私の召喚サークルがバグってる件について。   作:シーボーギウム

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今回クソ短いです。


錆びた銀と処刑者

「ん…………ここは………………?」

「ある廃屋です。体調はどうですかマスター?」

 

 ねーちんの質問に答える前に身体を起こし、動きなどを確かめる。多少筋肉痛のような痛みでもあるかと思ったが、そういう痛みも無く、体調という面では万全と言えた。

 

「擦り傷とかまで無いのは何で?」

「マスターが眠っている間に回復魔術で治療させていただきました。傷跡も残っていないと思いますが…………どうでしょう?」

 

 傷を受けた箇所を見るが、確かに傷跡一つ残っていなかった。ねーちん万能過ぎない?

 

「ありがとうねーちん…………マルタはどうしたの?」

「彼女は…………倒しました…………私の甘さ故にマスターを窮地に追いやってしまい、申し訳ありませんでした…………」

 

 ねーちんはそう言って頭を下げる。そう言うがまぁ、

 

「私がこうして生きてるってことはちゃんと駆け付けて獣人共殲滅してくれたんでしょ?なら別に気にしないよ」

「え…………あの、マスター、もしや覚えていないのですか?」

「へ?何が?」

 

 曰く、あの場にいた獣人の全てを私は皆殺しにしていたらしい。

 え?

 

「いやいやいや!!無理だよ!?まともな武器があったならまだしもあんな雑魚い武器しかない状況じゃ!!」

「ええ、そうでしょうね。ですが、マスターは武器だけで獣人達を殺していた訳ではありませんでした」

「どういうこと…………?」

「マスターのあの白い螺子が、物理的に(・・・・)獣人の肉体を貫いていました」

「は?」

 

 今度こそ完全に困惑する。それだけは有り得ない。何せ今まで相手と自分のステータスを同じにする力しか、どうやっても働かなかったのだから。

 

「…………とりあえず、この話はひとまず保留にしよう。どれだけ考えても、今の状況じゃ圧倒的に情報が足りない」

「分かりました…………」

 

 このままでは埒が明かないので話を一端切り上げ、状況を確認する。ねーちんから聞いたところ、ここは廃村の中でどうにか雨風だけは防げる程度には形が残っていた為に間借りしたらしい。

 

「ワイバーンねぇ…………」

「一体一体はそこまで強力な訳ではありませんでしたが、いかんせん数が多いですね。その上空から攻撃してくるのでかなり戦いづらいです」

「ねーちんと私だけで藤丸達を探すのは危険だね」

「ええ、守ればジリ貧に、攻めればマスターが狙われ窮地になるだけです」

 

 つまり、このまま行動するのは自殺行為にも等しいものということだ。現状では人員が全然足りない。

 

 あ、それなら増やせばいいか(・・・・・・・)

 

「ねーちん、召喚陣描ける?」

「待ってください!まだ体力が回復していない状態では…………!」

「大丈夫。それぐらいはどうにかなるよ。それに、このままここにいる訳にもいかない」

「………………分かりました。少し待っていてください」

 

 私は、起源の影響故にカルデアでサーヴァントの召喚は出来ない。仕組みは未だによく理解出来ていないが、何かが"ズレて"しまっているらしい。周りが焼却ているだけで"普通"の状態のカルデアでは、そのズレはどうやっても修正出来ないらしい。

 

 では、元が"異常"な特異点ならどうか?

 

 特異点にいる間、私の"ズレ"は強引にその特異点に合わせられるらしい。その状況であれば、サーヴァントの召喚も可能だろう、というのはダ・ヴィンチ女史の弁だ。

 

「マスター、ここならばいけそうです」

「んじゃあお願いねーちん」

 

 ねーちんが霊脈を見つけたらしく、そこに召喚陣を描いていく。一分と経たずに完成したそれは、私が冬木で、カルデアの召喚ルームで見たものと寸分違わぬものだった。

 

「いけるのと思います」

「ありがとう。それじゃあ、始めようか」

 

 右手を召喚陣にかざす。

 

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公」

 

 淡々と詠唱を紡ぐ。ねーちんを召喚した時は余裕が無かったため今見て知ったが、召喚陣から光が放たれている。その光は詠唱を進めるにつれて強まっていた。

 

「―――告げる(セット)

 

 これで約半分。光は更に強まり、召喚による魔力の高まりからか周囲に風が吹き荒れる。

 

「抑止の輪より来たれ!天秤の守り手よ!!」

 

 一際眩い光が放たれ、風邪もまた一層強く吹く。

 そして―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サーヴァント、アーチャー!」

 

 そう言って、彼女は敬礼をする。

 軍服に身を包み、ピシッと立つ彼女の身は、あまりにも幼い。

 

 それはそうだ、何せ彼女は神によって(・・・・・)その身を幼女にされたのだ。

 

ターニャ(・・・・)デグレチャフ(・・・・・・)中佐であります!!」

 

 ある世界線にて、悪魔とまで言われた幼女(・・)が、私の前に立っていた。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

(こちらデグレチャフ。距離1300の地点にワイバーンの群れを確認。殲滅を開始する)

(了解)

 

 ターニャさんが銃を構えてワイバーンの群れに突撃する。放たれる弾丸は着弾と同時に爆発、ないしワイバーンの硬い鱗を貫通していく。着実にその数を減らしていき、彼女がワイバーン共と接敵した頃には既に両手の指で足りる程度しかいなかった。彼女はそのまま銃に取り付けられたナイフ(?)でワイバーンの首を切断したり、ゼロ距離で爆発術式や貫通術式の込められた弾丸をお見舞いしたりしていた。

 

「強い…………ですね…………」

「飛べるってのがやっぱね」

 

 ねーちん大困惑である。まぁ、あの歳の幼女が戦闘方法的に相性が良いとはいえ、聖人の自分より効率的にワイバーン殲滅してるんだからそりゃあ困惑もするわ。中身はおっさんだが。

 というかとある世界の魔術の場合、あらゆる魔術に元となる逸話があるせいで対処法が明確な逸話が元の魔術はサクッと破られちゃうんだよね。確か飛行魔術自体はあったがほとんど使われてないのもそれが要因だったはずだ。

 

(こちらデグレチャフ。ワイバーンの殲滅を完了。索敵及び仲間の捜索を再開します)

(了解)

「めっちゃ楽になったね」

「ええ…………寧ろ仕事が無くて申し訳ないぐらいです…………」

 

 さっきからターニャさんがワイバーン共をサーチ&デストロイで片付け続けてくれているので、私とねーちんは特に何もすることなく安全に進めている。

 ちなみに、今はターニャさんが見つけた安全そうな城塞都市に向かっているところだ。

 ターニャさんマジ有能。カルデアに帰ったらエミヤのコーヒー飲ませて上げよう。

 

(ターニャさん大丈夫?疲れてない?問題があったらねーちんと交代してもいいからね?)

(いえ、お気になさらず。そちらの方は飛行手段を持ち合わせていないようですし、交代して打ち漏らしがあれば結局私も動くことになります。それは合理的じゃない)

(そ、そっか……無理はしないようにね)

(了解)

 

 うーん無愛想。初対面だしこんなものか。

 え?何故さん呼びか?いや、中身おっさんだと知ってるとちゃん呼びしずらかったっていうか…………

 

「…………?これは!マスター!戦闘音がします!!」

(ターニャさん!ねーちん曰く戦闘音がするらしい!それらしき場所ある!?)

(戦闘音…………っ!距離800!複数のサーヴァントと思わしき存在が戦闘中!!)

 

 ターニャさんにサーヴァントの見た目を確認する。聞いたところでは原作との違いは無かった。

 

(ターニャさんは先行して槍持った白髪の中年とそいつと共闘してるサーヴァントを襲撃して!ねーちんはもう少し近付いたら私を置いて即加勢して!)

(了解!)

「いいのですかマスター!」

「敵対してるなら十中八九マルタと同じく狂化がかかってる!あの人は狂化を押さえ込んでたけど、それはあの人が聖女で並外れた精神力を持っているからに過ぎない!聖女でも、彼女程の精神力も持ち合わせていない他のサーヴァントはダイレクトに狂化の影響を受けているはず!それはつまり、狂化によるステータスアップの恩恵を受けているということ!!」

「なるほど…………!」

 

 私個人の勝手な解釈だが、バーサーク・サーヴァントは言うなればバーサーカーとその他のクラスの二重召喚みたいなものだと思っている。残虐性が増しているだけで理性的で、宝具の使用制限すらされていないバーサーカー、そう言えば危険性が分かりやすいだろう。

 しばらくして、推定藤丸達が戦っている場所が私でも肉眼で見えるようになった。

 

「ねーちん行って!」

「はい!」

 

 支持すると共にねーちんが凄まじい速度で突っ込んでいく。私も出来る限り早く合流する為に全力で駆ける。

 後100と少し、そんなところで、異変は起こった。

 

「っ!ぶなっ!?」

 

 違和感を感じ、咄嗟に前方に転がる。すると、先程まで私の首があった場所を真っ白な刃がかなりの速度で通り過ぎていった。

 

「何が……!?」

「おやおやぁ、不意を突いたつもりだったんですがねぇ。どうやら勘がいいようですねぇ」

「は?」

 

 思わず間の抜けた声を洩らす。

 

「一応の自己紹介はしておきましょうかねぇ。サーヴァント、キャスター」

 

 そいつは、そこにいたのは―――

 

「左方のテッラです。まぁ、これから死ぬ貴女に自己紹介したところでしかたありませんがねぇ」

 

 完全なる異常者(イレギュラー)だった。

 

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