携帯獣異聞録シコクサバイバー   作:桐型枠

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戦場にあやしいかぜが吹く

 

 

 ――ドラゴンタイプの究極技、「りゅうせいぐん」。

 その本領は単純な威力の高さだとか、撃った後には反動でエネルギーを操る力が弱まるだとかそういうことではなく、この技によって呼び寄せられた隕石全て(・・)が、あの「はかいこうせん」を貫いてなお余りあるほどの威力を秘めているということだ。

 

 空から、10を超える数の「流星」が空を切り裂いて飛来する。ゴム質の柔軟で頑丈な皮膚や、その隕石をも食らおうとして開かれた牙――それらを貫き、圧し折り、叩き伏せて、フライゴン(ラー子)とヨウタがオレたちの前に降り立った。

 

 

「ゴ、ガガガガガ……」

 

 

 アクジキングは、そのまま小さくうめき声を上げて動きを止めた。

 ある程度オレたちで体力を削ってたとはいえ、ここにきて誰もが直感的にヤバいと認めた「はかいこうせん」を上から押し潰して、一発で戦闘不能か……圧巻というか、なんというか。

 そもそも、ヨウタは事前に同じウルトラビーストであるウツロイドを一人で倒してるワケだし……これもできないこととは言い切れないか。

 

 

「今度は間に合ったね」

 

 

 この光景の立役者のうちのひとりであるところのラー子、その背から降りたヨウタは、ごく涼しい顔で――しかし、多少安心したように、そう言った。

 メタモンの時、足止めされて結局オレの救援に来られなかったことをちょっと引きずってたんだろう。

 

 

「最高のタイミングだったな」

「はは……あ、ラー子。そのウルトラビースト、見張ってて」

「フラー」

 

 

 皮肉交じりにひとこと言って手を挙げると、ヨウタは苦笑しつつそこに手を合わせてきた。ぱしん、と小さく音が響いた。

 ――そこで、全身の力が抜けた。

 

 

「……あ」

「あ――だ、大丈夫ですか……?」

「す、すみません、気が抜け……ギル、ストップ! ストップ!」

「ギラァァァ……」

 

 

 お、おお……危ないなんてもんじゃない。あとちょっと指示が遅れてたらそのままオレごと小暮さんも轢き潰してたぞ。

 ギルのやつ……心配してくれるのは嬉しいし可愛げがあるんだが、せめてもうちょっと自分がどんな大きさしてるのかを思い出してくれないかな……。

 

 ともかく、小暮さんに助け起こされたままというのも良くない。礼を言って立ち上がろうとするが……困った。全身激痛でまともに動けそうもない。痛みを抑えてた脳内物質がスーッと引いて……これは……死ぬほど痛い……。

 

 

「またそんな怪我で無茶するからだよ」

「したくてしたワケじゃないっての……」

 

 

 オレだって休む気満々だったんだよ。アクジキングさえ来なけりゃな!

 恨めしさを込め、半目でヤツをにらみつける。ぼうぎょは下がらない。

 

 

「それで、あのウルトラビーストは?」

「アクジキング……って、知らないか?」

「うん。ロトム」

「ロト。ボクたちが出会ったのはウツロイドとソルガレオ……ほしぐもちゃんくらいロト。一応、ハラさんにEXPANSION(マッシブーン)のことは教えてもらってるケド……」

「そっか」

 

 

 ……となると、ハンサムイベントは経験してないってことになるか。時系列から考えると……エーテルパラダイスでルザミーネと戦った後、すぐにカプ神に会いに行ってルザミーネを治療してもらって、その直後にレインボーロケット団が……という流れになってたので、当然と言えば当然なんだけど。

 となると、殆どのウルトラビーストについてはオレたちの方が詳しいのか。変な逆転現象だな。

 

 

「周り見てくれ。この被害出したの、全部こいつだ」

「う……っわ。何コレ……?」

「全部コイツが食ったんだよ。そういうウルトラビーストだ」

 

 

 みんなをボールに戻しつつ、ヨウタにスーパーボールを投げ渡す。

 なけなしのボールだけど、この状況を考えるとしょうがない。仮にあいつを逃がしたら大惨事になるし……ウルトラホールも閉じてしまったし。他に手の打ちようも無いな。

 ……けど。

 

 

「『ひんし』のポケモンって捕まえられるのか?」

「じゃないと保護とかできないでしょ」

「それもそうか」

 

 

 ま、そりゃそうだよな。

 強引に捕まえたとしても言うことを聞いてくれない可能性が高い以上、モンスターボールの役割は、捕獲用ってより運搬用だ。

 衰弱したポケモンを一時的に運ぶために……っていう時に役立つだろうし、回復したら逃がせばいい。

 ……ゲームじゃないんだし、体力の限界ギリギリを見極めて……とか、考える必要無いってことだな。

 

 

「皆さん、下がってくださーい!」

 

 

 アクジキングが暴れ出さないようラー子に監視はしてもらってはいるが、念のためだろう。周囲の野次馬根性出して見物しようとしてる人たちに注意を呼びかけつつ、ヨウタはアクジキングの元へと駆け出す。

 そんな時のことだった。

 

 

「ん?」

 

 

 チリッ――と、不意にうなじあたりに痺れるような感覚があった。

 電磁発勁の名残か? いや、だとすると小暮さんにも、静電気のようなビリッと来る感じがあるはずだ。見てる限り、そんな素振りは無い。

 

 

「んー……」

「アキラさん、どうされたんですか……?」

「ちょっと気になることが――」

 

 そう思って周囲を見ていると、人の流れに反して誰かがヨウタのもとに近づいていっているのが見える。

 中肉中背で黒髪の男――誰だろう。分からない。

 

 

「小暮さん、あの人誰ですか?」

「……沢渡さんですね。レジスタンスの」

 

 

 さわ…………うん、オレが知ってるはずもないか。

 となると、余計に気になる。レジスタンスの人たちは、今日までレインボーロケット団に反抗してきただけあって、愚かではいられなかったはず。だというのに、ここにきてあの迂闊な行動――ありえない。

 

 

「リュオン」

「リオッ」

「探ってくれないか」

「リオ。リオリオ」

「うん? 別にいいけど。うん、いいよ」

「……?」

 

 

 何も無ければ無いで問題無いんだが……と思っていると、小暮さんが不思議そうな顔でこちらを覗き込んで来た。

 

 

「……ポケモンと、お話を……?」

「あー……いえ、お話というか、ボディランゲージの延長っていうか……波動で」

「はどう」

「波動」

 

 

 ……何がなんやら分かってない顔だ。そう簡単に理解するものでもないけどさ。

 オレも練気の応用でなんとか言わんとすることが分かっているだけで、実際普通の人だとどの程度分かるんだろうな。

 

 そう思ったところで、動きがあった。

 沢渡は、ヨウタをまるでいないかの如く扱い、懐からモンスターボールを取り出した。流石のヨウタもこれには驚き、一瞬の隙が生じる。男は腕を振るい、ボールを投げる――が、直前にリュオンが飛び込み、顔面に拳を叩き込む。ポケモンの力に耐えることはできずにその顔面は「砕け」、衝撃と共に沢渡という男――だった者はしたたかに後頭部を地面に打ち付けた。

 

 

「うぇえええええええええええ!? アキラ何やって……誰この人!?」

「やっぱりか」

「やっぱり!? え、ちょ、ちょっと待ってよ! どういうこと!?」

 

 

 一旦ヨウタの質問を置いて、小暮さんに肩を借りながら男のもとへと歩いていく。と、案の定、そこにいたのは奇妙なスーツを身に着けた沢渡ではない(・・・・)誰かだった。

 頭は機械式のフルフェイスヘルメットに――破壊されているが――覆われており、多量の電気を使うためか、破損部から漏電して絶え間なく火花が散っている。

 ……オレは、コレの正体を知っている。

 

 

「イクスパンションスーツ……実用化してたのか……」

 

 

 イクスパンションスーツ。原作「X・Y」で登場した強化戦闘服だ。

 その機能は多岐に渡り、人体の強化に始まり、実質的に洗脳とも言い換えられるAI制御による自動操縦、光学迷彩の応用による他者への変装――そして、ボールジャック、と呼ばれる「他人のモンスターボールを奪う」機能などが挙げられる。

 

 原作ではフレア団の活動開始に開発が間に合うことは無く、全ての事件が終わってはじめて日の目を見ることとなったのだが……どうやら、フレア団がレインボーロケット団に編入されたことで開発が完了、この四国侵略に合わせて実用化してきた……ってところか。

 ……しかし男がこのぴっちりしたスーツ着てるのってビジュアル的に最悪だな。

 

 

「だから何なんだよそれ!?」

「あ、悪い」

 

 

 ちょっと考えをまとめるのに時間がかかりすぎたか。ほっとかれて流石にヨウタが半ギレだ。

 わけのわからない状況に身を置いたまま説明もされないとそうなるよな。すまない。

 

 

「カロス地方のフレア団が開発した特殊な強化スーツだよ。モンスターボールを奪う機能とか、他人に変装する機能とかがついてる」

「そ、そっか……よく分かったね?」

「リュオンが直接波動を読み取って悪意を感じたんだ。じゃあ間違うはずがない」

「リオ」

「アキラってポケモンへの信頼が重くない……?」

「実績があるからだよ」

 

 

 怪しい動きをしてたのは確かだけど、流石にオレも自衛隊の避難所でレインボーロケット団の変装を見破ったって実績が無ければちょっと考えてた。

 ……実際に予感が当たったってのは、なんとも言い辛い感覚だが。

 

 さて、それよりなによりアクジキングだ。「じしん」と「りゅうせいぐん」によってできたクレーターの中にいない……ってことは、この男の投げたボールのせいで捕獲されちまったってことになる。はず、なんだが……。

 

 

「……おい、こいつボール持ってないぞ」

「え?」

 

 

 懐、腰元、などなど。ボールを隠せそうな場所を全て見てみるも、まるで見つからない。

 何でだ? こんなの、だって……ありえない。状況から考えると、たった今こいつはここでアクジキングを捕獲したんだ。そのはずなんだが……。

 

 

「……無い」

 

 

 ヨウタが改めて探してもなお、そこにアクジキングを収めたボールは無い。

 二人して困惑する中、小暮さんが改めて見てみると、男のスーツの中に謎の装置があることに気付いた。こちらで言うスマホのような……板状の電子機器だ。

 

 

「あの、これは……?」

「これは……何……だろう」

「さあ……」

 

 

 黒い板だ。何ともよく分からない。どこが電源だ? そもそもコレ、電源入れていいものなのか?

 うーん……いやちょっと待てよ。そうだ。知ってるヤツがいるじゃないか。

 

 

「小暮さん、ちょっと降ろしてください」

「え? あ……はい……」

「テメェ起きろコラァ! ハッ倒すぞオラァ!」

「アキラ! ガラの悪さが半端じゃな……叩いちゃダメだよ!」

「そうは言うけどよー……」

 

 

 こういう手合いにはコレに限るんだって。変な遠慮して逃げられたり、ナメてかかられたりしたら困るのはオレたちだ。

 それに、完全に意識を失ったところから起こすには、多少強引でもこのくらいするしかない。

 

 

「う……うう……」

「よし、起きたぞ!」

「…………」

「…………」

「何です」

「……強引、だと……思います」

「うん……」

「変にまごついたらアクジキングがどっかで解放されて誰か死ぬかもしれないでしょ。おい起きろ! おい!」

 

 

 アクジキングの危険性はさっき見た通りだ。もしかしたら何か思いもよらない方法で逃げ去ってるかもしれない。そうなるとまず間違いなくどこかで誰かが死ぬ。

 最悪、電磁発勁でも何でも使ってとっととコイツを叩き起こすしかない。

 

 

「……う、ご……な、なんだ……何が起きたと……言うんだ……」

「こっち見ろ」

「おごっ!? が、な、白い悪魔!?」

 

 

 何だその全盛期のトゲキッスみたいな異名は。

 

 

「てめえ、あのアクジキング……ウルトラビーストをどこへやった!」

「ぐえっ! な、何の――――」

「すっとぼけてんじゃねえぞこの野郎! 指の先から順番にヘシ折って話す気にさせてやろうか!?」

「アキラ、落ち着いて。いや本当に」

「……チッ」

 

 

 舌打ちと共に、近くの地面に血痰を吐き捨てる。

 ふと周りを見ると、野次馬めいて集まってきているレジスタンスのメンバーの中に、オレを見てドン引きしている人が何人かいた。

 ……いや、違うんですよ。オレだって好き好んでこんな態度取ってるんじゃないんですよ。コイツが何も話さないのが全部悪いんですよ。

 

 

「……急に意識を取り戻して、混乱しているのかもしれません……」

「でも、自分でやったことが分からないなんてことが……」

「あ」

「どうしたの?」

「……あり得るのかもしれない」

 

 

 イクスパンションスーツとしての機能……装着者を睡眠状態に置き、AI制御で自動操縦を行う。それなら、自分のしたことを理解してないということもあるかもしれない。

 そういったことを二人に説明すると、ヨウタも小暮さんもやや微妙な表情をして見せた。概要だけでその辺の説明をしてなかったから、改めてそれを知るとそういう反応も当たり前か……オレも失念してて、そのままこの男の仕業だ、と断定して脅してたわけだし。

 

 

「……この人からは、情報を得られそうにないですね……どう、しますか?」

「この端末が何かを調べれば、少しは分かるかもしれません。ロトム」

「ロト。電波が発生してるみたいロ。通信端末?」

「見た目はスマホっぽいけど……」

 

 

 ロトムは端末に手を当て、その内部情報を探り始めた。その間、オレと小暮さんは男を強く拘束していたのだが……しばらくすると、顔(?)を蒼褪めさせたロトムが、震えた音声でその事実をこちらに伝えにきた。

 

 

「こ……この端末……『ポケモン預かりシステム』に繋がってるロト……」

「「!?」」

「……送信先は、どこですか?」

「レインボーロケットタワー……敵の拠点ロト!」

「引き出せないのか!? ハッキングは!?」

「送信専用の端末みたいロ……それに、ハッキングってそんなに便利なものじゃないロト。無いものをあるように見せかけるのは……」

 

 

 ハッキング……って言っても、そんな無茶はできないか。

 そりゃそうだよな。創作だとなんだか色々できるけど、普通そういうものじゃないし。あくまでできるのは「その端末でできること」だろう。

 ……なんてこった。リュオンはちゃんとコイツがボールを投げる前に潰したはず。だってのに捕獲されて、あまつさえ敵の本拠地に送られるなんて……。

 

 

「つーか何でコイツここにいたんだよ……」

 

 

 苦々しい思いを吐き捨てるように、男を睨みつける。

 ヨウタたちは発信機は潰したと言っていた。ここはまだ愛媛で、フレア団の勢力圏外のはず。だってのにこれだ。ヤツら、何か他の方法を使ってオレたちの居場所を探り当てたのか?

 自分の方が聞きたいと言いたげに男はぶんぶんと首を振るが、どこまで信じていいものか……。

 

 

「……ロトムさん、一つ……データを……あの。アクジキングのものを、出していただけませんか? あれば、でいいんですが……」

「ボクらの世界のデータは無いから、こっちの世界のものになるケド、いいロト?」

「はい。そちらの方が……分かりやすいので」

 

 

 悩むオレを尻目に、小暮さんはロトムに頼んで何やらアクジキングのデータを出してもらっているようだった。

 そうして表示されるデータをしばらく眺めていると、彼女は何かに納得したように頷いた。

 

 

「あのアクジキング……野生の存在ではなかったのかもしれません……」

「……は!?」

「どういうことですか?」

 

 

 言って、小暮さんはロトムの図鑑画面こちらに向ける。そこに表示されているのは、アクジキングの技リスト……こっちの世界に来てまるごとコピーしたウェブサイトのデータだ。

 

 

「通常、ポケモンが……成長の中で覚えていく技、というのは……ここで言う『レベル技』として、示されているかと、思います……それでよろしいですか……?」

「あ、はい。例外はありますけど、その認識で大丈夫です」

「……ありがとうございます。それで、先程の……推定、『はかいこうせん』と思われる技ですが……これは、技マシンでなければ、習得できない技です」

「……あ」

 

 

 そうか!

 仮にできるとしても、通常ヤツが覚える特殊技は「りゅうのいかり」か「ゲップ」、「しぼりとる」のいずれか。「しぼりとる」があんな光線を吐くような技になるわけがないし、きのみを食べていないから「ゲップ」は使用できない。「りゅうのいかり」ならもっと炎のようなものを吐く技のはず。

 レベル技……自然に、生態として「はかいこうせん」を覚えるポケモンは少なくないけど、アクジキングはその中には含まれない……!

 

 

「……レインボーロケット団は、ウルトラホールを開く技術を持っています……。推測ですが、あのアクジキングは、レインボーロケット団が捕獲していたものではないでしょうか……」

「確かに、さっきリュオンがあの人を倒した時、モンスターボールは投げ切れてなかった……それなのにアクジキングがいなかったってことは」

「『捕まえた』んじゃなくて、『ボールに戻した』のか……」

 

 

 それならまあ、辻褄は合う。言ってみればビシャスの時とは逆の状況だったってことだ。レーザーポインターを当てればボールの中に戻るから、投げる必要が無かった……けど、偽装のためにわざと投げるフリをした、ってところだろう。

 問題は、何故ここに来たか……だが。

 

 

「……でも、やっぱり何でここに来たのかが分からない。やっぱり動向が漏れてたのか……?」

「……いいえ。恐らく、彼が狙ってきたのは……レジスタンスです」

「あ……そういうことですか」

「どういうことだ?」

 

 

 なんだかだんだん複雑になってきた様相に頭の中がこんがらがる。

 アクジキングはオレに引き寄せられて来たよな? 何でそれがレジスタンスに繋がるんだ? アレ?

 

 

「……順序立てて説明します」

「お願いします」

「まず……彼は……香川から愛媛に来る前に、レジスタンスを内部から壊滅させるため、潜入してきたものと思われます」

「うん? ……あ、そうか」

 

 

 順序としては、どうしてもそうならざるを得ないのか。

 イクスパンションスーツはフレア団が開発した技術だ。今は同じ組織に属してるとはいえ、容易にマグマ団にその技術を供与するとは限らない。同じ組織の中でも勢力争いとかあるだろうしな。愛媛に入ってから……オレたちとレジスタンスが合流してからじゃ、潜入するタイミングは無かったはずだ。

 

 

「……アクジキングも、レジスタンスを壊滅させるために、ウルトラホールを介して呼び寄せたのかと。レジスタンスでは……戦力的に対処できませんので。ですが……そこに、本来いるはずじゃない、アキラさんたちがいました」

「そっか。『Fall』のアキラに引き寄せられて……足止めもされてたから、本来の目的が達成できなかったんですね」

「んで、オマケにそのアクジキングを倒せるヨウタもいた……」

 

 

 もっとも、オレたち全員が出払ってる時を狙って送り込んでくるあたりは徹底してるな。偶然オレが近くにいたから、こっちに引き寄せられて足止めできただけで、本当なら皆殺しにされててもおかしくなかった。

 オレたちは今回、レジスタンス狙いの襲撃に完全に巻き込まれたかたちになるのか。まあ、そこはいいや。助け合いだ。

 問題はそっちじゃなくて、この先か。

 

 

「……どうする、アキラ? 逃げられたっていうことは、この先アクジキングが立ちふさがってくるってことだと思うけど」

「そこは別に大した問題でもない。倒せたろ?」

「けど」

「レインボーロケット団が負けたこと反省してポケモンを鍛え直すような殊勝な心持ちの組織なら、オレたちはとっくに負けて死んでる」

「……そうだね」

 

 

 もっとも、サカキは別だ。あいつ元ジムリーダーだけあって強さの追及には余念が無さそうだしな。

 けど下っ端から幹部クラスまで全部そうだとは言えない。アクジキング自体の厄介さも相まって、まず制御することから始める必要もある。どうやっても「鍛える」までに至るハードルが高すぎるんだ。

 だったら、あいつらはその手間で他のことをするだろう。

 さて。

 

 

「……だいたい分かりましたけど、これからどうするんです? ここの場所バレちゃってるし、移動しないと」

「そうですね……それに、またスパイが潜入しないとも、限りません……対策を講じないと……」

「ええ……」

「…………」

「何です二人してオレを見て」

「見破れるのはアキラとリュオンしかいないから、手伝ってくれないと……って」

「……可能なら……ですが……」

「……まあ、やりますけど」

 

 

 まだ潜入してる相手がいるかもしれない以上、やらない理由も無い。

 オレは再び小暮さんに肩を貸してもらいながら、イベントホールの方に戻って行った。

 なお、朝木と東雲さんが戻ってきたのは更に数分後。ある意味これはこれで巻き込まれずに済んで幸運だったと言えるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 ――――ウルトラホールから出てきたのがアクジキングだけではなかったと知るのは、しばらく後のことになる。

 

 

 





参考

・アクジキングのレベル技

1  ゲップ
1  ワイドガード
1  のみこむ
1  たくわえる
1  りゅうのいかり
1  かみつく
7  ふみつけ
13 ぶんまわす
19 ハードローラー
23 ドラゴンテール
29 アイアンテール
31 じだんだ
37 かみくだく
43 アームハンマー
47 あばれる
53 いえき
59 ヘビーボンバー
67 しぼりとる
73 ドラゴンダイブ

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