパッチの元に届かず、彼女は次の動画を再生した。
「まずは歌ってみた動画だにゃん♪ わちきの歌声にむせび泣いて脱水症状になるがいいにゃん♡」
「要望多いわね」
そしてユエパッチの歌声が辺りに流れ始めた。
「仏説摩訶般若波羅蜜多心経」
「これ般若心経ですぅ――――――――――!?」
まさかの選曲にシアがツッコむ一方、敵三人はと言うと
「「「「ぐわあああああああ浄化されるううううううう!?」」」」
「何でよ!?」
「よく見ると龍太郎さんも浄化されてませんか?」
なぜか龍太郎も巻き込んで、浄化されかけていた。
しかしゼラチンマンだけは違う。彼も浄化されつつあったが、それでもある行動に出た。
「投げ銭を……しなければ……!!」
「まだこのチャンネルは収益化してにゃいにゃん」
しかし彼の行動は無意味どころか、実行すらできないものだった。
「ぐあああああああああ!!」
「続いてはゲーム配信だにゃ!!」
浄化されかかっている四人を無視して、ユエパッチは新しい動画を再生した。
するとなぜか、気づけば彼女と宇治金TOKIOはデュエルディスクを構え、対峙していた。
「「
「またですか」
「わちきの先攻、ドローにゃん♡」
カードを引くユエパッチ。そしてすぐに魔法カードを発動する。
「まずは遺言状*1を発動にゃん! そしてクリボーを攻撃表示で召喚するにゃん!!」
ユエパッチがカードをデュエルディスクに置くと、遊戯も使っていた可愛らしいモンスター、クリボーが現れる。
しかし、それはすぐに使用コストとされてしまった。
「クリボーをリリースしてモンスターゲート*2を発動にゃん!」
モンスターゲートの効果でデッキをめくるユエパッチ。
すると、五枚目でめくるのを止め、フィールドにモンスターを召喚した。
「わちきはカタパルトタートル(エラッタ前)*3を攻撃表示で特殊召喚にゃん! そして遺言状の効果で、デッキから魔導サイエンティスト*4を攻撃表示で特殊召喚するにゃん!」
「こ、これはまさか……!?」
ユエパッチのフィールドに現れた二体のモンスターに怯える宇治金TOKIO。
彼は知っている。こいつらの猛威を。この二匹が、どれほど甚大なものをもたらしたかを。
しかし、今の彼に対処する術はなかった。だから何もできず、ただ項垂れるのみ。
「何もないなら続行するにゃ♡ わちきはライフを1000払って魔導サイエンティストの効果発動。紅陽鳥*5を特殊召喚にゃん! そしてカタパルトタートルの効果で紅陽鳥をリリースして、相手に1150のダメージにゃん!!」LP3000
「があああああああああああああ!!」LP2850
ダメージを受けて吹っ飛ばされる宇治金TOKIO。
しかしユエパッチは構うことなく、さっきと同じことをまた二回繰り返して更に追撃した。そして――
「はぁ……はぁ……」LP550
「最後に魔導サイエンティストとカタパルトタートルをリリースして、おしまいにゃん♡」
「ぎゃああああああああああ!!」LP-100
(またドラマのない先攻ワンキルが決まったですぅ!!)
「全盛期にはこのデッキが環境を席巻していたというのが恐怖じゃな」
「さあ次はこれにゃん!!」
ユエパッチが新しい動画を再生すると、今度は世界が切り替わる。
そこはどこかの大都市で、辺りには高層ビルが立ち並び、ビジネス街なのかスーツを着た大人達が必死に歩を進めている。
するとそこに、ビルを超えるほどの身の丈の怪物が現れた。それは人型で、頭に角が生え、後は全裸だった。
そして怪物を見たユエパッチが言う。
「じゃあ今からあの怪物を退治するところを動画にするにゃん♪ しっかりわちきの活躍を見るにゃんよ♡」
「動画の方向性変わりすぎでしょ!?」
雫の叫びを無視し、ユエパッチは怪物の足元へ向かう。
「お、丁度いいくらいの怪物がいるにゃんね。これくらいの奴ならわちきにも殺れるにゃん♡」
『なんだ貴様は』
ユエパッチの上から目線の物言いに苛立つ怪物。しかし彼女の独白は止まらない。
「元々一人だから隊にゃんてないけど、とりあえずわちきはそこそこの怪物一匹倒して配信終了させてもらうにゃ♡ オラァ!!」
それだけ言って布団叩きを振りかぶり、怪物に斬りかかるユエパッチ。
しかし――
『ふん』
ゲシッ、という音と共に彼女は怪物に蹴り飛ばされた。
そして――
「「「「ぎゃあああああああああああああああ!!」」」」
敵三人の元まで蹴り飛ばされ、巻き添えにして壁に叩きつけられた。
すると、動画が終了したのか元の様々な動画が映し出された空間に戻った。
それに気づいたユエパッチは悲しげにこう告げた。
「これで魔法少女ユエパッチチャンネルの、現時点での動画は全て終わりにゃ」
「そんな……」
ユエパッチの台詞にゼラチンマンだけは絶望するが、宇治金TOKIOは高笑いしていた。
「ははははははははは!! 勝手に終わりおったで!! これでワイらの勝ちや!!」
「それはどうかにゃ?」
しかしユエパッチは宇治金TOKIOの高笑いを不敵な笑みで返す。
「この奥義は動画が終わった後、これを見てくれたみんにゃがチャンネル登録してくれた分だけ、わちきがパワーアップするにゃん♡」
「な、なんやて!?」
驚愕する宇治金TOKIOの背後には、新しく増えたチャンネル登録者数が映し出される。
その数を見ながらユエパッチは飛び上がり、布団叩きを振りかぶって攻撃を仕掛けた。
果たして増えたチャンネル登録者数は――
「誰も登録してくれなかったにゃ――――――――――!!」
「「「ぎゃあああああああああああああああああああああ!!!」」」
「じゃあパワーアップしてないわよ!?」
ゼロでした。
ともあれ、べちゃっ、という音を響かせながら倒れ伏す敵三人。
かくして、3狩リアはユエ達の勝利で決着がついたのだが、そんなことはどうでもいいとばかりにユエパッチは嘆き悲しむ。
「うう……これじゃ収益化できないにゃん……」
そしてその後ろでは、ハジメ達がある決断を下す。
「じゃあこのユエパッチ抱き枕の商品化はなしということで」
「「異議なし」」
(冷徹に切り捨ててるですぅ……)
ハジメ達は、ユエパッチ抱き枕のラフ画をシュレッダーにかけていた。
すると、融合の制限時間が来たのかユエパッチが二人に分離しようとしていた。
そして融合が解けるとそこには――
「暗黒騎士フライキャン、恥を忍んで再び貴殿らにお仕えします」
謎の騎士がいた。
「いや誰ですか!? 首領パッチさんとユエさんは!?」
とりあえず撃破した宇治金TOKIO達を外に放り出したハジメ達は、目的地である小さな石板へと向かっていく。
「さあ皆さま、私についてきてください」
暗黒騎士フライキャンの先導の元で。
「まだいたんですか!?」
「出て行って」
「駄キャラが無駄に出番喰うな」
「女王よ……これで私も御身の傍に……!!」
暗黒騎士フライキャンもまた、いつの間にか生えたユエと首領パッチにより敵三人と同じ末路を辿る。
その光景をなかったことにして、彼らは目的地に到着した。
途端、彼らの足元に魔法陣が現れ、記憶を精査され、代わりに神代魔法の知識が脳内に埋め込まれる。
ハジメ達からすれば慣れたものだが、光輝達は初めてだったので大いに戸惑った。
すると、目の前の器がうねりだし、ぐねぐねと形を変え、人型の美しい女性へと容姿が出来上がっていく。
そして完全に形作られると、彼女はそっと口を開いた。
「まずは、おめでとうと言わせてもらうわ。よく数々の大迷宮とわたしくの、このリューティリス・ハルティナの用意した試練を乗り越えたわね。あなた達に最大限の敬意を表し、酷く辛い試練を仕掛けたことを深くお詫びいたします」
そう言ってリューティリスは深く頭を下げる。
どうやらこれは樹を媒体にした記録らしく、光輝が気にしないでください、と言っても何を返す訳でもなく話をつづけている。
彼女の話を要約するとこんな感じだ。
これもまたひちゅようにゃことにゃのぉおお!! れも絆がぁああああぉればらいぃ丈夫にゃはずよお゛お゛お゛ぉ!!
しんらいぃまほお゛お゛っう”昇華〟をどうちゅかってもいぃぃぃっよぉおお゙!! れもちからにお゙ぉおォおんぼれひゃらめぇぇ!!
”昇華〟はしゅべてのぉおお力をしゃいぃていれもいちらん進化しゃせるけど、真価はべちゅのぉおお所にぁああああぉるのぉおお!!
「いや読み辛いんですけど!? みさくら語!?」
「真価?」
まさかのみさくら語にシアがクレームを入れる一方、ハジメは神代魔法の進化について気になった。
その説明もリューティリスが当然してくれる。
「昇華まほお゛お゛っうはもじどお゙ぉおォおんりしゅべてのぉおおちからを昇華しゃせるのぉおお!!」
「普通に喋ってもらえます?」
なぜか当人までみさくら語を使い始めるが、シアが凄むのでリューティリスはコホン、と咳払いしてから普通に話し始めた。
「完全に会話してないかしら? これ」
「よくあるよくある」
なお、シアとリューティリスが完全に会話していることに雫が疑問を抱くも、ハジメによってあっさり流された。
「全ての力、それは神代魔法も例外じゃない。それら全てを一段進化し、めっちゃ気合を入れて組み合わせると、更に凄い“概念魔法〟というものになるわ」
「急に説明がざっくりね!?」
「概念魔法はわたくし達解放者のメンバーが何十年かけても、たった三つしか作れないほどよ。もっとも、わたくし達はそれでも十分だったけど……」
リューティリスがそう言った直後、石板の中央が動き奥から懐中時計のようなものが出てきた。裏には彼女の紋様が描かれているので、攻略の証も兼ねているらしい。
それをハジメが手に取り、しげしげと眺めると、リューティリスが説明を再開する。
「それはわたくし達が作った概念魔法の一つ。名前は〝導越の羅針盤〟――望んだ場所を指し示してくれるわ。どこでも、何にでも、例え別の世界であったとしても」
リューティリスの言葉にハッ、となる地球人達。ここに来て、帰る手段が明確になったのだから無理もない。
「全ての神代魔法を手に入れたのなら、きっとあなた達はどこにでも行ける。あなた達の未来に幸多からんことを祈ってんほおおおおおおおお!!」
「締めまでしっかりしてくださいよ!!」
こうしてリューティリスの言葉は終わり、彼女は樹の中へと戻っていく。それと同時に庭園の一角に、帰りのショートカット用魔法陣が現れた。
魔法陣を一瞥しながら、ハジメは皆にこう言った。
「ここに人間は一人もいなかった。行こう」
「セリフのチョイスがおかしいわよ」
一方、ここで鈴はある事実に気付く
「……あれ? 今回鈴喋ってなくない?」
これにて六章終了です。