【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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奥義94 とびっきりの最凶vs最狂

「「「うおおおおおおおおお!!」」」

 

 3狩リアの開始と共に突っ込んでいくハジメ達三人。当然それを黙ってみているアルヴではない。

 

「アルヴの名において命ずる――“跪け„」

 

 即座にエヒトが用いた同じ神言を使い、ハジメ達を止めにかかるアルヴ。もしこれが通るのなら、3狩リアの決着は即座に付くだろう。

 しかし現実はそうはいかない。彼らは跪くことなく突き進み、ハジメは納豆をアルヴの顔面に叩き込んだ。

 

「ぶはぁ!?」

 

 まさかの事態に成すすべもなく吹き飛ばされるアルヴ。

 一方、首領パッチはバブウに、光輝はイシュタルに攻撃を仕掛けたが、そっちはあっさりと回避された。

 

「き、貴様一体どうやって我が神言を……!?」

 

 すぐに体勢を立て直しつつも、ワナワナと体を震わせながらハジメに問うアルヴ。

 その問いに、ハジメはすぐ答えた。

 

「何度も喰らったから分かるけど、その“神言„は魂に直接声をかけて従わせる魔法だ。だったら、魂自体に破壊神の耳舐めASMR聞かせて耳を塞いで、神言を聞こえなくすればいい」

「破壊神の耳舐め!?」

「魂にASMR!?」

 

 あまりの攻略法に驚きの声をあげたのはシアと雫だったが、アルヴは声すら出なかった。

 いつかは対処してくると思っていた。しかしこれほど早くとは思っていなかった。

 つまるところ、彼は警戒しているつもりでも、まだハジメを侮っていたのだ。

 

「オレも続くぜ!!」

 

 ハジメに続き、今度は首領パッチがまたも攻撃を仕掛ける。

 

「喰らえ!」

 

 首領パッチが宣言すると、彼はどこからかでんでん太鼓を取り出し、でんでんと鳴らし始める。

 

「え、何? 何なの?」

 

 戸惑う雫を尻目に、ひたすらでんでん太鼓を鳴らし続ける首領パッチ。

 最初は胡乱でリズムも何もあったものではなかったが、やがて太鼓はある音楽を奏で始めた。

 

 デデンデンデデン デデンデンデデン

 

「ターミ〇ーター!?」

 

 辺りに鳴り響くでんでん太鼓によるターミ〇ーターのテーマ。

 すると、曲に合わせて首領パッチの背後から、ある男が姿を見せた。

 

「フォークリフトの出撃はいつでも可能だ」

 

 男の正体は、リーチ式のフォークリフトだった。

 

「フォークリフト出てきた――――――――!?」

「まあ、人とは言っておらぬからの」

 

 ツッコミを入れる雫とコメントするティオの二人に構わず、フォークリフトは叫ぶ。

 

「フォークリフト編隊、五台!!」

 

 叫んだと同時に虚空からカウンター式フォークリフトが五台現れ、アルヴ達を狙って疾走を開始する。

 

「それじゃただのひき逃げですよ!!」

「危険運転ダメ絶対!!」

 

 しかし、フォークリフトの集団が疾走を開始した瞬間、危険運転を嫌ったハジメがロケットランチャーを発射し、アルヴ達諸共全員を吹き飛ばした。

 

『ぎゃあああああああああああああああ!!』

「えぇ――――――――――――――っ!?」

「射線上に入るなって、僕言ったよね?」

「言って無いですし射線関係ないですぅ!?」

 

 ハジメの理不尽極まりない物言いにツッコミを入れるシア。

 一方、流石に敵三人もロケットランチャーごときで怯みはしない。

 イシュタルは即座に復帰したかと思うと、またも攻撃を仕掛ける。

 光輝に。

 

「死ねぃ! 勇者め!!」

「え? こっちじゃないの?」

 

 攻撃対象が自分じゃないことについて呆気にとられるハジメに対し、光輝は慌ててイシュタルの攻撃を受け止める。

 イシュタルもまたノイントと同じく大剣を振り回し、光輝はそれを聖剣で受け止めたので、鍔迫り合いで硬直していた。

 ただし、イシュタルは血走った目で光輝を睨み、並々ならぬ気迫を持って押し続けるので、徐々に均衡は崩れ、イシュタルに有利になり始めていた。

 これを覆すべく、光輝は必死になってイシュタルに問いかける。

 

「イシュタルさん! 一体何があなたをそこまでさせるんだ!! エヒトはこの世界を滅ぼそうとしているんですよ!!」

「黙れぇ! エヒト神様に従うことこそが人間族のあるべき姿!! エヒト神様が滅びを望むのなら、疾く死ぬのが当然のこと!!」

 

 光輝の言葉にいささかも揺らぎを見せないイシュタル。

 だが彼の心にはエヒトへの狂信の他にも、個人的な怨恨もあった。

 

「そして何より……なぜ貴様が勇者なのだ!! エヒト神様の偉大さも素晴らしさも知らぬ異界の蛮人が、なぜ偽りとはいえ神の使徒に選ばれた!!」

 

 それは、嫉妬。教皇として長年エヒトに信仰の限りを尽くしてきた自分より、ぽっと出のどこの誰とも分からない若者が神に近いことについて、イシュタルはずっと不満があった。

 だがエヒト神がそうおっしゃるのならば、従う以外の道はない。それをしないことは、彼にとって人生の否定だ。

 しかしここに来て、他ならぬ神によって勇者を倒す機会が生まれた。これに歓喜しないほど、イシュタルは人間性を捨てていなかった。

 

「……()()

 

 そのイシュタルの言葉を、光輝は静かに否定する。

 とはいっても否定したのは信仰心についてではない。世界を滅ぼすなど論外だが、そもそも彼に宗教の是非など分からない。イシュタルにとってエヒトがどれほどの存在かなど、光輝が真に理解することはできない。

 だがそれでも、彼には否定しなければならないことがある。

 

「勇者は、エヒトの為の人形じゃない!!」

 

 光輝の叫びに、お前は何を言っているんだ? と言いかねないほど怪訝な面持ちを見せるイシュタル。しかしこれは事実だ。

 五百年前には竜人族に伝わっていた、一人の女性の為に魔王を倒すために旅立った勇者の御伽噺。

 それは御伽噺ではなく、今から千五百年以上前に起きた事実。

 大樹の化身“女神ウーア・アルト„の魂を宿した聖剣を携え、勇者ダリオン・カーズが魔王を倒すべく旅立ち、そして敗れ、せめて女神だけは守るために、魔王に屈した勇者の物語。

 

「魔王はお前だエヒト! 勇者も聖剣も、エヒトを倒すために生まれたものだ!!」

「戯言を!!」

 

 そんな、三百年前に滅んだ吸血族の王族だけが入れる“知識の蔵„にのみ、断片的に残っているような情報を、イシュタルが知るわけがない。

 否、光輝の方がもっと知る術がない。彼自身にすら分からない。

 にも関わらず、彼は叫んでいる。まるで、聖剣がそれを教えてくれたかのように。

 

「これが俺の、女神に捧ぐ愛だ!!」

「「何故そこで愛ッ!?」」

 

 あまりにも唐突で意味不明な光輝の叫びに、思わずハモってしまったシアと雫。

 するとここで光輝の力が増したのか、徐々にイシュタルを押し返し始めた。

 やがて均衡は完全に入れ替わる。

 

「はぁっ!!」

「何!?」

 

 光輝はイシュタルの大剣を弾き、そのまま相手の体勢を崩した。

 当然すぐに体を戻そうとするイシュタルだが、ここで体が動かなくなる。

 

「納豆真拳奥義、決して切れない(ネバーエンド)ネバネバ。納豆真拳はサポート技も豊富なんだよ」

 

 なぜならば、ハジメが納豆の糸を伸ばしてイシュタルの体を拘束していたからだ。

 そして光輝は隙だらけになったイシュタルを聖剣で切り裂いた。

 

「ぐはぁ!!」

「そのままイシュタルを――」

 

 ハジメは切り裂かれたイシュタルをハンマー投げの要領で振り回し

 

「アルヴとバブウにシュゥゥゥーッ!! 超、エキサイティン!!」

 

 敵二人に向けて投げつける。更にイシュタルの上には、いつの間にかサーフィンの要領で乗っている首領パッチの姿があった。

 

「このスピード……最高にクールだぜ!!」

「何してるんですか!?」

 

 首領パッチの行いにシアがツッコミを入れた瞬間、イシュタルの体は敵二人の元に到着する。

 しかし――

 

「はっ!!」

「「へぶっ!?」」

 

 飛んできたイシュタルと首領パッチを、バブウは事も無げに地面に叩きつけた。

 それを冷たく見下ろしながら、アルヴは告げる。

 

「この役立たずが」

「そ、そんな!?」

 

 アルヴの突然の言葉に動揺するイシュタル。その様はまるで母親に見捨てられた子供だ。

 しかしアルヴの目は冷ややかだった。養豚場の豚を見るような残酷な目だった。

 

「リサリサ先生。タバコ、吸ってないぜ……」

 

 なお、この時のハジメのリアクションは誰も気にしなかった。

 この間にもアルヴの非難は続く。

 

「勇んで出てきたかと思えば私怨を晴らそうとするばかり。おまけに返り討ちにあい、我等の足を引っ張る始末。貴様など、最初からいなければよかったのだ」

「お許しください! どうか何卒! もう一度チャンスを!!」

 

 必死に土下座し懇願するイシュタル。

 そんな彼に対し、アルヴは足を振り上げ、そのまま頭を踏み潰した。

 辺りに広がるのは、ザクロのように潰れたイシュタルの頭から流れる血と、その生臭さ。

 

「足手まといが減って何よりでちゅ」

 

 そして目の前の凄惨な光景を見て零すバブウ。彼もまた、イシュタルは邪魔でしかなかった。

 これに憤りを見せるのは光輝だ。

 

「何て奴らだ……! 許せない!!」

「仲間を足手まといだと判断したら即処分か。毛ジラミ以下のチームワークだ。負ける気がしないね」

 

 分かりやすく怒る光輝に対し、ハジメはクールに流そうとしている。

 しかし実際は彼もまた、拳を強く握りしめ、怒りに震えていた。

 そして最後に首領パッチは――

 

「オレの寿司を食えやぁ――――――――――!!」

「「がぼぼぼぼぼぼぼぼ!?」」

 

 自身が握った寿司を片っ端から、アルヴとバブウの口の中に押し込んでいた。

 メニューはラーメン、うどん、フライドポテト、チョコレートパフェなど様々だ。

 

「いやそれ回転寿司のサイドメニューでしょ!?」

 

 雫がツッコミを入れると同時に、彼女の目の前に回転寿司のレーンが前触れもなく出現する。

 否。彼女だけではない。仲間の天の助やティオ、香織達の前にもレーンが現れた。

 そして香織と鈴は躊躇なく流れてきた寿司を食べる。メニューはマグロやサーモンなどだ。

 

「「美味しい美味しい」」

「食べてるですぅ――――――――!?」

 

 そして天の助とティオもまた、レーンに流れてくるものに手を取る。

 メニューは天の助がから揚げ、ティオはプリンである。

 

「ふむ……この舌ざわり、米はいいものを使っている。しかし仕込みの腕が足りませんね」

「早く店のシャリの味を覚えろと言ったじゃろ!!」

「こっちの食レポ手厳しいわね!? シャリ関係ないし!!

 

 観戦者達が首領パッチの寿司を食べる中、当人はいつの間にかさらっとハジメと光輝の隣に戻る。

 そしてアルヴ達に指を突きつけ、宣言した。

 

「滅びろ! アルヴ!!」

「おまえは最初からサタンだったんだな! 僕を騙していたんだな!!」

「何でいきなり実写版デビルマンになるんですか!?」

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