【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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まさか二日続けて更新するとは夢にも思うまい


3/1追記
今回の文章において重大な矛盾を発見したので、修正しました。
展開に大きな変更はありません。


奥義90 ギュンギュン回るよスロットは! そう、二人の恋物語のように……

 空に現れた巨大なスロットマシンに目を奪われる一同。

 しかしここでシアだけが、香織がこの場にいないことに気付いた。

 

「あれ? 香織さんは?」

 

 シアが思わず辺りをキョロキョロ見回すと、部屋の入口から入って来る香織の姿を見つける。

 

「いや、前回出番無かったから身体測定受けてきちゃった」

「何してるんですか!?」

「だって私だけ台詞一つもなかったし……」

 

 拗ねた顔を見せながら、香織は身体測定の結果が書かれた紙を開くと、そこにはこう書いてあった。

 

『165cmくらいじゃね?』

「「なんか適当――――――――――!?」」

 

 香織の測定結果に二人がツッコミを入れる中、ハジメは自身が出したスロットマシンについての説明を始める。

 

「これが僕の考えたギャンブル。まずあのスロットは日常で使うものをランダムで三つ選びだす。ちょうどあんな風にね」

 

 鉛筆消しゴムノート

 

 ハジメがそう言うと、空中のスロットが三つのアイテムを示す。

 すると、スロットの頂上から示されたアイテムが放出され、ハジメ達の前に落ちてきた。

 そのまま彼は鉛筆を拾いながら説明を再開する。

 

「これで出てきたものを拾って武器にして戦い、相手を全て倒した方が勝ちだ! 出てきたモノを瞬時に拾いに行く瞬発力、どう使うかを考える発想力。そしてそもそも使えるものが出るかどうかを問う運。それら全てを試される究極のギャンブルだ!!」

「ふざけるな! 退厄鬼真拳奥義、頑強鉄板フライング!!」

 

 徐々に語気を荒げながら、どこか誇らしげに説明をしていたハジメに対し、あまりにもふざけた内容の為怒ったたいやキングは鉄板を放つ。

 その鉄板はハジメの顔面に直撃するが、彼は無傷のまま説明を再開した。

 

「おっと言い忘れていた。この奥義が発動している間は、出てきたもの以外を使った攻撃以外は一切通用しない。よってさっきのたいやキングの攻撃は全て木彫りの熊に変換される」

(全然意味が分からないわ……!)

 

 ハジメがそう言うと、彼の足元にボトボトといくつかの木彫りの熊が落ちる。

 更にその熊の群れはたいやキングに群がり、そのまま齧り始めた

 

「や、やめろ……! 俺を食べないでくれ……!!」

 

 必死に懇願するたいやキングだが、熊の群れは無視してひたすら彼を齧りつける。

 この光景をただ見ていた天の助は、思わずこんな言葉を零していた。

 

「これがリョナって奴か……! 残酷な描写のタグはこの為に……!?」

「違うと思う」

「読者キャラにする所業じゃないですぅ」

 

 天の助の台詞に静かにツッコミを入れるユエとシア。

 一方、チンチロ姫と田中はそれぞれ消しゴムとノートを拾い、必死に活用法を考えていた。

 

「これでどうやって戦えと言うのだ……!!」

「うおおおおおおおおお!!」

 

 頭を抱えるチンチロ姫。やけになりノートを掲げて殴りかかる田中。

 対してハジメは、自らが持つ鉛筆を直径十センチ、長さ一メートル半程に巨大化させてから、敵三人に向けて構える。

 

「「何ィ――――――――――!?」」

 

 まさかの鉛筆強化に、未だ木彫りの熊に襲われているたいやキングを除く二人が驚愕するが、ハジメは構わず鉛筆を三人に投げ放った。

 

「ペン・ジャルク!!」

「「「ぎゃああああああああああああああああ!!」」」

 

 ハジメが投げた鉛筆は着弾と同時に爆発し、敵三人とついでに熊の群れを薙ぎ払う。

 そしてハジメが倒れ伏している田中の懐から財布を抜き取り、こう言い切った。

 

「その財産、もらい受ける」

「それただの強盗よ!!」

「さあ次だ!!」

 

 雫のツッコミを無視して、ハジメは再びスロットを回す。

 この時、前のスロットで出てきたものは、使い回しされないようにするため消滅した。実はこれもルールの内である。

 

 Yシャツジーパンベルト

 

 そしてスロットが指し示すものが再び上から出現し、その三つの内、Yシャツはチンチロ姫、ジーパンは天の助、ベルトはハジメの元へそれぞれ行き渡った。

 チンチロ姫はとりあえずYシャツを服の上から着るが、花魁衣装の上にシャツを着ると言うファッションは、はっきり言って

 

「ダサッ」

「貴様のせいだろうが!!」

 

 ハジメがばっさりと感想を言ってしまい、思わずキレるチンチロ姫。そこにジーパンを穿いた天の助が襲い掛かった。

 

「ジーパンパンチ!」

「ぐばっ!?」

「ジーパンキック!」

「がはぁ!?」

「ジーパンチョップ!」

「げばぁ!?」

「全然ジーパン関係ない――――――――――!?」

 

 ジーパンとついているだけの殴る蹴るの暴行を敵それぞれに浴びせる天の助の後に、今度はハジメが追撃を加える。

 

「ベルト流殺法、ムチ!!」

「「「ぐわあああああああああ!!」」」

 

 ハジメはベルトをムチのようにしならせ、三人をピシピシと叩く。

 しかし――

 

「子供が真似したらどうするのさ!!」

「「「ぎゃあ!?」」」

 

 すぐにベルトを敵にぶん投げて、理不尽にキレだした。

 

「いや、やってたのハジメじゃないの」

「次行くよ!!」

 

 雫の静かなツッコミには耳を貸さず、ハジメは三度スロットを回す。

 

 戦車戦闘機戦艦

 

「「「どこが日常だ――――――――――――――――――――!?」」」

 

 示された三つのものに、敵三人は全力でツッコミを入れるが、スロットは無情にもルール通りにアイテムを出現させた。

 そう、全てを。

 

「あ、あぁ……!!」

 

 スロットを見上げていた天の助が、怯えた声を出すがそれもそのはず。

 なぜなら、今彼の視界は全て戦艦で覆われているから。

 

『ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!!』

 

 そして戦艦は、ヒロインであるシアと雫以外のその場に居る全ての人物を押しつぶした。

 

「オレだって、ヒロインだろ……!!」

「それは……ない。私がヒロイン」

 

 自身がヒロインにカウントされていないことに苛立つ首領パッチとユエはさておき、スロットはまた回り始め、それと同時に戦艦、戦闘機、戦車は消滅する。

 

 マンゴーキャベツゴボウ

 

 これで現れたものの内、今度はマンゴーが雫、キャベツが田中。そしてゴボウがチンチロ姫の手に渡る。

 チンチロ姫と田中はそれぞれ出てきた野菜を構え、天の助をゴボウやキャベツで殴りつける。

 

「貴様! これのどこがギャンブルだ!!」

「死ねぃ! 死ねぇぇい!!」

「オレが考えたわけじゃねえ!!」

 

 謂れのない罪で暴力を受ける天の助の元に、雫がマンゴーを手に駆け寄っていく。

 しかし彼女には迷いがあった。

 

「マンゴーで戦うって何よ……!?」

 

 ハジケリストではない雫には、マンゴーを使った戦い方を考えることはできなかった。

 それでも彼女は結論を出した。

 

「はあっ!!」

「ぐばぁ!?」

 

 雫はマンゴーを、田中の脳天に振り下ろした。

 するとマンゴーは砕け、彼女の手は果汁まみれになる。しかし彼女は構わず、そのまま今度はチンチロ姫に攻撃する。

 

「八重樫流体術“鏡雷„!!」

「がはぁ!?」

 

 雫はチンチロ姫を合気道的なアレで浮かび上がらせ、その間に果汁まみれの手でいい感じの打撃を与えて吹き飛ばした。

 

「説明急にフワッフワですね!!」

「これで最後だ!」

 

 シアのツッコミをバックに、スロットは最後の回転を始める。

 

 納豆納豆納豆

 

 そして示されたものがスロットの上部から現れるも、全ての納豆は即座にハジメの元に集結した。

 そのままハジメは奥義を発動しようと力を貯める。

 

「右手には紀納豆……」

 

 そう言うとハジメの右手に、鮮やかな紅色の納豆が現れた。

 それを見た雫は驚愕し、思わず解説を始めていた。

 

「あれは紀納豆! 粘り気が罠や捕獲道具にすらなると言われる、かつて神々すら捕らえたとされる伝説の納豆よ!!」

「そんな凄いものなんですかアレ!?」

 

 突如始まった雫の解説にシアが驚くが、ハジメは構わず左手にも同じように納豆を出現させる。

 ただし、こんどは紀納豆とは異なり、色は茶色だ。

 

「あれは堕納豆! 紀納豆が穢れを吸ったときに堕納豆に変化し、粘着性は紀納豆と互角と言われているものの、それを扱うことは邪悪に身を落とすとされる禁断の納豆!!」

「禁断の納豆って何ですか」

 

 シアが雫の放つ言霊の強さに悩み始めるも、今度はハジメの左右それぞれにある二つの相反する納豆の間に、また新たな納豆が出現した。

 

「あ、あれは……」

「あれは?」

「普通の納豆ね」

「ここに来て!?」

 

 まさかの梯子外しにシアがツッコミを入れる一方、ハジメは三つの納豆を一つに混ぜ合わせていく。

 すると、一つになりつつある納豆は徐々に赤茶色のオーラを発し、納豆が強力なエネルギー体になっていくことが目に見えて分かった。

 

「「「させるか―――――――――!!」」」

 

 それを阻止するために敵三人が一斉にハジメに飛び掛かろうとするがもう遅い。

 エネルギーは潤沢に溜まり、ハジメは容赦なく奥義を発動した。

 

「納豆真拳超絶奥義、納豆三重奏(マメーリア・トライアングル)!!」

「「「ぐわあああああああああああああああああああああ!!」」」

 

 ハジメの放った納豆のエネルギー体は、三人に命中したと同時に大爆発を起こし、そのまま三人を吹き飛ばす。

 これにて3狩リア、決着!

 

「読者キャラの出番も、これにて終了だ!!」

「その台詞必要ですか!?」

 

 


 

 

 チンチロ姫を倒したハジメ達は、羅針盤の案内に従い神殿内部を進んでいくと、見るからに重厚な扉を見つけた。

 扉を開けて中を見ると、そこにはお目当ての魔法陣。

 ハジメ達は即座にそれに乗り、特に大したイベントも挟まず皆は変成魔法を習得した。

 

「「「ぐわあああああああああああ!!」」」

 

 喜びに沸きそうになる一同だったが、ここでハジメ、ユエ、首領パッチの三人が同時に頭を押さえて苦しみ始める。

 

「あ、頭が……!」

「割れるように痛い……!」

 

 あまりの苦しみに呻き始めるハジメとユエ。

 続くように首領パッチも苦しみを口に出す。

 

「オ、オレも……!!」

 

 パリィィィン

 

 首領パッチは砕け散った。

 

「本当に割れたですぅ――――――――――!? しかも頭じゃなくて全身!!

 

 ツッコミを入れるシアの一方、ハジメは苦しみながらある疑問を口にする。

 

「おい……なんで……天の助が……ハブられてる……」

「……確かに。この症状は全ての神代魔法を習得したものに現れるはず……!?」

「いやだってオレ、グリューエン大火山行ってないし」

「「……ハッ!?」」

 

 ハジメとユエの疑問に天の助が明確な返答をすると、二人は驚いて顔を見合わせてしまった。

 そう。天の助は、アンカジ公国民の治療のために、グリューエン大火山へは行っていないのである。

 そのことを、誰も覚えていなかった。

 

「じゃあ魂魄ビーム」

「ぎゃあ!?」

「変なビームが出てきたですぅ!?」

 

 すると、いきなりユエの額から天の助に向けてビームを発射した。

 このビームはユエオリジナル魔法。魂魄魔法のちょっとした応用で、ビームに情報を乗せて、それを打ち出すことで相手の魂に情報を刻むことができる。

 これにより、彼女は天の助に空間魔法について教え込んだのだ。

 

「ぐわあああああああああああ!!」

 

 なので天の助も遅れて苦しんだ後、首領パッチと同じく砕け散った。

 

「と、とりあえず南雲とユエさんを看病するか……!」

「そうね……」

 

 この光景を唖然としながら眺めていたが、一行はここでやっと光輝と雫主導でハジメとユエの看病を始める。

 

「ところで、首領パッチさんと天の助さんはどうすればいいですかね? ティオさん」

「とりあえず寄せて集めておけばいいじゃろ」

 

 その裏では、鈴とティオが二人の破片を集め始めていた。

 それから二十分ほど経った後、ハジメ達は目を覚ました。

 

「どうして四人はいきなり倒れたんですか?」

 

 代表してシアが尋ねるが、それはハジメ達四人を除く一同の総意だった。

 それを理解してか、ユエは説明を始める。

 

「ざっくり言うと、神代魔法をコンプリートした人には特典としてある情報が与えられる」

「本当にざっくりですね」

「情報、とは?」

「ああ! それってハネクリボー?」

 

 ユエのどこかふざけた言い回しに、尋ねた光輝が若干苛立つも、それを気にすることなく説明を再開した。

 

生成魔法無機物に干渉する魔法

重力魔法星のエネルギーに干渉する魔法

空間魔法境界に干渉する魔法

再生魔法時に干渉する魔法

魂魄魔法生物の持つ非物質に干渉する魔法

昇華魔法存在するものの情報に干渉する魔法

変成魔法有機体に干渉する魔法

 

「表でまとめるとこんな感じの情報」

「分かりやすいのう……」

「で、後はこれらを活かして私達四人がいい感じに頑張れば、ハジメ達が帰れるアーティファクトの出来上がりって訳」

「さっきから説明雑すぎません?」

「面倒くさいから詳しくは原作読んで」

「それは雑を通り越してもはや暴挙ですよ!!」

 

 ユエの説明にシアがツッコミを入れ続けているのとは対照的に、光輝達は彼女の説明を聞いて感慨深さを覚えていた。

 突如召喚された、まるで見知らぬ異世界。

 最初は勇者だ神の使徒だ持て囃されたが、蓋を開けてみれば狂った神の邪悪な遊戯の駒扱い。

 それから解放されるまであと少しとなれば、光輝達の感慨も無理ないことだろう。

 

「じゃあこれから、私達はそれ用のアーティファクト作るから、ちょっと待ってて」

「え~今からやるの~?」

「僕疲れたから明日がいい~!」

「今日はゲームの日にしようよ~!!」

「宿題みたいなノリで拒否するんですか!?」

「駄目。こういうのはさっさとやらないと、うまく行かなくなるのが世の常」

 

 戦闘直後で疲れている天の助とハジメ。後別に何もないのに拒否する首領パッチ。そんな三人を無理矢理引きずって、ユエ達は神殿にある別の部屋に入っていった。

 彼らの背中を見つめながら、シアは少し寂しそうな声でこう呟いた。

 

「ハジメさん達、いよいよ帰っちゃうんですかね……」

「まあ、エヒトは倒すじゃろうが、それが終われば帰るじゃろ」

 

 寂し気なシアとは対照的に、分かっていたとばかりに淡々と返すティオ。

 実際、いずれはこうなると分かっていたのは事実なので、シアも特に何も言わない。

 そして二人は、ハジメを追い掛けて地球へ行くという選択肢も持っていない。

 なぜなら、彼女達には家族と故郷があるから。

 往来が自由自在なら、たまに地球へ遊びに行くくらいはするかもしれないが、骨を埋めるのは、嫌な思い出があってもやはりトータスだと、二人は決めていた。

 

「そう考えると、ユエさんはどうするつもりなんでしょうね」

「さての。妾には分からぬよ」

 

 二人がそんな会話をしてから十時間後。

 

「十時間後!?」

 

 ハジメがさっきまで籠っていた部屋から飛び出してきた。手には紅と金の瞬きを内包した半透明の鍵、クリスタルキーが握られている。

 

「みんなー! アーティファクト出来たよ――!!」

「そんなパン焼けましたみたいなノリで言わないで!!」

 

 ハジメの軽いノリに雫がツッコミを入れるも、地球出身の皆は帰還の為のアイテムの完成に沸き立つ。

 しかしシアは、ここで他の三人が出てこないことが気になった。

 なので、さっきハジメが出てきた扉から中を覗き込んでみる。するとそこには――

 

「「「だからよ、止まるんじゃねえぞ……」」」

「三人死んでるですぅ――――――――――!?」

 

 アーティファクトの作成で精魂尽き果てた三人が、死んだように倒れ伏しているのだった。




これにて七章終了です。
残りは最終章のみ!
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