でろりんの大冒険   作:ばんぼん

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「・・・何故生きている?」

 

 様々な思いが駆け巡る中で、俺が絞り出せたのはこの言葉だった。

 

「その声……アバンではないな?」

 

「ンフフッ……言ったじゃないか″邪魔が入る″……とね。ボクの予言は悪い方に当たるんだよ」

 

「フン……道化がっ……アバンでないなら用は無い。卑怯者の相手は貴様がお似合いだ……任せるぞ」

 

「勿論だよ……ボクは……コイツを殺したくて、殺したくて……仕方なかったんだ」

 

 不意討ちを防がれた事により後ろに飛び下がって距離を取った俺の眼前で、図らずも背中合わせに成っている二人が俺を無視して会話を行っている。

 まさか、あのハドラーに″卑怯者″呼ばわりされる日が来ようとは……。

 いや、まぁ、実際卑怯なんだけどなっ。

 

 っと……自虐的になってる場合じゃない。

 

「待ちやがれっ!」

 

 俺を残してアバンの元へと行こうとするハドラーに叫び掛け、左手を下から持ち上げたところで″キンッ″と金属音が響き、籠手に何かがぶつかった。

 

「残念……駆け出していれば首を落とせたのに……悪運は良いようだね」

 

「テメぇっ……何しやがった!?」

 

 何をしたのか見当は付いている。

 頭の飾りに仕込まれた″見えない剣″を俺の首の位置に合わせて空間に固定したのだろう。

 原理や理屈はサッパリ判らないが、原作でも使っていたし籠手に当たったのは″見えない剣″と考えて良いだろう。

 そして、この″見えない剣″こそがキルバーンと闘う上で最も厄介な攻撃と言える……考えてみれば、死神の笛に″見えない剣″、極め付きが黒のコア……そもそも本体自体が人形で、コイツも所詮はアイテム頼みの道化師だな。

 ガキの頃ならいざ知らず″タネ″を知る今の俺なら負けはしない……いや、負けられないんだ。

 アバンの援護へ向かう為にも、なんとしてもコイツを倒さないといけない。

 

 その為には、クールに徹するんだ……俺がマトリフから学んだのは魔法だけじゃない。

 

「ンフフフッ……そんな事を敵であるキミに教える必要があるのかい? ボクは……キミのせいで全てを失ったんだっ……″あの日″ボクの計画は完璧だった……あの女とキミがっ、余計な真似をしなければっ」 

 

 怒りの仮面を被ったキルバーンは、大袈裟に身振り手振りを交えてあの日の事を語りつつ、″見えない剣″を設置していく。

 その証拠に、飾りのラインが一本ずつ消えていく。

 

 話術で俺の注意を逸らしつつ、俺の周囲に見えない剣を仕込んでいく……そんな算段だろう。

 厄介な攻撃だが″タネ″を知る俺から見ると、この行動は滑稽でしかない。

 

 俺は……暗殺に備えてコイツへの対処方は考えてきたんだ……余裕ぶって罠を仕掛けていれば良い。

 直接″見えない剣″を投げてこない、その悪趣味な余裕が命取りだって教えてやるぜ。

 

「はぁ? テメェの無能を棚に上げて人のせいにしてんじゃねーよ!!」

 

「……キミ達が余計な真似をしなければ、バラン君は護るべき人間に殺されていたんだ……見物だったと思わないかい?」

 

 挑発を受け流したキルバーンが淡々と語り続け、飾りのラインは一本、又一本と減っていく。

 俺としてはササッと仕掛けて欲しいのだが焦りは禁物だ。

 

「何が完璧な計画だ? 馬鹿じゃねーの? あんな炎でバランは死なねぇっつーの!」

 

 死んだのはソアラとアルキードの皆さんだっつーの……とは口が裂けても言えないな。

 

 てか、ピエロは何処だ?

 

 俺の周囲をゆっくり歩くキルバーンに合わせて視線を動かしているが、ピエロの姿が見当たらない。

 そして、視線の先では起き上がったアバンと、悠然と歩くハドラーが今にも接触しようとしている。

 

「それが……キミ達のせいでボクの死神としての威厳はガタ落ちだよ……だけど……それも今日までだ……キミが世界樹を不自然に離れた事で、漸く暗殺の許可が降りたんだ」

 

 キルバーンにとっては罠を仕掛ける時間稼ぎ、俺にとっては″罠を仕掛け終えるまでの時間稼ぎ″の会話の筈が、興味深い事を言い出した。

 

「なんだそりゃ? たまたま世界樹を離れりゃ暗殺対象かよ? そんないい加減な事を言ってるから計画とやらも失敗するんだ!」

 

「ンフフフッ……キミの魂胆は読めてるよ……ボクを挑発して情報を引き出そうというのだろ? その手には乗らない……お喋りの時間はコレまでだ……さぁ、掛かってきたまえ」

 

 ちっ……肝心な事を話す気は無いらしい。

 

 右手に握ったサーベルで左の掌を″ポンポン″と軽く叩いて余裕を見せるキルバーン。

 その頭の飾りのラインは全て消えており、全てを仕込み終えたと伺い知れる。

 

「そうかよっ!」

 

 気にならないと言えば嘘になるが、今は問答している場合じゃない。

 キルバーンの向こうで再開されたアバンとハドラーの闘いは、アバンの防戦一方で進んでいる。

 一刻も早く駆けつけないとアバンが死ぬ・・・そんな事は絶対にさせない!

 俺の為にも、ここでアバンを死なせる訳にはいかないんだ。

 

「余裕のつもりかい? ボクを倒さない限りアッチには行けないよ……さぁ、来たまえ」

 

 キルバーンが両手を拡げて待ち構える。

 ″見えない剣″を仕込み終え、俺が切り裂かれるのを期待しているのだろうがそうはいかない。

 

「馬鹿がっ……バギマ! ヒャダルコ!」

 

 右手で竜巻状の風を起こし、左手の氷結呪文を組み合わせる。

 

 俺の周囲が猛烈な吹雪に包まれる。

 

「ナニっ!?」

 

 吹雪が俺とキルバーンの間の空間に、不自然な氷柱を産み出した。

 

 ″見えない剣″が厄介なのは見えないからであり、こうして視認出来る様にしてやれば恐れる事は何もない。

 

「馬鹿に構ってる暇はねぇ!! くらえぇぇっ!!」

 

 一網打尽にする為に、全てを仕込み終える迄待ったんだ。

 仕込みを終えた今、キルバーンの与太話に付き合う暇などない。

 

 雄叫び上げて左手の爪を突き出した俺は、氷柱にぶつかるのもお構い無しにキルバーンへと一気に迫る。

 

 ″パキン、パキン″と音を立て、氷柱と一緒に見えない剣が砕け飛ぶ。

 

「そ、そんな……ボクのファントムレザーが……こんな方法で……!? それに、キミは……何かが……おか、し、い……」

 

 黄金の爪に胸部を刺し貫かれ、抗う様に籠手に手をかけたキルバーンは、演技なのか何なのか絶え絶えに言葉を発すると、力無くその手を離し自立するのを止めた。

 キルバーンの重さが籠手を伝わり俺にのし掛かる。

 

「騙し合いは、俺の勝ちだ!!」

 

 腰に差した剣を引き抜いた俺は、躊躇うことなく一閃させると人形の首を刈り落とす。

 マグマなのかオイルなのか、切断面から赤い何かが溢れ出た。

 

 キルバーンの胸部から黄金の爪を引き抜いた俺は″ビュッ″と虚空に振るって液体を払い落としておく。

 原作通りなら腐蝕性のマグマで爪は暫くの間使い物にならないし、アバンに渡した右籠手も砕けているし、俺の装備は早くもボロボロだ。

 

 爪を引き抜き支えと首を失った人形が″ドサリ″と力無く崩れ落ちる。

 ピクリとも動こうとしないキルバーンだが、まだまだ油断は出来ない。

 コイツはピエロが遠隔操作で動かしている人形で、首を落とした位じゃ全然普通に動く……背を向けた瞬間、後ろから刺されでもしたら洒落にならない。

 胴体を消し去る時間的な余裕はないが、落とした首の仮面を剥いで黒のコアの有無位は確認しておくべきか……?

 

 横たわる胴体に気を配りつつ、転がる首に近寄り前屈みになった、

 

 その時!

 

『後の事は頼みます!!』

 

 アバンの叫びに″バッ″と振り返り視線を向ける。

 

 アバンが向かい合ったハドラーのコメカミに、両手の指先を差し込む光景が飛び込んでくる。

 

「はぁ!? 早まってんじゃねぇ!!」

 

 何でだ!?

 確かに超魔ハドラーは強い……だが、防御に専念すれば打ち合えない相手でもない筈だ。

 現にアバンは下がりながらハドラーの攻撃をいなしていたじゃないか!?

 それが何故、こうも簡単に自爆を選ぶ!?

 

『メ・ガ・ン・テ!!』

 

 アバンはメガンテを唱えた!

 命の輝きが広がり爆発を巻き起こす。

 

「馬鹿が……後、1分も有れば……」

 

 駆け付けられたのに…。

 続く言葉を飲み込んだ俺は、爆心地の上空を凝視する。

 図らずも原作通り起こったこのメガンテで砕け散るのは″カールの守り″であり、アバンの肉体は爆発の余波で彼方へと吹き飛ぶ筈だ。

 

 ・・・見えた!

 

 無防備なアバンが西の空へと飛ばされていく。

 西なら大丈夫か?

 結構な距離はあるが原作を信じるなら海上に到達するハズ……それにしても原作、か。

 

 ダイとポップとアバンがいるデルムリン島にハドラーが来れば、似たような出来事が起きるのは避けられなかったのだろうか?

 俺は大魔王だけじゃなく、目に見えない歴史の修正力とも戦わなければいけないのか……?

 

「ンフフフッ……アバン君が死んだようだね……次はキミの番だよ……」

 

 自らの首を小脇に抱えたキルバーンが立ち上がっている。

 

「…っ!? テメェ! 何故生きている!?」

 

 くそっ、めんどくせぇ!

 コイツが生きてるなんざ想定内でイチイチ驚いてみせるのも鬱陶しいが、無視をして余計な疑念を抱かせたらもっと面倒な事になりかねない。

 

「自己紹介がまだだったね……ボクは死神……死神キルバーンだ。死神が死んだらちょっとカッコ付かないだろ?」

 

「黙れっ道化! だったら生き返れないようにバラバラにしてやるよ!!」

 

 時間がないのにイライラさせてくれる。

 

「おぉっと……今日はここまでだ……キミがハドラー君に殺され無い事を祈っておいてあげるよ……万が一、悪運よく生き延びれば……その時こそ、ボクが殺してあげる」

 

 首を持たない方の手で俺を制したキルバーンは、仮面の下の瞳だけで笑みを浮かべると音もなく消え去った。

 

 何が祈るだっ。

 人形なんかに″心配″されるまでもなく、俺は絶対に生き延びてやる。

 その為には……いち速く超魔ハドラーを何とかしてダイ達を救い、アバンの救助に向かわなければならない……ここで3人を失えばどの道俺に未来はないのである。 

 

「ちっ……何だよ……この無理ゲーは」

 

 メガンテの余波で巻き上がった土煙をボンヤリ眺めた俺は、視界が戻るのを待って独りぼやくのだった。

 








でろりんはバー○ナックルでキルバーンに突っ込んだ様です。
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