でろりんの大冒険   作:ばんぼん

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 『ルイーダの酒場』

 

 目の前にある横に大きい二階建ての建物は、ドラクエ3においてロトと仲間達が出会った酒場と同じ店名をしている。

 元々″ダイの大冒険″はドラゴンクエストの二次創作とも言える作品だし、符号が多いのは其ほど不思議に感じない。

 だから作中に登場しなかった″ラーの鏡″もこの世界に存在すると信じる事が出来る。

 

 奇妙な符号具合から考えて″カンダダ″は盗賊的な存在とみて良い筈だ。

 俺達の様な金を持っている子供とか典型的なカモだろう。

 獲物を選別した門番の男が合言葉を伝え酒場に案内し、ノコノコ現れたカモを酒場の仲間が料理する。

 こんなところだろう。

 

 俺の描く青写真は、この状況を逆手にとって酒場にタムロする″カンダダ一味″をブッ飛ばしお宝であるラーの鏡の情報を引き出す、って感じだ。

 と言っても別に此方から事を荒立てる気はないし、話し合いや金で解決出来るならソレに越したことはない。

 勝てそうにない相手なら金ダケ渡してサッサと退散するつもりだしな。

 一度死んでいる俺にとって、命より大事なモノはない。

 本来ならこんな厄介そうな事に首を突っ込みたく無いのに、それもこれも全部バランのせいだ!

 

 

 

「こんにちは。泊まりたいんだけど、お部屋空いてる?」

 

「あら? 可愛らしいお客様ね。お部屋はあるけど高いわよ? お嬢ちゃんに払えるかしら」

 

 物怖じ知らないずるぼんが、酒場前でホウキを持って掃除する女将らしき女性に声をかけた。

 屈めた腰を伸ばして此方を確認する女将は、目元のホクロが特徴的なタレ目をしているが、そのタレ目が嫌なのか、左目は前髪で完全に隠されている。

 相手が子供のずるぼんだからか、物腰柔らかくオットリ口調で話しているけど、自然な動きに隙がないし、何となくタダ者でないと思えてならない。

 

 俺の気のせいなら良いんだけど、気のせいじゃないなら、いよいよもって赤信号だ。

 人の良さそう顔をして、実は悪役!ってベタベタな展開が訪れそうだ。 

 

「お金なら有るわよ。それに、カンダダさんに紹介されたからサービスしてよね」

 

「あらあら? お嬢ちゃんがカンダダさんに…?」

 

「そうよ! サービスしてくれるんでしょうね?」

 

「勿論よ。お客様は神様ですから」

 

 「うふふ」と笑った女将の案内で建物中央にある木製の両開きの扉を開け、ルイーダの酒場内へと足を踏み入れる。

 

 酒の匂いが籠る部屋に入った俺は、すかさず室内をチェックしていく。

 室内は横長の長方形。

 すぐ左にはカウンターがあるもスペースは狭く、直ぐ後ろに白い壁があり大きな絵画と小さな扉がある。

 建物のほぼ中央の扉から入った割に左のスペースが狭すぎるし、小さな扉の向こうには台所でもあるのだろう。

 正面には二階へと続く階段があり、右手の広いスペースには丸いテーブルが七つ。

 日没前だと言うのに既に三つものテーブルが埋まっている。

 ソコに座り酒盛りをしている男達は・・・全部で8人か。

 この位の数なら、不足の事態が起こってもどうにかなりそうだ。

 

「あら? 僕ちゃんは緊張しているのかしら? そんな所に立っていないで此方にいらっしゃい」

 

 素早く確認したつもりがいつの間にか取り残されていた様だ。

 カウンター内に入った女将が片肘をついて手招きしている。

 

「緊張なんかしてないし。その絵がちょっと気になったダケだよ」

 

 招きに従いカウンター前の椅子に腰掛けると目の前にあった絵画を指差し誤魔化しておく・・・って!?

 

「絵なんてどうだって良いでしょ? そんな事より早くお部屋に案内してよ」

 

「あら?そう? この絵はとても良いものなのに残念ね」

 

 どうだって良いことはない。

 女将と話始めたずるぼんを他所に、絵に描かれた人物を確認していく。

 

 まず目を引くのは、中央で両手を腰に当てドラクエ1の勇者を彷彿させる鎧を身に付けた特徴的な巻き髪の人物、これは勇者アバンだろう。

 そしてその両隣に並び立つ戦士と僧侶はマァムの両親。

 その僧侶の横でそっぽを向いて鼻くそをほじる人物は″マトリフ″に違いない。

 マトリフの横には女将が描かれている。

 

 反対側に目を向けると、戦士の横には丸いサングラスを掛けた老人、これはマァムの師匠、なんとかって老師だろう。

 問題は、老師の隣に描かれた人物だ。

 丸いお腹にちょび髭を生やし、白と水色の縦じま服を着て巨大なリュックを背負ったこの人物。

 

 これはどうみてもトルネコじゃないか。

 

 なんだこれ?

 ここって″ダイの大冒険の世界″じゃないのか?

 それとも作中で語られなかったダケで、原作にもトルネコっぽい人物が存在していたのだろうか?

 うーん? 判らない。

 

 取り敢えず女将に聞いてみるか。

 

「ねぇ、この絵の・・・って!?」

 

 絵画から視線を外し女将の方に目を向けると、ずるぼんが10000G金貨をカウンターに乗せていた。

 

「ネェちゃん! 10000Gも出したらダメだよ!!」

 

「もーっ! 急に大きな声出さないでよ。 200Gもするんだから10000Gで払ってお釣りを貰うしかないでしょ」

 

「あ、そっか」

 

「あらあら? そんな大きな声で10000Gも持ってるって言っても良いのかしら?」

 

 女将は意味有り気に両肘をついて顎の下で手を組み微笑んでいる。

 酒を飲む男達の視線が背中に突き刺さる。

 ″ガタン″と椅子を引く音の後、床を踏み鳴らし此方に近付く足音が背中越しに聞こえてくる。

 

 はぁ…やっぱりか。

 ベタベタな展開だけど、飲食物に毒を入れたり、寝込みを襲われたりする陰湿な展開よりマシか。

 考えように依っては探る手間が省けたと言えるし、適当にあしらって話を聞き出すとしよう。

 

「おいおい。マジに10000Gじゃねーか」

 

 振り返って声の主を確認すると、″如何にも″って感じの男が俺の頭上でカウンターを覗き込んでいる。

 その男の背後には更に2人の男。

 残りの男達は初期位置でグラス片手に此方をニヤニヤ伺っている。

「ナニカゴヨウデスか?」

 

 見た目と推測ダケで判断するのは良くないし、一応話し合いを試みる。

 

「ぎゃははっ。お前の悪人面見てビビってんじゃねーか」

 

 ビビってるんじゃなくメンドクサイだけです。

 

「おいおい、男前捕まえてそりゃねーだろ?」

 

「ぎゃはははっ、よく言うぜ」

 

 俺の頭上で激しくどうでもいい会話が繰り広げられていた。

 

「アンタ達、ウザイんだけど?」

 

 その流れを止めたのはずるぼんだった。

 

「…へっへへ。強気な嬢ちゃんだな。そう邪険にしなくてもいいだろ? 俺達は嬢ちゃんに良い話を持ってきてやったんだぜ?」

 

「…良い話ってナニよ?」

 

 疑る事を知らないずるぼんがですら、ジト目で聞いている。やっぱり人間見た目が大事か。

 

「嬢ちゃんには判らないかも知れねーが、そのメダルは大金なんだぜ?」

「悪ーいおじさんがソレを奪いに来るかもしれないだろ? だから心優しき俺達が嬢ちゃん達の用心棒に成ってやろうと思ってな」

「まぁ俺達も暇じゃないからタダって訳にはいかねーのよ。1週間で1人頭3000Gでどうよ?」

 

 代わる代わる話す3人の男達。激しくウザイ。

 

「おじさん達バカだで。そんな事したらおで達のマネーが無くなるだで」

 

 素早く計算したへろへろが反論する。

 数字は苦手でも金の計算だけは得意だ。

 

「ふんっ。そんなこと言われなくたって判ってるわよ。 だいたい、どうしてアタシがお金を払ってこんな不細工な連中と居なくちゃなんないのよ? お金を貰ってもお断りだわ」

 

 言うだけ言ったずるぼんは″ぷいっ″と男達から視線を外した。

 

「そうだね。こんな弱そうなおじさん達にお金を払うのは勿体無いよ」

 

 俺も挑発しておく。

 

「このクソガキゃ…下手に出てりゃイイ気になりやがって」

 

 一体いつ下手に出たのか小一時間問い詰めたい。

 

「舐めやがって…俺達を″カンダダ一味″と知っての狼藉か?」

 

 はい、決定。

 

 俺が椅子から飛び降りると同時に、三下3人組の向こうに座る男達が″ガタッ″と椅子を引いて立ち上がったのが見えた。

 

 合流されたら厄介だな。

 

「ネェちゃんから離れろ!」

 

 俺は腰を落とし脇を絞め、右手を男の腹に向かって突きだした。

 

「ぐはぁっ」

 

 俺の″正拳突き″を土手っ腹に食らったチンピラAはテーブル席に向かって吹っ飛んだ。

 自分達に向かって飛んできたチンピラを避けた5人の男達は「ほぅ?」と感心したような声を上げ歩みを止める。

 

 なんだ? 仲間じゃないのか?

 

「このガキャぁぁぁ!!」

 

 チンピラBが奇声を上げて両腕を振り上げた。

 

 足元がお留守ですよっと。

 

 しゃがみこみ身体を一回転させてチンピラBの足を払う。

 ″ずでん″と盛大に転がったチンピラBの腹の上に両足を揃えて飛び乗った。

 

「ぐへぇっ」

 

 変な叫びを上げてチンピラBは白目を向いた。

 

 取り敢えず、後1人だ。

 

 そう思った瞬間″ガシッ″と左手首を捕まれ″グイッ″と持ち上げられて身体が宙に浮いた。

 

「捕まえちまえばコッチのもんよ」

 

 確かに悪くない。

 男の眼前でぶら下がる俺は無力に近い。

 

 但し、それには俺が″魔法を使えなければ″って条件が付くんだな。

 

「お酒臭いんだけど? ヒャド!!」

 

 自由な右手をチンピラCの顔に向け呪文を唱えると、男の鼻から下が凍りつく。

 

「ん〜〜!?」

 

 俺の手首を放したチンピラCは声に成らない声を上げ、凍り付いた顔を両手で押さえている。

 

「ふげぇ!?」

 

 手を離され床に着地し素早く木の剣を抜いた俺は、チンピラCの顔面を引っ張たいて意識を刈り取るついでに氷を砕いておく。

 

「そっちのおじさん達はどうするの?」

 

 右手に握った木の剣をテーブル席で動かない男達に突き付け牽制し、左手でずるぼんの手を握り締める。

 

 あれ?

 

 もしかして、ネェちゃん震えてる?

 

 振り替えってずるぼんの顔を確認すると、小刻みに身体が震えピンク色の唇が血色を失っていた。

 

 あ、ミスったかも…。

 

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