絶望的な戦力差。
期待できなくなった増援。
現状は、なるほど。今までになくピンチだと言っていい。
けど。
「
「ヒョ?」
「貴様と同列の
「んなっ……フフヒヒヒャヒャヒャ! バカが!! やつのもとに向かった幹部が持っておるのもまた伝説、イッシュのボルトロス、トルネロス、ランドロスじゃ!」
ボルトロス、トルネロス、ランドロスの三匹――なるほど、確かに驚異的には違いない。
オレたちの世界だと準伝説とも分類されるが、伝説は伝説。それが三匹となれば、そうだな。ヨウタもてこずるだろう。
「お前たちが気象情報をもとに推測して伝説のポケモンを探してたのは分かっておる! そして、あの三匹は、先んじてワシらが気象情報を調査したことで、『この世界で』捕獲したポケモンじゃ! もはやお前たちに希望なんぞ残されておらんと知れぇ!」
「――だったら好都合だろ。貴様らを倒してッ!!」
「ピピピッ!」
「ぬおっ!?」
「その五匹、全ていただく! 『はどうだん』!」
「リオオオッ!!」
「ゴボゴボッ!」
周囲の瓦礫を砕き、散弾銃のようにして投げつける。ゲノセクトが瞬時に飛来してその一撃を防ぐが、その一瞬の隙を突くようにしてリュオンが「はどうだん」を放つ。
瞬間的に波動を圧縮したせいか、その凝縮はやや甘い。威力もやや低く、射線上に防ぎに入って直撃したにも関わらず、ヒードランの外殻に傷はほぼ見られなかった。
「ひ、卑怯な」
「『ねっぷう』!」
「バシャアアアァァッ!!」
「ピピーッ!」
「うぬうぅっ!?」
畳みかけるように放ったチャムの「ねっぷう」は、プルートの盾になるようにして割って入ったゲノセクトに直撃する。
――しかしこれも大した手傷は与えられない。やはり、地力には差があるか。
「――ええい、この卑怯者めが! 人のポケモンを盗ったら泥棒という言葉を知らんのか!?」
「黙れ人殺しが! 奪われる側の気持ちを刻み込んでやる……!」
強い怒りを込めて、一瞬生じた防衛網の隙間に向けて投擲を行う。当然、それを見逃すゲノセクトとヒードランではない。
しかし、これはあくまで人間の行った投擲だ。彼らはただ、少し体の位置をずらすだけでその威力を殺すことができる。今回もそうしてゲノセクトが立ちふさがり、
「――『ストーンエッジ』」
「グルァァァアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
「ぬおおおおおっ!?」
投擲物――すなわち、ハイパーボールから飛び出したギルがゲノセクトを押しつぶさんと巨大な岩塊を叩きつけた。
「ゲ……ギギギ……ビーッ、ビーッ!」
あまりの過負荷にゲノセクトが
体格だけで言えば倍以上はあるというのに、なんて能力だ……!
「ぬうう、どうしたゲノセクト、押し返さんか! ヒードラン、お前もそこの小物をやれい!」
「ル……?」
「シャァ……!」
「――落ち着け! あんな器の小さいハゲにみんなの強さなんて分かるはずがないだろ!」
そう告げると、怒りで今にも飛び出そうとしていた
同時に、ヒードランの放った「マグマストーム」が迫るが、チャムが「すなかけ」で巻き上げた砂をリュオンが「れいとうパンチ」で固めることで壁……あるいは目隠しの代わりとして、瞬時に左右に分かれて跳躍、そのまま渦巻くマグマを躱して見せた。
「ええい小癪な! ならヒードラン、あのデカブツをやれい!」
「ゴボボ……」
次いで、ヤツが標的としたのは、押し合いが膠着状態に陥ったギルだった。
だが、その動きはプルートの指示から一瞬遅れて始まり、
「リュオン、『ボーンラッシュ』! チャム、『とびひざげり』!」
「ルウァァアアッ!!」
「バシャアアアアッ!」
「ゴボボッ……!?」
横合いから二匹に殴り抜かれることで、その体勢を大きく崩すこととなった。
「何度邪魔をすれば気が済む!」
「貴様が倒れるまで何度でもだッ! チャム、『ブレイズキック』!」
「ぬぅ、止めいヒードラン!」
「リュオン、『さきどり』ッ!」
ゲノセクトに横から一撃を入れようとチャムが駆けたその瞬間に、リュオンもまた動いた。ヒードランの波動から使用する技を推定、ヒードランから溢れ出る生体エネルギーを絡め取り、全く同質の技――「だいちのちから」としてほぼ同時に撃ち放つ。
まるで二匹の巨大な蛇がうねり、食らい合うようにして地面が波打ち、轟音を立てて砕け散る。そしてその隙間を縫うようにして、チャムが飛び込んだ。宙に浮かんだ岩の塊をも足場にした、ランダムかつ超高速の軌道、そこから放たれた
「グオオオオオオオオオオオオッ!!」
そこで、押し合いの趨勢は一気にギルへと傾く。全身の筋肉を隆起させ、咆哮と共に全身全霊を込めて――叩き潰す!
「――――!!」
悲鳴じみた甲高いアラート音が響き、バキバキという凄絶な音と共にゲノセクトは岩と地面との間に挟みこまれ、その外装が割れる。
「跳べぇッ!!」
直後、オレはリュオンとチャムに声を飛ばした。
その脚力を活かしてチャムがリュオンを抱え、オレはギルの背に向かって走り込む。
この状況だ。周囲の被害どうこうよりもこいつらを倒す方を優先しないと危険だ。
「ギル、『じしん』!!」
「ゴッ――ガアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
オレがギルの背に乗り、チャムがリュオンを抱えて遥か上空に跳躍したその直後。
ゲノセクトを押しつぶした岩と共に、大地が音を立てて
かつて狂気に飲み込まれ、目標を見失いながら場当たり的に放ったそれとは比べ物にならないほどの威力の一撃だ。正しく敵を見据えて放たれたそれは、
(どうだ……!!)
オレが感じられるゲノセクトの波動は、徐々に小さくなりつつある。「ひんし」状態に追い込まれつつあるポケモンに特有の状態だ。
流石にギルほどのイレギュラーとなれば、その能力値も通常のポケモンとはケタが違ってくる。それこそ、伝説のポケモンと同レベルに。その攻撃の直撃となれば、流石に効かないと言うことは無いだろう。
プルートのポケモンの弱点はビシャスのそれとほぼ同じ。指示が下手なことだ。
「やれ」「止めろ」「防げ」……ただただ場当たり的に指示を繰り返している。だからヒードランもゲノセクトも、指示の直後は思考のために一瞬のタイムラグが生じているんだ。
凡百のトレーナーならそれで充分……いや、そもそも伝説のポケモンを従えていれば、戦力としては圧倒的なんだ。何も考えずに力押ししても大抵は勝てるだろう――本来なら。
オレのバトルの師は「あの」ヨウタだ。バトル中の一瞬の隙なんて話にすらならない。その理由は、こうして体感するとよく分かる。
ヨウタからも指示ははっきりと伝えるように言われていた。オレたちの最終目標が「あの」サカキであることを考えると、厳しい特訓も何もかもやって当然のことと言えるだろう。
「グルルルルルルル……」
ギルは、肩越しにヒードランを見据えて唸り声を上げた。「次はお前だ」と言わんばかりに殺意を込めた瞳に、わずかにヒードランがたじろぐ。
「今じゃ」
「――――!?」
――次の瞬間、着地しようと体勢を整えたチャムを、莫大な光の奔流が貫いた。
「チャム!?」
今のは――「テクノバスター」!?
けど、ゲノセクトは今確実に撃破した! 波動も小さくなってるし、一瞬見えたあの傷で動けるはずなんて……!
そう思って光が放たれた元を辿って視線を向けたその時、オレは強い衝撃を受けた。
「な……ッ」
絶句した。
ゲノセクトが――動いている。いや、違う。ゲノセクトが――
外装はボロボロで、部分的に剥離して元のポケモンとしての筋組織が覗いている。片腕はほぼちぎれかけで、僅かでも衝撃が加われば今にも落ちてしまいそうだ。
そこに生命の波動は、ほんの僅かにしか感じられない。間違いなく今こいつは「ひんし」のはずだ。けど、これは……生命のそれじゃない、「波」。この……「電磁波」は。
「プルート……貴様……ッ!」
「フフヒヒヒャヒャヒャ! 甘く見たのォ、ゲノセクトはたとえ瀕死になろうともこのコントローラーがあれば死ぬまで、いや、
言うが早いか、ゲノセクトは背のブースターを限界
「ガ――――」
「――――――」
閃光が、迸った。
「だいばくはつ」。その技を放ったのだということを認識したその瞬間に覚えたのは、浮遊感だった。
ブラックアウトした視界のひとつも戻らない中、木っ端のように宙を舞う。四肢に力が入らない。耳鳴りが酷い。口の中に鉄の味が広がっている。
次いで感じたのは、強い衝撃と全身の痛みだった。
何本か骨が折れているような感覚がある。鎖骨、肋骨、指……足も、感覚が無い。
「かはっ!」
せき込むと同時に、バチャ、ベチャ、と水音が聞こえた。改めて見れば、体にはゲノセクトの装甲材の残骸らしき金属が複数突き刺さっている。
いや、今はそれはいい。それよりも、みんなは……。
「ッ」
血で滲む視界の端、どうやら今の攻撃が直撃したらしいギルが、力尽きて体を横たえている。
チャムもまた、過剰出力の「テクノバスター」が直撃して「ひんし」に陥ったのか……その際に弾き飛ばされて無事だったらしいリュオンが抱えてこちらに駆けてくる。
まずい、すぐにボールに戻さないと……。
「……ッ」
「フフヒヒヒャヒャヒャ! どうじゃこの威力は、素晴らしいと思わんか! 死してなおこれじゃ、ヤツも人間様に使われて本望じゃろうと思わんか!」
何か……死ぬほど腹立たしいことを言っているような気がする。だが、詳しくは聞こえない。
あと十秒もあれば聞こえるくらいに回復するだろうけど、その前に
震える右手でボールを探ろうと腰元に手を伸ばした、その時。
「ぐああァッ!?」
「なぁにをしとるんじゃ小娘が!」
前に向かって投げ出されていた折れた左腕を、プルートの乗る浮遊マシンから伸びたアームがつかんで引き上げていた。
宙に浮かされることで全体重が左腕にかかってくる。その痛みは到底看過できるものではない。その上で、万力のような力で締めあげられ――更にもう一度、ゴギリ、という嫌な音が聞こえた。
「リオ……!」
「お前はヒードランと遊んでおれ!」
危険だと感じたのか、チャムを置いてこちらに走り出したリュオンだが、その道はヒードランによって塞がれてしまった。
「ボーンラッシュ」によって応戦しているが、その動きは明らかに精彩を欠いている。
「フフヒヒヒャヒャヒャヒャヒャ! 無様じゃなぁ~! あれだけ啖呵を切ってこれとは、恥ずかしくはならんのか? ん?」
「――――」
「なんとか言わんか!」
「――――ご、えっ……ごぼっ!!」
腹に、鋼鉄の拳が叩き込まれた。
べちゃべちゃと熱い液体が口元から胸元にかけて吐き出され、濡らしていく。
「まったく不愉快な小娘じゃ。まあいい、残るポケモンを無力化……む、ムオオオオオ!?」
腰元のボールホルダーを機械の腕でまさぐり始めたプルートが、あるボールに目を止める。
それは……。
「こ、こりゃ……ウルトラビーストか! しかも未発見の新種! こ、こりゃほしい! フ、フフ、フヒャヒャ!! なんというラッキー! こんな拾い物をするとは!」
「……ベ……ノ」
ヤツが手にしたのは――ベノンのボールだ。
舐め回すような視線がボールの中からでも透けて見えたらしく、ベノンはボールの中から震えながらオレに怯えたような視線を向けていた。
「ヒャヒャヒャ! そんなに睨まんでも、お前のような小娘と違って有効活用してやるわい。まずはあのダークトリニティに貸してやった三匹を取り返し、弱ったアカギを葬りディアルガ様とパルキア様をこの手にする! そして目障りなサカキを始末できれば……伝説のポケモンは全てワシのものじゃ! ヒャヒャヒャヒャ!!」
「……無理……だな……」
「ヒョ?」
「……お前如きじゃ……サカキの足元にも……及ば、ない」
「まだ口をきけたか! こいつめ、こいつめッ!」
「ご、あ、があっ……!!」
次々と顔面に鉄拳が叩き込まれる。一撃ごとに頬骨が歪み、鼻から血が噴き出してくる。
それでも、心は折らない。絶対に。こいつに屈することだけは、決してありえない。
攻撃そのものは、あまりにも単調だ。およそ戦闘者のする動きではない。ただ嗜虐性を満たすためだけのものだ。
だから。
「ぬ?」
「…………は、ァッ……」
――圧し折れた指だらけの手でも、何も問題無く受け止められる。
「な、なっ、な!?」
「……ッ、ア゛あッ!!」
全身から青い稲妻が迸る。
鋼鉄の腕だとかそんなのは関係ない。その威力は、耐久性は、決してポケモンのそれには及ばない。
渾身の力でアームの接続部に手刀を入れ、その中ほどから
「んなぁっ!? 特殊カーボンのアームを……!」
そのまま投げ出されかけたベノンのボールを、しっかりとつかんで引き寄せる。そして代わるように、最後のボールをホルダーから落とし、足を使ってヤツの操縦席に向かって蹴り込んだ。
「ヂュヂイイイイイイイイッ!!」
「なっ!? あががががががががががががががッ!?」
「っ……!」
チュリの電撃がプルートとヤツの乗るマシンとを貫き、小規模な爆発を起こし黒煙を上げさせる。
その間に着地……は、できず、もんどりうって転がり回る。それに合わせてチュリもマシンから脱出して来たようで、そのまま急いでこっちに駆け寄ってくるのが見えた。
一方、プルートの乗るマシンは今の電撃で操作系がイカれたらしく、フラフラとした軌道でやや離れた場所に不時着するのを目にすることができた。
這い出してくるプルートを見る限り、大きな怪我は負っていないようだ。あまり高くまで飛んでいなかったせいだろう。オレ自身も、そのおかげで大怪我せずに落下できたのだから、それを悔いることはしないが……。
「ひ、ヒードラン! ワシを守れ!」
「ゴボボボボ……」
ほうぼうの
「こ、こんなバケモノは手に負えん! 退却するしかないわい……ポリゴンZ!」
「……!」
あ、あの野郎まだポケモンを隠し持ってやがったのか! トレーナーでもねえってのに……!
見ればプルートは、ポリゴンZの脚部……というか、尾? らしき部分を引っ掴んで、宙に浮いて逃げようとしている。
「チュ、リ……!」
「ヂッ、ヂヂッ!」
「ゴボゴボ……」
逃すまいと放ったチュリの「10まんボルト」だが、割って入ったヒードランによってその多くは散らされてしまった。
チュリ自身の充電も心許ない。リュオンは立ち上がろうとしているが……ヒードランにやられたダメージが大きい。どうしても、今は這って進んでいるような状態だ。
「くそったれ……!」
まだ……何か手はあるか……!?
いや、あるんだ、手は。だが、失敗すれば後がないどころかただただ無意味に終わり、オレもベノンもヤツらの手に落ちる。
だが、ここでヤツを逃せば必ず今回以上の被害が生まれる。あのゲノセクトのように、無意味に犠牲を強いられるポケモンが生まれる。
そんなことが許されるはずはない。許されちゃいけない!
誰よりも、そうだ。オレが信じなくってどうするんだ!
「……ベノン……!」
「ベノ!?」
まさか、というところで呼び出されたせいだろう。ベノンの表情は驚きに染まっている。
鍛えるどころか戦闘経験すら無いんだ。それも当然だろう。けど、今はそのポテンシャルに賭ける以外に手が無い。
「あいつを、倒す。よく……狙え」
「ベ、ベノ……」
「ヂュヂュイ」
不安か。オレも不安だ。
けど、その不安を押し殺し、ベノンを抱いてその視線の先に腕を差し出す。「この先に敵がいる」と、「こっちを狙え」と、はっきりと指し示すために。
その上から更にチュリがちょんとベノンの頭の上に位置取り、その視線を更に誘導する。
「……やろう」
「ヂッ」
「ベノ……!」
人ひとり抱えた状態のポリゴンZの速度は大したものじゃない。一つ、呼吸の間を置く。
全神経、気功を視界に集中。ほんの一瞬でいい、攻撃を徹すための間が必要だ。
「――『エレキネット』!」
「ヂ!」
先んじて放たれたのは、チュリの「エレキネット」だ。当然、当たればプルートは大怪我だろう。だから――ヒードランは射線上に出て、攻撃を防ぐ。
「ボゴッ……」
「ベノン、ここだ! 『ベノムショック』……!」
「ベ、ノッ!!」
直後に、ベノンの頭部噴射口から、レーザーのような勢いで毒液が噴出した。
ヒードランは……動かない。この「エレキネット」だけならまだしも、さっきも一度「10まんボルト」を食らってるんだ。多少なりとも体は痺れてるだろうし、この一瞬じゃあ反応はできない!
「ひいいいっ!」
そうして、毒液が貫いたのは。
――プルートが
「――――――!!」
「な……」
悲痛なまでに甲高い鳴き声が響き、ポリゴンZがその体をくねらせる。
ど……どこまでこいつは……ッ!!
「ひゃ……ヒャヒャヒャ! どうやらそれが最後の攻撃のようじゃな! やぁってしまえいヒードラン!」
「ッ!」
優位と見るや即座にポリゴンZを投げ捨て、意気軒高とした様子でヒードランに命令を下すプルート。
その忌々しい表情を見て、しかし今のこの状況下では何もできない自分の無力さを歯が砕けんばかりに噛み締め――。
「コケエエエエエエ―――――――――ッッッ!!」
――雷鳴のような雄叫びと共に、視界を一条の閃光が走った。
雷光そのものの速度とも評するべき――文字通り、目にも留まらぬ速度だった。
その閃光……いや、
「なっ――――」
言葉を放つ暇すらも、プルートには与えられなかった。
まるで庭を歩いていくような気安さでプルートを
「………………」
絶句する。
その戦闘力もそうだが、何よりも――間違いない。このポケモンは、この場にいるはずの無い……。
「……カプ・コケコ……」
「カプゥ――コッコォ!」
その名を呟くと共に、オレの眼前に降り立ったカプ・コケコは、応じるようにしてその名を関する鳴き声を一つ、上げて見せた。
唖然としてその威容を見つめていると、コケコは手に持った何かをオレに差し出した。これは……。
「……!? よ、ヨウタのZパワーリング……!? それに、コレ……」
Zパワーリング。それに加えて、この宝石……まさか、メガストーンか!?
それに、この色合い。純度の高いトパーズのような濃い黄色の宝石の中に浮かぶ、青と黒の二重螺旋……間違いない、ルカリオナイトだ!
けど、何で。そんな疑問を込めてコケコを見つめると、コケコは一度ヒードランを――未だ、完全には倒れていないヒードランの方に視線をやり、オレを引き起こした。
「コココ……」
「……た……『戦え』?」
「コッコ!」
オレの返答に満足したように頷いたコケコは、来た時と同じように雷同然の速度で元来た場所へと飛んでいった。
いや、待てよ。お前プルート殴り倒さなかったか、とか、ヒードラン倒してないのかよ、という疑問が湧き上がったが、当然ながらコケコは何も答えてくれなかった。
嵐のような数秒が過ぎ、オレたちの前に静寂が広がる。その間にヒードランは再び立ち上がり――先程以上の勢いで、炎を噴き出して見せた。
枷は無くなった。そう言いたげなほどに活き活きしているその様子は、以前ヨウタが口にしていたことを思い起こさせる。
――トレーナーを直接倒すのは?
――制御を失った伝説のポケモンが暴れ出す可能性が高いです。
「あの野郎……」
あ……あいつ、絶対意図的にやりやがった……!
コケコは言うなればアローラの戦神。自分が戦うことのみならず、ゼンリョクバトルという形での「戦の奉納」も好むという極めて好戦的なポケモンだ。やるかやらないかで言えば……やる。間違いなく。試練という形にしても、奉納という形にしても。
「ゴボゴボボボボ……」
一歩、ヒードランが地を踏み締める。それと同時に、地下から多量のマグマが溢れ出した。
……何にせよ、このまま放置はできない。ヒードランを止めるには、当のヒードランの後ろで寝コケているプルートのクソ野郎が持ってるボールを奪うしか、今のところは無い。
つまり、強行突破。
「リュオン!」
逡巡は一瞬。こうまでお膳立てされたとなると、やる他無い。
オレはリュオンにメガストーンを投げ渡し、オレ自身もZパワーリングを装着して集中する。
「――――結べ!」
次の瞬間、キーストーンから放たれた光が、メガストーンと結びついて――光と衝撃を放つ。
周囲に蒼い炎が弾け飛び、二重螺旋にも似たメガストーンの輝きが、新たにシンカしたリュオンのその姿を示した。
「ルオオオオオオオオオオオオッッ!!」
一回り大きくなった体格。自身の体色にすら影響を及ぼすほどに高まった波動エネルギーと、伸びた体毛。
一瞬だけ紅に色づいた瞳は――直後に蒼い波動の輝きによってかき消される。そして、極限まで高まった闘争本能は、咆哮として放出した。
「――――終わらせるぞ! これでッ!!」
今回のコケコさん
コケコ(あの爺ポケモン大事にしとらんなころころしたろ)
↓
コケコ(おっあのお嬢ちゃんUB持っとるやんけ! 悪いことせーへんかいっちょ試練与えたろ)