私の召喚サークルがバグってる件について。   作:シーボーギウム

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ちょっとダイジェスト気味。

まずいですよ!(お気に入り数810記念)


第一特異点
召喚、失敗


 私の能力の解除には、二つのパターンがある。

 

 まず、大元から完全に能力を切るもの。

 これの場合、相手のステータスは元のステータスに戻る。

 ねーちんに使い能力を切ったのなら、ねーちんは再び聖人としての力を取り戻すといった具合だ。

 

 次に、ある条件(・・・・)を達成すること。

 これを行うと、能力対象の存在との共有状態のみ(・・・・・・)が解除される。

 つまり、相手のステータスは私と同じなままになるという事だ。この方法で能力を解除した場合、相手を元のステータスへ戻すことは完全に不可能になる。

 要するに所長にはこの方法の解除を行わなければいけない。前者の方法では所長が消滅してしまうからだ。

 

 というわけで、その方法によって所長との繋がりを解除したわけなのだが、

 

 「あ……が…………」

「悠!?どうしたの!?返事をしなさい!!ロマニ!早く来て!!」

 

 呼吸が上手く出来ない。動悸が激しい。冷や汗が全身を伝う。これだからこのもう一つの能力(・・・・・・・)を使うのは嫌なのだ。

 精神状態から肉体状態まで全て最悪のまま、私は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「知らない天井だ」

「そりゃあ医務室に入るのは初めてだろうからね」

 

 声の方へ目を向けると、そこにはダ・ヴィンチ女史がいた。私がいるベッドの傍らで座る彼女は、手元で何やら端末を操っている。大方私のバイタルデータとかそんなものを見ているのだろう。

 あ、このアングルエロい。

 

「何やら下らないことを考えているようですけど、こちらがどれだけ驚いたかわかっているの?」

「心読まれた?まだ繋がってる?」

「貴女がわかりやすいだけです」

 

 私の発言をバッサリ切り捨てるのは所長だ。呆れ顔でそう言うが、実際は心配もしてくれたのだろう。思わずニヤついていると、所長は頬を赤らめながら、な、何よ!とテンプレな反応を返してくれた。ごちそうさまです。

 そんなくだらないことをやっている内に、何気に医療顧問のロマンが部屋へやってきた。肉体的な面はデータを見れば分かるのか、軽い会話で意識の混濁が無いかだけ確認すると、ロマンが普段とは違い真面目な顔で問いかけてきた。

 

「黒谷さん。何で倒れたのか聞かせてもらってもいいかな?」

「…………まぁあれで黙りは流石に無いですね。分かりました。話します」

 

 その前にねーちんも一応念話で呼ぶ。今後、似たようなことがあった時の対応がいつでも出来るのは現状ねーちんのみだ。直ぐに部屋に私、ダ・ヴィンチ女史、所長、ロマン、ねーちんが揃った。

 

「まず、このことは藤丸には言わないようお願いします」

「理由を聞いても?」

「然るべき時が来たら、自分で話しますから」

 

 どうやらそれで納得してくれたらしい。

 まぁ、こんな状況である以上これから嫌でも使わざるを得ない場面が出てくるだろう。なんせこの能力は条件次第で自動発動するクソ仕様なのだから。

 私はまず、もう一つ能力があること。そしてそのもう一つが、忌むべき負債(・・)であることを伝えた。

 

「負債?」

「能力がどういうものか知れば、嫌でも意味がわかりますよ」

 

 ねーちんの疑問に答え、この場にいる皆の顔を見回す。覚悟はいいかと、言外に問う。

 準備はいいようだ、では、

 

「私のもう一つの能力は―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「冗談………だろう………………?」

 

 ロマンが私の能力に、能力発現と同時に生まれたあまりにも深いトラウマ(・・・・)に絶句する。

 ロマン以外も、あのダ・ヴィンチ女史までもが完全に黙り込んでいた。

 

「よく、心が壊れなかったね…………」

「何言ってんですか、修復出来ただけで、壊れなかったわけではないですよ」

「どういうことでしょう…………?」

「中学入学まで目死んでたからね」

 

 恐らく当時の私は某麻婆神父や今では某水銀使いと一緒にゲーム実況やってる人に勝るや否やといった目の死に具合だったはずだ。

 

「はい!この話終わり!閉廷!以上!皆解散!」

「えぇ………」

「シリアスしてテンション下げてもいい事無し!気持ちとか気分ってのは人が思っているより大きく作用するんですから」

 

 困惑顔の四人はしばらくして同時にため息をついた。

 

「貴女の相手をしていると、色々深く考えるのが馬鹿らしくなってくるのだけれど…………」

「テンション云々はともかく、マスターはもう少し色々気にした方が良いのでは…………」

「まぁ、本人が気にしてないのなら良い、のかなぁ…………」

「ま、黒谷君がそう言うのなら私は何も言わないさ」

 

 全体的に辛辣な感想を述べられる。まぁ空気は弛緩したので良しとするとしよう。

 

「それじゃあ藤丸君の所に行こうか」

「あれ?検査は?」

「君が眠っている間に終わらせたよ。結果はすぐには出ないからね、先にサーヴァントの召喚をしている藤丸君とマシュに合流して更に戦力を確保しようって話さ」

 

 なるほど、確かに私はねーちんという規格外(聖人)をサーヴァントとして使役しているが、藤丸に関しては、まだちゃんとした宝具は使えない上戦闘経験の浅いマシュ嬢のみだ。戦力の補充は早急な問題だろう。

 

「召喚ルームは?」

「所長、案内お願いできるかな?私はまだやらないといけないことがあるからね」

「分かったわ。悠、着いてきなさい」

「はーい」

 

 さて、どんなサーヴァントが来るか、今から楽しみだ!!

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 召喚ルームには、既に藤丸が召喚したサーヴァントがいた。

 一人目はエミヤ。エミヤ!

 良くやった藤丸ぅぅぅぅぅ!!!!

 

「シェフ・エミヤ」

「なんでさ!?」

 

 お腹減ってきた。その事を伝えると頭を抱えながらも後で何か作ると約束してくれた。やったぜ。

 そして、二人目は源頼光。

 

「ママだわ」

「ええ、母です」

「違うよ!?」

 

 大体何でも作れるエミヤに和食の鬼頼光ママ。既にカルデアキッチンが充実してきている。

 そして三人目、といきたいところなのだが、カルデアの電力事情的に合計六回の召喚が限度らしく、今は既に所長の召喚に移っている。

 というわけで所長の一人目はクーフーリン(ランサー)だった。

 

「てめぇ、俺の行く先々にいやがるのは何なんだ?」

「君が勝手に着いてきているだけではないのかね?」

 

 召喚後、所長に挨拶済ませた後で速攻エミヤと喧嘩し始めた。正に犬猿の仲とか腐れ縁とか言うやつなのだろう。二人の喧嘩はクーフーリンが所長に叱られ、エミヤが藤丸に宥められた所でようやく終わった。

 そいで所長の二人目なのだが、

 

「ふむ、我が名はタマモキャット。タマモナインの一角を担う者。お前がご主人か?よろしくするワン!」

「狐なのか猫なのか犬なのかなんなのよ!?」

 

 ネタ枠最高レベルの混沌、タマモキャットが召喚された。所長、その点については考えてはいけない。何故ならキャットはキャットなのだから(哲学)

 

「タマモと言うだけあって玉藻の前と関係あるのかもしれませんね」

「いかにも。我はオリジナルの尻尾から生まれた分霊なのだワン!」

「これ理性が狂ってるって言うよりキャラクターが狂ってるよね…………」

 

 おう、お前ら。そんなんで困惑してたら今後ついていけないぞ。まだ出自がちゃんとしてる分キャットはマシだからな?

 

「まぁ、とりあえずいいわ。悠、さっさと召喚しちゃいなさい」

「アイアイサー」

 

 やっと私の出番だ。マシュ嬢の盾の上に浮かぶ召喚サークルに、令呪のある右手をかざす。

 

「素に銀と鉄…………あれ?」

「召喚サークルが反応しませんね?」

「手順間違ってないよね?」

「えぇ、間違ってないと思うのですが……」

 

 何度詠唱を始めても、どういう訳か藤丸や所長の時のような反応が無い。終いには完全に詠唱を終わらせても何も起こらなかった。

 

「何で!?」

「私が召喚出来たのだから、貴女が召喚出来ないのは道理に合わないはずなのに…………」

 

 そうなのだ。所長は私のスペックを完コピしているはずなのだ。ここで私が召喚出来ないのなら所長も召喚に失敗しているはずなのだ。

 原因不明で召喚が出来ないまま、私達は頭を悩ませる。この異常を解決出来ないでいると、しばらくしてダ・ヴィンチ女史が部屋へ入ってきた。

 

「黒谷君、サーヴァントの召喚失敗してないかい?」

「あれ?何で?」

「ちょっとこれを見てほしいんだけど……」

 

 ダ・ヴィンチ女史が手元の端末の画面をこちらに向ける。四人でそれを覗き込むと、何も書かれていないレーダーチャートが映し出されていた。上部には私の名前もある。

 

「所長とマシュなら分かるんじゃないかな?」

「待ちなさい。何も映し出されないなんて有り得るの?」

「どれだけ微弱でもこんなのは見たことありませんね………」

 

 どうやら三人はこれが何なのか理解しているらしい。私と藤丸がまったく何なのか分からず首を傾げていると、所長が説明をしてくれた。

 

「魔術には、火、地、水、風、空の五大元素と虚と無の架空属性があります。基本的に魔術師はこの七つの属性内の一つを持っています。でも貴女にはそれが無い、属性が無いなんて事は絶対有り得ないはずなのよ」

「じゃあ何で…………」

「君は起源が強く表に出ているのさ」

「起源?」

 

 起源。わかりやすい例は衛宮切嗣の起源弾だろうか。説明?魔術師に当たると魔術回路がグチャグチャになってポポポポーンする。

 しかし起源が表に出てきているとは言っても一切何も表示されないのはおかしくないだろうか?確か衛宮切嗣も属性自体は持っていたはずだ。

 

「私の見立てが正しければ、君の起源がレーダーチャートに何も表示されないこと、サーヴァントの召喚が出来ない事の理由だ」

「私の起源が何かわかっていると?」

「もちろん!と言いたい所だが、まだ確証は無いんだよね。如何せん、君の起源が作用したと思われる事例がまだ少ないからね」

 

 それは仕方のないことだろう。この短期間に恐らくそれ、と言えるものを見つけただけでも凄いことだ。

 

「それで、悠の起源ってなんなの?」

「黒谷君の起源はズレ(・・)さ」

「「「「ズレ?」」」」

 

 私達の声が重なった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 結局、現状私がサーヴァントを召喚するのは不可能らしく、所長と藤丸が後二回の召喚を行うこととなった。

 つまり三人目、藤丸は老書文を召喚した。

 

「鍛えてください」

「主は、主人殿の友人か?ふむ、この老人に教えられることがあるかは分からんが………」

 

 凄まじいスパルタなことを知って半泣きになるのは少し先のことだ。

 そして所長の三人目なのだが、これがまた…………

 

「ライダー、ここに現界いたしました。天下無双の我が身、これよりあなたの力となりましょう」

「馬!?何で!?」

 

【悲報】所長、槍ニキ以外まともなサーヴァントが引けない。

 いや強いだろうけどさぁ…………

 召喚されたサーヴァント内の三分の二がイロモノというのはどうなんだ?

 因みに所長がサーヴァントを召喚出来る理由だが、恐らく起源まではトレースされないのだろうということで意見が纏まった。まぁこれだけイロモノ召喚してると影響はあるようにしか思えないが。

 

「後で人参を上げよう」

「なぬっ!人参ですか!!?」

「ほう、ご主人のご友人、よく分かっているな」

 

 ヤッベキャットも人参好きなの忘れてた。

 

「とりあえず、今日はもう休憩しましょう………精神的に疲れたわ…………」

 

 そう言う所長の姿は、酷く悲壮的を漂わせていた。

 なんか、お疲れ様です。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 翌日。

 第一の特異点に向かう目処が立ったらしく、私達はカルデアスの前にいた。

 

「今回は、最も歪みの少ない特異点を選ばせてもらったよ。と言っても、だから危険じゃないなんて事は有り得ないから、気を付けてくれ」

「場所は?」

 

 所長がロマンに尋ねる。今思えば、確かに今回の特異点はまだ簡単(・・)な方だ。歪みの大きな所は完全に状況が世紀末してたからな。まぁあそこもワイバーンとか飛んでたけど。

 

「1431年のフランス。100年戦争真っ只中にして、聖処女ジャンヌ・ダルクが処刑された地だ」

 

 知ってた。とはいえ顔は引き締める。先程は簡単(・・)などと言ったが、それはあくまで他と比べて(・・・・・)の話だ。この世界はもはや私の知るゲームの世界じゃない。紛れもない現実なのだ。なればこそ、楽観視だけは出来ない。

 

「三人とも、準備は良いかい?」

「うん!」

「ええ」

「はい」

 

  三者三様に頷き、コフィンの中に入る。これから始まるのは未知の(・・・)戦いだ。私というバグ(・・)が及ぼす影響故に、正史通りの展開は望めないだろう。

 だとしても、

 

『レイシフト、開始』

 

 これは、負ける事が許されないのだ。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 第一特異点 邪龍百年戦争オルレアン

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「ん………」

 

 目を開くと、僅かな光が目に入ってきた。周囲は青々しい草の臭いで満ちている。

 

「森……だと………!?」

 

 周囲には無数の気配がある。木々の隙間から見えたその姿は、頭が肉食獣で、二足歩行を行う化け物、すなわち獣人だった。

 

「は、はは…………!」

 

 やはりこの戦い、タダでは済まなそうだ。

 

 

 

 

 

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