でろりんの大冒険   作:ばんぼん

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「見てこれ! 可愛いでしょ!」

 

 水玉模様ならぬスライム模様のワンピースを身に纏ったずるぼんが二階から駆け降りてくる。

 ルイーダの酒場の一階で、ずるぼんによる、ずるぼんの為の、ずるぼんダケのファッションショーが延々と繰り広げられていた。

 

「うん、そうだねー、似合ってるよー」

 

 何が可愛いのかさっぱり解らないが、本人が満足しているなら由としよう。

 

「もー! ちゃんと見なさいよ! このスライム達一匹ずつ表情が違うのよ」

 

 俺の前で″クルリ″とターンを決めたずるぼんが、チャームポイントを解説している。

 でも、それって手作業故のムラじゃないのか? 等と声に出して言おうモノなら後が怖いので黙っておいた。

 でもこのままだと不味いんだよな。ずるぼんは順調にずるぼんへと育っている気がしてならない。

 半日と掛からず10000Gも使い切るとは流石に予想外だ。

 

 

「ホントだースゴいやー」

 

「でしょ?」

 

 俺の適当な誉め言葉に気を良くしたずるぼんは、テーブル席に向かって歩いていくと、真っ昼間から酒を飲む男達の前でもターンを決めている。

 我が姉ながら順応性が半端ないな。すっかり馴染んでしまってる。

 

 それはそうと、大量に買った服は何処に仕舞っておくつもりなんだ?

 まさか、俺にもリュックを背負えと言わないよな?

 トルネコじゃあるまいしリュックを背負ったら戦えないぞ。

 

 トルネコと言えばファッションショーの合間にルイーダに聞いてみた。

 ルイーダによると、あの絵画の人物はやはり旅の商人″トルネコ″であり、勇者アバンをお金の面で支えていたそうだ。

 と言ってもお金を直接渡していた訳でなく″商売の神に愛された″トルネコがパーティーに参加する事で、ほぼ100%になるマネードロップ率を活かして得られるゴールドを山分けしていたそうだ。

 トルネコはドロップ率を上げる係で、勇者パーティーは倒す係。

 分け前の比率は勇者パーティーの構成次第で異なっており″エロジジィ″が居れば勇者側が8割、居なければトルネコが8割だったらしい。

 本来のマネードロップ率は3%も無いらしく、例え2割の分け前でも十分な金額になり、勇者は勇者のするべき事をするダケで、トルネコはそんな勇者に付いていくダケで、お互いに得をする見事な共存関係だったようだ。 勇者の行く先々には放っておいても大量のモンスターが立ちはだかる為、勇者に分け前を払って尚、トルネコは一財産築けたらしく、最終決戦を前に″デパートを造る″と言い残し何処かに旅だったそうだが、多分ベンガーナだろう。

 ダイ達が買い物を行ったデパートはエレベーターがあったり世界観が少し違ったのは4の世界からやって来たトルネコが造ったとしたら妙に合点がいく。

 因みに、トルネコの″つよさ″はルイーダの眼にも映らなかったそうだ。

 この点から考えてもトルネコが異邦人の可能性は高く、機会が有れば一度会ってみたいモノだ。

 

 トルネコの話に付随してゴールドに関する話しも色々と聞く事が出来た。

 コレは別に情報と呼べるほどのモノでもなく、単に俺が子供であった為に教えられていなかったダケの一般的な知識になる。

 世に出回っているゴールド硬貨は全てモンスターのドロップ品になる。

 モンスターを倒せば倒す程ゴールドを得られる俺やトルネコみたいな奴が居れば、簡単にインフレを興すんじゃないかと心配したがそんなことは無く、寧ろゴールド獲得は国に推奨されている様だ。

 と言うのもモンスターが落とすゴールドだけでは全ての商業活動を賄えておらず、現在は国が紙幣も発行している。

 そして、その紙幣は印刷技術の未熟さから常に偽造の被害を受けてしまう。

 そんな訳で国としては偽造の心配がない、てか偽造のしようがないゴールド硬貨に切り替えていきたいらしい。

 確かに、重ねたら桁が上がる不思議硬貨は人の手で造れやしないが、経済政策としてはどうなんだろう。

 経済的な難しい事は解らないが、俺がモンスターを倒してゴールドを荒稼ぎしても、とりあえず非難されることは無さそうだ。

 因みに、俺のドロップ率もトルネコと同じくほぼ100%だ。ほぼ、なのはドロップしたコインを見失う事があるってダケだ。

 しかし、普通の人は3%に満たないドロップ率でモンスターを狙うのは割に合わず、普通の生活を営む事を選ぶ様だ。

 

 モンスターを倒せばゴールドが落ちてくる仕組みも、俺やトルネコがほぼ100%のドロップ率を誇る理由も解らない。

 解らないが、この特性の有る俺は路頭に迷う事はないだろう。

 俺にとって金脈となるモンスター達は、人里付近に近寄ってこないだけで、この大陸にもかなりの数が暮らしている。

 デルムリン島に代表されるようなモンスターの楽園、人類にとって未開の地はまだまだ多いのだ。

 問題は、人里離れて暮らすモンスター達を金の為に殺せるか? って話だ。

 

 まぁ、これはおいおい考えていけば良いだろう。

 それより何より先ずはバランだ。兎に角コイツのプッツンをなんとかしないと詰んでしまう。

 そんなバランを救うキーアイテム″ラーの鏡″の情報は、拍子抜けする位簡単に出てきた。

 

『ラーの鏡ってあれかい? 貧乏テランが後生大事に持ってる鏡の事かい?』

 

『姉御、そりゃ違いやすぜ。テランから王女の誕生祝いとしてパプニカに贈られたって話でさ』

 

『そうかい…パプニカだったら話は早いねぇ。″エロジジィ″に紹介状を書いてやるから後は坊やが何とかおし』

 

 と、まぁこんな感じに呆気なく方針が決まった。

 交渉するべき相手がエロジジィことマトリフに成りそうなのが頭の痛い処だが、伝手が全く無いよりマシだろう。

 性格的に難がある人物に違いないが、心の奥底にはしっかりとしたモノを持っているのも間違いない。

 彼になら、俺の真相を伝えて協力を仰ぐのも悪くないが、これも原作に与える影響が大きいし出来る事なら、ただの子供として交渉を終えたい。

 とりあえず、パプニカに向かうためにもルイーダからの依頼″アジト奪還作戦″に強力するとするか。

 

 

 その後、飽きるまで繰り返されるファッションショーを見物し、明日の出発に備えて早目の睡眠をとるのだった。

 

 

◇◇◇

 

 

 開けて翌朝。

 

「それじゃ頼んだよ」

 

 ルイーダに見送られ馬車に乗り込んだ俺達は、″あばれザル″に奪われたカンダダ一味のアジトに向かい出立した。

 同行者はずるぼんにへろへろ、それにカンダダ子分の五人の男達。

 その中にはあの門番の男も混じっていた。

 正直、ずるぼんは当然へろへろも足手まといだが、奪われたアジト迄は馬車で1日、往復に2日も掛かる為「俺を一人にさせられない」とお姉ちゃんパワーを発揮するずるぼんに根負けしてしまった。

 自分が思う以上に″家族の頼み″に弱いようだ。

 

 まぁ、敵はあばれザルの群だし、鉄の装備も貸してもらえるし、油断しなければなんとかなるだろう。

 ただ、一つ気になるのは色違いの暴れ猿、それも緑色が混じっているとの報告がある事か…俺の記憶が確かなら、それってキラーエイプじゃね?

 

 

 道中、馬車は何事もなく進んでいく。

 代わり映えのしない何処までも続く田舎の風景。

 記憶の彼方に残る、天高く聳える建造物が今となっては懐かしく思える。

 そんな俺の感傷に気付く事なく、馬車の旅を無邪気にはしゃいだずるぼんが嘔吐したのはお約束だな。

 

 青ざめるずるぼんにホイミを掛けて、馬車はガタゴトガタゴト進みゆく。

 眠るずるぼんを膝にのせ、何もすることなく外を眺めていると、ふと気付く。

 記憶の彼方に残る建造物にも負けない力強さで天に伸びる一本の樹。

 かなりの距離があるにも関わらずその姿を視認できる。

 

「ねぇ、おじさん。アレッて世界樹?」

 

「あぁそうさ。アレがアルキード名物の世界樹さ」

 

「へ〜」

 

「おっきいだぁ」

 

「あの樹の根を利用して俺達はアジトを造ったのさ」

 

 自慢気に言っているが、そんな罰当たりな事をしたからモンスターに奪われたんじゃね?

 

 

◇◇

 

 

 世界樹の麓にある宿場町で朝を迎えた俺達は、日が登り切る前に装備を整えアジトに向かって出発した。

 幹までの距離も未だ未だあるが、地面を走る根が所々で盛り上がり此処から先の移動は馬車だと困難になっている。

 てか、そんな所にあるアジトなんか放っておけば良いものを、悪党として奪われたままにはしておけないらしい。

 案外、悪党と言うのは生きるのが下手なのかもしれない。

 

 それから暫くの間デコボコ道を進んだ。

 

 体感で一時間。

 

 いや、マジ遠すぎ。

 こんな所のアジトなんか放棄すべきだろ。

 人目を憚る裏の人間だからと言ってこんな所をねぐらにする意味が解らない。

 

「あそこがアジトだ」

 

 子分が指差す先に地中から露出した樹の根が見え、そこには小さな扉があり、その付近ではあばれザルの群が寛いでいる。

 

「ウッソだぁ〜。おサルさんの棲み家にしか見えないわよ?」

 

 いや、ネェちゃん…あれ一応モンスターだし。

 

「今はそうだけどアソコは立派なアジトなんだよ。ほら?扉が見えるだろ? 樹の根をくり貫いて造っているから丈夫だし、中は意外に快適なんだよ。此処が奪われたから、君の弟に懲らしめられた見習い達を王都に詰めさせる羽目になったのさ」

 

「ふーん? まぁ俺は此処からイオラを放てば良いんですよね?」

 

 悪党の考えは理解出来ないし、俺は依頼通りにイオラで先制攻撃をしかけるだけだ。

 

「頼むよ」

 

 俺は鉄の剣を軽く地面に突き刺し、両手の自由を得ると、イオラとなる二つの光球を左右の掌に産み出していく。 ホント、イオ系とは相性が良いんだよな。

 

「行けます、準備は良いですか?」

 

 寛ぐダケのモンスターに襲いかかるのは正直少し気が引ける。

 だけど、アルキードを護るため、家族を護るため、ひいては自分の望みを叶えるためには、殺るしかないんだ。

 

「いけ! イオラ!!」

 







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