【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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奥義83 決めようか。馬鹿と魔物、何方(どちら)生存(いき)るか死滅(くたば)るか!!

前回までのあらすじ

 

 

 何気なくツイッターを眺めていたハジメ。

 しかしそこに、推しキャラの胸と背を盛ったイラストが流れてきた。

 なので――

 

ハジメ「僕は怒ったぞ―――――――――!! パチーザ―――――――――!!」

首領パッチ「オレ!?」

 

 大体こんな感じだった。

 

 


 

 

 まずは囮役のユエ、天の助、ティオ、光輝、香織、鈴の六人から。

 彼女達がゾンビの群れに相対すると同時に、前方の斜め上からフロストイーグルの群れが大量に彼女達に向かって降ってきた。

 それを見たユエは仲間達より一歩前に出て、毅然と言い放つ。

 

「私の仲間に手は出させない」

「「やめろー! 死にたくなーい!!」」

 

 ただし、天の助と香織を鎖で拘束し、盾にした状態で。

二人に構わず、フロストイーグルの群れは容赦なく降り注ぐ。

 

「絶対に……!」

「「ぎゃああああああああああああ!!」」

「香織――――――――――――っ!?」

 

 盾にされている香織を見て思わず叫ぶ光輝。

 しかしユエはそれを一切気にすることなく、そのまま二人をゾンビの群れに投げつける。

 

「邪魔!!」

「「がはぁ!?」」

 

 その光景を見た光輝は、聖剣を振るいゾンビとフロストイーグルの群れを追い払いながら香織の元へ走る。

 

「香織、大丈夫か!?」

 

 そのままたどり着いた光輝は心配し、声をかける。

 しかし当の香織は、傷つきながらもなぜかサムズアップをしながら、いい笑顔でこう返した。

 

「私今、滅茶苦茶目立ってる……!!」

「香織!?」

 

 この時、彼女の精神状態は、もうすぐ卒業なのに未だ一つも内定が取れず、内定出してくれるならもうどこでもいいや、と思い始めている大学四年生のようなものだった。

 

「駄目なパターンじゃないか……!」

 

 光輝が戦慄する一方、天の助はゾンビの群れに食べられていた。

 

「いやあああああ! 食べないで――――――!! オレは美味しく味わってほしいの――――!!」

『ヴァア“ア“ア“ア“ア“ア“ア“ア“ア“!!』

 

 抵抗する天の助をよそに、ゾンビ達は意思もなく、ただ本能に任せ目の前の生き物(?)を捕食する。

 しかし、その中に一匹の例外がいた。

 

「ふむ、かなりのゲテモノですが……ここにバニラエッセンス一リットルと、ゴマ油を少量加えれば味が引き締まり、食べられるものになりそうですな」

「マジで!?」

 

 まさかのゾンビの食レポ内容に、驚きの余り思わず叫ぶ天の助。

 すぐさま彼はバニラエッセンスとゴマ油を言われた通りの量を混ぜる。

 その結果――

 

「「ココアだ……!」」

「ココア!?」

 

 なんと、天の助の味はココアへと変化した。これにはゾンビと合わせて二人も大盛り上がり。

 

「こりゃあうまいココアだぜぇ!!」

「ですな!!」

「それでいいのか……?」

 

 二人の盛り上がりっぷりに光輝が呆れる一方、鈴とティオは何やら準備をしていた。

 ティオは虚空から鍋と油を取り出し、落ちてくるフロストーグルを粉々に砕いて軽く溶かして水にしてボウルに入れてから、卵と薄力粉を混ぜることで天ぷら粉を作り準備を始め、鈴は小さな結界をいくつも作り、それをボウルに入れて衣をつけ、鍋に叩き込む。

 そして結界の天ぷらを作り上げた。

 

「結界の天ぷら!?」

 

 それを二人は敵の群れめがけて投げつける。

 すると、天ぷらはさながらダイナマイトの様に爆発した。

 

「「協力奥義、フライヤーバーニング!!」」

「何だこの技!?」

 

 結界の天ぷらをまるで爆竹みたいに投げ続ける鈴とティオ。

 それを尻目に、ゾンビの群れ相手にジャンケンで連勝し続けているユエは小さく呟く。

 

「じゃあここからはハジメ達の方に改行してからカメラ移す」

 

 

 ユエ達が戦っている一方、ハジメ、首領パッチ、シア、雫、龍太郎の五人はフロストタートルと相対していた。

 氷でできた巨大な亀の魔物は、佇まいだけで一堂に圧を与える。

 しかし、ここで首領パッチが、フロストタートルの左前足にある指輪に気付いた。

 すると彼は、なんと亀へと駆け出していき、その左足を手に取ってこう言った。

 

「結婚したのか、オレ以外のヤツと……」

 

 首領パッチの言葉で、フロストタートルもまたハッとなる。そう、二人は元恋人同士だった。

 

「そうなんですか!?」

 

 衝撃の事実を亀が思い出すと同時に、ハジメが懐からカンペを取り出して読み上げ始める。

 

「結婚して一年。大好きだった彼と再会したあなた」

 

 この言葉と共に、どこからか映写機が現れ、当時の映像が流れ始める。

 

 フロストタートルを抱き上げる首領パッチ。

 首領パッチの服を選ぶフロストタートル。

 ブタヤロウ! と叫ぶケンシロウ。

 どこか海の見える高台でキスをする二人。

 

「内容が一個おかしいですぅ!!」

「いや全部おかしいわよ」

「お前と結婚するのは、オレだと思ってた……」

 

 シアと雫のツッコミを背に、首領パッチはフロストタートルの唇に、自身の唇を少しずつ近づけていく。

 彼の行動に、フロストタートルは自身の心の高ぶりを抑えきれない。

 結婚して一年、幸せの絶頂にいる筈の彼女だが、実は夫が浮気していることに気付く。

 その事実に落ち込む中、同窓会で再会した元カレ、首領パッチのアプローチに、彼女の恋の炎が燃え上がり始める。

 

 ジュウウウウウ

 

 それとは全く関係なく、ハジメがいつの間にか取り出したガスバーナーの炎で、フロストタートルを溶かしていた。

 

「そんなしょっぱい火力で溶けるの!?」

 

 雫のツッコミはともかく、フロストタートルが溶け始めたことに魔石は慌ててそこから脱出し、細い足で逃げ出そうとする。

 

「逃がすかよ!」

 

 当然、それを見過ごす手はない。龍太郎は拳を握り締め、魔石に向かって飛び掛かる。

 だが魔石も負けてはいない。そいつは魔力を操作し、壁の氷を伸ばし、龍太郎を横から攻撃した。

 

「がはぁ!?」

 

 咄嗟のことで防御もできず氷をそのまま喰らい、地面に落下する龍太郎。

 しかし彼の後ろには、シアと雫がそれぞれピアニカソードと刀を振り上げていた。

 魔石は龍太郎と同じ要領で攻撃しようとするが、それより先に二人が奥義を使用する。

 

「「協力奥義、鈍閃一対!!」」

 

 シアが鈍器、雫が刀を用いた全身全霊の一撃を同時に浴びせると、魔石は粉々となった。

 結果、ゾンビや氷の魔物は動きを止め、その場に倒れ伏していく。

 

「ドンパッチ、サン……サイゴニアエテ……ヨカッタ……」

「ジェニファ――――――――――――――――――!!」

 

 そう、フロストタートルも例外ではない。

 かつての恋人の無残な死に慟哭する首領パッチ。

 そんな彼を見て、ハジメは小さくこう呟いた。

 

「悲しい物語だぜさあ次行こうか」

「全然悲しんでませんね!?」

「はいここで場面転換用のアイキャッチ」

 

 


 

 

シア「いやそれ別の作品ですゥゥゥゥゥゥ!!」

ユエ「ツッコミも銀魂っぽい」

 


 

 

 首領パッチが元カノの死を乗り越えて進んだ先は、それはそれは巨大な迷路だった。

 

「とはいっても、羅針盤あるから迷うことはないけどね」

「なあ南雲」

 

 大迷路に対し羅針盤を持ちながら余裕を見せるハジメに対し、ここで龍太郎が面倒そうな顔を浮かべながら声を掛けた。

 

「この迷路、上から乗り越えたりできないのか? 俺こういうの嫌いでよ」

「あんまりやらないほうがいいとは思うけど……まあ、一回くらいは試しておこうか」

 

 そう言うとハジメはユエの首根っこを雑に掴み、迷路の壁の上まで投げ飛ばした。

 すると、ユエは壁の上にたどり着いた瞬間に転移し、さらには『シェー』のポーズで凍りついていた。

 

「大分余裕あるわね!?」

 

 雫がツッコミを入れたその瞬間、凍り付いたユエが入っている氷に向かって、近くの天井から氷柱が伸び、彼女に向かって発射される。

 しかし直後、首領パッチの口が人一人通れそうなほど開き、そこからユエが現れた。

 

「奇跡の大脱出」

「凄い所から出てきたですぅ!!」

 

 まあそんな一幕もあり、一行は大人しく迷路を順序通りに攻略することにした。

 とはいえ、そんなに強い敵もおらず、大した仕掛けもないので、ハジメ達は雑談しながら進んでいた。

 

「そろそろ来期見るアニメ決めないとね。ありふれ二期は確定として、皆は他何見る? 僕は異世界(ファンタジー)バ美◯おじさんと、かな。原作知らないけど気になってる」

「予想以上に普通の雑談ね……」

 

 ハジメの話題の振り方に雫が呆れる中、最初に返事したのは首領パッチだ。

 

「とりあえずジョジョだな。天の助は?」

「オレは進撃だな。オレ原作読んでねえし」

 

 天の助が答えると、後から後からユエ達も話に入ってきた。

 

「私はド◯フロ。ソシャゲアニメに何度裏切られても、私は信じるから」

「妾は最◯記じゃな。シアは?」

「え? ああ、そうですね……私は錆喰いビ◯コですかね。名前しか知らないですけど、なんか評判いいらしいので」

 

 ハジメ達が思い思いに話していると、いきなり横の壁から槍が伸びてきた。

 かろうじてそれを躱すも、服には当たり、胸の部分がはだけるように破れてしまう。

 

「きゃああああああああああああ!!」

 

 それに気づき、絹を裂くような悲鳴をあげながらも咄嗟に胸元を隠す。

 ハジメが。

 

「今までの描写の被害者ハジメさんだったんですか!?」

 

 シアがツッコミを入れている間にも、ティオがハジメの服を縫って直す。

 すると、どこからともなく氷でできたオーガ、フロストオーガが五匹ほど現れた。

 しかし――

 

「納豆真拳奥義、高下君の家でカレー貰うといっつもジャガイモに火が通ってない!!」

「「「「「ギャアアアアアアアアアアアア!!」」」」」

 

 先ほどの鬱憤を晴らすかのようなハジメの納豆により、あっという間に殲滅されてしまった。

 しばらくして、一行は迷路を抜けた。

 そこには大きな両開きの扉があった。氷でできているとは思えないほど精巧な細工がなされ、荘厳な雰囲気が漂っていた。

羅針盤も扉の先を示している。

 しかし、ハジメ達の顔に浮かぶのは迷路を抜けた喜びではなく、疑念である。

 なぜならば――

 

「扉、開いてるな」

「そうだね」

 

 閉ざされている方が自然であろう迷宮の扉が、まるで挑戦者を歓迎するかのように開いているのだから。

 この理由を、首領パッチはこう推測した。

 

「リニューアルオープン記念……!!」

「電気屋じゃないのよ!?」

 

 それはないだろ、と一同が思ったのを代表して雫がツッコミを入れる中、他の皆は辺りをキョロキョロして何かないか探す。

 すると、鈴があるものを指差しながら皆に向かって叫んだ。

 

「皆、あれ見てあれ!!」

 

 鈴が指さす先には、大きくくりぬかれた壁のくぼみに、それに嵌る大きさの物体が収まっている光景だった。

 

「なんつーか、ダンジョンの仕掛けを先に解かれた、みたいな光景だな」

「みたい、ではないと思いますけど」

 

 天の助の言葉に同調するシア。

 他の皆も言葉にしないだけで確信していた。間違いなく先客がいると。

 しかし誰も怯むことなく、彼らは開かれている扉に向かって一歩踏み出した。

 神代魔法を手に入れる為に。

 

「さあつぎも許せないぜ!」

「何も知らないのに!?」

 

 それはそれとして、ハジメの理解不能な言葉に、雫はきちんとツッコミを入れるのだった。

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