携帯獣異聞録シコクサバイバー   作:桐型枠

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出会いはあわただしく

 

 

 

 少し経って、少年は一つ息を吐いて顔を上げた。

 このままこうしてもいられない、と思ったのだろう。その表情は決意に満ちていて、先程までの嘆きはうかがえない。

 少年は、コスモウム(約1t。サイコパワー枯渇)を動かそうとして――いったん諦めた後、こちらに向き直った。

 

 

「きみ、大丈夫だった?」

「ああ」

 

 

 体の節々が痛むが、この程度は許容範囲だろうと考えながら、少年の問いに答える。

 少年は少年で……客観的に見て、やや儚げな印象を受ける外見をしていると言うのに、やけに不愛想な返答をすることに違和感を覚えたのか、苦笑いでそれに応じた。

 

 ……それよりも。

 この少年、スーツを脱いだ姿は、それこそ「どこにでもいるような」子供という感じだ。

 黒と白の帽子に、七分丈のズボン。水色のタンクトップに、ボーダーの上着。ポケモン「サン・ムーン」と「ウルトラサン・ウルトラムーン」における主人公の、デフォルトの衣装を組み合わせるとこんな感じになるだろうか。

 

 

「大丈夫だ、けど状況がイマイチ分からん」

「そうだろうね……」

「けど……」

 

 

 疑問は腐るほどにある。

 ただ、今すぐに聞きたいことは――。

 

 

「……これ、現実だよな?」

「げ、現実、かな……」

 

 

 お互いに色々と困惑しているのは確かだけど、それだけはどうやら事実らしい。

 ……あまり、事実であってほしくはなかったが。

 

 

 それから。

 十数分ほどかけて、二人で四苦八苦しながらコスモウムを波打ち際から動かすと、オレたちは砂浜に腰掛けてお互いの情報を交換することにした。

 

 

「それじゃあ、まずは自己紹介からかな。僕はヨウタ。君は?」

刀祢(トウヤ)アキラ」

「……トウヤ、アキラ……どっちが名前?」

「アキラの方だ」

「わ、分かったよ」

 

 

 どうやら、さっきもそうだったが、少年……ヨウタはどうにも、オレの外見と口調のギャップに面食らってるらしい。

 オレ自身はそういう反応には慣れてるが、思えばばーちゃんちに世話になってからはそういうことが多かった。近所の町工場のおっちゃんや交番の署長さんなんかも、こんな反応をしてたなと思い出す。まあ、気にすることもないが。

 

 

「ヨウタはどこから来たんだ?」

「僕は……出身地って言うなら、カントー地方のマサラタウン。今はアローラ地方のメレメレ島に住んでる。どこから来たかって言われると、さっきの穴……ウルトラホールから……なんだけど……」

 

 

 分からないよね、とヨウタは頭を掻いた。しかし、オレはその予想を否定するように「いや」と投げ掛けた。

 

 

「言ってることは分かる」

「えっ!?」

 

 

 カントー。マサラタウン。アローラ。メレメレ島。ウルトラホール。

 本来ならばフィクションの中にしか存在しないはずの地名や固有名詞を、極めて自然に告げるヨウタの言葉は、彼が異邦人であるということを端的に示していた。

 オレ自身も、さっき彼がウルトラホールの中から出てきたところを見ている。状況証拠と、本人からの証言……オマケに砂浜には、さっきまでミュウツーとソルガレオが行っていた戦闘の爪跡が至る所に刻まれている。ここまでくると確定的だ。

 

 

「どういうこと?」

 

 

 ヨウタは、どうやらオレの返答に困惑しているようだった。

 それも当然か。何せ彼から見ればここは異世界だ。本当なら、知識も、常識も、価値観も、土地や町や人、それどころか物質を構成する原子でさえも違う可能性だってある場所だ。同様の知識を共有できているというだけで、異常なことだと言っていい。

 ウルトラホールにしても、ポケモンの世界においては、その単語を知っている人間自体も限られている。

 それでもオレが知っていると言うのは、何か事情があると察したのだろう。

 

 

「ヨウタから見てオレたちの世界は異世界にあたるんだと思うけど、オレたちの世界にはポケモンは存在しない」

「……その子は?」

「こいつは例外中の例外。今は置いといて」

 

 

 バチュルはオレの頭の上に乗って、海水を乾かすために日光浴をしていた。

 ……こいつもこいつで、出所が謎なんだよな。多分ウルトラホールから出てきたんだろうけど。

 

 

「……けど、ポケモンに関する知識はあるんだ。というか、ポケモンのいる世界に関する知識、かな?」

「それは……どうして?」

「オレたちの世界では、ポケモンは創作として存在してるから」

 

 

 それから、オレはヨウタに――ポケモン世界の「主人公」とも呼ぶべき存在に、この世界におけるポケモンについてを語ることになった。

 「ポケットモンスター 赤・緑」から始まり、連綿と続く歴史。そこには当然、ヨウタのポジションにあたる「サン・ムーン」または「ウルトラサン・ウルトラムーン」の主人公とそのストーリーに関わる話もあった。やはり、自分の冒険や自分が関わった事件が、自分の知らないところで勝手に物語にされていたり、ゲームにされているとなると、気味が悪いんじゃないかと思ったわけだが――。

 

 

「それは僕じゃないし、そのゲームに出てきてる人は、名前は同じでも僕の友達とは違うよ」

 

 

 とのこと。

 リーリエやハウ、グラジオ、ルザミーネ、グズマ。そういった人物はいるらしいが、だからと言ってゲームなどで語られるのと同じ人物ではないという。

 

 Wikiや攻略サイトに掲載されていた、第七期のポケモンの攻略情報などを見せてみると、ヨウタは「ここが違う」、「ここは同じだった」と、一つ一つに注釈を入れながら、彼が経験した冒険について語ってくれた。

 

 

「基本的に、しま巡りをするのに僕はリーリエと一緒に行動してたよ。ハウは、街につくまで競争して、街についたら一緒に行動して……って感じで、一緒に行動したり、しなかったり、かな。グラジオは何だかんだ言いながら、リーリエのことをずっと見守ってたみたい。時々、ピンチの時にすごくタイミングよく出て来たりしてたよ」

「なるほど」

 

 

 それもまた道理と言えば道理か。RPGで、かつポケモンというゲームの都合上、主人公が一人で行動するのは前提と言える。

 ゲームにおいては、基本的にリーリエは別行動を取っていたが、ヨウタは一緒に行動して彼女を守っていたらしい。もっとも、スカル団やエーテル財団に関わらなければならないような場面では、ポケモンセンターなどで待っていてもらったようだが。

 

 

「僕の目的はしま巡りだったから、大筋はこのサイトに載ってる通りだよ。けど、そこから先がちょっと違うかな」

 

 

 続けて、ヨウタは冒険の終盤について語り始めた。

 

 曰く、リーリエが「ほしぐもちゃん」……コスモッグと共にエーテル財団に誘拐された。誘拐を画策したルザミーネは、ウルトラビースト……ウツロイドの神経毒に侵され、操られていたという。

 

 ほしぐもちゃんはウルトラホールを開くことのできる特殊なポケモン――ウルトラビーストだ。ほしぐもちゃんに強いストレスを与えることで、強制的にウルトラホールを開くことができるのだが……ルザミーネは、というより、彼女の行動を操っていたウツロイドは、この能力を欲した。自分が元いた場所に戻るためか、あるいは仲間を呼び込もうとしたのか――それは定かではない。

 ともかく、ウツロイドはほしぐもちゃんに過剰なストレスを与えて、ウルトラホールを開いた。そこにルザミーネと共に――融合した状態のままで――入り込み、自身の住処へと移動しようとした。これを許さなかったのがヨウタだ。リーリエの母親をわけのわからない生物に奪わせるわけにはいかない、と奮闘。操られたルザミーネを撃破、ウルトラスペースから脱出し、ウルトラホールも閉じることに成功した。

 

 のだが、ルザミーネは長いことウツロイドの神経毒に侵されていたため、体に過剰な負担がかかって昏睡してしまう。

 リーリエは母を元に戻す方法を探すため、カントーへ…………というのが、「サン・ムーン」におけるお話。

 

 だがここで、ヨウタに天啓が走った。ルザミーネを侵していたのはウツロイドの神経「毒」……つまり、カプ・レヒレの「穢れを祓う清らかな水」を生み出す能力、あるいは、カプ・テテフの「たちまち元気を取り戻す」鱗粉によって、治療は可能なのではないか? と。

 その推測を試すためには、二柱のカプ神から認められる必要がある。ルザミーネをエーテル財団に預け、ヨウタはリーリエと共にカプ神のもとへ訪問。紆余曲折を経た末に、カプ・レヒレにも……気難しいカプ・テテフにも認められ、治療に乗り出すことができた。

 

 しかしここで、なんとレインボーロケット団を名乗るサカキらが現れ、突如としてエーテル財団の拠点、エーテルパラダイスを占拠。ルザミーネの身柄を奪われる。

 レインボーロケット団は、卓越した科学力によってウルトラホールを利用する術を得た数少ない組織である。彼らはその能力を利用して、並行世界に存在する様々な「悪の組織」、その首領格から下っ端まで全ての人材を取りこみ、伝説のポケモンまでをも捕獲することに成功したのだという。

 彼らはその力を用いて、ヨウタたちの世界へと攻め入り、世界征服を実現しようとしていた。

 

 が、アローラ全土……どころか世界全体の危機に、人間もポケモンも黙ってはいなかった。

 アローラ四島のしまキング、クイーンをはじめとして、それぞれの島のキャプテン。ヨウタの友人たちや、アローラにやってきていた国際警察のエージェント、果てはスカル団までもが、レインボーロケット団を倒すための戦いに参戦。カプ神も彼らに力を貸し、なんとか全ての幹部を撃破。ヨウタもサカキを追い詰めるも、彼はそこでウルトラホールを作り出すことで逃走を図る。

 これを追いかけるため、ヨウタはリーリエと共にほしぐもちゃんを覚醒に導き、ソルガレオに進化させた。

 そうしてサカキを追いかけて、現在に至る――――とのこと。

 

 

「ここに来るまでにサカキを倒せてれば、迷惑をかけることも無かったんだけど……本当にごめん」

「いや、そりゃ逃げたサカキが悪いだけだろ。謝る必要は無いんじゃないか?」

「それでもだよ。僕がもっと強ければサカキも倒せてた」

 

 

 しかし、ああいう人間は切り札の一つや二つや三つや四つくらい用意していてもおかしくない。仕方ない……と、慰めるのは簡単だが、ヨウタはそれじゃあ納得しないだろう。

 だったら次は頑張ろう、ということにしておいて、話を続ける。

 

 

「ヨウタはこれからどうするんだ?」

「なんとかしてサカキを捜すよ。あの人を倒して、この世界から追い出さなきゃいけない」

「そうか……」

 

 

 そのためにはまず、ほしぐもちゃんの回復を待つ必要がある……と、ヨウタは至極冷静な意見を述べた。

 

 サカキだって、仮にもジムリーダーを務めていたほどの実力者だ。人格はどうあれ、回復アイテムを欠かすという愚を犯すことは無いだろう。ヨウタにとっての切り札であるソルガレオ――ほしぐもちゃん――が消耗しきってしまっていて戦えない現状、無理を押してサカキを追えば、返り討ちに遭う可能性も低くない。

 

 ゲームと違って、回復アイテムを使ってもポケモンの体力が一瞬で回復するようなことは無い、らしい。ポケモンセンターで回復を頼んだとしても、完全に回復しきるまでにはそれなりの時間が必要なのだとか。まあそれ自体は自然な話だ。

 ……なので、下手にこんな満身創痍の現状で追いかけると、追いかけた先でサカキは多少なりとも自分のポケモンを回復していたが、こっちは一切回復せずに連戦……なんていう最悪の状況もありうる。それに比べたら、まだお互い万全の状態で戦った方が、勝率が高いとすら言えるだろう。

 

 

「ならうちで休んでくといい。すぐ近くだし」

「え? い、いやいいよ! 迷惑になるし……」

「オレがここにいたせいでサカキを逃がしちまったんだ。このくらいはさせてくれ」

 

 

 元をただせば全部サカキが悪いのだが、それはそれとして、オレがここにいなければ、サカキはオレを人質にとるような真似はできず、そのままヨウタに負けていた……可能性はある。

 勿論可能性の話だ。街に「テレポート」して街全体を人質にするということだってありうるし、結局逃げられたってこともありうる。けれど、今回オレが邪魔になってしまった、というのが結果だ。だから、これはその罪滅ぼし。

 このまま話していては、オレがオレが、僕が僕が……と、責任の奪い合いという謎の状況に陥るだろうことを察したヨウタは観念したように息を吐いた。

 

 

「分かった。よろしく頼むよ」

「ああ、少しの間、よろしくな」

 

 

 互いにがっちりと握手を交わす……と、ふと見ればヨウタが顔をしかめていた。どうやら力を入れすぎてしまったらしい。

 

 

「ち、力、強いね……」

「悪い」

 

 

 ちょっと気合をそのまま表しすぎてしまったようだ。

 少し反省。

 

 その後、多少の念動力を取り戻したコスモウムをボールに収め、オレたちはばーちゃんの家に向かうことになった。

 

 

 

 〇――〇――〇

 

 

 

 家に帰り着くと、オレはまずバチュルを家のコンセントの前に連れていった。

 ネットで検索したところによると、バチュルは自力では電気を作れず、外から電気を取り込む必要があるのだとか。オレの頭の上に乗っていたのもそれが理由で、摩擦で静電気を起こして、電気袋にそれを蓄えていたらしい。

 で、まあそれよりは、こっちの方が良いだろう……ということで連れてってみたのだが、これが大好評。バチュルは喜んでコンセントに電気を蓄えに向かった。

 

 

「ばーちゃーん、ただいまー!」

 

 

 家の裏手の方に呼びかけると、小さくそれに応じる声が聞こえてきた。

 晩飯の準備でもしているのだろう。さっき、こっちに戻ってくる間に電話で事情はそれとなく伝えてあるし……今は詳しい説明はいいか。

 

 ヨウタを見ると、バッグの中から赤い板……ポケモン図鑑と思われるものを取り出していた。

 ポケモン図鑑、というよりは、シリーズ的に見れば「ロトム図鑑」か。ポケモン、ロトムは電化製品に憑りついて自在に操る能力を持つ。ロトム図鑑は、その能力を応用し、空中浮遊、自衛、マッピングやナビゲーション、物質の成分の解析や、手持ちポケモンの健康状態の把握等々、様々な機能を持たせた高性能なポケモン図鑑である。らしい。

 ……ゲームをやったりアニメを見たりする限り、喋りかけてくる頻度の多さやオーバーリアクションのせいで、「うざい」とも言われることがあるらしいが……。

 

 

「ふうっ、息がつまるロ」

「ごめんねロトム。こっちだと悪目立ちしちゃうから」

「いいロ。仕方ないロ」

「…………」

「どうしたの、アキラ?」

「い、いや……」

 

 

 ……声、女の子なんだな。

 アニメの声を思い浮かべていただけに、そのギャップは少々大きい。

 オマケに性格もややひかえめだ。もしかすると本当に「ひかえめ」かもしれない。理想個体だったりするのだろうか。いやいやそこは気にするところじゃねえ。

 

 

「紹介しておくね。ロトム図鑑に入ってもらってるロトム」

「はじめまして、よロトしくお願いします」

「はじめまして。よろしくな」

 

 

 ともあれ自己紹介を済ませたところで、居間の方へ。

 

 オレが今住んでいるばーちゃんの家は、平屋建ての和風建築だ。部屋の多くは和室であり、居間も例外ではない。

 引っ張り出した座布団をヨウタに差し出し、オレは台所の方へ。ジャリジャリになった口の中を軽くゆすいだ後、冷蔵庫からお茶を取り出して机の上に並べた。

 

 

「ロトムの分要るか?」

「いや、大丈夫だよ。飲めないし」

 

 

 そりゃそうだ。一応電化製品だしな。

 当たり前のことに納得しているオレを他所に、ヨウタは物珍しそうに周囲を見回している。

 

 

「何か珍しいのか?」

「ううん、あっちもこっちも、建築様式自体は変わらないんだなぁって……」

「そりゃ変わらんだろ。奇抜な建物ばっかりじゃ、住むのに不便だ」

「何て言ったらいいんだろ。僕らの世界からポケモンを抜いただけ……って感じだなって思ったんだ」

「あんなに悪の組織は大ハッスルしてないけどな」

「あ、ああ……あはは……いや、あれは僕らでも何でかはよくわかってないんだけど……」

 

 

 ポケモンっていう強大な存在が人の心の枷を外してしまうのだろうか。

 あと、明確な抑止力……物理的な、例えば兵器の存在なんかも……示唆くらいはされてるかもしれないけど、よく覚えてないな。「X・Y」だと最終兵器なるものがあったけど、あれもロストテクノロジーの産物って感じだし。

 

 

「ところで……あのバチュルは、君のポケモンじゃないんだよね?」

「違うよ。海岸で寝てたら降ってきたんだ」

「え、えぇ……」

「困惑したいのはこっちなんだが」

 

 

 どこから来たのか、どうやって来たのか、何で来たのか、それが一つたりとも分からない。

 多分、ウルトラホールが原因……なんじゃないかなあ、くらいの推測はできるが、それだって推測でしかない。

 

 

「ロトム、翻訳とかできないかな?」

「ちょっと難しいロ。ポケモンによって言語体系が違うロ……」

「そっか……」

 

 

 逆に言うと体系付けさえできれば、ポケモンの言ってることが分かるようにもなるのか。すごいなロトム図鑑。

 

 

「でも、付着物の成分は解析できるかも。ちょっと待っててロ……」

「高機能すぎねえ?」

「おかげですごく助けられてるよ」

 

 

 ヨウタは遠い目をしている。

 自分でもどういう機能がどれだけあるか把握しきれていないんだろう。ロトムがビックリドッキリ機能を披露する度に驚くのに慣れ切ってしまったというか、驚き疲れたというか、ともかくそんな雰囲気だ。

 

 

「成分が出たロ。エーテルパラダイスの土と発電機の金属片みたい」

「ってことは、元々はエーテルパラダイスにいた子みたいだね。サカキとの戦いの時に巻き込まれて、ウルトラホールに入ってきちゃったみたいだ」

「で、ヨウタたちがこっちに来るのに合わせて、バチュルも一緒に来ちまった……ってことか」

 

 

 思ったよりも不憫な子だな。

 そう考えると、出会い頭に電撃を食らわされてしまったことも許せそうだ。

 

 

「そういうことならしばらくうちで面倒見るか。ヨウタが帰る時に連れて帰ってもらえば解決だろうし」

「そうだね。あの子、アキラに懐いてるみたいだし……サカキを倒すまでは、面倒を見ててくれるとありがたいな」

「分かった」

 

 

 ヨウタも歴戦のポケモントレーナーだ。既に手持ちポケモンも六匹いるという。

 

 ゲームやアニメでは、手持ちポケモンは六匹までに限定した方がいいとされている。

 ヨウタの言うところによると、それ以上のポケモンがいてもちゃんと一匹一匹と向き合うことができないらしい。愛情を注げるのは六匹まで……というのは、誰の言葉だったっけか。

 オマケに、今は傷ついた手持ちポケモンたちについていなきゃいけない。残念ながら、面倒を見る余裕なんて無いだろう。

 七匹目としてほしぐもちゃんがいるようだけど、それはまあ例外として置いておく。

 

 ……サカキも、言っちまえば孤立無援の状況だ。この世界にはポケモンに関わる機械やアイテムは無いし、レインボーロケット団の団員はヨウタの世界に置いていかれてる。

 何より、いつまでもこの世界にいる理由が無い……って、そうだ。

 

 

「そういえば、サカキって自分でウルトラホールを開く手段を持ってるんだろ? 他の世界に逃げられたらどうするんだ?」

「ボクにはウルトラホールが開いたかどうかを感知する機能もアップデートで導入されてるロ」

「だから大丈夫。まあ、この世界から出て行ってくれるのなら、その方がいいけど」

「そっか」

 

 

 やたら高性能だなロトム図鑑。

 誰だよアップデートしたの。ナリヤ博士か? それともククイ博士……いや、バーネット博士の可能性の方が高いか?

 ……まあいいや。そういうことなら、サカキもすぐ捕まるだろ。その間バチュルの面倒を見ておくくらいなら、なんてことはない。

 

 このまま追い込んで追い詰めて、この世界からも追い出す。それがオレたちの今の目的ってとこだな。

 

 






 ヨウタの名前の由来はSM/USUMの主人公のデフォネームの組み合わせで、ヨウ+コウタ=ヨウタ となっております。
 


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