ハリー・ポッターと魔法の本   作:Syuka

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 いま、パチル姉妹とアルテシアのあいだでは、微妙な空気が流れています。そのことで話し合いもされるようです。原作では、パチル姉妹の親戚関係の詳細はなかったように思うので、ちょっと創作させてもらうつもりです。



第16話 「パチル姉妹の告白」

「ダンブルドア、アルテシアのことなのですが」

 

 それが、校長室を訪れたときのマクゴナガルの最初の言葉だった。普段は校長先生などと呼んでいるのだが、いくらかあわてているのかもしれない。というのも、アルテシアの冒険が、ダンブルドアにみつかってしまったからである。急ぎ、その弁解に来たというわけだ。アルテシアが例の『賢者の石』がどのように保管されているのかを実際に見に行ったとき、ダンブルドアと出会っているのだ。いわば、現行犯なのだから、言い訳のしようもないのだが。

 そのときダンブルドアは、彼にはめずらしく紅茶の準備をしているところだった。お菓子の準備もしてあるようで、それに気づいたマクゴナガルが目を丸くする。だが、ダンブルドアは平気だ。

 

「初めて校長室にお迎えするのじゃから、おもてなし、というものをやってみようかと思っての。一緒に来たのかね?」

 

 そう言って、マクゴナガルの後方に目をむけるが、そこには、誰もいない。

 

「来たのはわたしだけですが、誰を待っているのです?」

「アルテシア嬢じゃよ。今夜少し話をしようと、校長室へ来るように言ってある。べつにかまわんじゃろ?」

「それは、もちろんですが、アルテシアと約束を? もしかすると、今日は来れないかもしれませんが」

「ふむ。では、お友だちとの話し合いが難航しておるのじゃな。うまく仲直りができるとよいがのう」

「そ、そのこともご存じなのですか」

 

 マクゴナガルに椅子をすすめ、ちょうど用意していた紅茶を提供する。マクゴナガルは恐縮しているようだ。

 

「さて、ミネルバ。せっかく来てくれたのじゃから、いろいろ聞かせてもらおうかの。なに、アルテシア嬢とはいずれたっぷりと話ができるじゃろう。急ぐことではないしの」

「ダンブルドア、賢者の石を見に行かせたのはわたしの判断です。なので、あの子を怒らないでやってくれませんか。あらかじめその場所を見ておくことは、あの子にとってとても有益なことなのです。もちろん、危険なことはしないと約束させました。あの子は、約束は守ります」

「ミネルバ、あなたのいまの発言には、ふたつほど認識違いがあるようですな」

 

 ともあれ紅茶を飲みなさいとダンブルドアに勧められ、マクゴナガルもティーカップを手に取る。

 

「わしはべつに、アルテシア嬢を叱るつもりはないのじゃよ。それがひとつ。もうひとつは、あの娘が約束を守るということじゃな」

「それが、間違いだというのですか。アルテシアは約束など守らないと」

「そうではない。きっとあの娘は守るじゃろう。じゃがそれが、危険との裏返しであることを理解しておるかね? たとえば今回、あの場所で待ち伏せていたのがわしではなく、クィレル先生だったとしたら。危険なことはしないと言いつつ、あの場所へと行くのは、まさに危険な行為となるのではないかね」

 

 なんとも表現のしづらい表情となる。マクゴナガルとて、そのことを考えなかったわけではないが、無意識に気づかぬふりをしてきたのかもしれない。そのことを、ズバリと指摘されたようなもの。

 魔法の使用制限についてダンブルドアが知っているはずはない。そのはずだが、いまの指摘は、まさにピタリと当てはまる。よかれと思ってしたことには違いない。だが、迷っていたのも事実。それゆえ、身の危険を感じたときにはいつもの魔法を使ってよいと、制限の緩和に同意したのだ。だがダンブルドアの指摘を踏まえて考えてみれば、制限はなくしたほうがいいということになる。

 

「とはいえ、さすがはクリミアーナ家の魔女。杖なしでの魔法がお得意なのじゃな。初めて見る魔法も使っておった」

「すべて、見たのですか?」

「見たとも。アルテシア嬢に気づかれないようにと苦労はしたがね」

「わかりました、ダンブルドア。たしかにわたしは、間違っていたのかもしれません。このことは、アルテシアとよく話し合いましょう。今後、どうするのがよいか」

 

 今度は、ダンブルドアが表現のしづらい表情となる。マクゴナガルの言うことに、いまひとつピンとこない部分を感じるからだ。

 

「ミネルバ、どういうことかね、その今後とは」

「ダンブルドア、わたしはあの子が、アルテシアがかわいいのです。かわいくてかわいくて仕方がない。なぜ、こんな気持ちになるのかわかりませんが、とにかく、あの子を守りたい。危険な目にあわせたくなどないのです。そのためには、どうすれば。どうするのがよかったのでしょうか」

「ふむ。なにやらよくわからんのじゃが、かわいい子には旅をさせよ、という言葉があっての。危険なことはしないと約束させたそうじゃが、そんなことはすべきではないと思う。むしろあの娘は、ほおっておけばよい。さすれば自ら判断し、自ら行動するじゃろう。それがクリミアーナ家じゃよ。おお、まさにグリフィンドールの生徒の多くがそうではないのかね」

「た、たしかに」

 

 勇気と信念のグリフィンドール。クリミアーナ家も、それに似ている気がする。であれば、その信念に基づく行動を縛るのは、間違いか。

 

「わしら教師は、その判断と行動のためになるであろう知識を教え、その経験を伝えているのにすぎん。あきらかな間違いでもないかぎり、生徒の判断は尊重せねばの」

「よくわかりました、ダンブルドア。あの子のかわいさゆえに、少し考え違いをしていたようです」

「ふむ、それは良かった」

 

 今さらにして、教師としての心構えを教えられているようでもあった。だがマクゴナガルは、決して不快ではなかった。むしろ、気持ちが軽くなっていた。紅茶がおいしかった。

 

「ときにアルテシア嬢のことじゃが、いったいどのようにして魔法を習得したのか。どうやって魔法力を得たのか。それを教えてもらえるかね。もちろんあなたは、それを身近で見てきたはずじゃ」

「たしかに。ですがわたしは、それを秘密にしようと考えました。校長がおっしゃるように『例のあの人』が」

「ミネルバ、ヴォルデモートと言わねばの」

「そうでした。魔法力を回復させるため、アルテシアを狙うかも知れない。そうならないために、秘密にしておこうと考えたのです」

「なるほど。賛成できる考え方じゃが、わしには、教えてくれてもよかったと思うがの。それともわしが、ヴォルデモートの復活に手を貸すとでも」

 

 もちろん、冗談で言ったのだろう。そんなことになるはずがないことは、マクゴナガルもよく知っている。だがそれでも、すべてを明かすことはできない。おそらくダンブルドアには、おおまかなことは分かっているのだろう。だが、仮にそうだとしても、話せない部分はある。それを話すのは自分ではない。アルテシアであるべきだと思うからだ。

 

「クリミアーナ家に行ったとき、アルテシアから本を見せられました。教科書ではないこの本を、学校に持っていってもよいかと聞かれたのです」

「それが、いわゆる魔法書というものじゃな」

「やはり、ご存じだったのですね」

「なに、名前だけじゃよ。アルテシア嬢の双子の友人が、そんなことを話していたのでな」

「え? パチル姉妹が魔法書のことを」

 

 意外だった。なぜ、パチル姉妹が魔法書のことを知っているのか。その本を見たことはあっても、それが何の本であるのかは知らないはずなのだ。いったい、どの程度まで知っているのか。なるほど、そのこともあってアルテシアは、パチル姉妹と話し合うことにしたのか。単に、ケンカの仲直りといった話し合いではないのだろうと、マクゴナガルは思った。そのアルテシアたちはいま、自分の執務室にいる。

 

 

  ※

 

 

 話は少し戻るが、アルテシアがパチル姉妹を連れてマクゴナガルの部屋を訪れたのは、ちょうどマクゴナガルがダンブルドアのところへ行こうとしていたときだった。ダンブルドアのペットである不死鳥のフォークスが、手紙を届けてきたからだ。ふくろうでないところがダンブルドアらしいともいえたが、書かれているのは、ただ1行。簡潔に書かれた手紙は、マクゴナガルを十分に驚かせた。すなわちそれが『賢者の石の隠し場所でアルテシア嬢と会った』ことを知らせてきたものだったからだ。

 かくして、マクゴナガルは校長室へ。マクゴナガルの部屋はアルテシアたち3人への貸し切り状態、ということになったのである。

 3人は、テーブルに向かい合わせて座った。

 

「誤解しないでね、アルテシア。あたしたちはケンカしてるわけじゃない。意見が合わないだけ。だから、どうするのがいいのか決められない。決められないから、なにもできない。それだけなの」

「う、うん」

 

 そのパドマの説明は、少しも具体的ではなかった。なので要領を得ない。もっと詳しく説明してくれればいいのに、とアルテシアは思う。そして同じことを、パーバティも思ったらしい。

 

「ええとね、まずアルに話しておかなきゃいけないことがあるんだ。とにかく、話を聞いて。パドマもいいよね?」

「ええ。でも話すのはあたしよ」

 

 それは、クリスマス休暇中でのこと。自宅に戻ったパーバティは、アルテシアのことを母親に話してきかせた。学校のようすや出来事などを話すとき、アルテシアのことに触れないわけにはいかないからだ。自宅に戻らなかったパドマは、そのときの母親のようすをパーバティを通して聞くことになった。

 

「あなたと初めて会ったとき、あたしたち、クリミアーナのこと知ってるって言ったよね? 名前だけだけど、聞いたことあるよって」

「うん、覚えてる」

「なぜだと思う? なぜ知ってたんだと思う?」

「ええと」

「たまにだけど、親類の叔母さんがウチに遊びに来たときにね。お母さんと叔母が話してるとき、そのなかでときどき、クリミアーナの名前がでてきてた。だから、聞き覚えがあったの」

「そうなんだ」

 

 詳しい内容は知らないが、クリミアーナの名前は耳に残っていた。そういうことであるらしい。

 

「クリミアーナには近づくな、あの家と付き合ってはいけない。そう言われたのよ」

「えっ!」

「もちろん、イヤだって言ったわ。なぜそんなことを言うのか、そんなこと納得できなかったからね。パドマもね、なんども手紙を書いてふくろうを家に飛ばしてくれてる。とにかくお母さんを納得させないとダメなんだ」

 

 黙っていられなくなったらしい。パーバティが、パドマの顔を見る。パドマがうなづく。

 

「その叔母の家は、お母さんの実家なんだけど、ずいぶん昔にクリミアーナに住んでいたらしいんだ。でもいまは違うよ。わたしたちの家からはちょっと離れたところにある」

「待って、その叔母さんって、名前は? クリミアーナに住んでいた人なら、わたし、全員知ってるよ。出て行った人なんて」

「追い出されたって、聞いてる。それから、とても苦労したんだって、お母さんは言ってた。もう昔のことだから、詳しいことを知ってる人もいないけど、あの家とは付き合うな、クリミアーナに近づいてはいけない、ということだけは言い伝えられてきたんだって」

「そんな、そんなことって」

「あるはずないよね。あたしも、そう言った。でもさ、叔母さんの家では、生まれた子どもには魔法を教えないようにしてるんだって。魔法を覚えたらクリミアーナとのつながりができるから、あえてそうするんだって。だから叔母も母も、魔法の勉強はしなかったそうよ」

 

 昔のことで、詳しく知る人はいない。その言葉が、アルテシアの胸に響く。それはつまり、そのとき何があったのか、本当のことは誰にも分からないということなのだ。

 

「わたしたち姉妹もね、魔法の勉強なんてしたことなかった。だけど魔法を使うことはできたのね。だから、ホグワーツから入学案内が届いた。お母さんはとても喜んでさ、それで入学することになったの」

「クリミアーナ家のお嬢さんがホグワーツに入学するなんて思ってもみなかった。友だちになるなんて考えもしなかった。それが分かってたら入学なんてさせなかった」

「お母さんは、そう言ったの。だったら、わたしたち姉妹はどうするべきか。2人で話し合ったんだけど、どうするのがいいかなんてわかんない。結論なんてなかなか出ない。このごろ、お母さんの言うことも変わってきてるから混乱のしっぱなし」

「どういうこと」

「いまは、ふくろう郵便で話をしているの。もう家族みんなの問題なのよ」

 

 アルテシアは、言葉もなかった。まるで2人に責められているかのように、うつむきしおれていた。なるほど、そういう事情だったのか。おそらく、姉妹それぞれに思うことが違うのだろう。だから言い合いになってしまうのだ。それが口論でもしているかのように見え、ケンカしていると思われてしまうのだ。どうすればいいだろう。アルテシアは考える。

 その昔になにがあったのか、そもそも詳しいことがなにもわかっていない。わからなければ、対処のしかたも、わからない。アルテシアは顔をあげた。

 

「あの、その叔母さんに会える? 話を聞いてみたいんだけど」

「ダメ、だと思う。あたしたちも会えなかったし」

「お母さんは?」

「とにかく、アル。もう少しだけ待って。あたしたち、ちゃんと話し合うし、ちゃんと決めるよ。ちゃんと決めるから。決めたら、すぐあんたに言うからさ」

「う、うん」

「ねぅ、アル。あんた、仲直りしなかったら絶交する、なんて言ったことあったよね」

「うん」

「あのとき、あたしが言ったことは、本当だから。あれがあたしの本音だから」

 

 あのとき、パーバティが何と言ったか。もちろんアルテシアは覚えていた。とにかくこの件は、パチル姉妹の出す結論を待つしかない。決めることができるのは、本人たちだけだ。それで納得しようとしたとき、ふと思い出したことがあった。ダンブルドアは、パチル姉妹の言い合いのなかで魔法書のことを聞いたと言っていた。いったいどこから、そんな話が出たのか。

 

「あの、魔法書のことなんだけど」

「え?」

「あ、ごめん。なんでもないよ。とにかく待ってるから。あなたたちが何を決めようと、あなたたちは友だちだからね」

 

 話は終わった。魔法書のことも聞きたかったのだが、いまは、話をややこしくするだけだろう。パチル姉妹の抱える問題が先であるべきなのだ。

 まだマクゴナガルは戻ってきていなかった。なのでアルテシアが残って待つことになり、パチル姉妹は、先に寮へと戻ることになった。だが、このことをどう解釈すればいいのか。クリミアーナが、本当に住民を追い出すようなことをしたのだろうか。とても信じられない。アルテシアは困惑していた。過去にそんなことがあったなんて、聞いたことも見たこともなかったからだ。

 

 

  ※

 

 

 表面上は、とても穏やかで静かな日々だといえた。だがそれは、もちろんそう見えるだけのこと。グリフィンドール寮生たちの多くは、いきなり150点も下がってしまったことに力を落としていた。せっかくスリザリンから寮杯を奪い取るチャンスだったのに、それがつぶれてしまったのだ。こともあろうに、その立役者であるはずのハリー・ポッターが、150点もの減点の原因を作ったというのだから、元気がなくなるのも無理はない。

 ハリー・ポッターが、クィディッチの試合でヒーローとなったあのハリーが、寮の点をこんなに減らした。数人のバカな一年生と一緒に。

 そんなときであったので、アルテシアがしょんぼりとしているのはあまり目立たなかった。その隣には、いつものようにパーバティがいたが、そこにほとんど会話がないことにも、グリフィンドール寮生たちは気づかなかった。試験が近づいていることも要因のひとつなのかもしれないが、うつむいたまま黙々と勉強を続けるハーマイオニーも、そんなアルテシアたちになんの疑問も持たなかった。

 そんなある日。

 

「森に行くのか。だがいまはダメだぞ」

「え? でもハグリッドさん。ときどきなら森に入ってもいいって」

「たしかに、そう言ったがな。だが、いまはダメだ。森のユニコーンを襲っているヤツがいる」

「ユニコーンを、襲う…」

 

 アルテシアだった。このところの、寮での重苦しい雰囲気に耐え切れず、森のなかを散歩しようとやってきたのだ。だが、以前は許してくれていたハグリッドが、ダメだというのだ。危険だから近づくなと。

 

「ユニコーンを捕まえるなんて、たやすいことじゃねぇのにな。怪我させられるどころか、すでに死骸も見つかっとる。いいか、アルテシア。勝手に森に入るんじゃねぇぞ」

「でも、ハグリッドさん」

「言うことをきけ。いま森には、森にいるべきでない何者かがおるのだ。おれがなんとかする。それまで待つんだ。いいな。わかったらなら、もう戻れ」

 

 ハグリッドは自分の小屋へと戻っていったが、アルテシアはその場所に立ったままだった。何を考えているのか、その目は森をにらみつけていた。もう数十歩もあるけば、森に入れるといった場所。そこから森をみつめ、耳を澄ます。なにかの気配を感じようとしているのだ。そのまま時間だけが過ぎていく。

 

「見つけた」

 

 すでに暗くなっていた。夕食の時間でもあったが、アルテシアはその場所へと自分自身を移動させた。そこにいたのは。

 

「おまえか。何をしていると聞くのもおろかだが、とにかく邪魔をするな。今だけは見逃してやるから、さっさと行ってしまえ」

「いいえ、あなたこそ、この森にいてはいけない。いますぐ校長先生か、もしくはハグリッドさんのところへ行くべきです」

「ハグリッド? 昨日もあいつに邪魔されはしたが、あんなウスノロになど用はない」

 

 フードでスッポリと頭を包んでいるので、それが誰なのかはっきりとはわからなかった。その人物が、かたわらに身を屈める。それまで気づかなかったが、そこに何かが倒れていた。ケガをしているだけなのか、それともすでに死んでいるのか。フードの人物が、頭を近づけ、傷口とおぼしき場所から血を飲みはじめた。

 

「それ、ユニコーンですよね」

 

 その人物は、答えない。なおも、のどを鳴らして飲み続ける。

 

「そんなことをすれば、報いを受けると言われてますよ。死んだ方がましだとさえ思うような呪いみたいなものなんだとか」

「黙れ、もうこうするしかないのだ。『賢者の石』さえ手に入ればすべて解決する」

「やはり、狙いはそこですか」

「心配ない、もうじき手に入ることになっている。どこにあるかも知っている。おまえには関係のないことだ」

 

 たしかに関係ないのかもしれないが、こんな無茶を見てほおってはおけない。それはともかく、現場を見られたにもかかわらず、そのままとどまっているのはなぜなのだろう。逃げ出す気などないようだ。フードの男が立ち上がる。背を向けているので、その顔はわからない。

 

「そうそう、おまえから1つ、貰い受けたいものがある」

 

 返事はしない。要求するものが何であるのか、なんとなく予想ができるからだ。

 

「おまえは、急に魔法力を得た。あるいは高めることができた。魔法書というものがあるそうだな。魔法書さえあれば、それができるというわけか」

 

 否定も肯定も、しない。どこで魔法書のことを知ったのか、そのことを問うたところで、返事が帰ってくるはずもないので、無言でいる。

 

「わがご主人は、魔法力の回復が必要だ。つまりおまえの持つ魔法書が必要となる。こちらに渡せ。賢者の石とおまえの魔法書があれば、わがご主人はより完全に復活できるのだ」

 

 目的はそれか。だがもちろん、同意できるようなことではない。無言でいるより拒否だけはしておこうとしたが、相手はアルテシアの返事など待ってはいなかった。

 

「渡さぬというのなら、それでもかまわん。奪い取ればすむことだ。だがおまえは、困ったことになるだろう」

「それは、どういう意味ですか」

 

 だがフードの男と話せたのは、そこまでだった。突然飛んできた矢が、2人の会話を終わらせたのだ。フードの男はたちまち姿をけし、残されたアルテシアの前にハグリッドが現れた。矢は、ハグリッドの石弓から放たれたものだった。

 

「森に入ってはいかんと、そう言ったはずだぞ」

「ご、ごめんなさい」

「まさか、いまのヤツと知り合いではなかろうな。なにやら話をしていたようだが」

「いまのは、たぶんクィレル先生です」

「なんだと。なんで学校の先生が、こんなことをしなくちゃならんのだ。おまえさんの見間違えだろう。とにかくすぐに帰れ。ここにいてはいかん」

 

 そのときハグリッドの目は、すでに死骸となってしまったユニコーンをくやしそうに見つめていた。

 




 今回、どうやってかはともかく魔法書のことがクィレル先生に知られてしまうこととなりました。ハリーとは賢者の石をめぐる攻防、主人公とは本をめぐる攻防、ということになります。次回もよろしく。
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