偽典・女神転生ーツァラトゥストラはかく語りき   作:tomoko86355

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思いつくまま小説、第3弾。
時間軸的には、マレット島の事件から更に4年経過した時の話です。
自分設定では、ネロは17歳。
キリエは24歳で、音楽大学を卒業後、進学塾の臨時講師をしています。
で、ネロが10歳ぐらいの時に、ライドウは魔剣祭の参加と騎士団の視察をする為、一度、フォルトゥナに番のクー・フーリンと一緒に来日してます。



チャプター6

想えば、自分に家族と一緒に過ごした記憶などロクに残っていなかったなぁと、改めて思い知らされる。

魔剣教団の騎士であるネロは、天外テラスの下に広がる商業区の街並みを見下ろす。

そこでは、フォルトゥナに住む一般市民や各国から観光目的で来た人々が思い思いにショッピングや外食を楽しんでいた。

その人波の中に、幼い子供連れの家族が目に留まる。

綺麗なドレスが並べられたショーウィンドウを興味津々で眺めていたその少女は、母親らしき女性の袖を引っ張り、夢中で何かを喋っていた。

「もう、外を出歩いても大丈夫なの?」

聞き覚えのある声。

振り返ると紅茶色の長い髪を後ろで結い上げた20代半ばの女性が立っていた。

天涯孤独なネロを引き取り、実の息子の様に育てている魔剣教団の騎士団長―クレドの歳が離れた妹、キリエだ。

世界でもトップクラスを誇る音楽院の一つであるウィーン国立音楽大学に在籍していた彼女は、その高い歌唱力を買われ、現在は教団の歌姫を任されている。

「いい加減、病院のベッドで寝ているのにも飽きたんだ。」

グレーのシックなスーツを身に付けた彼女は、どうやら仕事先である学習塾の帰りらしい。

肩には、重そうな教科書と辞書が入ったショルダー鞄を下げている。

「また、病院を無断で抜け出したのね・・・。」

キリエは、右手にギプスを捲いて三角巾で固定されたネロを見つめ、呆れた溜息を吐き出した。

 

三日前、ネロは教団から悪魔討伐の依頼を受け、ミティスの森の外れにある霊廟へと向かった。

厭世的で皮肉屋、協調性に著しく欠けるネロは、団体行動を嫌い、常に一人で任務にあたる事が多い。

この時の任務も、何時の通り一人で行っていた。

しかし、それが災いし、ネロは右腕に大怪我を負ってしまったのである。

 

「後もう少しで右腕を切断する程の大怪我だったのよ?お願いだから兄さんに見つかる前に病室に戻って。」

少々、キツイ言い方だとは思うが、これぐらいの口調で言わなければこの少年には通じない。

いかつい騎士団の大人達ですら手を焼く悪餓鬼なのである。

「分かった分かった。もう少し外の空気を吸ったら病院に戻るよ。」

やれやれと大袈裟に肩を竦めたネロは、テラスの柵に背中を預ける。

改めて目の前の女性を眺める。

キリエは、容姿がとても美しく、そればかりではなく芯のしっかりと通った賢い女性だ。

人当たりも大変良く、誰からも好かれ、慕われている。

ネロにとっては、少々口煩い姉の様な存在だった。

「そういえば、今年の魔剣祭に、ライドウ様が来て下さるそうよ?ネロは覚えてる?」

「ライドウ・・・・17代目・葛葉ライドウか・・・。」

隣でテラスから広がる商業区の街並みを見下ろしたキリエが、ネロに言った。

闇社会にとって、葛葉ライドウこと『人修羅』の名前は、かなり有名だ。

SS(ダブルエス)クラスの悪魔召喚術師(デビルサマナー)であり、五大精霊魔法及び、様々な法術を習得する魔導師(マーギアー)の資格をも手に入れている。

また、そればかりではなく、三体の最上級悪魔(グレーターデーモン)を従えているのだという。

「あんまり覚えてねぇよ・・・・餓鬼の頃だったし、遠くからチラッと見ただけだ。」

当時、騎士団の訓練生だったネロは、キリエの兄・クレドの案内で、訓練場を視察するライドウの姿を一度だけ見た事がある。

長い黒髪を三つ編みで背後に結い、白い新雪の様な肌に不釣り合いな左眼を覆う黒い眼帯。

遠目からでも判る整ったその容姿は、まるで人形の様に美しかった。

背後にパートナーらしい、スーツ姿の美青年を従え、闘技場で基礎訓練に励む候補生を眩しそうに眺めていた。

 

「あれがフォルトゥナを救った英雄か・・・? すっげぇ美人。」

同期である候補生の一人が、呆けた様子でぽつりと呟く。

確かに彼の言う通り、ライドウには、とても同性とは思えない神秘的な美しさがあった。

魔剣教団の騎士団長、クレドの古くからの親友で、17年前に城塞都市・フォルトゥナを襲ったソロモン12柱の魔神の一人、堕天使・アムドゥスキアスを封印した英傑。

教団の幹部連中とにこやかに挨拶程度の会話を交わすその様子を見ても、とても上位悪魔を軽く蹴散らす魔導師とは思えなかった。

 

 

「それより・・・嫌な噂を耳にしたんだ・・・・もうすぐ戦争が起こるって・・・。」

遠い過去の記憶から、現実の商業区の街並みへと戻る。

城塞都市であるフォルトゥナ公国と隣国のディヴァイド共和国は、オイルシェルと呼ばれる特殊な鉱石の使用権を巡り、長く対立関係にあった。

この鉱石は、抽出すると石油の原料が生成出来るという性質があり、第二のエネルギー源として、大企業や各国から注目を集めていた。

また、宗教間の違いもあり、一時は血みどろの紛争にまでなりかけたが、国際連合安全保障理事会の介入もあり、現在は、停戦状態に留まっていた。

「そんなの有り得ないわ。 私もその噂を聞いて、一度、クレド兄さんに聞いてみたけど、只のデマだって笑い飛ばしていたもの。」

キリエもネロの言う様に、戦争の噂は幾度も耳に入って来ている。

戦争を経験した事がある彼女にとって、その悲惨さは身に染みて判っていた。

穏健派で有名なクレドだってきっと気持ちは彼女と同じ、もし、教団内で利権を強引に手に入れようとする強硬派が現れても、兄が何とかしてくれるに違いないと信じている。

「前の戦争で国は酷い財政難だって・・・見た目は観光客を多く呼び込んで、潤っている様に見えるけど、その実、国は借金だらけで火の車だって、ネットの掲示板に書かれてた・・・。」

「もー、ネロったら・・・ネットの書き込み何て信じてるの?」

SNSの有りもしない噂を真に受けている少年に、キリエは呆れた様子で苦笑を浮かべる。

しかし、そんな彼女に対し、ネロは終始暗い顔のままだ。

「騎士団内の連中も言ってる・・・国境付近に軍を配備しているのは、共和国との戦争に備えてだって・・・そのうち俺達も戦争に駆り出されるとか・・・。」

「やめましょ、そんな話・・・・教団の教えを忘れたの? 私達、魔剣教団の教義は、悪魔から人間達を護り、平和で安寧な世界を造る事・・・そんな、私達が人間同士の争いに参加するなんて有り得ないし、教皇様も決して許さないわ。」

この国は、魔剣教団が強い権限を持っている。

そう言った意味では、世界最小の先進国と言われるヴァチカン市国と質は似ているのかもしれない。

唯一の違いは、ヴァチカンは神を信仰する国であるが、フォルトゥナは悪魔を信仰しているというだけだ。

「そうだな・・・・君の言う通りだよ・・・。」

これ以上、彼女を困らせたくなくて、ネロは無理に笑顔を作る。

もうすぐ魔剣祭が始まる。

国を挙げての大掛かりな祭りだ。

きっと今以上に観光客が訪れて、商業区や教団も潤うに違いない。

 

その時、キリエが肩に下げている鞄からスマートフォンの着信音が鳴った。

ショルダーバッグから、スマホを取り出すと、電話に出る。

「あっ、兄さん・・・・え? 今空港・・・うん、うん・・・・あ、お食事は家で食べてくれるって・・・・? うん!判った。 また後でね。」

どうやら相手は、彼女の歳が大分離れた兄のクレドらしい。

微かに頬を赤く染めたキリエは、嬉しそうにスマホの通話を切った。

「ライドウ様が国際空港に到着したって、 今、迎えに行った兄さんと一緒だそうよ? 夕食は家で食べてくれるから、早めに食材を買いに行かないと・・・。」

そこまで言い掛けて、キリエは急に言葉を止める。

無断で抜け出しているとはいえ、現在、ネロは入院中なのだ。

無神経な自分の言葉が、彼を傷つけたのではないかと気が付いた彼女は、気まずそうにネロの方を見つめた。

「気にしなくて良いよ・・・・大事なお客様なんだろ? 俺は大人しく病院に戻るから、夕飯の買い物に行きなよ?」

そんなキリエに苦笑を浮かべ、何でもない様に応える。

本音を言えば、あまり楽しい話ではない。

幾ら昔フォルトゥナ公国(この国)を救った英雄とは言え、赤の他人である事に変わりはないのだ。

しかも、自分の想い人は、大分、その英雄にご執心らしい。

「ごめんね・・・? それと、早く怪我を治してね? 」

キリエは、それだけ言うと、腕時計の時刻を確認し、足早に商店街の方向へと去って行く。

そんな彼女の後姿を見送ったネロは、つまらなそうに舌打ちした。

初恋は、大抵の確率で失恋する・・・・そんなジンクスを何かの本で読んだ気がする。

ズボンの後ろポケットに捻じ込んである小さな箱を取り出す。

それは、一週間後に行われる”魔剣祭”で、キリエに送る為に彼が買った細やかなプレゼントであった。

「”クズノハ”最強の悪魔召喚術師(デビルサマナー)様相手じゃ、やっぱ勝てねぇよなぁ・・・。」

彼にとって、キリエは家族以上の存在だ。

しかし、彼女とは大分歳が離れている上に、幼い時に、命を救ってくれた日本の超国家機関『クズノハ』最強の悪魔召喚術師(デビルサマナー)に、今でも憧れの感情を抱き続けている。

自分は、あくまで手の掛かる可愛い弟。

それに比べ、アッチは、国を救った英雄の上に幾つもの武勇伝を持つ魔術師だ。  

どう贔屓目(ひいきめ)に見ても、此方に勝ち目など到底有り得ない。

ネロは、溜息を一つ零すともう一度ポケットに箱を捻じ込み、病室へと戻る事にした。

 

 

continuing to Devil May Cry 4。

 

 

 




テメンニグル編で挨拶程度に登場したヨハン・ハインリッヒ・ヒュースリーは、魔剣教団の出身。
クレドとは、幼馴染み設定で、そのつてでライドウと知り合ってます。
ヨハン死後、事件現場から彼の遺体は回収出来ませんでしたが、一応、生まれ故郷であるフォルトゥナに、彼の父親の隣の墓で形だけの埋葬が行われました。
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