でろりんの大冒険   作:ばんぼん

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本日二話目にして今年最後の更新です。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
良いお年を。


今回の装備。

でろりん
 E 銅の剣
 E 旅人の服+革の胸当て
 E 鱗の盾

 船旅前に購入済み。
 動きやすさ重視。


13

「お前ら全員ボコってやる!!」

 

 俺は右手に光球を産み出した。

 

「でろりん君! 落ち着くんだっ。俺達は君と闘う気がない」

 

 こっちは臨戦態勢だってのに、この優等生は何時まで甘い事言ってんだ?

 闘う気はないけど捕まえる? 抵抗されると考えてもいなかったのか?

 

「都合の良いこと言ってんじゃねーよ! イオ!」

 

 密集する3人の足元を狙った光球が着弾する。

 

「きゃ」

「大丈夫か!?」

「いきなりイオなんて何考えてるの!? 危ないじゃない!」

 

「フザケロっ!!」

 

 コイツら馬鹿じゃねーのか? 一体何をしに来たつもりなんだ?

 

 背負う銅の剣を手にした俺は、驚く3人に走り寄ると、アポロの胸を目掛けて鞘を抜かずにフルスイングを叩き込む。

 

「くらえ! 落合流首位打者剣!」

 

「ぐっ!?」

 

 小さく呻いたアポロが後退り尻餅付いて倒れ込む。

 思ったより吹き飛ばないな。不殺ずの対人戦なら棍棒とかの方が良いのかもしれない。

 

「アポロ!? あなた、やって良い事と悪い事の区別も付かないの!?」

 

 アポロを見ていたマリンが首を振り様睨み付けてきた。

 

「そういうアンタは戦闘中かどうかの区別もつかないんだな? メラ!」

 

 適当に放ったメラが呆然としていたエイミの肩の辺りに着弾して掻き消えた。

 

「エイミ!? 子供に何するのよ!」

 

 激高したマリンがひのきのぼうを振りかざす。

 

「だったら連れて来んな!!」

 

 何処までもイライラさせてくれる。

 

「あなたが大人しく捕まれば良いんでしょ!?」

 

 一方的な言い分とひのきのぼうを振り回し、迫るマリンを後退りしながら交わしていく。

 

「お前らみたいな奴に捕まる訳にはいかねーんだよ!! 遊びでやってるんじゃない!」

 

 物見遊山でこんな所にノコノコやって来たコイツらには捕まりたくない。

 コイツらに捕まるくらいならバロンに捕まる方がいくらかマシだ。

 

「きゃっ」

 

 マリンが前のめりに成った所で横に交わし、足を引っ掛けて転ばせた。

 

「姉さん!? バギっ!」

 

 近くで見ていたエイミが横軸の″バギ″を放ってくる。まるで見えない真空のカッター状態のバギは交わしにくい。

 

「ちっ、バギっ!」

 

 後ろに跳んで縦軸のバギを放ち、相殺を試みる。″パァン″と乾いた音が響きソニックブームが巻き起こる。

 

「嘘!? この子、賢者なの?」

 

 魔法使いの魔法であるイオと、僧侶の魔法であるバギを使った事で俺が普通でない事に気付いた様だ。

 

「マリン、エイミ! 離れろ!」

 

 立ち上がったアポロの手のひらの上で大きめの炎が燃えている。

 声に従ったマリンとエイミは、炎の斜線軸を確保しつつアポロの元へと駆けていく。

 

「君がその気ならもう容赦はしない! メラミ!」

 

 置かれた状況が判っていないのか? 容赦しないはこっちの台詞だ。

 優等生は負けるまで、自分が驕り高ぶり上から目線で人に接している事に気付かないんだろな。

 

「やっと闘う気になったのか!? メラミ!」

 

 俺のメラミとアポロのメラミがぶつかり一際大きな炎を上げて掻き消えた。

 

「何!? 相殺された?」

「嘘!? アポロのメラミよ!?」

 

「ふんっ。これくらい賢者でなくたって出来るっつーの」

 

 俺は強気な態度を崩さないが、内心で焦っていた。

 

 驚き集まるアポロ達に一瞥くれて牽制しつつ思考を巡らせる。

 

 流石に未来の三賢者。

 その幼さでメラミを使いこせるとは思わなかった。

 ″相殺された!?″と驚いていたがそうじゃない。

 アポロのメラミは俺のメラミを飲み込んで燃え尽きたんだ。メラ系の威力は僅かであっても確実に向こうが上だ。

 俺がメラミを覚えたのは一年前、自己流の修行を始めて四年後の事だ。

 それに比べてコイツはどうだ?

 年齢はアポロの方が上だが修行期間はどうだか判らない。

 もしかしたら修行に入ってすぐかもしれないし、俺以上に研鑽を積んでいるかもしれない。

 …ちっ。こんな事を考えたって仕方ないってのに…俺って賢者に対するコンプレックスでもあるのか?

 

「なるほど。無理を通そうとするだけの力はある様だね」

 

 アポロはまだまだ余裕の上から目線を崩さない。

 

「無理じゃねーし、無実だっつーの」

 

「いきなり攻撃しかけておいてまだそんな事を!?」

 

「はぁ? 抵抗するって宣言しただろうが!」

 

「そんなのあなたの勝手な理屈よ!」

 

 ダメだコイツら。

 一体何を聞かされて此処に来たんだ?

 

「だからっ! 俺は何もしてねぇから捕まる理由が無いって言ってるだろ!」

 

 こんな所でこんな奴等と遊びでいる暇はない。

 

「君の言い分は捕まえた後にゆっくり聞かせてもらうよ」

 

「捕まえられるもんならやってみな! バギっ!」

 

 土を掴んで放り投げ、竜巻状のバギを発生させると″砂嵐″の完成だ。

 

「卑怯な!」

「エイミ!」

 

 アポロは腕で顔面を覆い、マリンはエイミを庇って背を向けている。

 

「卑怯もクソもねーよ! ヒャド!」

 

 多人数を相手どるんだから、戦力を分断しての各個撃破は当然だろ?

 卑怯呼ばわりされる謂れはないし、コイツら何時まで物見気分なんだ?

 こっちはこれでもアルキード住人の命を背負ってんだ。賢者ごっこに付き合ってられるか。

 

 俺の放ったヒャドは″ピキピキ″音を立てて地面を走り、アポロの足元を氷付かせる。

 

 別にアポロが嫌いで狙ってるんじゃない。

 原作通り、コイツが一番厄介なんだ。メラミの直撃は食らいたくない。

 

「姉さんっ!! 髪が!?」

「良いのよ。エイミが無事なら」

「貴様!? もう許さん!! 女の髪を何だと思ってるんだ!」

 

 どうやら、さっきのバギがマリンの髪を切り裂いた様だ。

 そういや優等生のアポロは原作でも似たような事をほざいていたな。

 女がどうこう言うなら戦場に連れてくるなっての。

 

「はいはい、なんかもう面倒くせーや」

 

 俺は右手を天にかざし、光球を産み出していく。

 

「アレは、イオラ!?」

「そんな!? なんであんな子供がっ」

 

 マリンとアポロが焦っている。子供がイオラは賢者的にも凄いのか?

 

「さぁ? 相性が良かったんじゃね? いけ!イオラ!」

 

 俺の放った光球は3人の頭上を飛び越え、彼等の背後に着弾すると″ドォーン″と爆音あげて破裂する。

 

「きゃー」

「うぁぁ〜」

 

 背後から衝撃を受けた3人は、前のめりに突っ伏した。

 

「君はっ…それだけの力が有りながらっ悪に、走ると言うのか…?」

 

 両腕を大地に付いたアポロは上体を逸らし、息も絶え絶えに声を発する。

 

「もう、勝手に言ってろ」

 

 コイツら視点じゃ悪に違いないし、訂正するのもアホらしい。

 

「だけど、僕は倒れるわけにはいかない!」

 

 気合いと共に立ち上がったアポロは両足を軽く拡げ腰を″ぐっ″落として、戦闘継続の意思を示す。

 

「知るかっ! イオ!」

 

 ふらつくアポロの懐に踏み込み、イオの光球を手にした掌底をドテッ腹に叩き込む。

 

 親衛騎団″シグマ″の必殺技の下位互換。魔法の威力も低く相手を押さえつけない為、主な目的は吹き飛ばしだ。

 

「アポロぉーー!!」

 

 落合流首位打者剣よりも良く飛んだアポロが大の字に倒れ込む。

 

「さて、これでチェックメイトだな」

 

 銅の剣を鞘から引き抜き倒れるアポロの首筋に突き付ける。

 

「この卑怯者!」

 

「はいはい、何でも良いからエイミだっけ? 腰のロープで姉さんを縛るんだ」

 

「嫌! そんなことしたら姉さんが殺されるわ」

 

「やらなきゃコイツが死ぬんだけどな?」

 

 なんだこれ?

 

 もう完全に悪役だな。

 でも、これ以上抵抗させないためにも動きを封じておく必要がある。

 

「エイミ、縛りなさい」

 

 唇を噛み締め″キッ″と俺を睨み付けるマリンの方が物分かりはいいようだ。

 

「次はマリンの腰のロープを使ってアポロを縛るんだ」

 

 泣きながらマリンを後ろ手に縛ったエイミは、逆らうことなくロープを手にしこっちに歩いてくる。

 

 俺はエイミとすれ違い、縛られ座るマリンの背後に回りこむ。

 

「怪我してんのか…」

 

 マリンの頬に一筋の赤い線が走っている。

 確か原作でも顔に傷を負ってたし顔難の相でもあるのか?

 

「誰のせいよっ!?」

 

「戦闘を舐めてた自分のせいじゃね? ホイミ」

 

 原作のマリンは綺麗な顔だったし、とりあえず癒しておくか。

 

「…っ!? それで罪滅ぼしのつもり?」

 

「全然。 髪も生えてこないし罪滅ぼしにならないだろ? でも、短い方が似合ってんじゃね?」

 

「え? そ、そうかしら?」

 

「縛ったわ! これで良いんでしょ!!」

 

「ん? ホイミもかけて良いぞ」

 

 マリンの背後で銅の剣で掌を″ポンポン″叩きながら軽く言ってやる。

 

 程無くアポロが意識を取り戻す。

 

「僕は、負けた、のか…」

 負けを悟ったアポロは静かに呟き、後ろ手に縛られたまま胡座を組んで座り込むと神妙にしている。

 エイミはそんなアポロに寄り添い泣いている。

 

 まさか、この敗北で心が折れたりしてないよな?

 

 三賢者が居なくなったらちょっと不味いぞ!?

 

 一応確認しておくか。

 

「上には上がいる、って言いたいけど、お前ら何年修行したんだ?」

 

「…1年半よ」

 

「ふーん。じゃぁ俺が勝って当然だな? こっちは五年、一日の長ってヤツだ」

 

 てか、一年半でコレか。

 メラミ基準なら俺の4年はアポロの一年半だ。やっぱ原作組は素質高いな。

 

「次は…負けない!」

 

「はいはい、せいぜい頑張れば? ま、お前が三年修行を詰めば俺も三年。差は縮まらないんだけどな?」

 

 実際は三年で逆転されるんだろな。

 

「だったら君以上の修行を積むまでだ!」

 

「私からも質問良いかしら?」

 

「何? あんまり敵と馴れ合う気は無いぞ」

 

 十分馴れ合った気もするが、基本的に原作組とは関わりたくない。

 

「敵? そう、私達は敵だったのね…」

 

「はぁ? 何だと思ってたんだよ? 大体お前等、戦闘中も甘過ぎだろっ」

 

「そう、かもしれないわね…いえ、そうじゃなくて! あなた勇者なの?」

 

「姉さん! 何言ってるの!? こんなヤツ勇者のふりした偽物よ!」

 

 いや、勇者のふりとかしてねーし。

 

 ″がく″っと肩を落とした俺は、バロンを懲らしめたまぞっほと合流し、森の中へと消えていくのだった。

 

 

 

 

 地面に視線を落としトボトボ歩いた俺は、ついぞ上空から見下ろす影に気付く事が無かった。

 







主人公も勝手ですね。


本命 ○○○○
対抗 ○○○○○○
穴  家庭教師
大穴 カンダダ子分・Z

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