携帯獣異聞録シコクサバイバー   作:桐型枠

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れんごくの攻防戦

 

 

 

 ポケモンの歴史は長い。

 オレが生まれる前から今に至るまでずっと続いている作品だけあって、ゲーム本編だけでも、バージョン違いとリメイクを含め既に30種類以上がリリースされている。

 アニメなどは通算で千話以上。映画も二十作以上あり、外伝作品も挙げていけば枚挙に暇がない……と、全てを正確に把握することは困難なほどの作品群となっている。

 

 だからこそ、オレはその全部を把握してるわけじゃない。

 ゲームの方はやってるから、メインの流れは知ってる。マンガも一部読んでて今も追いかけてるが……アニメの方は見てないものもそこそこ多い。

 あの仮面の男も、オレが把握しきれてない「誰か」なのだろうが……うう、分からん。朝木とか把握してないかな……。

 ……まあ、何でもいいか。

 

 ――前に出てきたんなら、倒すだけだ。

 

 

「――――」

 

 

 一つ息を吐く。目標は約二百メートル先。道の状況も考えれば……十秒もあればたどり着ける。

 

 

<投下>

 

 

 そう思った直後、輸送機に吊るされた荷物が落ちてくる。

 相当に巨大なコンテナだ。中身は……知る由も無いが、万が一爆弾やそれに類するものだった時、迂闊に近づいてドカン……じゃあ、あまりにも間抜けに過ぎる。

 だが、迂回すればいいだけの話だ。ずどん、という重い音が聞こえると同時、オレは両足に電力を漲らせて踏み込み――――。

 

 その直前に、ヤツのマシンから「何か」がこちらに向けて撃ちだされた。

 

 

「あん?」

「クリスタルシステム、起動」

 

 

 水晶のような――何だ、よく分からない。妙な物体だ。男が何やらボソッと呟いてスイッチを押すと、その内側から機械音が発せられる。

 次の瞬間、電磁発勁によって増幅されて体外に放出されていた電気が――全て、あの水晶体に吸収されていった。

 

 

「な!?」

 

 

 チュリが威嚇のために放出していた電気もまた、同じように吸われている。慌てて電磁発勁をやめ、水晶体に目を向ける。

 電気を吸収する……何なんだ? またレインボーロケット団驚異のメカニズムか!?

 

 

「あれはクリスタルシステム。我らがロケット団の技術部によって開発された、電撃を無効化する力場を生み出す装置だ」

 

 

 オレの内心の疑問に応じるように、男が口を開いた。

 男は余裕綽々の様子で、こちらの歯噛みする顔を見てはほくそ笑んでいる。

 

 

「はじめまして、と言うべきかな? 私はレインボーロケット団大幹部、ビシャス。お嬢さん、あなたをお迎えにあがった」

 

 

 男は、どうやらビシャスというらしかった。

 ビシャス……聞いたことがあるような、無いような。でもレインボーロケット団なのだから、確実に特別な何かはあるはずだ。

 加えて、意味ありげな「大幹部」の称号――ランスたち幹部格よりも上なのか……失った記憶の中に、彼のこともあったりするだろうか。

 

 

「お迎えにあがったなんて雰囲気か、コレが?」

「失礼した、こちらの世界のマナーには疎くてね。破壊と惨劇の宴はお気に召さなかったかな?」

「最ッ低の気分だよ!」

 

 

 ――二度とスカした言動ができないように、その趣味の悪い仮面ブッ壊してやる!

 

 足元の瓦礫を掴んで投擲する。加減は要らない。音の壁を突破したそれはビシャスの顔面へと迫り――着弾するその直前、割り込んで来た何者かによって弾かれてしまった。

 

 

「フフフ……手厳しいな」

 

 

 黒い体毛と、王冠を思わせるような頭の飾り……マニューラだ。流石に護衛はつけてきているか。

 しかしあのマニューラ……やけにこう、様子がおかしい。落ち着きが無いというのだろうか。遠目で見ていても明らかなくらい、何か不穏なものを感じる。頭をぐらんぐらん揺らしてみたり、マシンを引っ掻いたり……子供のような、あるいはイライラをぶつけてるような……何だ?

 

 

「サカキ様からお前を連れてくるように命じられている。大人しく来てもらおう。さもなくば、この街を更なる破壊で染め上げることになる」

「ついて行こうが行くまいがどうせ最終的には破壊するんじゃねえかお前らみたいなのは。騙されんぞ!」

 

 

 思わず体から電気が漏れそうになる……が、寸でのところで押し留める。

 落ち着け、今下手なことしてもあのクリスタルなんとかに吸われるだけだ。不要な消耗は避けないと。

 確かに電磁発勁で体細胞の活性化させれば、その分身体能力が上がる。けどそれは下駄を履かせただけだ。オレの素の能力はむしろ超人寄り。使わなくとも、大きな違いは無い。

 

 

「――ならば力尽くで連れて行ってやろう。行け!」

 

 

 マシンに同乗していたマニューラが飛び降り、ビシャスが胸元の黒いボールから三匹のポケモン――ハッサムと二匹のヘルガーを繰り出す。

 あのハッサムやヘルガーも、やはり落ち着きが無い。威嚇しているのか何なのか、無駄吠えは多いし体をよく揺らすし、目も焦点が合っていないように見える。

 明らかに挙動がおかしい。あいつら、何か変なクスリでもやっているのか……?

 

 

「そして更にもう一匹、特別な兵器を見せてやろう……バンギラス!」

 

 

 ビシャスの声に合わせて、突如としてコンテナが揺れた。いや――ひしゃげた。

 内側からの衝撃で鉄板が歪み、猛烈な破壊音と共に中から「それ」が姿を現す。

 

 よろいポケモン、バンギラス。

 通常、考えられるそれの倍はあろうかという、怪物じみた個体だ。

 

 

「……マジかよ」

 

 

 あのグラードンほどじゃないにしろ……デカい。三メートル? いや、四メートル……!?

 もはや怪獣としか言いようのないソレは、自身が外に出られたことを認めると、直後に咆哮を放った。

 

 

「グオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」

 

 

 続けざまに、ヤツは空に向かって光線を吐き出す――「はかいこうせん」だ。

 狭苦しいコンテナから脱出したことの解放感か? それとも、単にそうしたかっただけなのか……? いずれにしても、あのバンギラスの目は明らかに正気を映してはいなかった。

 

 

「我が組織の強制進化マシーンによって生み出された怪物の力、思い知るといい。――破壊しなさい!」

「っ――チャム! リュオン! 構えろ!」

 

 

 全力で突撃を始めるマニューラたち四匹。それに遅れるようにして、バンギラスもまたその巨体をゆっくりと動かし始めた。

 ……幸いと言っていいのか、相性そのものは悪くない。相手はハッサムを除けば全てかくとうタイプが弱点。そのハッサムも、ほのおタイプのチャムに弱い。レベル差はあるにしても、戦いようはそれなりにある……はずだ。

 退くわけにはいかない。ヨウタもオレも街の人も、こいつを倒さない限り安全には逃げられない!

 

 

「ガアアアァッ!!」

 

 

 二匹のヘルガーが、オレたちの周囲に向かって炎を吐く。とりあえず当たればいい、とばらまいているのか……いや、そうじゃない。口内に何やら、高熱の炎が渦巻いているのが見える。「れんごく」だ! ――――多分!

 

 

「チュリ、糸頼む!」

「ヂュ!」

 

 

 やや遠くの信号機に、チュリの糸が絡みつく。その糸を受け取って手繰る。

 更に、横で並走していたチュリとリュオンを空いた腕で抱え上げ、思い切り前に向かって――――跳ぶ!

 まずはとにかく技の範囲から抜け出さなければならない。それと、

 

 

「リュオン!」

「!」

 

 

 オレの波動を読み取ったリュオンが、腕の中から抜け出して飛び上がる。狙いはマニューラの足止め――と、可能なら撃破だ。本当ならほのおタイプでもあってより好相性のチャムの方がいいのだろうが、そうなると今度はヘルガー二匹を止めることが難しくなる。

 

 

「チャム、ヘルガー二匹、任せられるか!?」

「シャモッ!」

 

 

 そちらは、ほのおタイプの技に耐性があるチャムに行ってもらうのが現状では最善だ。

 そう思ってチャムの顔を見ると、自信に満ちた表情で返された。よし――それなら今は任せよう。

 

 

「投げるぞ、跳んでくれ! 『にどげり』!」

「クァァァッ!!」

 

 

 着地した直後、オレは投げるような格好でチャムをヘルガーたちのいる方へと向かわせた。

 空中で体をひねり、体勢を立て直して放つ渾身のドロップキック(にどげり)。食らったヘルガーは勢いよく吹き飛ばされるが、戦意を失った様子は見られない。ギラギラとした目の輝きもそのままだ。

 

 

「チュリ、オレたちも……」

「ヂヂッ、ギュゥッ!」

「なん……くッ!」

 

 

 チュリの声に反応して体を反らせば、さっきまでオレの頭があった位置をハッサムの鋏が通り抜けていった。

 そりゃあ、こっちだってオレとチュリでバンギラスとコイツの足止めをしようと思って前に出たんだ。来てくれること自体は構わないがな……!

 

 

「グオオオオォォォォォォォォォッ!!」

「く、うおおっ!!」

 

 

 体勢を整えようとしたそのタイミングを見計らったように、バンギラスが突進してくる。

 技の「とっしん」ですらない、ただ走ってくるだけの動作。しかしその巨体では、それだけの動作が莫大な破壊力を伴っている。

 だが――この程度なら、力の向きを変えることそのものは難しくない!

 

 

「チュリ、『くものす』! 渡せ!」

「ヂュヂュッ!」

「ギィィァアアアアアァァアッ!!」

 

 

 バンギラスに付着した放射状の糸、その中心から伸びる粘着性に欠ける糸を受け取り、全力の力で「横に」向けて引っ張った。

 それだけで、バンギラスの突進はそのまま「流す」ことができる。向かうのはオレの横にいるハッサムの方だ。

 

 

「ガアアアアァァァオオオオオオオォォッ!!」

「サムッ!?」

 

 

 一切の躊躇なく突撃して行ったバンギラスは、更にハッサムに追い打ちをかけるように、拳を叩き込んだ。

 鋼の甲殻がひしゃげ、砕ける音がする。それでもなお、バンギラスは止まらない。

 

 

「お……おい」

 

 

 な……何だ? 同士討ち……?

 あのビシャスってやつ、バンギラスを制御できてないのか?

 

 

「ハッ、サムッ!」

 

 

 愕然としていると、今度はハッサムが「メタルクロー」をバンギラスの腹部に突き入れた。

 それでバンギラスは正気を取り戻す……ようなことはなく、むしろその攻撃のせいで余計に怒り狂い、暴れ始める。離脱するべく、ハッサムは空へと飛び出した。

 癇癪を起こした子供のように地面を叩き、空を割き、そして、さっきまでハッサムが転がっていた地面に足を突き入れ、踏み抜いた。

 

 ――直後、地面が揺れる。バンギラスの身体から伝う生体エネルギーが「揺れ」を増幅し、「振動」へ。やがてそれは極めて強力な「攻撃」へと転化していく。

 

 

「――――マズい、チュリ! 逃げ」

 

 

 そうやって頭の上にいたチュリを軽く上空に投げた時には、もう遅かった。

 全方位、広範囲にわたって浸透したエネルギーは、既にオレの足元にまで届いていた。

 

 

「ゴオオオアアアアアアアアアアア!!」

 

 

 次の瞬間、猛烈な揺れと共に全身を衝撃と振動が襲った。

 骨が歪む。筋繊維が断裂する。臓腑が揺さぶられ絞られ、脳が目が耳が揺られ、毛細血管が引きちぎられていく。

 

 

「カハッ!?」

 

 

 目から耳から鼻から、何か(ぬる)い液体が伝うような感触があった。

 立っていられずに膝をつくと、喉の奥から熱い塊が飛び出した。同時に、口の中に鉄の味が広がる。

 

 これは――――「じしん」か。

 一切の躊躇も遠慮も加減も指向性すらも無い、ただ凶暴性と狂気のままに放たれた、あのレベルのポケモンの本気の「じしん」。周囲を見れば、建物も倒壊しているようだった。

 戦いが始まって以降……いや、それより前の、コンテナを投下したあの瞬間から、これは狙っていたのだろう。一向にビシャスが近づいて指示を出しに来ないのは、自分が巻き込まれるのを防止するためってワケか……!

 

 

「ヂュヂュゥ! ヂヂヂ、ギュビィィ!!」

「げ、ほ……うぐっ、だ、大丈夫だ……!」

 

 

 頭の上に戻ってきたチュリが騒いでいる。良かった、どうやらチュリの方はダメージが無かったらしい。

 赤くにじんだ視界で周囲を見回すと、どうやらチャムとヘルガーの方にも影響があったようだということが分かる。リュオンは……効果範囲の外だったか。今は、優勢に戦えているようだ。

 だが、こうなるとチャムの方は仕切り直しだろう。二対一、お互いに甚大なダメージを受けつつも、ヘルガーの側が止まる様子は無い。このままじゃ、負けるか……!?

 

 オレは……かなりのダメージだが、動けないわけじゃない。まだやれる!

 

 

「……チュリ、ヤツを怒らせてくれ。『いとをはく』だ!」

「ヂッ!? ……ヂヂッ!」

「グガガアアアアアアァァッ!!」

 

 

 再び、チュリの糸がバンギラスに絡み付く。思った通り、動きにくさのせいでバンギラスは苛立ちを止められないようだ。

 元々無かった理性の色がより窺えなくなってくる。

 

 

「チャム! そいつらはほっといて、リュオンに加勢してくれ!」

「シャモッ!」

「ほう、確実に一つ一つコマを減らしていく気か。させんぞ! ハッサム!」

「ハッサム!」

 

 

 空に浮かんでいたハッサムが、勢いよくチャムの進路上へと降り立つ。

 足止めのつもりか。だが――――こっちはそれを待ってたんだよ!

 

 

「押し通れ! 『ニトロチャージ』だッ!」

「シャァァァ――クアアアアアァァッ!!」

「ぬっ!?」

「ムウウウウッ!?」

 

 

 チャムの全身から火炎が迸り、立ちふさがったハッサムへと激突する。

 両の翼爪が、バンギラスのせいで砕けかけていた甲殻を更に割り、砕く。そのまま、チャムはハッサムを押し倒して叩き伏せた!

 

「ちっ、ヘルガー! その小娘を黙らせなさい!」

「――――いいのか?」

「何……むうっ!?」

「ギャオオオオオオオオッ!!」

 

 

 怒りが臨界に達したバンギラスが、全速力でオレの方に向かって走り出す。同時にビシャスの指示によって、ヘルガーもまたオレの方に向かって走り出していた。

 

 

「周りくらい見ろよ」

 

 

 そのまま、軽く横に跳んだ。

 それだけで、怒りに我を忘れ視界を狭めていたバンギラスは、オレの姿を見失う。ヘルガーの側はとっくに「れんごく」の火炎弾を放っていたが――それは、バンギラスに当たってしまった。

 

 

「ガアアアアアアアアアアッ!!」

 

 

 怒り狂ったバンギラスは、そのままヘルガーへと大量の岩を伴って突撃していく。どうやら「いわなだれ」のようだ。

 ヘルガーもまた、それに反撃を行うも、バンギラスの進撃は止まらない。

 結果は――――同士討ちだ。

 

 

「何をしているのだ、役立たず共め……!」

 

 

 ヘルガーは強力な技を受けてひっくり返ってしまっている。バンギラスは依然立っているが、それでも全身が焼けたようになっている。「やけど」状態のようだ。

 

 

「シャアァッ!!」

 

 

 他方、リュオンの加勢に入ったチャムは、噴出させた炎をアフターバーナーのように利用して加速。最高のタイミングで横合いからマニューラへ跳び回転蹴り(にどげり)を決めた。

 

 

「マ゛ニュッ!?」

「リ……オッ!」

 

 

 更に、たたらを踏んだマニューラの懐に飛び込んだリュオンが、崩拳の要領で「はっけい」を放つ。

 元より正気を感じられなかった目がぐるんと周り、意識を失って吹き飛ばされるマニューラ。

 瓦礫の山に突っ込んだそいつは、そのまま体をその場にだらりと投げ出した。

 

 

「ふ……ふふふっ、フフハハ、やるものだ。私のダークボールによって強化されたポケモンと渡り合うなど!」

「は? ダークボール……?」

 

 

 ……それ、暗い場所で捕獲率が良くなるボールじゃねえのか?

 何でそれでポケモンが強化されるんだ。

 

 

「私のダークボールはポケモンを邪悪に染め上げる究極のモンスターボールなのだよ」

「邪悪……」

 

 

 ……それでか、マニューラたちのあの正気を失ったような様子は。

 邪悪、というよりは凶暴化。攻撃性を抽出したようでもあった。あの尋常じゃない様子を見て「変なクスリでもやってるみたいな」と表現したが、それと比べてもそうは変わらない。

 ネットじゃ冗談交じりに「モンスターボールは洗脳装置」なんてネタにされちゃいるが、あのダークボールってやつは本物の洗脳装置だ。何が究極のボールだ。コイツにとって都合がいいだけの、究極に自己中心的なボールの間違いじゃねえか。あんなおぞましいものを自慢げに見せびらかすような輩を野放しにしておけるか!

 

 

「御託はいい! お前のポケモンは全滅だ。そこを動くな、引きずり降ろしてやるッ!!」

「全滅? 何のことかな」

 

 

 ――すっとぼけたことを!

 

 余裕の笑みを向けてくるビシャスに苛立ちが募る。

 まさかこいつ、ここで逃げる気か? だとしたらチュリに「くものす」を張ってもらわないと……!

 

 射程距離は遠くない。もっと近づく必要がある。

 ヤツに肉薄するべく足にぐっと力を込める――と、その瞬間、全身に激痛が走った。

 

 

「ぐ……!?」

 

 

 思わず膝をつく……が、そこでなんとか踏みとどまった。

 くそっ、「じしん」のダメージか……!

 

 

「ふははははは……やはりそちらは満身創痍のようだな。だがこちらにはまだ策がある」

「……それは……!?」

 

 

 ビシャスがオレに見せつけてきたものは、くすんだ色味の宝石の埋め込まれた腕輪――らしきもの、だった。

 あれは……メガバングルってやつ……か? だとしても、一体何であんなヤツが!? メガシンカはポケモンと絆を結んだ人間にしかできないはずじゃ――――。

 

 

メガウェ(・・・・)――()!!」

「!!」

 

 

 ――――オレの杞憂は、およそ最悪な形で覆された。

 ビシャスの腕のバングルが鈍い輝きを発し、倒れていたポケモンたちの頭上に奇怪な黒い文様が浮き上がり、体を震わせる。何らかの痛苦が伴っているものらしく、その表情は苦悶に歪んでいた。

 

 メガウェーブ。他はともかく、アレだけは知ってる。ボルケニオンの映画に出てきた――ポケモンを強制的にメガシンカさせる装置だ。

 メキメキ、バキバキ、という破砕音が聞こえてくる。装甲を割るような……殻を破るような、生理的嫌悪を催すような嫌な音。

 

 ――やがてその音が止まると、オレたちの前には三匹のメガシンカポケモンが立ちふさがることとなった。

 

 二匹のメガヘルガーと、メガハッサム。

 再び立ち上がったヤツらの目に――正気の色は窺えなかった。

 

 

「さあ、どう抵抗してくれる? その抵抗、全て破壊して差し上げよう」

「………………」

 

 

 絶望的な状況には、間違いない。

 

 

 ――――だが同時にオレは、この瞬間、ある事実を確信した。

 

 

 








 映画・アニメオリジナルキャラ等の紹介


・ビシャス
 カウボーイビバップの人ではない。
 映画4作目「セレビィ 時を超えた遭遇(であい)」にて登場したロケット団の大幹部。別名「仮面のビシャス」、「邪悪なるポケモン使いビシャス」。サカキに次ぐ地位にあたる。本作では幹部よりは上、各組織のボスよりは下という設定。映画公開時、諸事情によって彼のせいでトラウマを植え付けられた子供が続出した。詳しくは映画本編を見よう!
 実力はロケット団史上最強と言われるが、映画の活動を見る限り最強だったのはダークボールの方じゃねえかな……と思わないでもない。
 なんだかんだ割と最悪な所業をしている名悪役。サトシさんに右ストレートを叩き込んだシーン(漫画版)も印象深い。


・ダークボール(映画版)
 ゲーム本編のダークボール(暗い場所で捕獲率アップ)ではない。
 捕獲したポケモンを邪悪にするというモンスターボール。どんなポケモンでもこのボールで捕まると凶悪になってビシャスの命令を聞くようになる。
 某所で「本来はありえない二重捕獲をされ」という記述があるが、こちらに関しては真偽不明(映画中で捕獲したバンギラスは檻の中に入っていた個体であり、モンスターボールから出てきた描写が無いため)。
 本作では他人のポケモンを奪うような効果は無いが、追加効果が色々盛られている。


・クリスタルシステム
 正式名称「クリスタルフィールド・ジェネレーションシステム」。テレビスペシャル「ポケットモンスタークリスタル ライコウ雷の伝説」にて登場。
 かみなりタイプのポケモンをおびき寄せ、電撃を吸収・増幅して反射という凶悪な機能を持った機械。伝説のポケモンであるライコウすら無力化するというトンデモ兵器。
 これ使えばピカさんくらいどうにでもなるんじゃね……? とか言わない。番外編のものを本編に持ち込んではいけない(戒め)。
 本作では量産に成功している。


・メガウェィィィブ
 映画「ボルケニオンと機巧のマギアナ」にて登場。ポケモンとの絆やキーストーンが無くとも強制的にメガシンカさせることができる装置。キーストーンに類するものは使用しているようだが、どうもメガストーンを持っていなくとも使えるような描写が見受けられる。更に何匹でもメガシンカさせることができるとかいうネオ神秘化学脅威のメカニズム。映画本編だとデメリットが描写されていなかったけど絶対裏はあるゾ。
 映画本編の描写のみで考えると対戦勢垂涎の品。ガラルへの輸入はできない。


・じしん
 ノリと勢いで原作のじしんに設定が付け加えられてしまった。
 第一プロセスでは通常の地震が引き起こされ、第二プロセスでポケモンの生体エネルギーを注ぎ込むことで技として完成する。
 揺れによる負荷で骨格を破壊、生体エネルギーによって引き起こした超振動によって細胞を破壊する。
 地震の恐ろしさはどちらかと言うと揺れよりもその後の建造物の倒壊や津波によるものの方が大きいのでは。では威力100とは? という自問自答の末にこんなことになりました。勿論原作にこのような設定はありませんので、本作のみの独自設定ということでご容赦ください。



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