携帯獣異聞録シコクサバイバー   作:桐型枠

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 三人称です。



とびはねるモノと者

 

 彼らに与えられた猶予は、わずか数秒だった。

 黒い(ダーク)ルギアが息を吸い、空気弾を放つごくわずかなタイムラグ。あまりに唐突かつ最悪の事態に直面して喚き出す朝木(もの)はいたが、新顔のヒナヨを除けば彼らは既にアクシデントに慣れ切っていた。

 

 

「ジャノビー!」

「もんさん……!」

「メロ! ナっちゃん、エスパータイプ!」

「え、ええ!? る、ルリちゃん!」

 

 

 運転に集中しなければならない東雲を除いた各々が、早急に車内外にポケモンを繰り出す。

 朝木のジャノビーは周囲に種を打ち込んだ。そこから急速に伸びてくるツタが周辺の機器とヨウタを載せたストレッチャーをすぐさま固定する。同時にナナセのもんさんは、前部後部の両座席にクッション代わりの大量の綿を放出した。

 

 

「サーナイト! ルリちゃんってキルリアから取ったの?」

「え? あ、うん――いやそれどころじゃないでしょ!? どうするのよ!?」

「あそうだ!!」

 

 

 流石のヒナヨも、連絡されてもおらず、想定もしていない事態に狼狽を見せていた。

 撫養橋に一行を誘導するように――結果アキラが単独で受け持ってしまったが――動いていたのはヒナヨだ。実際にそのように報告も行い、戦力も集約させた。しかし、それでもこうして最大戦力の一匹であるダークルギアを寄越してきたということは。

 

 

(あいつら、逆らえないことをいいことに私ごと殺す気か!)

 

 

 仮にまとめて殺すことになったとしても、それは不穏分子を処理できたというだけに過ぎない。が、生き残ればまだ利用価値はある。そういった思惑だろうと彼女は推測した。

 そしてその後生き残ったとしても、ウリムーが戻ってこない以上ヒナヨが逆らうことはできない。

 いずれにせよ、ウリムーを取り戻す足掛かりすら無い以上ここで死ぬのはまず論外だった。

 

 

「飛ぶ!」

「飛ぶぅ!?」

「ルリちゃんだっけ!? 着地お願い! メロ、『サイコキネシス』! 車浮かして!」

「――――――」

「ナー……?」

 

 

 いったいどういうことなのか、と困惑するヒナヨ主従を置いて、メロは即座にその出力を全開にして車を思い切り空中に浮かせていく。

 そうして――直後、空間そのものが爆発するほどの威力の「ダークブラスト」が放たれた。

 

 

「っい……!」

「ぐうっ!」

「ぎゃああああああああああ!」

「行っけえええっ!」

「にゃああああああああ!!」

 

 

 ルギアの技「エアロブラスト」とは、「風の渦を発射する」技である。乱暴な言い方をすれば、途方もない規模の吐息(ブレス)だ。

 着弾と同時にその一撃は地表に特大規模のクレーターを刻み、同時に圧縮された空気が解放され――あらゆるものを吹き飛ばすほどの暴風を巻き起こす。当然だが、宙に浮いたトラックはそのあおりを受けて、勢いよく吹き飛ばされた。

 乗車している面々にはすさまじい負荷がのしかかるが、しかしもんさんの出した綿毛のおかげでそれも軽減される。狙いはこれだったのかと思いつつも、ヒナヨはそれに応じてサーナイト――ルリちゃんに指示を出した。

 

 

「る――ルリちゃん、『サイコキネシス』!」

「サ――――!」

 

 

 ここで重要なのは、「いかに落ちるか」だ。あれだけの攻撃ともなれば、吹き飛ばされることは元より墜落も避けられない。であるならこそ、それを前提に――むしろそれを利用して、逃走経路にする。それが、ヒナヨを除いた四人の出した結論だった。

 そもそも彼らからしてみれば、ルギアがこのようなことになっている上に、民間人も周辺におらず避難誘導などをする必要すらも無いなら、もうこの場所に用は無いのだ。ルギアは惜しいが、それでも命には替えられない。バーカ滅びろレインボーロケット団!! などと朝木が思わず捨て台詞を吐くくらいには、彼らも苛立ちは募っていた。

 ともあれ。

 

 

「海の方に飛び出しているぞ! 誰か、方向を変えろ!」

「ええっ!? あああもうっ! ルリちゃん、出力上げて! ゆずきち!」

「ごめん、メロの方は浮かすので限界!」

「二倍サイコパワーは飾りかっ!」

「元がそんな強くない~……」

 

 

 東雲からの要請に、三人は頭を抱えた。

 メタングは二体のダンバルが連結することで二倍のサイコパワーを得た……ということになっているが、元のダンバルが自力で覚える技は「とっしん」のみ。技の教え方によっては「てっぺき」や「しねんのずつき」も覚えるが、基本的にサイコパワー、念動力はそれほど高くない。それが倍になったとしても……言ってしまえば1が2になるようなもので、5が10になったり10が20になったりと言ったような飛躍的な成長は望めないのだ。

 

 

「ヨウタ君起きてくれぇぇ! 死ぬー! 死んじゃーう!」

「アンタ今滅茶苦茶情けないこと言ってる自覚ある!? 何歳(いくつ)下の大怪我人頼りにしてんのよ!?」

「ていうかヨウタくん麻酔効いてお休み中だよレイジくん!」

「ガッデェム!」

「いやウチらが指示すればいいじゃん!? ラー子ちゃん、お願い!」

「フラッ!」

 

 

 この状況、最も頼りになるのは、砂嵐の中であっても容易に空を飛べるフライゴン――ラー子だ。本来ならヨウタが指示を出してこそ、その能力は十全に発揮されるものだが、他のトレーナーが指示を出してはいけないというわけではない。戦いの初期、戦力が心許ないアキラに力を貸した経験があるくらいには気性も穏やかで人懐こい。とりわけ、これほどの緊急事態となれば致し方ないことだ。

 ラー子は瞬時に状況を把握すると、勢いよく羽ばたいて車道へとトラックを押し戻していく。それを見届けるとメロとルリちゃんの二匹は「サイコキネシス」を用いてトラックを車道に衝撃を緩和させた上で着陸させた。

 

 

「前が見えん」

「……す、すぐ窓を開けます……」

 

 

 他方、「わたほうし」でいっぱいになった運転席はひどいものだった。

 窓を開けばそれらは外に飛び出して行ったが、下半身は未だ埋まっている。エアバッグの衝撃よりはマシだったが、動きを阻害されるという点では運転の邪魔でしかなかった。

 

 

「小暮さん、これからどうすればいい?」

「……早急に逃げます。後ろから聞こえてくる話を考える限り、あのポケモンは敵です。でしたら、トレーナーが……指示ができる範囲にいるはずです。そこから、逃れれば……追ってはこなくなるかと」

「希望的観測ですか」

「希望的観測です……」

 

 

 とはいえ、他にやりようがないのが現状である。

 

 

「実際、それが一番だと思うわ」

「ヒナヨさん」

 

 

 後部座席から、ヒナヨが言葉を割り込ませた。彼女の知る設定では、ダークルギアは「究極のダークポケモン」と呼ばれるほどに深く精神を制御された存在である。

 その洗脳は体色が変わってしまうほどに深く、心を閉ざしきってしまっているため、通常の方法でリライブすることも不可能だ。兵器としては、ある意味で完璧と言えるほどに完成されていると言えよう。

 しかし。

 

 

「あいつはトレーナーの命令が無きゃ自分で考えることだってできないの。山の方まで行けば逃げきれるはず」

 

 

 兵器として完成しているということは即ち、他のポケモンと異なり「命令以上の動きができない」ということだ。

 実際に相対しての戦いならともかく、姿が見えなくなれば攻撃の命中率も格段に落ちる。少なくとも、ただ普通に道路を走るよりは幾分かマシだった。

 

 

「撃破というのは?」

「今の戦力じゃ無理無理のカタツムリ! アレ倒せるなら伝説求めて旅なんてしてないんじゃないの!?」

「……その通りだが」

 

 

 あるいはヨウタが万全、かつ総力で挑むなら勝つ見込みもあるかもしれないが。

 そうでないなら手を出すのは自殺行為だ、とヒナヨは東雲を窘めた。

 

 

「……では……あの、『テレポート』は……?」

「えっ、それは……あれ、いけるの? いけると思うゆずきち?」

「ウチに聞かれても」

「待ってよ待ちなさいよー……えーっと……ルギアの技が……行ける気がするかも」

「本当ですか……?」

「ルギア、『テレポート』覚えないから」

 

 

 あらゆる意味で根本的な問題ではあるが、ルギアは技として「テレポート」を覚えることは無い。

 強大な念動力を持っていることは確かで、健全な状態かつ元来の能力・頭脳が万全であれば、空間を歪ませるなどして敵の「テレポート」地点を改変、そのまま自分の近くにまで呼び寄せる――というようなこともしかねないが、思考能力のほとんどを奪われている今、それはできない。

 加えてその技のほとんどはダーク技に置換されており、仮に「テレポート」が使用できる特殊な個体ということだったとしても、それも間違いなく全く異なるダーク技に置換されている。よってここからでは、どうあってもこの「テレポート」を追跡できない……というのがヒナヨの推論だ。

 

 

「って言っても『テレポート』は精々数百メートル程度のショートワープよ。どこに飛ぶの!?」

「……どこに、とかではないのでは? 何度も使えば距離は稼げます……」

「え」

「何度も使ってください……」

「あの、ルリちゃんの体力」

「……そこに……メディカルマシンがありますよね?」

「……えっ」

「……死ぬほど頑張らないと生き残れません」

 

 

 少なくとも、伝説のポケモンを相手にするにはそうするしかないと、ナナセは認識していた。

 あれほどに強いヨウタがしばらく寝たきりになってしまうほどの重傷に陥り、アキラも波動の受け渡しという命懸けの賭けを行って、なお緊急手術が必要になるほどの大怪我を負ったのだ。たかだか体力を失う程度のことが何だと言うのか。

 

 

「ルリちゃん、ゴメン!!」

「サナー……」

 

 

 ヒナヨは土下座するほどの勢いで頭を下げてルリちゃんに頼み込む他無かった。

 体力を大幅に使うし負担も非常に大きいが、やらなければまず死ぬ。選択肢が絶無である。

 では自分だけ逃げればいいかと言うとそうではなく、万が一そんなことをしようものなら分かっているよな、と言わんばかりの圧がナナセから発せられた。

 あ、これこの人も私疑ってるわ、と気付いたのはその時だった。事実、ナナセは隠しているが、車の上にはしずさんが静かにたたずんでおり、逃げようとすればすぐにでも「クモのす」を発射しようという姿勢が整っていた。

 

 

「方向は!?」

「アキラさんのいる方向に向けて……お願いします」

「一秒間隔、南方面に全力で『テレポート』!」

「サー……」

 

 

 トラックの周囲を囲うようにサイコパワーの円が出現し、指示に合わせてトラックが瞬時にその位置を次々に変えていく。

 一つ、二つ、三つと目まぐるしく移り変わる景色に東雲がわずかに眉をひそめていると、不意に、その移り変わりが止まった。しかし、まだ外は夜闇のような「くらやみ」に閉ざされたままだ。どうした、と呼びかける暇も無く、トラックを縛り付けるように黒い光が絡みついた。

 

 

「何だ!?」

「これは……まさか、『くろいまなざし』のような――」

「その通りだ」

 

 

 不意にかけられた低い声が、新たな敵の到来を告げる。

 待ち構えていたかのようにゆったりと道の先から歩いて来るのは、民族衣装にも似た青い衣服を着用した男だ。髪はオールバックにまとめられており、眼はゴーグルに隠され感情を窺うことはできない。とはいえ仮に見えたとしても、真一文字に結ばれた口元を見れば、愉快な感情を抱いていると思う者はいないだろう。

 彼はフーディンと、どこか混濁したような瞳を持ったカビゴンを連れていた。力無く開かれたカビゴンの口からは黒い涎のようなものが垂れ流されており、そこから生じた黒い光が、トラックを足止めしているようだった。

 

 

「アルドス……!」

 

 

 ヒナヨのその言葉に反応できた人間は皆無だった。思わず「誰?」と聞き返すユヅキに対しても答えを返せず、彼女たちはとりあえず目の前の敵を見据える。

 

 ――アルドス。

 彼は本来レインボーロケット団に加入している人間ではない。カントー地方から遠く、オーレ地方に拠点を持つ「シャドー」という組織の幹部だ。

 当然ながら、「ゲームにおいては」彼の存在は影も形も無い。しかしながらこの場にいるということはつまり、シャドーもまたレインボーロケット団に組み込まれたのだろうことは明白だった。

 

 

「大型トラック一台を運ぶだけの『テレポート』となれば、大きな空間の歪みが生じ、念動力の放出が行われる。有効な作戦だと思っていたようだが、甘かったな。私のフーディンはそれをしっかりと感知してくれ」

「しずさん、『シグナルビーム』……!」

「カビゴン!」

 

 

 彼の言葉を最後まで聞くことなく、ナナセは即座にしずさんに指示を出した。

 放たれた三原色の光線が地面を穿ちながら突き進み、フーディンへと叩きつけられようとする。その寸前、横から割り込んだカビゴンが代わりに攻撃を受け持った。

 全身の脂肪が衝撃で揺れ、毛皮が焼けたように一部が黒ずんだ。しかし、カビゴンは何も感じていないかのように、ひと鳴きすらしない。

 

 ヒナヨは自分の感知しないところで当然のように表に出ていたしずさんの存在と、躊躇なく攻撃を放つナナセの容赦の無さと、カビゴンの無感情さに戦慄した。

 

 

「フン……野蛮なことだ。警告も無しに攻撃とは」

「貴様らがそれを言うか……!」

 

 

 思わず東雲は激した。警告無しに四国各地を攻撃したのはどちらだ、と。

 同時に、ヒードランのボールを投げようともしたが、それは直前で抑えた。

 

 ――凄まじい勢いで駆けてくる青い光が、彼の目に映ったからだ。

 その車両(・・)はエンジンの根本的な仕様から静音性が極めて高く、それを駆る人物は戦闘に対する根本的な姿勢の違いから叫ぶようなことはほぼありえない。

 ルギアの攻撃開始から約三分。「テレポート」によって稼いでいた直線距離はおよそ3キロ。彼女(・・)が到着するには充分な時間だった。

 

 

「――ならば警告しておく。今すぐそこから(・・・・・・・)離れろ(・・・)

「何?」

 

 

 次の瞬間、尾のような蒼い稲光と深緑の暴威を従えた白い影が、音も無く刃を滑らせた。

 アルドスにとって唯一幸運だったのは、フーディンがダークポケモンではなかったことだ。十全な思考能力を残していたフーディンは、ポケモンにすらギリギリまで悟らせない人外めいた暗殺術に目を見開きながらも、全速力でサイコパワーを発揮。襲撃者――刀祢アキラをギリギリのところで「かなしばり」にして空間に縫い留めることに成功した。

 

 

「――ッ!!?」

 

 

 一拍遅れてその存在に気付いたアルドスは、即座にその場から飛び退いた。

 暗闇の中ですら煌々と輝いて見える血の雫のような瞳が、彼女の殺意と黒い意志をそのまま映している。あと一瞬フーディンの対応が遅れていれば、アルドスの手足のどちらかはそのまま斬り飛ばされていたことだろう。

 

 ――もっとも、その対応すら、彼女には予想の範疇だった。

 

 

「ギィアアアアアアアアッ!!」

「フゥアッ!!?」

 

 

 彼女を追いこして現れたギルが、フーディンの胴部にその鋭い牙を突き立てた。「かみくだく」ことで逃げ道を封じ、全霊を込めて「ぶんまわす」。

 噛み砕く、というよりもいっそ噛み千切らんとするほどの威力の一撃だ。全力で地を踏み締め、振り回す。周囲の木々を砕き折り、フーディンの細い体をもヘシ折って――とどめとばかりに、彼はその体を顎から解放し、掌底を放った。

 アキラのそれを真似たような、しかし彼女ほどの技巧を凝らしたものではなくただ真下に「押し付ける」かのような不格好な一撃だ。しかし、ギルの膂力とウェイトで行えば、それは必殺と呼んでも差し支えないほどの威力を叩き出す。

 

 ――ずどん、と轟音が生じた。衝撃で地面がめくれ上がり、木々や砂礫が舞い上がって地面に巨大なクレーターが穿たれる。

 当然、その中心にいたフーディンは「ひんし」の状態に陥り、セーフティによってモンスターボールへと戻された。

 同時にアキラの「かなしばり」も解け、彼女は幽鬼の如き動きでアルドスへと迫る。

 

 

「選べよ。腕か眼か。選ばなかった方を斬り飛ばす……!」

「何だその理不尽は――!」

この世界の人間(わたしたち)に理不尽を押し付けた貴様らが! 文句を言う権利の一つもあるものか!! ギル、『ばかぢから』!!」

「カビゴン、『ダークエンド』!」

 

 

 アルドスの命令によってようやく動き出したカビゴンが、全身からドス黒いオーラを立ち上らせて猛烈な勢いでギルに突進する。

 「くらやみ」状態でひと目では分かりづらいが、ギルの全身にはマッシブーンとの激闘によって大小様々な傷が刻まれている。自然、アルドスはこの激突の勝利を確信して口角をわずかに持ち上げた。

 

 

「グァアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

「ゴォォォォォォォォオオオオオオン」

 

 

 二匹のポケモンが激突する。

 

 が。ギルが退くことは――無かった。

 その全身から血を滴らせ、最大限に筋肉を膨張させた彼の肉体はダーク技の中でも最たる威力を持つ「ダークエンド」を受けてなお健在だ。

 逆に、徐々にカビゴンが押し返され始める。

 

 

「……何……アレ」

 

 

 その光景を目にしたヒナヨは、思わず呟いていた。

 彼女がアキラの戦いぶりを目にしたのは、これが初めてのことだ。

 強いとは聞いていた。しかしその主な「強さ」とは彼女本体の身体能力こそがメインであると考えていた。ポケモンを含めた全体的な戦闘力はヨウタの半分以下、とも目されていたのだ。

 

 しかし、ヒナヨはそもそもヨウタが戦う姿など見たことが無かったのだ。重傷を負って倒れている姿しか見たことが無い以上、基準もまた存在しない。

 結果、彼女はアキラの実力をやや低く見積もってしまっていた。味方である現状は頼もしいと思えるかもしれないが、僅かでも騙していることが知れれば彼女は確実にあの猛威をヒナヨに振るう。容赦も、慈悲も無く。あれは「やると言ったらやる」どころか言わずに即行動に移すタイプの人間だ。この凄絶なまでの戦いぶりを見て、ヒナヨはそう確信した。

 

 

「アキラ……さんって、いつもああなの……?」

「あん? いや……ちょっと前……人殺しを、直に見た後から特に、だな。最初の頃は、もうちょっと感情的ってか……多分あそこまでじゃなかったと思う」

「本当にそう……?」

「いや本当にそうだよそこんとこ疑われても困るわ」

 

 

 彼女のあの姿勢は、戦いの中で自分自身の心を保ち、仲間を守り、罪の無い人々を守るために自分にできる役割である「敵を倒す」という一点のみを突き詰めていったものだ。

 一方で、身内だと認定した相手にはやや甘いのだが――やはり、その落差はよく目立つ。味方に対する甘さ、優しさが、そのまま敵への苛烈さに転化されたようなものだった。

 

 そして間違いなく――裏切りを感じ取れば、彼女は「そう」した人間を徹底的に叩き潰すだろう。

 誰よりも、仲間を守るために。

 

 

 






 2/1 ジャローダ→ジャノビーに修正しました。



独自設定等紹介

・アルドス
 「ポケモンXD」にて登場した悪の組織「シャドー」の幹部。知っている人は知っている、ポケモンにあるまじきガチめな戦術で主人公を殺害しようとした人。
 レインボーロケット団はそれぞれの悪の組織が「成功した世界」から選りすぐったメンバーを(半強制的に)招集、合併して巨大組織となっているが、本作における首領同士の会談の席にシャドーの首領の姿は無かったりする。




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