私の召喚サークルがバグってる件について。   作:シーボーギウム

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お気に入り数上がりスギィ!!
どうも花弁です。

たった2話で700件行くのおかしくない?

※4/22ダ・ヴィンチちゃんのセリフを一部修正


Grand Order

 私のマスターは正体不明の真っ白な螺子を、赤い球体に吸い込まれていく少女の胸に突き刺した。螺子は眩い光を一瞬放ったと同時に少女に溶けるように消え、それと同時に少女にかかっていた浮力も消滅した。

 

「何だと!?」

 

 黒幕と思わしき男が驚愕に目を見開いた。いや、彼だけでなくこの場にいる全員が驚いている。

 あの能力は一体……?

 

「ねーちん着地ぃぃぃぃい!!!」

「え?あ、はい!!」

 

 落ちてくる二人を受け止める。不思議な人だ。窮地には当たり前のように飛び込むくせに、その窮地が収束した瞬間臆病になる。そんな彼女が、私はどこか()に似ているような気がした。

 

「大丈夫ですかマスター?」

「う、うん………所長お願い………」

 

 マスターが助けた少女は気絶していた。胸を見ても、外傷どころか服にすら傷一つ付いていない。

 

「一体何をした!」

「こっちの手札教える訳ねぇだろバーカ!!人類史と共に自分の脳味噌まで焼却してんじゃねーよバーカ!!」

 

 マスターが酷く腹の立つ顔でレフというらしい男へ罵倒を飛ばす。何でしょう、何故かあのふざけた同僚(アロハグラサン)を思い出すのですが………

 

「…………ふんっ、どのみちカルデアへ帰ればその小娘は死ぬ!お前の行動は無意「助からねぇなら動かねぇわバーカ」は?」

「無駄なことはしない主義なんだ」

 

 マスターの言葉に、男が疑問を呈そうとした所で、大空洞が大きな揺れに襲われた。普通人間では立っていられない程の揺れの中、どういう訳かなんの支えもなく自分の足で仁王立ちしている。

 

「最後に一つ、この状況、人類史が燃え尽きたのとその原因が所長にあるなんてほざいてたけどな、責任が何処にあるのかも分からんらしい人外に特別に一つだけ教えてやる。仮に本当にそれらの原因が彼女にあったとしても、」

 

 マスターは一度大きく息を吸う。

 

「彼女は悪くない」

 

 男の忌々しげな表情を最後に、私達の視界は光に包まれた。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「疲れたァァァァァAhrrrrrrrr!!!」

「マスター!?」

 

 いけない、狂化するところだった。

 能動的な却本作り(ポジティブブックメーカー)なのだが、発動が久しぶりな事もあって恐ろしく体力を持っていかれた。本当に今回のような状況でもなければ使い所が皆無どころか絶無なので困る。

 

「黒谷さん、あの能力は…………?」

 

 疲労から地面に身を投げ出していると、ロマンに初対面のダ・ヴィンチ女史。その他幾人ものカルデア職員が帰ってきた私の元へやってきた。藤丸とマシュ嬢、ねーちんも私の方を見ている。所長はまだ気絶したままだ。

 まぁ、流石に説明しないわけにはいかないか。

 

「簡単に言えば、生み出した螺子を『螺子込んだ』相手のあらゆる能力値を私と全く同じにする能力です」

 

 本家の能力の場合は心を折る効果もあったが、本家が過負荷(マイナス)な中で私のは異常(アブノーマル)なので心を折る力は完全に無くなっている。

 本家と違う点を上げるとするなら、私が解除しない限り仮に私が死んでも絶対に能力が切れないこと、能力によって、ある条件(・・・・)を満たさない限り恒久的に対象に私の状態がトレースされ続けることだろう。わかりやすく言うのなら、私を殴ると現状では所長にも同じダメージが飛ぶという感じだ。逆に所長を殴った場合はどれだけ強力な攻撃でも完全に無効化するようになっている。今の所長なら仮にカルデアスに触れたとしても無傷でいられるだろう。

 

 とまあ大体こんな感じの説明を皆にしたわけなのだが、

 

「思い切り封印指定ものじゃないか!!」

 

 ロマンが代表して驚いてくれた。

 うん、だよね。私が能力を使えばレイシフト適正100%の人間が量産出来るわけだし。

 

「君の名前は黒谷君だったかな?」

「そうですがエロい人」

「おおう、いきなりだね………」

 

 ダ・ヴィンチ女史が声をかけてきた!(RPG風)

 でも実際あんたエロいだろ。ボディ的な意味合いは勿論のこと何より頭の方が。

 

「んんっ!私はあの万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチさ!よろしくね!今ではカルデアの技術顧問をさせてもらってる。今後の為にも是非君の身体や能力について調べさせてほしいんだ」

「よろしくダ・ヴィンチ女史。それじゃあ本音をどうぞ」

「非常に興味深いよね!」

「おい!」

 

 ロマンが説教を始めるが、まぁ実際これからの為に調査は必要だ。だから是非調べてくれと伝えると、納得しきれない様子ながらもロマンは頷いた。

 

「ひとまずはお疲れ様。とりあえず所長が目覚めるまでは各自休息を取ってくれ」

 

 ロマンの一言で私達含めその場にいた全員が散り散りになる。

 自室に向かった私は、泥のように眠ったのだった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 翌日。

 所長はまだ目覚めていないようだが、まぁ今日には目覚める頃合だろう。

 時刻は現在大体5時半。寝た時間もあるがかなり早く起きてしまったのだが、私は今、人生最大の試練に見舞われている。

 

「んぅ……」

 

 何で一人で寝たのに藤丸に添い寝されてるんです?

 藤丸は結構な強さで私を抱き締めており、身体の至る所の柔らかい部分が押し付けられている。

 OKサインですか?

 

「ふ、藤丸…………?」

 

 返事がない、ぐっすり眠っているようだ。

 ふぅ、落ち着け私。断じてここで欲望のままに藤丸を襲ってはならない。このクソほど絶望的な状況で最も信頼を置けるであろう私に貞操を狙われているなんて思わせてしまえば、この娘は本格的に信頼出来る人間がいなくなる。最終的にはマシュ嬢やダ・ヴィンチ女史に全幅の信頼を寄せる事にはなるだろうが、今の時点で私という精神の安息地をこの娘から取り上げてしまえば、それこそ心が折れてバッドエンドになりかねない。

 無に、無になるのだ…………!!

 

「ん……悠…………」

 

 胸がア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!

 ふぅ、落ち着け私。大丈夫、まだ大丈夫だ。やわっこい何かが更に押し付けられて形が歪んだのなんて私は見ていない。見ていないのだ。

 しかし、こうして子供のように抱き着かれることはあったが添い寝は初めてだ。余程冬木で恐ろしい思いをしたのだろうか?

 

「まったく………私の心労も知らないで甘えてきやがって………」

 

 毎度毎度どれだけ精神力を削っていると思っているのだろうか。

 僅かな欲望の発露として私も藤丸を抱きしめる。すると藤丸は心地良さそうに喉を鳴らした。

 

「猫みたいだな…………」

 

 因みに普段は犬だ。

 頭を撫でながら、私も目を瞑る。自分から添い寝してきたのだ、抱き枕代わりにするくらいは許されるだろう。

 藤丸の頭から香る甘い匂いに包まれながら、私は再び夢へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 7時半。

 私、マシュ・キリエライトは、先輩の私室の前にいた。

 扉を三度ノックするが、返事はない。まだ眠っていらっしゃるのかもしれない。

 

「失礼します…………」

 

 小声で断りを入れてから入室する。しかし部屋の中に先輩はいなかった。

 もしかしてもう起きてどこかへ行ったのでしょうか…………?

 

「フォーウ!」

「そうですね、ひとまず黒谷先輩の所に行きましょうか」

 

 フォウさんの助言で黒谷先輩の元へ向かう。

 部屋の前で、先輩の部屋の時と同じく三度ノックをするが、やはりこれまた返事がない。

 

「失礼しま…………先輩?」

 

 聞こえるのは二つの寝息。ベッドの上を見ると、先輩が甘える子供のように黒谷先輩に抱き着いていた。黒谷先輩も、母親のように先輩の頭を胸に抱いている。

 

「フォーウ………」

「ど、どうしましょうか…………」

 

 黒谷先輩に抱かれて眠る先輩の顔は、安心しきっていて、更にお二人共とても幸せそうな表情をしている。

 

「フォウ!フォーウ!」

「そう、ですね………」

 

 出来る限り静かに、お二人を起こさないように部屋を出る。

 気の置けないお二人の関係を、私は少し羨ましく思うのだった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 次に起きたのは8時半だった。

 照れ顔ご馳走様でした。

 

「所長、目覚めたかな?」

「うーん、今はパニックに陥ってるみたいだねー」

 

 何でわかるの?と聞いてくる藤丸に私の能力を再度説明する。

 ある条件(・・・・)、私にとって非常に忌々しいそれを達成しない限り、私と所長は実質運命共同体だ。その為私の方から限定だが所長の様子は大体分かるのである。

 

「にしても悠がそんな能力持ってるの全然知らなかった…………」

「まぁそりゃ一生使い道のないものだと思ってたし」

「そんな使い道ないかなぁ………?」

 

 逆に聞こう、私と同じスペックの人間量産してどうするんだ?お前なら私が量産されたら特定方面で世界がヤバい(・・・・・・・・・・・)の知ってるだろ?

 

「あー………ダメだね………無数の食料が無駄に消費されることになる…………」

 

 藤丸の目が遠くなる。

 私の料理センスは、呪いでもあるのかと疑問に思う程度には絶望的だ。完璧にレシピ通りに作っても必ずお皿の上が世紀末になる(まともに完成しない)

 試しにで面白がって食べた友人が1ヶ月体調不良で休んだと言えばヤバさがわかるだろう。因みに、その時作ったのはホットケーキだ。ホットケーキだ()

 

 閑話休題(悲しくなってきた)

 

 とりあえず所長の部屋の前に到着したのだが、どうやらまだ所長のパニックは続いているようだ。ロマンやダ・ヴィンチ女史が落ち着かせようとしているようだが、今まで信用してきた者に裏切られたショック、人類史が燃え尽きたのを自分のせいだと言われた事による罪悪感や混乱でいっぱいいっぱいになっているのだろう。

 

 こういう時は荒治療(殴る)に限る。

 

「そぉい!!」

「いったぁ!?何す……あれ、痛くない…………?」

「落ち着きました?」

 

 周りが何やってんだこいつ、みたいなふうに見てくるが気にしない。

 

「貴方は………」

「ロマン、私の能力の説明してくれました?」

「うん、済ませたよ」

 

 ナイス手際。所長が本当なのかと目で訴えてきたので螺子を手に出現させた。

 

「助けてくれて……ありがとう…………」

「そう言う割にテンション低いですね?」

「…………私は、助かって良かったのかしら…………?」

 

 ん?

 

「あの時は、死にたくなくて必死だった…………でもこの世界は私のせいd「随分烏滸がましいですね」………………え?」

「所長ごとき(・・・)が人類史が燃え尽きた責任取れるわけないじゃないっすか」

「ご、ごとき…………」

「まず、責任ってのは取り返しのつかない状況になってからようやく生まれるものです」

 

 おいそこ、それはちょっと違うだろみたいな目を向けるな。こういうのは勢いが大事なんだよ。あくまで精神的に弱ってるのに付け込んで"自分は悪くない"と思わせるのが大切なのだ。

 

「まだありもしない責任を取ろうとする暇があるなら、」

 

 所長に手を差し伸べる。ねーちんの魔法名を借りるなら、救われぬ者(所長)に救いの手を、だ。

 

「さっさと立ち直って、私と藤丸の手伝いをしてください。今の所長は私のステータスをトレースした状態ですから、マスター適正もレイシフト適正もカンストしてるんです。荒事には慣れているとはいえ魔術に関してはずぶの素人の私や喧嘩一つした事ない藤丸よかよっぽどちゃんとした戦力なんですよ、今の所長は」

 

 罪に対する罰も責任も、そんなものは取る必要が無い状態にしてしまえば良いだけの話だ。今絶望するのは、それこそ一番やっちゃいけない事だ。だってそれは助けられるものを助けるのを諦める事と同義なのだから。

 

「私は悪くない。リピートアフターミー?」

「へ?」

「ほら早く」

「わ、私は悪くない…………」

「ええその通りです。所長は悪くない。悪いのは全部あのレフとか言う時代遅れの髪型した奴ですから」

 

 所長は少しキョトンとしてからぷっと吹き出した。その反応、もしや思う所があったな?

 

「あはは!………あんなの見せられて、よくそんなこと言えるわね貴女」

「そりゃどーも。立ち直れたみたいですね」

「褒めてないのだけど………」

 

 私の手を取った所長を立ち上がらせる。これならもう大丈夫だろう。

 

「ロマニ、生き残った職員を全員カルデアスの元に集めなさい。今後の方針を発表します」

「了解です所長」

 

 淡く微笑んだロマンが部屋を出たのを確認してから、私達はカルデアスの元へ向かった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「よく集まってくれました」

 

 所長の言葉に職員達の顔が引き締まる。

 

「人類史は、レフ・ライノール、ないし彼が仕える正体不明の存在によって焼却されました」

 

 そう言う所長の顔には、しかし悲観も、絶望も無かった。悠のおかげだろうか?

 

「調査の結果、今回の冬木とは比べ物にならない大きな特異点が七つ、歴史上のターニングポイントに発生していることが分かりました。協力者は存在せず、生き残ったのは、この場にいる者だけです」

 

 あまりにも絶望的な状況、でも……

 

「でも私達にはチャンスが与えられた!この世界を、未来を取り戻す為のチャンスが!これは、実質断る事の出来ない頼みだという事は理解しています。マスター適正者48番藤丸立香、49番黒谷悠。貴女達の未来を取り戻したいのなら、貴女達はこの七つの人類史に立ち向かわなくてはならない」

 

 所長はそこで言葉を一度区切る。その先の言葉が、私達にとってどれだけ重いものかを理解しているからだ。

 

「貴女達にカルデアの、人類の未来を背負う覚悟はありますか?」

 

 かつて誰も負ったことの無いほどの重責が襲いかかる。

 でも―――

 

「私に出来ることなら…………!」

「あと一年しか生きられないなんてごめんですから」

 

 覚悟を口にする。悠はおどけたように、でも強い光をその黒曜の瞳の奥に宿しながら告げる。

 一人なら、無理だったかもしれない。

 

 でも、二人なら―――

 

「―――ありがとう。その言葉で私達の運命は決しました。これより人理継続保障機関フィニス・カルデアの所長、オルガマリー・アニムスフィアとして最後に残ったこの場にいる者全てに命を下します!!」

 

 大きく、強く、

 

「これより私達は!七つの特異点を消滅させ!正しい人類史の保護、及び奪還を行います!これは、過去に剣を向ける冒涜に他なりません!ですがそれしか私達に道は残されていない!!これより、私達は失われた人類史を取り戻す為の戦いにおもむきます!!」

 

 高らかに、

 

「以上をもって、作戦名はファーストオーダーより改め」

 

 私達は、鬨の声を上げる。

 

「グランドオーダーとします!!」

 

 

 

 

 ―――これは、未来を取り戻す為の物語。

 

 

 

 




ねーちん空気。
じ、次回からは活躍します…………



黒谷悠

誕生日 5/6
血液型 B型
身長 168cm
体重(抉り取られている)
スリーサイズ(抉り取られている)
イメージカラー 黒
特技 武術、歌、掃除
好きな物 藤丸、可愛い物、アニメや漫画
嫌いな物 料理、スポーツ、理系科目の教科全般

本作主人公。
黒髪黒目の美人。基本的にポニーテール。
スリーサイズは分からないが藤丸曰く非常に羨ましいプロポーションをしているとのこと。
才能が極端であり、得意なものはその道の達人を唸らせるレベルで得意だが、苦手なものはその道の才能がないと言われた人間の比じゃないレベルで不得意。
レズビアンであり、その実清姫やら頼光の比にならない(・・・・・・)愛を藤丸に向けている。(過去に何かあったようだ)
藤丸が学校のクラスメイトと付き合った時は友人から"生ける屍"と言われた。
基本的に"藤丸の為"を基本とした愛なので藤丸が幸せならそれでOK。ただし自分は(精神的に)死ぬ。

能力『能動的な却本作り(ポジティブブックメーカー)
真っ白なイメージの螺子を『螺子込んだ』相手の能力を悠と同じにする。ある条件(・・・・)を達成しない限り悠へ与えられたダメージなどがこの能力を受けた対象にトレースされ続ける。



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