私の召喚サークルがバグってる件について。 作:シーボーギウム
意味が分からない。
「■■■■■!!!」
「ぐっ!!」
今、私の目の前ではヘラクレスの斧剣が何度も振り下ろされ、その剛撃を何故か日本刀で受け切っている女性がいる。無理では?という疑問を彼方に、目の前で日本刀と七本のワイヤーを駆使してあの大英雄と何合も打ち合い続けているその女性へ目を向ける。
完全に痴女なファッションの、しかし浮世離れしたその美女は、紛れもなく神裂火織その人だ。
そう、『とある魔術の禁書目録』にて登場するあの人だ。
彼女が現れた結果私の頭を支配したのは、召喚が成功したことや活路が生まれたことへの喜びではなく"何故彼女が召喚されたのか"という困惑だった。
「マスター!!早く退避を!!長くは持ちません!!」
しかし彼女の言葉で我に帰る。現状は変わっていない。やられ役、かませ犬なイメージが強い彼女だが、その実作中(新訳除く)では上から数えた方が早い程度には強者なのだ。このまま呆然としていれば間違いなく死ぬが、
「セイバー!!返事はしなくていいから聞いて!!」
「マスター!?な「いいから聞いて!!」……っ!」
私の様子に何かを感じたのか彼女は黙って打ち合いに集中する。パスが繋がっている為か、それでも耳を傾けてくれていることを理解した私は、ヘラクレスについての情報を叫ぶ。
「そのサーヴァントはヘラクレス!!ギリシャ神話の大英雄!!まず敵わないし今後のことを考えるとこんな所で消耗出来ない!!」
ヘラクレス、と言ったところで彼女の目が驚愕に開かれたが、すぐさま調子を戻した。
「そいつの宝具『
僅かに彼女が頷く。それを確認してから令呪を発動させる。
「令呪を以て命ずる!!セイバー!!貴女の最強の一撃でそいつを殺して!!」
「はあぁぁっ!!」
ワイヤーに刀、彼女自身の肉体を使ってヘラクレスを大きく吹き飛ばす。ヘラクレスが離れたのを確認してから彼女は鞘に刀を納めた。
瞬間、周囲の音が一切消滅する。ヘラクレスの上げる咆哮も、高速で迫るが故に生まれる風の鳴る音も、全てが消え、止まる。
「唯閃」
剣閃は見えなかった。彼女の放った一閃は、ヘラクレスを上下に真っ二つにするだけに留まらず、その上半身を彼方へ吹き飛ばし、それどころか
「は、ははっ………やべぇ…………」
「マスター!掴まってください!!」
思わず再び呆然としそうになるが、彼女の言葉でそれは阻止された。
言われたままに強く掴まると、一瞬で景色が変わった。
あかん、死ぬ。
「いやぁぁぁぁぁあ!!?!?!?」
私の身を案じてか全力は出していないようだが、それでもそこらのジェットコースターや乗用車とは比にならない速度で移動する。
遠のきそうになる意識を必死に留めながら、私達は燃え盛る街の上を駆けた。
◇
「どういうこったありゃあ……!?」
「どうしたの?」
その答えを聞く前に、私は彼、キャスターが驚愕している理由を理解した。
真っ黒な大男が、無数のビルを破壊しながら私のいるのとは反対方向へと高速で移動していたのだ。
「な、何よ!?何なのよあれ!!?」
「ありゃあバーサーカーだ………手さえ出さなきゃ大人しくしてたってのに一体どうしたってんだ………?」
バーサーカー…………あんなのがいたんだ…………
もしあれが私達の方へ向かって来ていたらと想像してゾッとする。
「俺達に手ぇ出して来ねぇんならさっさと目的地に向かうぞ。あれに関わってもいい事なんざ一つもねぇ」
キャスターの言葉に同意して、私達は歩を進めようと再び前を向いた。
所長にも、ロマンにも諦めろと言われてしまった悠は、今どこにいるのだろう。悠はいつも私の不安を吹き飛ばしてくれていた。思わず、また気分が暗くなる。ごめんねマシュ、心配させちゃって。
「すいませんが少しいいですか?」
そう言うのはデミ・サーヴァントと化したマシュだ。どういう訳か、酷く険しい顔をしている。
「どうしたの?」
「バーサーカーの向かっている方向にあるビルに女性が一人みえたのですが……」
『なんだって!?』
驚愕の声を上げるロマンを無視してマシュにその女の子の特徴を聞く、それは、紛れもなく悠だった。私はすぐにそのビルに向かって走り出そうとした、でもキャスターに手を掴まれてしまう。
「離して!!悠を!悠を助けないと!!!」
「諦めな嬢ちゃん、今から行っても間に合わねぇし、仮に間に合ってもバーサーカー相手じゃ勝ち目がねぇ」
「そんなのやってみなき「分かるんだよ素人が!!」…………っ!」
「あいつの真名はヘラクレスだ!!しかも狂化でステータスが跳ね上がってやがる!!こっちには戦い方すらまだなっちゃいねぇ盾の嬢ちゃんにキャスターの俺にアーチャーだ!!セイバーもランサーもいねぇ上にあいつの宝具を見越しゃあ手札が圧倒的に足りねぇ!!こんな状態であそこに向かったっててめぇが助けようとした嬢ちゃん含め全滅すんのが目に見えてんだよ!!!」
「そんな…………」
思わずその場に崩れ落ちる。
悠が、死ぬ。
やっと私は理解した。これはこんな簡単に命が失われる戦いなのだと。親友が死ぬという取り返しのつかない事態になってやっと理解したのだ。
「悠……!悠っ………!!」
無二の友の名を、何度も口にする。彼女よりも付き合いの長い友達は確かにいた。でも、何の躊躇もなく親友だと言えるのは彼女だった。どんな状況でも、悠は私に着いてきてくれた。何度も何度も助けられた。そんな彼女を失うという事実は、あまりにも受け入れ難いものだった。
「酷な事を言ってんなは理解してる」
「いやぁぁぁぁぁ!!!」
「だがな嬢ちゃん、全滅しちまったら意味がねぇ」
「いやぁぁぁぁぁ!!!」
「今すぐ立ち直れとは言わねぇ、だが受け入れろ。巻き込まれちまった以上、それは覚悟しねぇといけな「いやぁぁぁぁぁ!!!」なんがはぁっ!?」
キャスターが死んだ!?
「し、死ぬかと思った…………!!」
「す、すいませんマスター……」
キャスターを足蹴にして突如現れたのは、妙に格好のエロい女性と、
◇
死ぬかと思った()
あえてもう一度言おう、死ぬかと思った()
ヘラクレスに襲われるよりも危機感がデカいのおかしいと思うんだ。
「悠っ!」
藤丸が涙目で抱き着いてくる。どうどう、今腰抜けてまともに動けないからもう少し勢いを弱めろ。
むにゅりという柔らかな感覚にムラッとくるが鋼の精神で押さえ付ける。物心着く前に前世の記憶を思い出した私はレズな為こういう役得な状態は嬉しくはあるのだが、非常に精神力を削られるので出来れば勘弁願いたいところだ。
え?ねーちんに掴まってる時?それどころじゃなかったよ。
「あの黒谷先輩、一体あの状況からどうやって生還したのでしょうか………」
『僕からも是非教えてほしい』
マシュ嬢とロマンから説明を要求されたので、先程までの事を包み隠さずそのまま伝える。するとマシュ嬢、ロマン、所長は唖然とし、キャスニキは爆笑するというよく分からない空間が生まれた。おいケルト脳、笑い事じゃねぇぞ。
あと藤丸、そろそろ甘えん坊モードから立ち直ってくれ、私はクール系美少女で通したいのだ。だからここでいつものテンションでお前を甘やかす訳にはいかんのだ。
「し、素人が何の手伝いもなくサーヴァントを召喚した!?そんなこと出来「事実サーヴァント召喚しとるやんけぇ!こちとら未だに震えが止まらんのじゃあ!!」えぇ………」
『恐ろしく逞しいね………黒谷さん、ともかく無事で良かったよ!』
「これって慰謝料どこに請求すればいいんです?流石にこれで一銭も貰えないの納得いかないんすけど?」
『それは……ちょっとわかんないかなぁ………』
絶対慰謝料ぶんどってやる(使命感)
ところで藤丸、お前もしかして胸大きくなったか?何か以前より感覚がもちふわ何だが。あとお尻とかもむっちりしているような気がする。いかん、いかんぞお前、ただでさえ男共と距離が近いのにそんなスケベボディじゃ勘違いされて襲われかねん。
「ほれ藤丸、そろそろ落ち着け」
「…………」
「生存確認なら帰ってから好きなだけやらせてやるから、今は離せ」
「…………」
「だぁからはよ離さんかい!!スケルトン湧いとんじゃあ!!」
「え?」
私の一言で藤丸含め周りの皆が我に帰る。おいサーヴァント、ロマン、仕事しろ。
『まずいぞ……!!数体かなり強力な個体が混ざってる!!今の戦r「七閃」へ?』
ねーちんが七本のワイヤーで周りの殆ど全てのスケルトンを蹴散らした。ついでに強力な個体ことスケルトンキングにも結構なダメージを与えたようだ。骨って、ワイヤーで切れるんすね。
「前衛は私が務めます。支援を」
そう言ってねーちんは敵陣へ突っ込んでいく。クーフーリンは呆然としつつも直ぐに支援を開始し、マシュ嬢は数秒固まった後ぎこちない様子で盾を構えた。
その後、ねーちんがあまりにも大立ち回りをした為に、少しの危機も訪れることなくスケルトン共は刀の錆にされていった。
◇
「神裂さんすごーい!!」
藤丸が興奮気味に言うと、マシュ嬢も瞳をキラキラさせて頷く。可愛い。
まぁねーちんは(格好を除けば)普通にかっこいい女性だ。藤丸達が尊敬の眼差しを向けるのも納得だ。
「マスター、何やら失礼な事を考えていませんか?」
「気のせいだと思うよ」
気のせいだと思うよ()
ねーちんは怒らせたらヤバそうだからこれからは考えること気を付けないと……
因みにねーちんは二人からの視線にむず痒そうにしている。可愛い。
『しかし神裂火織か………どの文献にも載っていないし聞く限り生まれは現代…………一体黒谷さんはどこから彼女を召喚したんだろう…………?』
当然だが、ねーちんに関する説明は出来る限り済ませている。説明を終えたねーちんの言葉に所長達はかなり驚いていた。まぁ同じ魔術だけどこっちが"才能"によっている中でねーちんの世界の魔術は"無才"から魔術が生まれてるからな。やっている事は似ているかもしれないが発生の大元の理由が真逆なのだ。
何故彼女が召喚されたのかは全くもって不明だ。ずぶの素人である私がおそらく不完全な詠唱で触媒も無く召喚を行ったせいで「とある」世界にある「英霊の座」らしき何かと混線したとかだろうか?
『ひとまずそれは置いておくとして、キャスター、今の戦力ならどうだい?』
「……いけるだろうよ。そっちのねーちゃんの力量も申し分ねぇしな」
因みにクーフーリンへの謝罪は済ませてある。着地と同時に「この人でなし!!」と叫びたくなった旨を伝えるとマジトーンでやめろと言われた。霊基の方にトラウマ刻まれてんじゃねぇか。
『それじゃあ早速大空洞へ向かってくれ!』
こうして私達はこの特異点の首魁の待つ大空洞へ向かうのだった。
◇
アーチャーをクーフーリンが、何故か復活していたらしいランサーとライダーの相手をねーちんと私でしている内に原作通りの流れでマシュ嬢が宝具を発動させたらしく、大空洞では息も絶え絶えなマシュ嬢と震える藤丸に表情に焦りが見える所長、再び宝具を構えるセイバー・オルタがいた。ランサーとライダー?二対一だったけど割と余裕でした。ねーちんがオーバースペックすぎてやばい。
「ねーちん行って!!」
「え?は、はい!!」
突然のねーちん呼びに困惑したようだが直ぐに刀を構えてオルタへ突っ込んでいく。初めオルタは構わず聖剣へ魔力を込めようとしていたが、流石にねーちんの速度で迫られては厳しいのかすぐさま魔力を込めるのを止め、ねーちんに向かって剣を横薙ぎに振るった。ねーちんは体制を低くしてそれを避け、左手でワイヤーを操作してオルタの動きを封じつつ刀、七天七刀を首に向かって振り抜く。しかしオルタはワイヤーの拘束を引きちぎって強引に仰け反り、ねーちんの攻撃を難なく回避した。
「…………驚いたな、これ程のやり手が召喚されていたとは」
「キャメロットの騎士王、ですか…………随分と思い描いていたイメージと違いますが、なるほど、その程度の異常で剣が鈍ることはないようですね…………」
少しだけ睨み合ってから、二人は再び高速で激突する。あまりにも速すぎて聖剣と刀の衝突音が重なって凄まじい爆音へと昇華する。最早完全に可視領域を超過した剣戟の応酬は、更に現れた助っ人によって終わりを迎えた。
「引けセイバー!!」
瞬時に二人が後ろに飛び退く。現れた助っ人、クーフーリンは、詠唱によって巨大な木の巨人、ウィッカーマンを召喚し、その中にオルタを閉じ込めて燃やし尽くした。
「あのアーサー王を押さえるとはな……お前さん、本当に何者だ?」
「何者、と問われましても、いち十字教信者としか答えられないのですが………」
「ただの宗教家にこの私を押さえられる訳がなかろう」
アーサー王とクーフーリンに呆れ半分の視線を向けられねーちんが困った顔をする。傍ら、オルタの消滅が始まった。
「ふっ、所詮は独りよがりか………」
「あ?そりゃどういう」
「貴公もいずれ理解する。グランドオーダー、聖杯を巡る戦いは、まだ始まったばかりだ」
言葉と共にオルタが完全に消滅する。クーフーリンは釈然としない顔をしているが、身体の端から光の粒子が散り始めたのを見て表情を改めた。
「いきなりよく分かんねぇ状況の中でよくやってくれた!俺はもう帰っちまうから悪ぃが後は自分達でどうにかしてくれ!騎士王様曰くまだ始まったばかりらしいからよ!」
「ありがとうキャスター!おかげで助かったよ!!」
「そうかい、ま、次喚ぶ時は出来ればランサーで召喚してくれ!」
そう言ってキャスターは消滅した。大空洞が静寂に包まれ、藤丸達が安堵の息を洩らす。ロマンも労いの言葉を投げかけている。
だが、ある意味この特異点最大の山場はこれからなのだ。
「全く、なんの力も無い小娘だと思っていたのだがね、ここまでやるとは想定外、そして私の寛容さの許容外だ」
「レフ教授!?」
レフ・ライノール。カルデアの爆発を仕込んだ張本人だ。奴は、一見柔らかな笑みを称えている。
ロマンが通信機越しに驚愕の声を上げているが、私にとって現状それはさして気にするべきことではない。
「人間というのはどいつもこいつも統率の取れていないクズしかいないのか?」
「―――レフ!!」
以前から疑問だったのだがこのシーンの所長は突発的な難聴でも患っていたのだろうか?
「本当に、予想外のことばかりだ。全くもって腹立たしい。爆弾は君の足下に設置したというのにまさか生きていたとはな」
「…………え?……どう………いうこと…………?」
所長の別に本当に質問している訳でもない質問にレフは律儀に答える。これだから人外はいけない。何故ああいう手合いの存在は傲慢でアホなのだろう?あえて絶望させて所長を殺したところで藤丸含めたカルデアの面々の心が折れるわけではないし、なんなら仇討ちを志してより厄介なことになるだけなのが分からないのだろうか?僅かな不確定要素を見過ごしたり見逃したりしている時点でアイツらの計画が失敗に終わるのは目に見えていたのかもしれない。
「君の意識は、カルデアに戻った瞬間消滅する。だから君は、二度とカルデアに戻れない。」
「カルデアに…………戻れない…………?」
レフは聖杯によって真っ赤に染まったカルデアスを私達、いや、所長に見せつける。所長は嘘だ、ありえない等と喚いている。所長のヒステリックてこれか。
「最期まで耳障りな小娘だ。せめてもの慈悲に、最期に君の願いを叶えてあげよう」
「え?何で?身体が宙に……!」
さて、そろそろ何でこんなに私のテンションが軽いのか疑問に思い始めた頃合だろう。
まず、手始めにおかしいと思わなかっただろうか?転生者で、藤丸立香という存在と知り合っておきながら、レイシフト適正があることへ、私は
だが私はそれを排除した。
なぜなら、既に転生特典と思わしき特殊能力を保持していたからだ。
レイシフト適正も、立派な特殊能力の一つと言えるだろう。何せ過去の世界への時間旅行を可能にする権利とも言えるものなのだから。しかもマスター適正まで付属するのだ。これが特典でないというのは正直考えられない。
そして私は、カルデアに来る以前から
「マスター!私の後、マスター!?何を!?」
「ごめんねねーちん、頼んだよ」
念話で令呪の命令を飛ばす。おそらくそう対魔力は高くないねーちんは、命令通りに私をカルデアスへ吸い込まれていく所長に向かって
私のこの肉体は、かなりハイスペックだ。故に私の能力はスケルトンに使ったところで自身の状況を悪くする事しか出来ず、かといって発動条件故にヘラクレスに使う事等到底不可能という酷く使い勝手の悪いものだ。
でも、カルデアに来て確信した。この
高速で所長に迫る。藤丸やマシュ嬢、ロマンが何やら言っているが、集中し引き伸ばされた時間の中でそれらを認識する事はなかった。
遂に所長とあと数秒で衝突する所まで来た。私は右手に能力の発動条件たる『
私の能力の、
「
答え合わせだ。テンションが軽い理由、簡単な話だ。
神裂火織
クラス セイバー
筋力A
耐久A
敏捷A
魔力A
幸運EX
宝具A
スキル
魔術(天草式):A
鉄糸術:A
神の子の聖痕(偽):A
宝具
唯閃
ランクA
最大補足1人
レンジ50
ステータスが完全にぼくのかんがえたさいきょうのサーヴァント。
でも実際こんな感じだと思うんだ()