偽典・女神転生ーツァラトゥストラはかく語りき   作:tomoko86355

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やっとこさ投稿。
テレサ・・・・フォレスト家の家長代理。 B級の悪魔召喚術士。
ジョセフ・・・・テレサの三つ歳が離れた弟。 医術士と詠唱士の資格を持つ。
ディンゴ・・・・テレサの右腕。アイザックと同じライカンスロープ。
  


チャプター 13

NYで最も有名な繁華街、タイムズスクエア。

ブロードウェイ・ミュージカルが上演されている各シアターが所在するこの場所は、観光名所として広く知られている。

その繁華街から少し離れたビルの地下。

シックな風潮をしたバーに、フリーの魔導士、トリッシュが居た。

カウンター席に座り、カクテルを一口呑む。

スミレの香りと、レモンの風味が合わさったフルーティーな味わい。

ブルー・ムーンは、トリッシュが最も好きなカクテルの一つだ。

 

 

「お隣、良いかしら? 」

 

すぐ傍らから聞こえる女の声。

振り返り、その女の姿を見た瞬間、余りの驚愕にトリッシュの躰が固まった。

 

「ゆ・・・・百合子。 」

「フフッ、そんなに警戒しなくても大丈夫よ。 」

 

酷薄な笑みを口元に浮かべ、蝋細工の如き白い肌をした黒髪の美女が、隣の席に座る。

陶器で出来た灰皿を引き寄せ、シガーケースから、シガリロを一本取り出した。

 

 

「別に貴女をどうこうするつもりはないわ。 少しだけ話がしたくて此処に来たの。 」

「・・・・私は、貴女と話す事なんて無いわ。 」

 

余りの緊張感に喉がカラカラに乾く。

女に殺意は微塵も感じられないが、油断は禁物だ。

何時襲って来るか分からない。

 

 

「エレナ・ヒューストンの件で、私が貴女に腹を立てると思った? なら、安心して、私は別に何とも思ってないから。 」

「・・・・・・。 」

 

今から数日前に起こったロッククィーンの失踪事件。

世界的に有名な歌姫の失踪に、世間は様々な噂で賑わったが、それも一時の事。

今では、大分沈静化されて、エレナ・ヒューストンと言われる人物は、過去の人間として片付けられている。

 

 

「貴方が”マレット島”から持ち帰った”クリフォトの根”で、新薬を開発したのは良いけれど、流石に、あの食人欲求は困りものでね・・・・開発責任者のアグナスに報告したの。 そうしたら、担当から外されてしまったわ。 」

 

針の様に細いシガリロに愛用のライターで火を点け、一口吸う。

ゆっくりと味わう様に煙を吐き出す百合子。

金の双眸が、隣に座るブロンドの美女に向けられる。

 

人間を悪魔に変えてしまう魔薬”ゼブラ”。

その薬の人体実験をする為、百合子は中々芽が出ない、ミュージシャンの卵、エレナに近づき、薬を与えた。

期待通り、エレナは力に覚醒し、人々から大量のマグネタイトを回収出来るまでに至ったが、その代償として、生きた人間の内臓を喰らう様になってしまったのである。

 

 

「アグナス曰く、”ゼブラ”開発に相応しい実験場を見つけたそうよ? 後は、自分が全てやるから、私は余計な事をするな・・・ですって。 」

 

百合子の辛辣な言葉に、アグナスの高すぎる矜持を傷つけてしまったらしい。

口元に皮肉な笑みを浮かべる。

 

「実験場・・・・・? 」

 

不穏な百合子の言葉に、トリッシュが眉根を寄せる。

 

「”フォルトゥナ公国”と呼ばれる小国よ。 古くから悪魔を崇拝する変わった風習があるみたいなの。 どんなコネを使ったか知らないけれど、アグナスは、そこで技術開発責任者として潜り込めたらしいのよ。 」

 

城塞都市・フォルトゥナ。

ロシア領土の外れに位置する小さな国。

大国ロシア連邦と同盟関係にあるディヴァイド共和国とは、次世代のエネルギー源、オイルシェルを巡って対立関係にある。

国境を挟んで睨み合い、常に小さな衝突を繰り返しているのだという。

 

 

「彼、生物兵器を量産するのにあの薬を使うみたい・・・環境的にも申し分ないし、フォルトゥナの代表であるサンクトゥスって男は、目先の欲を優先させるお馬鹿ちゃんらしいから御し易いと喜んでいたわ。 」

「・・・・・。 」

 

それだけ言うと、百合子はシガリロを陶器の灰皿で押し潰す様に消して、席から立ち上がった。

金の瞳が、カクテルグラスに視線を落としたまま固まるトリッシュへと向けられる。

 

 

「そうそう、いい加減、日本に帰って来いと氷川が言っていたわ。 新しい仕事を貴女に依頼したいそうよ? 」

 

氷川とは、百合子と同じガイア教団の幹部である。

表向きの仕事は、サイバース・コミュニケーションという通信大手企業のチーフ・テクニカル・オフィサーをしている。

 

片手を上げ、去って行く百合子。

その後ろ姿を眺めながら、トリッシュの胸にチクリと針で刺した様な小さな痛みが走った。

 

 

 

ニューヨーク州とニュージャージー州との境界を挟んで流れているハドソン川。

都心部から少し離れた場所にあるその河川敷に、一人の少年が釣りをして遊んでいた。

歳の頃は、13歳ぐらいだろうか? ゆっくりと流れる川に釣り針を垂らし、ぼんやりとした表情で、風に流れていく雲を眺めている。

 

良く見たら、少年の頬に大きな絆創膏が貼られ、左腕には湿布が塗布されていた。

学校の階段で、背後からいきなり突き落とされたのだ。

幸い、寸での所で、受け身を取って掠り傷程度で済んだが、下手をすると腕か脚の骨を折っていた。

 

「はぁ・・・・・今頃、姉さん怒っているだろうなぁ・・・。 」

 

ジョナサン・ベッドフォード・フォレストは、三つ歳が離れた姉、テレサ・ベッドフォード・フォレストの鬼女の如き形相を想像して、思わず深い溜息を吐いた。

 

学校で起こった一件は、恐らく担当教師から鬼の様に怖い姉の耳に必ず入っている筈だ。

面倒事になる前に、保健室の窓から抜け出して来たが、その事を知った姉が烈火の如く激怒するだろう事は、確かである。

 

(姉さんは、何事も大袈裟に捉えすぎなんだ。 ナイフで刺されるとか斧で叩き割られるとかなら別だけど、たかが階段から突き飛ばされたぐらいで・・・・。)

 

クラスメートの些細な虐め等、ジョセフにとっては日常茶飯事である。

皆、誰もが彼を恐れて直接ちょっかいを掛けて来ないだけで、陰で悪口を言ったり、あからさまに無視をしたりなどされている。

 

不意に、ジョセフの握っている釣り竿に、手ごたえがあった。

魚が、釣り針に付けた餌に喰いついたのだ。

ぼんやりと物思いに耽っていたジョセフは、慌てた様子で釣竿を引き上げる。

すると、30cmぐらいの大きさをしたアユが川から姿を現した。

 

「・・・・・!!!!!? 」

 

思わぬ獲物に、意気揚々と引っ張り上げようとしたジョセフは、突然、釣竿を放り投げてしまう。

30cm程の大きさをしたアユの尾に、不気味な仮面が咬み付いていたからだ。

 

 

 

 

レッドグレイブ市、繁華街から少し離れた古びた雑居ビルにある便利屋事務所。

 

 

「スリーカード、悪いな? 俺の勝ちだ。 」

 

そう言って、この事務所の主である銀髪の大男、ダンテは、テーブルの上に数枚のカードを無造作に置いた。

その真向いには、小さな妖精・・・ハイピクシーのマベルを肩に座らせた少女、パティ・ローエルが、神妙な表情をして両手に持っているトランプのカードを眺めている。

 

「俺は、勝利の女神と仲が良くてな? 」

 

10歳になったばかりの子供を相手に大人気ない。

何処か得意気な表情をした銀髪の青年が、テーブルの上に置かれているコインの山を自分の所へと引き寄せようとした。

すると・・・・・。

 

「フルハウス。」

 

同じランクのカードが3枚、それとは違う同じ目のカードが2枚。

それをテーブルの上に広げた金髪の少女が、意地悪く目の前で呆けている男を見つめる。

 

 

「パティの勝ちね? まぁ、幸福を運ぶ妖精であるアタシが付いているんだから当たり前なんだけど。 」

 

少女の肩に座る妖精が、してやったりとばかりに薄い胸を張る。

10戦目にして漸く手に入れた勝利だと思ったが、幸運の女神は、中々、便利屋の男に微笑んでくれる気はないらしい。

 

「ホレホレ、ゲームで遊ぶのもそれぐらいにして、お茶の時間にしないか? 」

 

特製マフィンの皿を三つ乗せた盆を持つ、片目、片腕の美少年が、ポーカーに興じる二人の所にやって来た。

チョコレートとカフェオレの甘い香りが三人の鼻腔をくすぐる。

 

「わぁ、美味しそう♡ 」

 

栗の入ったチョコマフィンを目の前に、目を輝かせる少女。

その隣には、砂糖控えめのカフェオレが置かれている。

 

「俺様特製のチョコマフィンだ。 隠し味にラム酒を入れるのがみそだな。 」

 

ラム酒は、サトウキビの糖蜜を発酵させて作る蒸留酒だ。

パウンドケーキやチョコレートスイーツに加えると、豊かな香りが際立つ為、美味しく仕上げる事が出来る。

 

 

「いい加減、その腕どうにかした方が良いんじゃねぇのか? 」

 

嬉々とした表情で、特製マフィンに齧りつく妖精とブロンドの少女を眩しそうに見つめていた悪魔使いに、ダンテが声を掛けた。

 

マレット島での激闘で失ったライドウの義手。

半月近くも片腕の状態で家事や便利屋の仕事等を手伝っている。

傍で見ていてとても不便そうだ。

 

「モリソンに頼んで、知り合いのサイバネ医師に義手を付けて貰ったらどうだ?そうすりゃ、少しは楽になるだろ。 」

「別に気にしてねぇよ。 コッチの方が慣れてんだ。 」

 

実を言うと、サイバネティックアームを装着したのは、至極最近だ。

義手を付け始めたのは、三年前のテメンニグル事件から、それまでは、ずーっと右腕のみで暗殺稼業を続けていた。

それ故、別段不便と思った事は一度として無い。

 

 

その時、来訪を告げる鈴が鳴った。

事務所の出入り口に、甘栗色の髪をした16歳ぐらいの少女とその背後に金色の髪をオールバックに撫でつけた大男。

そして、その大男の背に隠れる様にして13歳ぐらいの少女と同じ髪の色をした少年が立っていた。

 

 

「お? こんな真っ昼間からどうしたんだ? アイザック。 」

 

甘栗色の髪をした美少女の背後に立つのは、高級プールバーで働くライカンスロープのアイザックだった。

何時ものラフな格好ではなく、きちんとスーツとネクタイを着用している。

 

「い、いやぁ・・・・実はですね・・・・。 」

 

心底困り果てた表情で、アイザックがライドウの言葉に応え様とした時だった。

腕を組み、何故か尊大な態度をしている甘栗色の少女が、二人の会話を遮る。

 

「貴方が組織『クズノハ』最強と謳われる17代目・葛葉ライドウ? うちの大事な部下が大分お世話になったみたいね? 」

 

有無を言わせずアイザックを黙らせると、パティの傍らに立っているライドウではなく、ソファに踏ん反り返って興味無さ気に眺めている銀髪の大男、ダンテの傍へと近づく。

どうやら、ダンテの事を闇社会で人修羅と呼ばれ恐れられている、17代目・葛葉ライドウと勘違いしているらしい。

 

「ち、違いますよ!お嬢! ライドウさんはソイツじゃ無くて、あの女の子の傍に居る片腕の人です。 」

「え? あの貧相な餓鬼がそうなの? 」

 

慌てて、視線をダンテからパティの座っているソファの傍らに立つ片目、片腕の少年へと向ける。

 

「えー、コホン。 貴方が組織『クズノハ』最強の召喚術士、17代目・葛葉ライドウ? うちの大事な部下が大分お世話になったわね? 」

 

わざとらしく咳払いを一つして、仕切り直す少女。

彼女の名前は、テレサ・ベッドフォード・フォレスト。

ハーレム地区を中心に様々な事業を展開している資産家、フォレスト家の家長代理を務めている。

又、亜人種・ライカンスロープを保護しており、ハーレム地区に住むライカンは、皆、フォレスト家の庇護の元、一般人と同じ様に生活を送っていた。

 

『貧相な餓鬼』という不敬極まりない言葉に違和感を覚えつつ、立ち話も何だと、テレサ達を来客用のソファに座らせる事にした。

何時もの癖で、テレサ達にコーヒーを出すライドウ。

渋みと何処となく甘味が香るカフェオレを前に、フォレスト家、家長代理の少女は、尊大な態度を崩す事無く、自己紹介を始めた。

 

ライカンが巻き込まれた事件で知り合いになったアイザック。

その隣に座るのは、テレサの三つ歳が離れた弟・ジョセフ・ベッドフォード・フォレストだ。

本来ならば、彼が家長を継ぐべきなのだが、ジョセフは13歳と未だ幼い。

それ故、姉であるテレサが家長代理として、フォレスト家が所持する事業、全てを任される事になった。

 

 

「そんで? 俺に何の用事で此処に来たんだ? 」

 

彼女がこの便利屋事務所に来た理由は、何となくだが察しが付く。

恐らく、自分をフォレスト家が所属するKKK団に引き込みたいのだろう。

 

「貴方をヘッドハンティングしに来たの。 是非ともうちの弟、ジョセフの番になって貰いたいのよ。 」

 

案の定、テレサは、三つ歳が離れた弟、ジョセフの番になって欲しいと言って来た。

予想通りの言葉にライドウは、内心溜息を吐くと、アイザックの隣に座る少年を見つめる。

何処となく姉と容姿が似た少年は、彼女が話している最中、終始居場所が無さそうに俯いていた。

恐らく、大分強引なやり方で此処に連れて来られたのだろう。

良く見ると、怪我をしているのか右頬に絆創膏と左腕には包帯が巻かれている。

 

「見ての通り、うちの弟は何者かに命を狙われているの。 先日もこの子が通う学校の階段で、誰かに突き落とされたのよ。 」

 

1週間前に実父・ジョナサンが不慮の事故により死亡した事を始まりに、弟が正体不明の人物に怪我を負わされる事件が頻発した。

学校の送り、迎えは部下に任せられるが、学校内ではそうはいかない。

今は、軽い怪我程度で済んでいるが、暴行は段々とエスカレートしている。

 

 

「成程、それで君は俺にこの子の番になって、守って欲しいという訳か。 」

 

砂糖とミルク抜きの苦いブラックのコーヒーを一口啜り、ライドウは、アイザックの隣で下を向いたまま黙っている少年に再び視線を向ける。

 

「そうよ。 貴方程の術者なら、私の弟に危害を加えている連中を見つけ出すなんて容易いでしょ? 」

 

甘いカフェオレを一口飲んだ、テレサが隣にいる部下のアイザックに目配せする。

困った様子で、太い眉根を八の字に寄せた金髪の大男は、銀のアタッシェケースを机の上に置いた。

 

「取り敢えず、100万ドル用意したわ。 勿論、貴方が望むなら、この倍は出してあげても良いわよ? 」

 

100万ドル、日本円に換算して1億3千万前後の金額である。

エナメルケースにぎっしりと詰まった新品の札束を目の前に、パティは思わず口の中のマフィンを詰まらせそうになった。

 

「・・・・断る。 俺は、番を作るつもりは無い。 」

 

しかし、ライドウの返事は予想外だった。

鋭い視線を、真向いに座るテレサへと向ける。

 

「それに、君は番という存在を大分、誤解している。契約者はあくまで俺だ。つまり、君の弟は俺の下部となり、僕であるならば、それ相応の実力を持たなければならない。 」

「・・・・・なんですって? 」

 

自分の弟が、動作不良の欠陥品だと言われたみたいで、テレサの表情が忽(たちまち)ち険しくなる。

そんな、姉に対し、ライドウは尚も辛辣な言葉を続けた。

 

「KKK団の一人ならそれぐらい知っているだろ? 召喚術士の番とは、我が身を盾とし、何時いかなる状況に負われたとしても、術士の命を優先させる義務がある。 選ぶのは俺であって君の弟じゃない。 選択権は俺にあり、当然、使い物にならないお荷物は切って捨てる。 」

 

術士の番とは、金でカタが付く問題では無いのだ。

それに、ライドウは日本の組織『クズノハ』の中でも、長である天照大神を守護せし、”葛葉四家”の一人だ。

大金を幾ら積まれたとはいえ、うんと頷く道理も無い。

 

「ば、馬鹿にしないでよ! こう見えても私は、アンタと同じ召喚術士なんですからね! 番と術士の関係ぐらい知ってるわよ! 」

 

怒り心頭のテレサが、顔を真っ赤にして立ち上がる。

B級とはいえ、テレサも一応、召喚術士(サマナー)である。

番と術士の力関係ぐらい承知はしていた。

そして、自分がどんな間抜けな申し出をしている事も理解している。

理解はしているが、それを強引にでも押し通さなければならない状況なのだ。

 

「う、うちの弟は、才能があるのよ! この歳で医術師(ドクター)と詠唱師(ゲサング)の役職を習得してるんだからね! それに・・・・。 」

「もう、止めようよ? 姉さん。 」

 

顔を赤くして捲し立てるテレサを、弟のジョセフが止めた。

俯いていた顔を上げる。

その表情は、何処か諦めたかの様な、疲れた顔をしていた。

 

「この人の言っている事は正しい。 だから、余計に僕達が惨めで恥ずかしいよ。 」

 

溜息混じりにそれだけ言うと、ジョセフはソファから立ち上がり、事務所の出入り口へと向かう。

 

「ま、待ちなさい!ジョセフ!! 」

 

その背を追い掛け、引き留めようとするテレサ。

しかし、そんな姉に振り返る事無く、ジョセフは無情にも事務所から外へと出てしまう。

 

「どうやら、弟の方がお利口さんだったみたいだな? 」

 

そんな姉弟のやり取りを終始黙って見ていたダンテが、皮肉な笑みを浮かべて言った。

一瞬、怒りの籠もった視線を、この事務所の主である銀髪の男へと向ける。

しかし、すぐに自分が情けなくなり、唇を噛み締めて俯いた。

 

「お、お嬢・・・・・。 」

 

いたたまれ無くなったアイザックが、悔しそうに俯く年若い主に声を掛ける。

 

テレサは、只、弟のジョセフを護りたいだけだ。

しかし、今の自分は、フォレスト家の事業を一手に任され、日々、馬車馬の如く各支店を走り回らなければならない。

今は亡き、父、ジョナサンの遺志を継ぐのに必死なのだ。

その為、弟の身辺まで手が回らない、というのが今の現状だ。

 

 

「今の所は帰るわよ。 でも、私は絶対に諦めないから。 」

 

テレサは、それだけ言うとさっさと便利屋事務所から出て行く。

その後を、大金が入ったアタッシェケースを抱えた金髪の大男が続いた。

 

 

 

テレサとアイザックが出ていた事務所の戸口を眺めるライドウ。

そんな悪魔使いの背に、大分、機嫌が悪そうな男の声が掛けられる。

 

「お節介のアンタにしちゃ、随分と手荒く追い返したな? 」

 

未だにアイザック達、ライカンスロープが働くプールバーの手伝いをしているのだ。

それなりに思う所もあるだろうに、この悪魔使いにしては珍しく、けんもほろろな対応であった。

相棒(パートナー)になる事は断ったとしても、何かしら理由ぐらいは聞くだろうと思ったのだ。

 

「金で解決出来る問題じゃないからな。 」

 

ライドウは、一つ溜息を吐くと、全く手を付けられていないカフェオレのマグカップを盆の上に乗せた。

 

不図、脳裏にテレサの弟、ジョセフの姿が浮かぶ。

13歳という年齢の割には、随分と冷めた態度をしていた。

丁度、自分の愛息子、明と同じぐらいの歳だ。

自然とあの悲惨な出来事を思い出しそうになり、慌てて頭を振って打ち消す。

 

 

「ねぇねぇ、つがいって何? 」

 

マグカップを流しで片付け、事務所内に戻って来たライドウに向かってパティが言った。

魔導に関しては、全く興味がないが、先程、テレサが言った『番』という響きが気になったのだ。

 

「うーん、簡単に説明すると主である契約者を護る用心棒兼貯蔵タンクってところかな? 特に、俺達召喚術士(サマナー)は、高位悪魔を召喚する時に膨大な魔力を行使するから、すぐガス欠になっちまうんだ。 それを補うのが”番”と呼ばれる存在なんだよ。 」

 

故に、番として選ばれる人物は、魔力&実力共に優れた人物でなければならない。

特に、魔力特化型であるライドウにとっては、絶対外す事が出来ない重要なポイントで、そのどちらかが欠けていると、直接死に繋がる。

 

「良いのか? 今のままで・・・・。 」

 

甘いカフェオレを一口飲んだダンテが、パティの隣に座るライドウを見つめる。

 

ライドウの番は、先の”マレット島事件”で、主である悪魔使いを庇って死亡した。

魔力特化型であるライドウは、番がいなければ魔力を循環出来ず、忽ち(たちまち)衰弱してしまう。

今の所、そんな様子は見られないが、体力が中々戻らないのはその為だろう。

 

 

「良いんだよ・・・番が居なくたって何とかなってんだから。 」

 

ダンテが何を言いたいのか、何となく判る。

次の番を作らなくて良いのかと、聞きたいのだ。

 

長年、連れ添った『志郎』を失った痛手は、未だ癒える事は無い。

否、今迄、尽くしてくれた番達は、己の無力さが故に死なせてしまったのだ。

これ以上、失う痛みを味わいたくない。

 

 

 

ハドソン川河川敷。

そこに、一人の少年が釣りを楽しんでいた。

フォレスト家の家長、ジョセフ・ベッドフォード・フォレストである。

何時も一人で釣りをしている彼ではあるが、今回ばかりは、少し違っていた。

 

 

「姉さんに酷い事言っちゃったかな? でも、あの人の言い分は正しいし・・・・。 」

 

何もかもを金で解決するテレサのやり方が、気に喰わなかった。

 

魔導結社の一つであるKKK団の人間であるジョセフは、幼い頃から魔導の英才教育を受けている。

それだけに、姉がどれだけ支離滅裂な提案をしているのか、少年にも理解が出来た。

もし、ジョセフがライドウの番になれば、立場はあちらが上である事は容易に想像出来る。

主に身を護って貰う番など、聞いた事もなかった。

 

「君はどう思う?ジンニー・・・。僕は酷い奴なのかな? 」

 

自分の傍らにいるソレに向かって、ジョセフは声を掛ける。

当然、ソレは応えない。

ウネウネとゲル状の躰を蠢(うごめ)かせ、無機質な仮面を静かに流れていく川に向けているだけだ。

 

「姉さんの気持ちも判るんだ・・・僕を護る為に必死なんだよ。 姉さんだって頭の中では、自分が間違っている事ぐらい理解してる・・・でも、それ以外に方法が思いつかないんだ。 」

 

頼れる大人がいない。

否、信頼できる大人が居るには居るが、彼等の力では到底解決出来ない大きな問題を、この姉弟は抱えている。

裏社会で、”人修羅”と呼ばれ、三体の最上位悪魔(グレーターデーモン)を操り、五大精霊魔法を駆使する、17代目・葛葉ライドウ以外に頼る以外ないのだ。

しかし、当の”人修羅”は、他組織の人間である。

KKK団内で起こった問題は、同じ身内である彼等が解決するのが道理。

世間の事柄を右も左も知らない少女にとって、それは余りに残酷だった。

 

「・・・・お前は、姉を救いたいのか? 」

 

流れる川を眺めていたソレ・・・ジンニーが言った。

 

ジンニーという名前は、ジョセフがソレに付けてやったモノだ。

本当の名前は知らない。

勿論、ソレが何処から来て、何故、少年に接触したのかも分からない。

しかし、そんな事、ジョセフにはどうでも良かった。

 

「助けたいよ・・・でも、僕の力じゃ無理だ。自分の事で手一杯だし、とても姉さんを助ける余裕なんて無い。 」

 

否、本当は判っている。

自分がしっかりして、父の遺志を継ぎ、事業を引き継げば全て丸く収まる。

しかし、ジョセフにその技量も、ましてや度量も無かった。

 

 

「あ、拙い・・・もうこんな時間だ。 」

 

父親から貰った懐中時計をポケットから出したジョセフは、14時をとっくに過ぎているのを確認した。

既に午後の授業は始まっている。

こっそりと教室に戻りたいが、学校に行けば陰湿な嫌がらせが待っている。

 

 

(学校に行きたくないよ・・・・このまま此処で時間潰しちゃおうかなぁ? でも、後で姉さんにバレると面倒だし・・・・・。)

 

ジョセフは、クラスの同級生から虐めを受けていた。

彼が、この辺一帯の資産家である事を知っている為、直接、暴力や悪口を言われる事は無いが、その代わり、鞄を隠されたり、あからさまに無視などもされる。

階段から突き落とされたのだって、虐めグループの誰かがやったのかもしれない。

 

一度、姉のテレサに「学校に行きたくない。 」と、言ってみた事があった。

すると姉は、逃げている、フォレスト家の男子の癖に情けないと、まるで生まれたばかりの雛鳥を巣から叩き落す様な事を言われた。

確かに、姉は強いのかもしれない。

でも、自分は違う。

 

 

「・・・・お前の願い叶えてやろう。 」

「え・・・・・? 」

 

まるで自分の心の中を探られたかの様なジンニーの言葉に、ジョセフは目を見開く。

釣竿を眺めていた視線を、隣にいるであろう仮面の悪魔へと向けるが、そこにジンニーの姿は影も形も無かった。

 

 

 

マンハッタン区、北部に位置する繁華街。

そのテナントビルの一区画に、ライカン達が働く会員制の高級プールバーがあった。

 

「昨日は、悪かったな。 」

 

店の床にモップ掛けをしていた片腕の悪魔使いが、店内のテーブルを拭いている巨漢の男に向かって言った。

 

「別に気にしないで下さい。 コッチもライドウさんに大変失礼な事をしたんですから。 」

 

アイザックは、太い眉根を八の字にして苦笑いを浮かべた。

 

テレサの我儘は何時もの事だ。

小さい頃は、それが原因で周囲の人間達を大分、辟易させていた。

今は、丸くなったとはいえ、フォレスト家の責務を全うする為か、性格が昔以上にきつくなっている。

 

「ライドウさん、俺等、アンタの事が好きだ。 赤の他人・・・しかも、人間じゃないライカン達の為に一生懸命になってくれる・・・アンタ見てると、死んだ親父さんが生き返ったんじゃないかと思うんだ。 」

 

親父さんとは、フォレスト家の前家長、ジョナサン・ベッドフォード・フォレストの事だ。

各地を追われ、ハーレム地区へと流れて来た彼等、ライカン・スロープ達を心から受け入れ、住む場所と働く仕事場を提供してくれた。

 

「アンタにとっちゃぁ迷惑かもしれないが、本音を言うと、俺達もお嬢と気持ちは同じなんだよ。 アンタがウチに来てくれたらきっと良くなるんじゃないかって。 」

 

家長であるジョナサンが死んだ事によって、現在、フォレスト家は、同じKKK団の一つであるマーコフ家と熾烈な覇権争いをしている。

金と暴力で強引に推し進めるマーコフ家の家長、ルチアーノのやり方に、フォレスト家の家長代理であるテレサは、真向に否定し、戦う姿勢を崩していない。

同じ組織内のルッソ家の家長、ジョルジュ・ジェンコ・ルッソが二人の仲を取り持ってはいるが、それも何時まで続くか分からない。

 

 

「・・・・すまない・・・・俺は・・・・・。 」

「良いんすよ。 アンタは大組織の幹部だ。立場的に色々難しい事ぐらい俺等だって判っていますよ。 」

 

だから、昨日の件は全て忘れて欲しい。

俯くライドウに向かって、アイザックが困った様な笑顔を浮かべた。

 

そんな会話をしている時であった。

何者かが店内の戸口を静かに開ける。

人の気配を察知したライドウが、出入り口の方向を見ると、そこに甘栗色の髪をした少年、ジョセフが立っていた。

 

「坊ちゃん、何か御用ですか? 」

 

同じく気配を感じたアイザックが、ドアに隠れる様にして店内の様子を伺っている少年に声を掛ける。

 

「・・・・・でぃ・・・ディンゴはいるかな? 」

 

当初、戸惑っていたジョセフは、逡巡しながらもこの店のオーナーの所在を聞いて来た。

 

ディンゴは、アイザック達と同じライカンスロープである。

姉、テレサの右腕を務めており、此処以外に何軒か飲食店や風俗関係の店を任されている。

 

「ディンゴさんなら、お嬢と一緒にタイムズスクエアに言ってますよ? 改装工事の経過観察に行くって・・・・。 」

 

ハーレム地区でも有数な資産家であるフォレスト家は、建築業にも手を広げている。

現在、タイムズスクエアにあるブロードウェイミュージカルなどを上演するシアターの改装工事を任されていた。

ディンゴは、主であるテレサと一緒に、その進捗状況を確認しているのだ。

 

「そ、そうなんだ・・・・・。 」

 

ディンゴの不在に、残念そうに俯くジョセフ。

すると、店の中に設置されているテレビから、ニュース番組の音声が流れて来た。

三人が振り返ると、マンハッタン近郊をドライブしていた4人家族の乗る乗用車が、運転操作を誤り、ファーストフード店に突っ込んだという、内容のニュースが放送されていた。

幸い、店内は客がまばらで、乗用車に乗っていた家族も軽症で済んだらしい。

 

 

「う・・・嘘だ・・・そんな・・・。 」

 

テレビ画面に表示されている事故を起こした家族の名前を見たジョセフが、呻くように呟く。

見ると目を見開き、顔面は死人の如く蒼白になっていた。

 

「何か心当たりでもあるのか? 」

 

微かに震える少年。

その尋常ではない様子に、ライドウが眉根を寄せる。

 

「ど、どうしよう・・・・僕だ・・・・僕のせいだ・・・・。 」

 

激しい後悔と不安、そして同じぐらいの恐れ。

少年から伝わる例え様もない負の感情。

優れた精神感応力でそれらを感じ取ったライドウは、全てを悟り、やれやれと溜息を吐く。

 

 

「お友達を止めたいなら、手伝ってやるぞ? 」

「・・・・・・!!? 」

 

予想外の悪魔使いの言葉に、弾かれたかの如く顔を上げる少年。

何で・・・・何でこの人は、アレの存在を知っているんだ?

 

「アイザック、テレサお嬢ちゃんの居場所は判るか? 」

「あ、はい。 一応、ウチが改装工事をしている劇場の場所は知ってますけど? 」

 

4人一家の自動車事故と、テレサの関係がイマイチ分からない。

訝し気な表情をするアイザックに、急いで車を回す様に伝えると、ライドウは有無を言わせずジョセフの腕を掴んだ。

 

「逃げるのは悪い事じゃない。 でも、自分がやった事に対して何の責任も取らずに頬かむりするのは、最低な奴がする事だ。 俺の言っている意味、分かるな? 」

 

自分の腕を掴む、力強い悪魔使いの手。

自分よりもそれ程、年齢は離れていない様に見えるのに、この悪魔使いはジョセフよりも、遥かに年上の様に感じる。

 

「僕は・・・・CSI(超常現象管轄局)に捕まるんですか? 」

「さぁな・・・・それは君の行動次第だ。 」

 

この悪魔使いは、自分がした行いを全て承知している。

どう足掻いても逃げ切れない状況に、諦めたのか俯くジョセフ。

そんな甘栗色の髪をした少年を、ライドウは困った様に苦笑を浮かべて優しく見つめた。

 

 

 

「あの悪魔・・・・ジンニーと出会ったのは、一週間ぐらい前でした。 」

 

テレサが居るタイムズスクエアの劇場に向かう道中、アイザックが運転する車の中で、ジョセフはポツリポツリと事の経緯を話し始めた。

 

その日、ジョセフは何者かに学校の階段から突き落とされた。

犯人は、知っている。

乗用車で、ファーストフード店に突っ込んだ四人家族の次男坊だ。

幸い、脚と頬を擦り剥く程度の軽症で済んだが、姉のテレサや陰湿な虐めをしてくる連中のせいで気が重い。

こっそりと保健室の窓から抜け出したジョセフは、気晴らしにハドソン川の河川敷で釣りをする事にした。

釣りは、彼にとって唯一、嫌な事を忘れさせる行為の一つだ。

ゆっくりと流れる川を眺めながら、自分が一番幸せだった頃の出来事を思い出す。

何時も仕事で忙しい父・ジョナサンの代わりに一緒に遊んでくれたのが、実姉テレサだった。

引っ込み思案で、内向的なジョセフは、当然、友達と呼べる存在がいない。

何時も孤独だったジョセフを慰めたのが、姉のテレサだった。

当時は、姉も今と違って優しく、病弱な母が入院している病院に、良く二人でお見舞いに行った。

そんな、取り留めも無い過去の思い出に浸っていたジョセフの目の前に、突然、アレが現れたのだ。

 

 

「最初は、ビックリしました。 慌てて誰かに助けを求めようとしたんです。 でも生憎、周りに人はいませんでした。 」

 

偶々、釣り上げた魚の尾に、その変な仮面は喰いついていた。

驚いて釣竿を放り投げるジョセフ。

陸に投げ出された仮面は、瞬く間に魚を呑み込むと、ゲル状の肉体を持つ悪魔、本来の姿へと変わった。

 

「よ・・・良く、無事でいられましたね? 」

 

車を運転するアイザックが、バックミラー越しに後部座席に座る甘栗色の髪をした少年を見つめる。

下に俯くジョセフは、怯えていた先程までの態度とは違い、何処か冷静だった。

 

「・・・・ソイツ、マグネタイトを失って大分弱ってたんです。 逃げ出した僕に追いつけない程・・・・あの時は、ちょっと可愛かったなぁ。 」

 

よちよちと、覚束ない足取りで必死に逃げ出した自分の後を追い掛ける悪魔。

流石に様子がおかしい事に気が付いたジョセフは、暫く立ち止まってその悪魔の様子を伺った。

よくよく見ると、仮面は所々、罅割れ、ゲル状の躰も、実体化が不安定な為か徐々にしぼんで来ている。

一目で、今にも死にそうな事が分かった。

 

「何故、追い払わなかった? 君は詠唱師(ゲサング)の資格を持っているんだろ? その気になれば、致死説を唱えて殺す事も出来た。 」

 

平たく流れる景色を眺めながら、ライドウは隣に座る少年を一瞥する。

 

「・・・・弱っているソイツを見てたら、何だか自分みたいだと思って・・・殺す事が出来ませんでした。 」

 

生きる為に、必死に足掻いているその悪魔を見ていたジョセフは、周りから「怪物」と疎まれ、クラスメート達から虐められる自分の姿と重なった。

 

「だから、自分の持つマグネタイトをその悪魔に分けてやったという訳か。 」

「はい・・・・至極僅かな量ですけど・・・。 」

 

延命するだけがやっとな量。

それでも、魔導士として未熟なジョセフが上げられる、精一杯のマグネタイトである。

それ以上を与えると、流石に少年の命に係わる。

 

「な、何だってそんな真似を? そいつは坊ちゃんの命を狙って来たんでしょ? 下手したら自分が喰われちまうじゃないですか? 」

 

怒った様子でアイザックが言った。

当然である。

その悪魔が、ジョセフを喰らう為に、姿を現したのは間違いない。

幾ら弱っていたとはいえ、自分を殺そうとした怪物を生かす理由が、アイザックには分からなかった。

 

「・・・・・僕、あの時、死のうと思ったんだ・・・こんな辛い思いをしてまで生きている理由が分からなくなった・・・・。 」

 

唐突なジョセフの言葉に、アイザックが口を噤(つぐ)む。

隣に座るライドウも、黙って少年の話を聞いていた。

 

「普通に生きたかった・・・・普通の人間に生まれてくれば、皆優しくしてくれるかなぁ・・・姉さんだって、普通の家庭に生まれれば、僕に辛く当たらなくなるかなぁ・・・・。 」

 

 

ハーレム地区有数の資産家に生まれたジョセフ。

周囲の人間達から見れば、とても恵まれた環境で育っていると思うだろう。

しかし、魔導士の一族で生まれた事が、KKK団と呼ばれる秘密結社(フリーメーソン)の一つに所属しているという事が、この少年にとって、不幸の始まりであったのである。

 

 

「ジン・・・千夜一夜物語のモデルになった悪魔か・・・・伝承に知られるジンは、目に見えない煙の様な気体の姿で、善と悪の二種類いるそうだ・・・どうやら、君が会ったのは、悪い方のランプの魔神だったらしいな。 」

 

傍らにいる少年から、再び視線を流れる景色へと戻したライドウは、呟く様に言った。

 

ジンとは、アラブの伝承から生まれた人ならざぬ存在で、精霊や妖怪、または魔人など、一群の超自然的な生き物の総称とされている。

人間に悪人と善人がいる様に、ジンにも善なる存在と悪なる存在、ムスリム(イスラム教の信者)と非ムスリムの二つの種類に分類される。

善なる存在は、人に取り憑くと聖者となり社会に利益をもたらすが、悪の存在が取り憑くと狂人と成り代わり社会に害を及ぼす。

ジョセフが出会ったのは、人を狂気に貶める悪なる存在であったのだ。

 

 

 

 

ニューヨーク、タイムズスクエア。

アメリカ合衆国ニューヨーク市マンハッタン区ミッドタウンにある繁華街・交差点の名称である。

観光地としてもかなり有名で、ブロードウェイミュージカルが上演される各シアターが点在している。

そのうちの一つ、老朽化が進み、リフォーム途中の建物の中に、テレサとその右腕であるディンゴがいた。

 

「社長・・・・・。 」

「分かってる・・・全く、今日は不愉快な日だわ。 」

 

ライカンの中でも一番、鼻が効くディンゴが、周囲に漂う不穏な空気を敏感に嗅ぎ取る。

大袈裟に溜息を吐くテレサ。

背広のポケットから、手の中に納まるぐらいの大きさをしたスマートフォンを取り出す。

 

「そこに隠れているのは判っているのよ? さっさと出て来たらどうなの? 」

 

部下に建設作業員達を避難させる様に合図すると、テレサは舞台の物陰に不機嫌そうな声を掛けた。

暗闇からのそりと現れるソレ。

建設作業員達から、驚きの声が上がる。

 

「社長!! 」

「余計な手出しは無用よ。 今日は物凄く虫の居所が悪いの。 コイツで憂さを晴らさせて貰うわ。 」

 

自分の前に出ようとしたディンゴを下がらせ、テレサは冷酷な笑みを口元に浮かべる。

曲がりなりにも、自分はハーレム地区を仕切る秘密結社(フリーメーソン)の幹部だ。

下級悪魔如きが、子供と思って侮ったら、痛い目に会う事を教えてやる。

素早く、何桁かの数字を手の中のスマートフォンに打ち込む。

すると、蒼白く光る巨大な法陣が現れ、中から魔獣”オルトロス”が姿を現した。

 

 

 

「あ、あのぉ・・・・やっぱり、こういうのは理不尽だと思うんすよ。 」

 

テレサ達がいる劇場前に到着したライドウ達、乗用車から降りる悪魔使いの背に、アイザックの遠慮がちな声が掛けられた。

 

「理不尽? 」

「そ、そうっす! 坊ちゃんは、只辛くて苦しくて寂しいからこそ、その悪魔を友達にしようとしただけっす! だから、坊ちゃんがやる事は無いッス! 俺が代わりにその悪魔と戦います! 」

 

そう、ジョセフは唯、自分の苦しい状況を理解してくれる友達が欲しかった。

亜人として生まれ、いわれなき迫害を受けて育ったアイザックは、何となくだが、ジョセフの気持ちが分かる。

故に、悪魔を殺す様に強要するライドウの態度が納得出来なかった。

 

「何処にも居場所が無い辛い気持ちは、俺だって判る。 さっきも言ったとは思うが、その過酷な環境から逃げ出す事は悪い事じゃない。逆に自分の身を護る最善の措置だ。 しかし、 第三者に他者を傷つける様に命じ、その責任を全て押し付け逃げる事は、最も下劣なやり方だ。 それでは、この子の為にもならない。 」

 

ジンニーは、「願いを叶えてやる。 」とジョセフに言ったらしいが、本心で思った事なのかは分からない。

否、知能が低い下級悪魔が、己の本能を押し殺して生きる事は不可能だ。

もしかしたら、それは方便で、自分の食欲を満たすというのが、本音なのかもしれない。

ジョセフは、ジンニーに自分の置かれている辛い状況を話している。

ジョセフを虐めていたクラスメートの一人を襲ったのが、何よりもの証拠だ。

そして、今度は、姉のテレサを襲おうとしている。

 

 

「ジョセフ・・・・君は頭が良い子だ。 俺が何を言いたいのか、分かるな? 」

「・・・・・はい。 」

 

普段腰に刺してあるナイフケースから、銀色に光るアセイミナイフを取り出す。

美しい装飾が施された短剣。

地霊ドワーフが造り出した魔除けの短剣を差し出され、甘栗色の髪をした少年は、躊躇う事無くソレを受け取る。

 

逃げる事は悪い選択ではない、しかし、自分の恨んでいる相手を第三者である悪魔に襲わせ、その責務を全て、その怪物に負わせるのは卑怯者がする事だ。

この悪魔使いは、ジョセフにそうなって欲しくないからこそ、敢えて心を鬼にして、ジンニーを始末する様に言っている。

 

 

 

オルトロスの長く太い尾が、仮面の怪物を薙ぎ払う。

機材等が置かれている舞台の隅へと吹き飛ばされる悪魔・・・・・ジンニー。

機材を薙ぎ倒し、壁に激しく全身を打ち付ける。

 

「ふん、 喧嘩を売る相手を間違えたみたいね? 」

 

B級の召喚術士とはいえ、れっきとした名家、フォレスト一族の人間だ。

こんな低級程度の悪魔に後れを取る程、落ちぶれてはいない。

腰に手を当て、無様に這いつくばる悪魔を見下ろす。

 

一方、ジンニーの方は、不安と焦りで恐慌状態にあった。

先程、4人家族が乗っている乗用車を襲撃したが、思う様にマグネタイトを回収出来なかった。

喰らおうとした瞬間に、警官隊が来て邪魔された。

仕方なく、その場を撤退し、次にジョセフの話に出て来た姉のテレサを襲った。

相手は、年端もいかない少女一人。

おまけに目を付けていた少年より、若干劣るが中々、純度の高いマグネタイトを持っている。

憑依先の肉体としても申し分ないだろうと、事を起こしたが、相手は自分が想像する以上に手強かった。

 

「ううっ・・・・・俺を助けてくれ。 」

 

よろよろと起き上がったジンニーが、テレサに命乞いをする。

 

「はぁ? 一体何を言っているのか分からないんだけど? 」

 

勝手に自分を襲っておいて、立場が危うくなったら命乞い。

余りにも無様過ぎる悪魔の態度に、甘栗色の髪をした少女は、大袈裟に肩を竦める。

 

「もし、助けてくれたらお前の願いを叶えてやろう。 」

 

勿論、この言葉はジンニーの虚言だ。

力弱きジンニーは、弱肉強食な魔界の世界から、この現世へと逃れて来た。

しかし、当然、狩りをしなければ彼等悪魔が生きていく上で必要不可欠な栄養源・・・マグネタイトは手に入らない。

それ故、この世界に来て初めて覚えた処世術が、「願いを叶える。」という、事実無根の妄言であったのだ。

 

「へぇ? そうなの・・・・なら、私に永遠の若さと命をくれないかしら? 」

 

下僕である魔獣を一旦下がらせ、テレサは、悪戯っぽい微笑を浮かべる。

部下のディンゴが何かを言い掛けたが、そのまま作業員の避難を続ける様に、目配せした。

 

「無理だ・・・・それは出来ない。 」

 

只の人間に、過ぎた力を与えるなど、上位悪魔でも極一部しか使えない。

当然、下級悪魔に過ぎないジンニーが、ソレを出来る筈がない。

 

「そう・・・・なら、世界中の宝石が欲しいわ。 一度、宝石のお風呂に入ってみたいの。 」

 

そんな事、この悪魔に出来ない事ぐらい、テレサも承知の上だ。

しかし、只、始末するだけではつまらない。

少しの間だけ、この悪趣味な遊びに付き合ってやろう。

 

「駄目だ・・・気が乗らん。 」

 

予想通りの悪魔の返答。

テレサは、やや芝居がかった様子で態と落胆すると、額に手を当て次の願い事を言った。

 

「それじゃ、ドレスを一着くれないかしら? 」

「駄目だ・・・・お前の為になら・・・・・。」

 

そう言い掛けたジンニーの躰を、オルトロスの尾が吹き飛ばす。

情け容赦なく、殴り倒される仮面の悪魔。

再び、壁に叩き付けられ、ズルズルと力無く床に倒れ込む。

 

「馬鹿な悪魔ね・・・・命乞いするなら、もう少しまともな事言ったらどうなの? 」

 

まるで路傍の石でも見るかの如く、無感情で、床に這いつくばる悪魔を見下ろす。

何処でこんな馬鹿な言葉を覚えたのかは知らないが、命を助けて欲しいのならば、素直に言えば良かったのだ。

まぁ、素直に言ったところで、助ける気持ちなど更々ないが。

 

「ううっ・・・俺に出来る事は、人間を喰うだけ・・・・それ以外の願いは叶える事ができ・・・・。」

「最初から判っているわ。 これは、遊び・・・・最初にも言ったでしょ? 私の憂さを晴らす為の遊びだって・・・・。 」

 

無知で愚かな悪魔に、死刑宣告を下し、僕のオルトロスに止めを刺す様命令する。

と、突然、改装途中の劇場内に誰かが入って来た。

テレサの三つ歳が離れた弟・・・・ジョセフだ。

右手には、銀色に光るアセイミナイフが握られている。

 

「ジョセフ・・・・?何故、アンタが此処に? 」

 

この時間帯は、学校に居る筈だ。

予想外の弟の登場に、テレサは驚いて目を見開く。

 

「俺が連れて来た。 」

 

そう言って、ジョセフの背後からもう一人の人物が現れた。

人修羅こと、17代目・葛葉ライドウである。

 

「人修羅・・・? アンタがどうして弟と一緒にいるの? て、いうか一体どういう事なのか説明して欲しいわね? 」

 

敵意剥き出しで、片腕の美少年を睨みつける。

 

「細かい説明は後だ。 悪いがその悪魔の始末は、俺達に任せてくれないか? 」

「何ですって? 」

 

ライドウの言葉に、改めてオルトロスに押さえつけられている仮面の怪物を見下ろす。

この悪魔と弟との関係が分からない。

まさか、この怪物を弟が喚び出した?

否、有り得ない。

残念ながら、弟のジョセフに自分と同じ、召喚術士(サマナー)の才能は無いのだから。

 

「ジョ・・・・ジョセフ? 」

「ごめんよ?ジンニー・・・君は、何も悪く無いのにね。 」

 

疑問符だらけの姉を他所に、ジョセフは銀色に光る短剣・・・・アセイミナイフを握り締めると、魔獣に押さえつけられている悪魔の前に跪く。

 

少年の言う通り、この悪魔は何も悪くない。

彼は、ただ空腹を満たす為に人間を襲っただけだ。

自分の与える僅かばかりのマグネタイトだけでは、ジンニーに苦しみを与える事はあれど、決して幸せにする事は出来ない。

全ては、少年の身勝手過ぎる理由が原因なのだ。

自分の苦しみを理解してくれる友達が欲しい。

それは、思考力が劣る下級悪魔に求めるモノでは無い。

 

 

両目に涙を溢れさせ、震える手で短剣を握る。

狙うのは、悪魔の心臓たる仮面。

それを破壊すれば、この哀れな怪物は生命活動を停止する。

 

「ジョセフ・・・・・俺とお前は友達だった筈だ・・・・友達とは、助け合うモノじゃないのか? 」

「そうだね・・・・確かに君にそう教えた・・・・でも、それは人間同士で成立する関係だ。 君と僕とじゃ、ソレは成り立たない。 」

 

無慈悲に握り締めていたナイフを振り上げ、仮面に切先を突き立てる。

断末魔の悲鳴を上げる悪魔。

硬く閉じたジョセフの目から涙がとめどなく流れ落ちた。

 

 

 

 

翌日、レッドグレイブ市、便利屋事務所。

 

「んで? 結局、その後どうなったんだよ。 」

 

不機嫌そうな様子を隠す事も無く、ビリヤード台の前に立つ銀髪の青年は、両手に持ったキューで玉を打つ。

白いボールが8と書かれた青い玉に当たり、真っ直ぐにポケットへと落ちた。

 

「別に・・・・悪魔を倒した後は、普通に帰ったぞ? 」

 

濡れた布巾で、黒檀のデスクを拭いていたライドウが、銀髪の青年・・・・ダンテにそう応える。

 

あの後、仮面の悪魔・・・・ジンニーを始末したジョセフは、気を失ってしまった。

余程、神経を張りつめていたらしい。

ジンニーを自分の手で殺した事で、緊張の糸が解け、気絶してしまったのだ。

幾ら魔導の知識があるとはいえ、13歳になったばかりの少年。

少しばかり、酷な事をしてしまったのかもしれない。

 

 

「事情をテレサに話したら、ジョセフを暫く休学させると言っていた。まぁ、当然と言えば当然だな。 」

 

デスクの上を粗方片付け終えたライドウが、不貞腐れた様子でビリヤードをしている青年の方を振り向く。

ダンテが不機嫌な理由は、大体想像が出来る。

要は、自分を蔑ろ(ないがしろ)にして、悪魔退治をした事が気に喰わないのだ。

 

「アンタは、これで全てが解決したと思っているのか? 」

 

キューで玉を突きつつ、デスクに寄り掛かってポケットから出した愛用の『しんせい』を一本咥えて、使い古したジッポライターで火を点けるライドウに視線を向ける。

 

「・・・・・解決はしていない。 間接的にとはいえ、クラスメートの家族に怪我を負わせたのはジョセフ自身だし、冷静な判断力を失わせる程、あの子を追い詰めたのは、姉のテレサだ。あの二人は、これからもずっと、その大きな問題を抱えながら生きていかなければならない。 」

 

 

起きてしまった出来事は、最早どうする事も出来ない。

あの幼い姉弟は、余りにも大きすぎる十字架を二人で背負って生きるしかないのだ。

 

 

 

ハドソン川に面したとある河川敷。

そこに一人の少年が、釣りを嗜んでした。

少年・・・・・ジョセフ・ベッドフォード・フォレストは、ぼんやりとした表情で川に垂らした釣り糸の先を眺めている。

 

 

本当に疲れた。

あの時の出来事は、正直、曖昧にしか覚えていない。

後で、アイザックから聞かされたが、自分はジンニーの心臓である石の仮面にナイフを突き立てた所で、気絶してしまったのだそうだ。

次に目覚めたのは、ジョセフの自室だった。

そこで、実姉のテレサから、暫く学校を休学する事、そして、アイザック達ライカンスロープが働いている店を手伝う様に言われた。

 

「”働かざぬ者、喰うべからず”よ。こき使ってやるから覚悟するのね。 」

 

そう辛辣な言葉を実の弟に言うテレサは、何処となく自分を責めている様に見えた。

 

 

 

「竿が引いてるぞ? 」

 

右隣から聞こえる壮年の男の声に、ジョセフは慌てて釣竿を引っ張り上げる。

すると、餌に喰いついた大きな鮎が、川から姿を現した。

 

「ハハッ、大物じゃないか?やったな?ジョセフ。 」

 

大きな鮎がぶら下がる釣り糸を持つジョセフに向かって、顔に大きな傷がある男がニヤリと笑う。

マーコフ一家の家長、ルチアーノ・リット・マーコフだ。

釣竿の入ったケースを肩に下げ、人好きがしそうな笑顔で少年を見下ろしている。

 

「ルチアーノ叔父さん? どうして此処に? 」

 

予想外な人物に、ジョセフは驚いて目を見開く。

手広く不動産業を営んでいるルチアーノは、秒スケジュールであちこちを走り回っている。

平日の昼間は、忙しく働いていると思っていたのに・・・。

 

「あぁ?気晴らしだ、気晴らし。 最近、気が滅入る事が多すぎてな? 」

 

うんっと大きな背伸びをすると、ルチアーノは、早速、ケースを叢に下ろし、中からロッドとルアーを取り出す。

ジョセフが持っている安物の釣竿より、かなり高価な釣り具セットだ。

手慣れた様子で、釣竿を組み立てていく。

 

 

「ごめんなさい、僕の姉さんが原因ですよね? 」

 

傍に置いてあるバケツに、釣り針から外した鮎を入れる。

 

現在、マーコフ一家と自分の家族・・・フォレスト一家は、利権を求めて対立している。

実の父、ジョナサンが生きている時も、小さな小競り合いはあったが、此処まで酷い状態になった事は一度も無い。

 

「大人の下らない事情だ。 お前が一々気にする必要はない。 」

 

 

釣り針に餌を取り付けると、早速、目的の場所に向かって糸を垂らす。

 

ルチアーノにとって、ジョセフは実の子供と同じだ。

長年連れ添った妻とは、別居中。

二人の間に子供が恵まれる事は無かった。

 

 

「僕・・・・・叔父さんの事が好きだ・・・・父さんなんかよりずっと・・・・。 」

「なんかよりって言うな。 お前の親父は立派な男だ。 」

 

暗い顔をして俯く少年を横目で眺める。

意外にも取られがちだが、ジョセフは父親と一緒に過ごした記憶が余りない。

事業が忙しく、共にいてやれる時間が、実姉より少なかったからだ。

一緒にいられる時間があったとしても、軽く挨拶を交わす程度で、親子の会話など一度としてない。

ジョセフにとって父親は、外面が良く、家族に対しては冷たい印象であった。

 

 

「姉さんも皆も叔父さんと同じ事を言うよね? 母さんの葬式にも顔を出さなかったのに。 」

「仕方ないさ。 あの時は、移民たちに紛れて来たライカン達を受け入れるのに大変だったんだ。 」

 

当初、KKK団は、移民達に紛れてハーレム地区に来たライカン達を追い払おうとした。

しかし、それに異を唱えたのが、ジョセフの父親で、彼は、率先してライカン達を保護し、仕事や住む場所まで提供した。

 

 

「母さんが病気で苦しんでいる時も、一度もお見舞いに来なかった。 家族を犠牲にしてまで、人の為に尽くす必要ってあるのかな? 」

 

確かにジョナサンは、聖人君主を絵に描いた様な人物だったのかもしれない。

姉のテレサも、父親を尊敬しており、彼と同じになりたいと日々、努力している。

しかし、ジョセフは違った。

家にも近寄らず、妻が病で倒れた時も、一度として顔を見せる事は無かった。

それどころか、危篤と告げられても、決して病院に来る事は無く、葬式も代理を立てる始末。

これが、本当に誰からも尊敬される人物とは、到底、考えられない。

 

 

「アイツは、不器用だったからな。そのくせ欲張りな所があって、出来もしない事を平気でやろうとする。 」

 

ルチアーノは、隣で座る少年の頭を優しく撫でてやる。

柔らかい甘栗色の髪。

この子の母親と同じ髪の色だ。

 

「だがな、俺は嫌いじゃ無かった。 お前の親父は馬鹿だったが、何事も一生懸命だった。 人の為に全てを犠牲にして生きる・・・俺にゃぁ出来なねぇよ。 」

 

未だ暗い顔をして俯く少年を困った様に眺める壮年の男。

秋風が、二人の頬を優しく撫でた。

 




前回よりも短め。
ネタがそろそろ出なくなってきました。
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