携帯獣異聞録シコクサバイバー   作:桐型枠

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市街地にはじけるほのお

 

 

 

 ぐつぐつと、地面が煮えたぎっている。

 火に巻かれた建物が黒煙を上げ、延焼した別の建物がまた、黒い煙を吐き出す。倒壊した建物はとろけてグズグズになった地面に熔解して同化し、やがてその姿を消した。

 

 見渡す限りに生命の気配が存在しない、地獄のような光景。その中に、地面を揺らすほどの足音を響かせる影があった。

 灼熱の溶岩すらものともしない頑強な外殻を持つ、紅の超古代ポケモン――グラードン。

 その頭頂に立って、マツブサは生命の気配の消えた街を見下ろしていた。

 

 

「チッ」

 

 

 知らず、舌打ちが漏れるのを彼は止められなかった。

 レインボーロケット団首脳部の指令によってここ西条に送られたマツブサだが、その目的はヨウタたちの殲滅だけではない。この情勢下で生まれた反抗組織(レジスタンス)――彼らを排除することもまた、目的の一つだった。

 

 

 ――よろしいですか、マツブサさん。アサリナ・ヨウタたちは優れたトレーナーであり戦闘者ですが、彼らはまだ若く、青臭い。

 ――目の前で失われる命を黙って見ていることなどできないのです。「まさか」という可能性があれば、必ずやってくる。

 ――街中でグラードンを使っていると知れれば、彼らは必ず現れる。そこを狙えば一網打尽にできましょう。

 

 

 べったりとへばりつくようなゲーチスの声がマツブサの中で想起され、思わず眉間にしわを寄せる。

 確かに有効な作戦だろう。人並みの倫理観と同時に人並み外れた力を持つあの少年たちならば、そうすることはむしろ自然なことだ。賢人と呼ばれていただけはある――だが、その指示に従った結果がこの光景だ。市街地の無差別破壊など、人類の発展を切に願うマツブサの――マグマ団の理念に沿っているはずはない。

 市街地でグラードンの力を解放したのだから当然の話だ。ゲーチスともあろう男がそれを理解していないはずはない。理解した上で、この作戦を立案し実行させたのだ。

 

 これだけの被害を与えた以上、人的被害も半端なもので済むはずはない。果たして死人がどれほど出てしまったか……考えるだに恐ろしい話だった。

 そして真に恐ろしいのは、ゲーチスだろうか。下手をすれば大虐殺になる可能性を理解し、マツブサが嫌悪を示すことを踏まえてなお、微笑みを絶やさずに作戦を伝える彼は、紛れもなく外道だとマツブサは断ずる。

 

 

(……オマケにこの有様だ)

 

 

 燃え盛る街の中では、食料品店などに押し入って略奪を行う部下の姿が見える。

 レインボーロケット団の黒衣ではなく、マグマ団のそれを着用した者たちだ。すっかりレインボーロケット団という組織の気質に染められてしまった彼らに、かつての理想は残っているのだろうか?

 舌打ちが止められず、語気も荒くなる。勝手に敵であるヨウタの勧誘を行ったという彼の右腕(ホムラ)のことは、組織の規律のためにも咎めるべきだということは理解しているが、それでも内心、組織の現状を思えばそうなっても仕方がないかもしれないとは思っていた。

 

 

頭領(ボス)、やはり来ます」

「そうか、やはりか」

 

 

 オオスバメに乗って現れたホムラの報告に、マツブサは渋面を作るほかなかった。

 ゲーチスの予想が当たった。それは間違いなく、彼らが人並みの、まっとうな正義感を持っているということだ。

 はっきり言って、マツブサはゲーチスに対して強い嫌悪感を覚えていた。

 

 

「タワーから増援が来るって話になってたな、あれはどうなっている」

「詳しくは、はぐらかされました。いったいどうする気なのか」

「秘密主義もいい加減にしてほしいもんだ」

 

 

 だが――少年たちを囲う網は、既に出来上がっている。

 伝説のポケモンに、多数の団員。およそこの状況下で抜け出すことなど――不可能に近い。

 

 

 

 〇――〇――〇

 

 

 

「嫌だー!! あんなとこ行ったら絶対死ぬぅぅー!!」

「ガタガタ喚くな鬱陶しい! くだらないこと言ってる暇があるなら知恵を出せ! 元でも医学部だろうが!」

「医学部は関係ねえよぉ!」

 

 

 あれから数分、オレたちは西条市街地に続く道をひたすらに進んでいた。

 まだグラードンの姿は見えてきていないものの、既に周囲の気温は酷暑とも言えるほどにまで上昇している。

 街はあちこちに破壊の爪跡が見られ、レインボーロケット団の連中がどれだけやらかしていったのかがよく分かる。

 

 

「医学部ってことはそんだけ賢いってことだろ!?」

「そういう印象で人の頭の出来を決めつけるのって俺どうかと思う!」

「レイジさん、それ自分で言っちゃダメなやつ」

 

 

 コレって要は「俺はそこまで頭良くない」って言ってるのと同じだよな。

 お前自分で自分の行動を賢い選択とか言ってたやん……と思わんでもないが、過剰な自尊心がある程度和らいだと思えばこれも良いこと……なのか?

 

 

「できないことまでやる必要は無いですよ。僕とアキラで前に出て足止めしますから、レイジさんはショウゴさんと一緒に避難誘導と応急処置とかをお願いします」

「ひ、避難誘導と応急処置……だな、オッケー、分かった」

「アキラ、僕たちはグラードンとレインボーロケット団員に集中するよ。僕がグラードンを足止めするから」

「オレがマツブサを殴り倒せばいいんだな」

「違うよ!? アキラは露払いと退路の確保! 伝説のポケモンが守ってるのに殴りに行くなんて自殺行為じゃないか! 禁止! 禁止!!」

 

 

 そこまで言うことなかろ。

 とはいえポケモンに対する知識が一番あるのは間違いなくヨウタだ。従わない理由は無い。

 キビキビと発せられる指示に頷き、声を上げて返す。大きな異論は無かった。

 

 

「……ま、何にせよやることは単純(シンプル)な方がいいよな」

 

 

 オレが敵を殴れば、ヨウタたちや逃げ遅れた人たちの道を切り開ける。たった一つ、シンプルな結論だ。

 迷うことは何一つ無いだろう。

 

 

「刀祢さん、どうする。目前まで送り届けるべきか?」

「いや、この車が壊されるとマズい。そろそろ行きます。いいよな、ヨウタ?」

「うん。バイクは使うの?」

「いや、置き場も無いし壊されるのがオチだ。置いてく」

「じゃあ、ワン太……いや、モク太と一緒に行ってくれる? 多分、アキラの方が目は良いよね」

「分かった。上から探せばいいんだな」

「よろしく」

 

 

 拳を掲げると、ヨウタも応じるように軽く自分の拳を当てた。

 

 

 ――そうして車の外に出ると、そこは灼熱地獄さながらの様相を呈していた。

 地面のあちこちに見えるマグマ溜まりに、燦然と照り付ける太陽。周囲の建物からも火の手が上がり、更に空気が熱されていく。

 体感……50度から60度……くらいだろうか。文字通り、身を焼くようなこの陽射しの下では、普通の人間はまともに動くことも難しいかもしれない。

 

 ヨウタに指示された通り、モク太の背に乗って眼下に広がる光景を見渡していく。その中に――あった。紅の甲殻に身を包む巨大な影。そしてそれを囲むように配された、マグマ団の制服を着用しているレインボーロケット団員たち。ここからはまだ百メートル以上は離れていて、今すぐに接敵というわけにはいかないか。建物と建物の間を埋めるように築かれたバリケードは、特定の方向から以外の侵入・脱出を阻むためのものだろう。オレたちにはあんまり意味が無いが。

 しかし、確かに見える。データ上だと、グラードンの「たかさ」は3.5mだったが……あれはもっと大きいようにも見える。まあ、いずれにせよ間違いない。

 

 

「見つけた。グラード、ン……」

 

 

 そう呟いた、瞬間。

 

 グラードンの黄金に輝く瞳が、オレを射抜いた。

 

 

「――――モク太!」

 

 

 この酷暑の中にあってなお駆け上がる悪寒に導かれるように、遮二無二にモク太に声を飛ばす。

 死ぬ。そう確信する何かがそこにはあった。

 その進路が先程までのものから僅かに逸れた――直後、さっきまでオレたちが飛んでいた場所を、巨大な熱線が貫いた。

 

 

「っ!?」

 

 

 莫大な熱量と光量に、一瞬目が眩む。

 あれは――何だ。本当にポケモンの技なのか?

 熱線。熱――「かえんほうしゃ」? それとも「オーバーヒート」? あるいは、「ソーラービーム」?

 

 未だかつて知覚したことのないほどの威力の光線は、誰もいない空間を貫いてビルへと直撃し――そのビルの上層階部分を、まるごと円形に融解(・・)させた。

 

 

「……あ……」

 

 

 ――――嘘だろ?

 

 思考が一瞬止まりかけるほどの衝撃が走った。

 あれが、伝説のポケモン。あれが、グラードン。

 

 思えばオレは、伝説のポケモンという存在を侮っていた。驕りがあったんだ。

 伝説のポケモンだろうと生物は生物。トレーナーを殴り倒せば終わり。ワケもないことだ……なんて、無意識のうちに確信していたように思う。

 

 だが、これはどうだ。

 近づける――わけがない。守りを抜ける――わけがない。隙を突ける――わけがない。

 ありとあらゆる手段を考えてなお手の届かない圧倒的な存在感。ただ目にするだけで体の芯から底冷えして身震いが起きるような、絶対的な威容。

 ヨウタは全面的に正しかった。無策に立ち向かうことは、自殺行為も甚だしい。

 

 

「ッ……」

 

 

 それに加えて、ヤツは――ゲンシカイキを行っていない。

 体に走るラインは黒く染まり、その瞳も金色のまま。それでいて、素の状態で5メートルはあろうかという巨体なのは……並行世界ごとの個体差とでも言うのだろうか。

 今ここにいるマツブサとグラードンは、「マグマ団が勝利してグラードンの力で陸地を増やした」世界からやってきた者たちだ。他の世界と比べて強力な個体だという可能性もある。

 

 あそこからまだ強くなるのだとすれば、まともに考えれば戦って勝つなんていうのは絶望的も甚だしい。相対すること自体が、そもそも自殺行為だ。

 ……けど。

 

 

(――――ヨウタは、「足止めする(・・・・・)」って言い切った)

 

 

 だったらオレは、それを信じる。

 

 

「行くぞ、ヨウタ!」

「うん! モク太!」

 

 

 ヨウタの指示に応じて、モク太が両翼を伸ばす。

 この状況でやること――となると、もう既に決まっている。邪魔にならないように近くの建物の屋上に降りるのを確認すると、ヨウタは敵のいる場所を指差して指示を発した。

 

 

「『シャドーアローズストライク』!!」

 

 

 上空から降り注ぐ無数の矢羽根が、道を塞いでいるレインボーロケット団員と、そのポケモンたちに降り注いだ。

 そして――爆発。次々と放たれていく幾多の羽根と爆発は、さながらクラスター爆弾か絨毯爆撃か。

 体力が全快になった影響か、モク太の攻撃はダークトリニティに放った時のそれよりも更に強い。

 

 

(まさか死んでないだろうな)

 

 

 ……いや、ヨウタたちも長いこと敵対組織と戦ってきたんだ。加減は分かってるだろう。

 それよりも。

 

 

「露払いは任せろ!」

「任せる!」

 

 

 壁を蹴り、モク太の開けた敵陣の大穴に向けて飛び出す。

 弾丸のような急加速の中、体細胞が活性化し、生態電流が増幅される。体表に伝ったそれを放出しながら、アスファルトを蹴り砕いて着地――周囲に石片と紫電を撒き散らしながら、オレは地獄に降り立った。

 

 

「き――来たぞぉぉぉぉ!!」

 

 

 敵の数……倒れてるのが三十、起きてるのが同数くらい。その中で起き上がろうとしてるのがだいたい十……いずれもマグマ団の制服。

 出てきてるポケモンは、デルビル、ドンメル、マグマッグ、ポチエナにスバメ……マグマ団のポケモンとして思い当たるものはだいたいいるか。一様に驚いてはいるものの、ちゃんとグラードンへの道を塞いでるあたり、一応の統率は取れているようだ。忌々しいことだが。

 

 

(……まあ、いい)

 

 

 話がちょっと複雑になっただけだ。乱戦の方が、やってくるヤツを手当たり次第殴り倒せばいいから楽だったのだが……こっちから突っ込めばいいだけのことだ。その後で、ヨウタが逃げる道を守ればいい。

 

 ボールから三匹が飛び出す。伝説のポケモンを前にして委縮している部分も見られるが、いずれの目にも確かな闘争心が浮かんでいる。

 

 

「構えろ、来るぞぉ!」

「死守、死守だァァ!!」

 

 

 前方にいた男の号令で、団員たちの間に緊張が走った。ポケモンたちが前に踏み込むためにやや前のめりになり、あるいは、それと逆に「技」を放つために四肢を突っ張らせる。

 応じるようにチャムの嘴から火が漏れそうになるが……それを手で制する。

 

 

「チャム、先走るなよ。リュオン、警戒は任せる。チュリはいつも通りで。できるだけ離れるな」

「シャモッ!」

「リオ!」

「ヂ」

 

 

 チュリはオレの頭の上。チャムとリュオンはオレとだいたい同じくらいの速度で動ける。

 ……となれば、やることは単純。

 

 

「――――行くぞ!!」

 

 

 オレたちは、揃って地を蹴り走り出した。

 周りは瓦礫の山。溶岩溜まりもそこら中にあり、部分的にバリケードで封鎖されてしまってもいる。どうしても、動きは制限されてしまうことだろう。

 ――普通なら。

 

 

「――!?」

「壁ッ……馬鹿、そっちじゃない! あの壁だ!」

「違う、もう道の方に降りて……!?」

 

 

 撃ちだされた「ひのこ」や「かえんほうしゃ」は、本来想定された道――ヤツらが塞ぐことで固定化されていたルート上に向かっていた。

 だが、だとして――そもそも、想定されたルートに沿う必要があるのだろうか?

 近くに壁があるなら壁を蹴って走ればいい。瓦礫の山なんて飛び越えりゃいい。バリケードはぶっ壊す。溶岩はどうしようもないとしても、制限されたルートなんてものはオレたちにとってはあって無きに等しいものだ。たったそれだけのことでオレたちを阻もうなんて……。

 

 

「ナメんなァッ!!」

 

 

 その場にあったバリケードを引っぺがし、思いっきり投げつける!

 巻き込まれた数人が悲鳴を上げながら吹っ飛んでいくのを見届けるまでもなく、オレたちは更に前へ前へと走っていく。

 

 

「ガァァッ!」

「グオオオオッ!」

 

 

 直後、乗り越えようとしたバリケードの裏からポチエナとデルビルが現れる。伏兵的にここに配置してたんだろうが……相手が悪い。

 

 

「チャム、『にどげり』! リュオン、『はっけい』!」

「シャアァッ!!」

「リオッ!!」

 

 

 勢いよく放たれた掌底と、腰の入った強烈な回し蹴りによって吹き飛んでいく二匹。「あく」タイプである二匹にとって、「かくとう」タイプのチャムとリュオンは天敵と言っていい。

 ……むしタイプのチュリも同じだが、そっちは今「れんぞくぎり」しか覚えていないのでちょっと置いとこう。チュリの体格だとちょっと直接戦闘は向いてない。

 

 

「何してる! 撃て、撃てぇっ!! 近づかせるなぁ!」

 

 

 次々と放たれる技、技、技。一見間断なく向かってくるように見えるそれにも、隙間は当然存在する。

 躱し、いなし、時に地形を盾にして攻撃をやり過ごす。

 

 

「何で当たらない!」

「まるで攻撃がどこから来るのか分かってるみたいで……くっ!」

「また投げてくるぞ! 逃げろぉ!」

「カイリキーかよ!」

 

 

 ――「みたい」じゃなくて、「分かってる」だ。

 攻撃の気配、敵意、殺意……まっとうなトレーニングを積んでいない人間が向けてくる「意」は手に取るように分かる。

 離れるな、と言ったのもそれだ。オレが感知し、躱す。それに伴って三匹も攻撃を回避できる。加えて、リュオンが波動を読み取ることによって更にその精度も上がる。

 相手には分からないだろうが……それによって取るべき選択肢というのも、また限られてくる。

 

 

「くっ……囲めぇぇっ!」

 

 

 痺れを切らしたか、先頭にいた男の号令によって隊列が崩れ、オレを囲むために団員とポケモンたちが走り出す。

 だが――その焦りこそ、命とりだ。

 

 

「今だ、ヨウタ!!」

 

 

 次の瞬間、崩れ切った隊列を喰い破るように、ワン太がトップスピードで疾走してくる!

 

 

「な――――」

 

 

 敵はオレだけじゃないってことを忘れていたのだろうか? だとすると万々歳だ。

 進行方向にいたポケモンや団員はそのまま吹き飛ばされ、踏み抜かれ、すり抜けざまに爪の一撃を食らっていく。

 これでヨウタは確実にグラードンの足止めに行け――いや、まだ!

 

 

「チュリ、『エレキネット』! 止めろ!」

「ヂュッ!」

「ぐわぁあ!」

 

 

 そのヨウタを追う影が一つ、二つ。ヨウタなら物の数じゃないが、だとしても邪魔者が一人でも来ることは避けるべきだ。そのためにオレはここにいる。

 まだ敵はいるが、流石にそろそろ打ち止めだろう。一人ずつ確実に潰せば、このまま行けばこの辺の避難や救助もすぐ終わる――そう思った時だ。

 

 

「ル……?」

 

 

 不意に、リュオンが何かを感じ取ったのか、後方の空を見上げた。

 次いでオレも、何か――妙な気配を感じ取る。ヒトか、あるいはポケモンか。いずれにしても、なんだかおかしな気配だ。

 直後に聞こえてきたのは、ヘリコプターか輸送機のそれと思われるローター音。それと、何か巨大なものが動いているかのような振動と重低音――。

 

 

「……またこの手のか……!?」

 

 

 ……どうせ増援だろ!

 くそったれ、だとすると幹部級か? この重低音はロボか何かか!?

 まさか伝説のポケモンということは無いだろう。グラードンの時のような威圧感……ぞわっとするような悪寒は無い。

 だとすると、何が?

 

 少しすると、その全容が見えてくる。一つはコンテナを吊るした輸送機。もう一つは……四足で動く、巨大ロボとそれに乗る仮面の男。

 

 

「これはこれは、マツブサもおあつらえ向きな盤面を整えてくれたものだ」

 

 

 大仰な仕草で手を広げる大男。ロケット団のマークを掲げている以上、彼がロケット団の幹部格……少なくとも、マツブサに対して無礼な口を利くことができる人間に間違いない。

 だが。

 ――――だが。

 

 

「誰だ」

 

 

 オレには――――それが誰なのかは、正直に言うと分からなかった。

 

 

 

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