携帯獣異聞録シコクサバイバー   作:桐型枠

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日々のじならしが力のもと

 

 

 

「俺はもう駄目だあ……明日の朝日も拝めずに死ぬんだぁ……」

「骨折程度でクッソ舐めたこと言ってやがるぞこの野郎」

「いやそれはあんたの基準も大概おかしいわよ」

 

 

 一時間後。一時的に場所を戻し、先に使用していた避難所の保健室。傷の痛みに耐えかねて目を覚ました朝木は、一切悲壮感の無い泣き言を漏らしていた。

 普段の彼なら、普通に口にするだろう言葉ではある。しかし、先の戦いを目にしていたことで僅かに上がりかけていたアキラから朝木への株は暴落もいいところだった。

 

 もっとも、アキラがあまりに痛みに慣れているため、認識に差が生じているだけとも言えるが。

 そもそも骨折というものは大怪我の範疇である。

 

 

「朝木さんってもしかして今まで骨折とかしたこと無いんじゃないの?」

「おう、ねーわ……治療はしたことあるけどよ……」

「そっちは……まあ、あるだろうね……」

「整形外科の手技でな……こう……折れすぎたところをメスで切開して……骨を直接捻って固定して……」

「ぎゃー痛い痛い痛い! 聞いてるだけで痛いからやめて!」

「わり……」

 

 

 なまじ知識があり、実際に治療を経験していることもあって、朝木はつい自分が「そう」なっているところを想像して顔を少し青くした。

 

 

「わたしなんか内側から骨突き出たことあるぞ」

「開放骨折だな……」

「この前の工場の時のだよねそれ」

「やめなさいよ怪我の程度でなんか無意味に張り合おうとするの! ていうか聞かせないで想像させないでぇ!」

 

 

 これまでにごく普通の日常生活を送ってきたヒナヨとしては、そういったある程度想像ができる――あるいは自分もこれから先の戦いで負いかねない怪我の話はあまり聞きたくないというのが本音だ。

 実際にそれを目にしたことがあるヨウタもそういう意識は持っているし、治療に携わった朝木はより強く感じていた。特に二人に関しては実際に負傷しているのだから「こんな怪我はしたくない」という実感はより強い。

 

 

「しかし、何だ。『いやしのはどう』もあるし、完治まであと……どれくらいだ?」

「僕らの世界だと骨折ならだいたい二、三日」

「やっぱポケモンがそういうことできるとだいぶ違うな……ちょっと前のアキラちゃんみてえ」

 

 

 実際、そのプロセスは「大きな生命エネルギーによって治癒する」という点で似る。

 アキラに関しては自前……あるいは外付けのもので、ヨウタたちの世界の傷病人はポケモンのエネルギーを分け与えてもらうという点で異なるが、いずれにせよ自前の生命エネルギーを消耗しない分、ポケモンによる治療の方が効果が大きく、早期の復帰が期待できることだろう。

 

 

「わた」

「アキラ」

「おれ」

「ホントに大丈夫……?」

「大丈夫じゃないかもしんない……」

「他人の記憶とか自我とか頭に突っ込まれて大丈夫なわけないじゃない。精神的に色んな部分が歪んでるんだろうからしばらくそっちで通したら?」

「やだー……」

「幼児退行まで起こしかけてるよ……」

「六歳児みたいなもんだって話だけどよ」

「誇張表現だよそれ」

 

 

 床をごろごろと転がり始めたアキラを目にして、流石にそれはどうよと半目になった。

 実際のところ、知識と倫理が伴っている以上四年+二年で実質六歳……という計算は通用しない。

 とはいえ人生経験そのものは六年足らず程度のものしか無い以上、彼女は普段から理想的な自分を思い描き、演じているような状態にある。幼児退行とは言うが、実のところこうした姿の方がむしろ素と言えよう。

 とはいえ。

 

 

「……キャラ崩壊もいいところだよ。何の記憶とか入れられたのさアキラ」

 

 

 ここまでの付き合いでアキラがそういう素を滅多なことでは表出させないことはヨウタが一番よく知っている。どうしても「何かヤバいものが混ぜられた」ような印象は拭えないというのが彼としての本音だ。

 

 

「サカキの子供。ちっちゃい頃に死んだって」

「それってシルバーさ……ああ、異世界の別の可能性を辿った、ってやつ……」

「何歳だか分からないけど、そんな子供の記憶が混ざったらそりゃ……多少は子供っぽくなるんじゃないの?」

「なんとなく分かったよ」

「もしかしたらあの殺人鬼か何かかって戦い方も――――!」

「そっちは素だよ」

「ファ〇ク」

 

 

 戦うにしてもせめて節度と品位は保っていてほしいというのがヒナヨの思想だ。彼女自身は感情に振り回されることが多く、やりすぎてしまうことも多いのであまり実践はできていないが。

 それはそれとして人には求めるというあたりの図々しさはさるものである。

 

 

「話を戻す。ともかくわたしとしては――」

(開き直った……)

(開き直ったな)

(開き直ったわね)

 

 

 じろりと三人へ視線が飛ぶも、殺意の込められていないアキラの視線などどこ吹く風だった。

 

 

「朝木は後方にいた方がいいと思う。今回のことで分かったろ、痛い思いするってのは」

 

 

 前後のやりとりも手伝ってか、彼女の言葉には幾分か棘があったものの、同時に気遣わしげな色も多分に含まれていた。

 いわゆるツンデレじゃな? と茶化したヒナヨは、次の瞬間デフォルメされた自分がファンシーな背景の中、同じくデフォルメされたアキラにぐさぁーっ! と刺される姿*1を幻視した。殺意の波動による威圧の応用である。あまりに緊張感の足りない絵面は、アキラ自身が仲間に対して本気で威圧できないためだろう。

 

 ともあれ、朝木はアキラの言葉に首を振った。

 

 

「他の誰かに同じ思いをさせないためにやるんだ。今更引けねーよ」

 

 

 半ば投げやりなようにも聞こえるその言葉に、しかし諦念や自暴自棄と言った感情は込められていない。

 むしろ、決意と責任感――彼がこれまで後生大事に抱え続けていた「保身」を投げ出したことで生じた義侠心というものが、より強く込められていた。

 

 アキラはわずかに抵抗があるような表情をして、すぐに緩めた。

 戦力的にも、論理的にも、大人である朝木が戦うことに否定意見は見いだせない。彼自身も、言うなれば「男の意地」というものを徹そうとしているのだ。どうしても、彼女はそれに対して何か言うということができなくなった。

 一方、その返答を予測していたのか、ヒナヨは満足そうに笑いながらバッグを漁り始めた。

 

 

「そう言うと思ってたわ。はいっ」

「うぐえっ!? ちょ、投げんなよ取れねーんだぞこっちは!!」

「ごめん素で忘れてた」

 

 

 言いつつ、ヒナヨは朝木が受け取り損ねたモンスターボールを拾い上げる。

 

 

「それは? ポケモン?」

「そ。即戦力。RR団(あいつら)のタワーに攻め込んだ時にちょちょっとね」

「ちょちょっとで済む戦果じゃねえぞ」

「そこはまあ?」

「連携だ」

 

 

 無論のこと、一人だけでは各個撃破されて終わりだったことだろう。陽動と工作という役割分担を徹底し、分の悪い賭けに勝ったことではじめて得られた結果だ。二人にとってはある意味で自慢の成果と言える。

 

 

「今出しても――」

「あ、それはヤバいわ。絶対ダメよ。せめて外で、私たちの誰かのポケモンと一緒じゃないと」

「俺に何持たそうとしてんの!?」

「ガブ」

「……リアス?」

「いえす」

「いやいやいやいやいやいや俺如きに持たせていい戦力じゃねえだろ!?」

「逆だよ。あんたが今一番持ってないといけない戦力だ」

 

 

 小暮さんについても似たようなことが言えるけど、とアキラは一つ前置いた。

 

 

「クロバットに、ジャローダに、ブロスターに、ニューラ。みんな強くなってるけど、やっぱりどっちかって言うと搦め手向きで、正面切っての戦闘には向いてない。今回は相手がフェローチェだったからギリ何とかなったけど……」

「これ『何とかなった』の範疇!?」

「マッシブーンが相手だったら防御の上から突き破られてミンチだぞ」

 

 

 朝木は自身の背筋が冷えるのを感じた。

 他ならぬそのマッシブーンと正面から戦ったアキラの言葉となれば疑う余地は無いが、この状態で他のウルトラビーストと戦ったらどうなるのかと彼は不安が止まらなかった。

 

 

「メガシンカ……をするには絆が大事だからまだ無理かもしれないけど、うん。確かに穴を埋める即戦力だね」

「けどよぉ……俺には分不相応って感じがな……」

「何でさ」

「だって……ガブだぜ?」

 

 

 レー島の守護神ガブ・リアス。

 ――もとい、マッハポケモン、ガブリアス。「こちら」の世界においてはある意味で伝説のポケモン以上に恐れられ、あるいは頼りにされ、時に愛され時に憎まれ……という、「ゲームとしての」ポケモンにおいてある種の象徴的な扱いさえ受けるポケモンだ。そのことをよく知る朝木が委縮するのは当然だった。

 一方、同じくそのことをよく理解しているヒナヨは、だからこそ(・・・・・)その発言を切って捨てた。

 

 

「そうやって特別扱いしちゃダメ。ガブリアスも他の子と同じよ」

 

 

 対戦環境において猛威を振るったといった事情はゲームにおける話であり、現実となった今はまるで関係ないことだ。

 その能力は他と隔絶するほどではなく、まして数字によって厳密に優劣が決まっているわけでもない。トレーナーからの愛情をたっぷり受けて無数の修羅場を潜り抜けているバチュル(チュリ)がガブリアスを倒すということが、下手をすれば――どころか、「順当な結果」としてありうるのだ。対戦におけるレベルの平滑化などという機能の無いこの世界においては、鍛え方とその質と量こそが最も重要だ。

 

 

「ウリムーやデリバードがルギアやホウオウを完封するような世界よ。ポケモンの種族的な強さはスタートラインの違いでしかないわ!」

「事例が極端すぎらぁ」

「でも真理だよ。……いや、極端すぎるっていうか僕もその話は聞いたことないけど。ガブリアスはちょっとこの世界で有名なのかもしれないけど、無敵でも最強でもない。自分を下に置きすぎず、相手を高く置きすぎず、他の皆と接するのと同じように接してほしいんだ」

「それはいいんだけど俺の身の安全は?」

「わたしたちが見守っておくさ」

「お、おう。ありが……見守るだけ?」

「致命的なことになる前になんとかするよう努力はする」

「……努力目標?」

 

 

 三人は目を逸らした。

 いずれにせよ本当の意味で交流を持つには、実際に朝木自身が相対しなければならない。そこに余人が立ち入るのは無粋であり、本質的に互いを理解することが難しくなる。

 彼のパーティの中でも最大の難物であるゴルバット――現在はクロバット――の心を開かせ、進化させるという実績もあってか、ヨウタたちは朝木を強く信頼していた。丸投げとも言う。

 

 

「よし、そうと決まれば一刻も早く治さなきゃな」

「はは……そりゃ治したいけどな、じゃあ今日はもう寝て――」

「何言ってんだ。リュオン、来てくれ」

「リオッ」

「え?」

「あんたもちょっとブロスターを出せ」

「え?」

「こっちで出したわよ。よろしくねブロスター」

「ブロロ」

「え??」

「行くぞー」

「え???」

 

 

 言うと、アキラは馬乗りになるような格好で朝木の目の前にやってきた。

 常の彼女らしからぬ行動と、やけに近づいた顔に彼は少なからず照れを覚えた。睫毛長い――とか、目綺麗だな――といったことを考え、直後にこのシチュエーションに対して恐れを覚えた。出会った時に受けたトラウマである。そうして案の定、彼女は朝木の骨折している鎖骨に手を添える。痛みは感じないが、それだけにこの後に起きるであろうことを思うと恐ろしかった。

 

 

「何する気!? 何する気!?」

「治す」

「何言ってんの!? あ、柔整!? いや免許あんの!?」

「やむを得ない緊急避難ってやつね」

「それは命の危険がある時だけだろォ!?」

「動くな。痛みは一瞬だ」

 

 

 アキラの指示に応じて、リュオンが更に逆側から手を添える。ブロスターはそんな二人からやや離れた位置で砲口を向け待機していた。

 

 

「せー……のっ!」

「ういぃっ!!?」

 

 

 その直後、リュオンとアキラの掌から電気が走る。当然の帰結として朝木の全身が痺れに襲われた。

 アキラが待っていたのはその一瞬だ。折れた鎖骨に添えた手を動かしてミリ単位でズレを修正、鎖骨を折れる前の元の形状に近づけた上で、リュオンとブロスターの「いやしのはどう」と、彼女自身の持つ波動の素質を利用した「いやしのはどう」の模倣。三方向から寸分狂わず骨折部位に照射された三つの波動は、見る間にその朝木の鎖骨を治癒してのけた。

 

 

「ぃぃぃぃっ……いぃ? ……痛くない。てか痛みが取れた? あれ?」

「よし、成功!」

「やったわね!」

「どういうことコレ? え? 逆に怖いんだけど」

「リュオンと一緒に電流を流して一瞬神経を麻痺させて、その隙に折れて外れた骨を元に戻したんだ。で、『いやしのはどう』を三方向から一点に向かって照射して、骨を癒合させた」

「ガンマナイフの原理……いやそれはともかく気軽に現代医学敗北させにかかるのやめねえ?」

「わたし如きに敗北させられる現代医学サイドにも問題がある」

「理不尽の権化かよ」

 

 

 そういえばまさしく理不尽の権化のような子だった、と朝木は思い出した。

 そして同時に、だからこそ自分たちも助けられたのだと思えば、あその理不尽さにも頼もしさが伴ってくる。敵であれば恐怖の対象そのものだが、味方ならこれ以上頼もしいものも無い――そう思った時だった。

 

 

「ともかくこれでもっと特訓ができるな!」

「なんて?」

 

 

 少しどころではなく想定外の言葉が発せられた。

 朝木は今病み上がり、どころか顔面など未だに痛々しい傷跡が残っており、とてもではないがまともに戦闘などこなせるはずもない。

 困惑しきりの朝木に、アキラは威圧するように更にずいと顔を近づけた。

 

 

「特訓だよ。あの人たちを安全なところに送り届けたらやるぞ」

「あの……俺怪我人……」

だから(・・・)やるんだろ?」

「はぇ? ぐええぇっ!!」

 

 

 言うと、アキラは怪我を治していない側の腕を取って、あちらこちらへと動かし始めた。

 勝手に動かされている側の朝木は地獄のような激痛を味わわされているが、彼女に遠慮や躊躇などというものは微塵も無い。ヨウタとヒナヨも止めようとしたが、その真剣な表情に気圧されて結局何も言えずにいた。

 右へ左へ、下へ上へ。そうこうしているうちに「何か」を探り当てたのか、彼女は得心した様子である一定方向へ朝木の腕を動かした。

 

 

「ああああああ無理無……あああ? ……っ、あんまり痛くない」

「痛くない?」

「いや比較的な……これ、痛みが出ない動かし方……ってことか?」

「そんな感じ。怪我の程度や重症度によっても違うけど、『動かせる』ってことを知ってるだけでも、今後大怪我をした時に咄嗟に動ける可能性は上がる。意識してくれ」

「お、おお……」

 

 

 つまり、「怪我をしているからこそ」できる訓練と言えよう。

 朝木は思わず関心して声を上げた。当然と言えば当然の措置なのだが、普段の彼女の言動もあって、酷いことになるという先入観があったのだ。

 そもそもを言うなら刀祢アキラは戦闘の、ひいては格闘術の達人だ。異常なまでに向上した身体能力を二年足らずで完璧に掌握したという経験や、ポケモンたちに体術を教え込んだ経験もある。基本的に彼女の行う訓練は合理性に根差した極めて効率的なものだ。

 

 

(それならヨウタ君の訓練よりもまだ楽な可能性ワンチャンあるんじゃねえ?)

 

 

 先日の訓練に関しては、朝木も乗り気であったとはいえ、相応の負担を強いることになっていた。

 もしかしたら、そちらよりもアキラの訓練の方がまだ楽に終わる可能性があるのではないだろうか――と。

 彼は安易にそう考えた。

 

 

 

 〇――〇――〇

 

 

 

 デオキシスとルリちゃんの「テレポート」によって久川町へと避難所の面々を送り届けたその後、アキラたちは近隣の山中を訓練地として設定した。

 「ひかりのかべ」などを敷くことによって疑似的に外部への影響を遮断した空間での訓練だ。アキラは元より、ヨウタもまた、全力をもって訓練に臨むことができる。

 

 結果、朝木レイジは地面に没した。

 物理的に。

 

 

「うげええええええええええええええっっ!!」

「デオキシス、『じゅうりょく』二倍に戻して」

「▲▲」

 

 

 涼しい顔をしているアキラたちとは対照的に、ヨウタとヒナヨを含む三人とそのポケモンたちは疲労困憊そのものだ。

 通常、生物というものは地球の重力に適応して生活しているものだ。そこに急激に倍以上の重力がかかれば、当然ながら押し潰されるような感覚になるし、負荷もそれに応じて上昇する。格闘漫画などでもよくある、高重力による高負荷トレーニングだ。

 ヒナヨなどは潰れて動くことすらできなくなっていた。

 

 

「何でアキラちゃん普通にしてんだよ!?」

「慣れた」

「慣れたァ!?」

「▲▲▲▲」

「あはは、褒めるなよ。このくらいできなきゃあいつらには勝てないぞ」

「△△△」

「ふたりだけで通じ合ってないでどういうワケか説明してくれないかな……」

「普段からデオキシスにこの負荷頼んでたんだよ」

「馬鹿なのか?」

 

 

 ヨウタはトレーナーとして極めて優れた人間だ。

 しかし、あくまで人間の範疇に留まる程度の鍛え方していない――できない。高重力下での特訓などという常軌を逸した訓練など、想像もしていなかったというのが彼としての本音だった。

 

 

「ぐあああああああ何でこの時代になって80年代の少年漫画みたいなド根性論に回帰した訓練になんてなってんだよぉぉぉ!!」

「が……ガブッ……ガブァ……」

 

 

 当の朝木が最も懸念していたガブリアスは、訓練の過酷さに息も絶え絶えでもはや狂暴性など見る影もないほどだった。

 その方が後の対話のことを思えば都合がいいというのは確かではあるのだが、そのことを気にする余裕すら無いというのが現実である。

 

 

「つまり当時の少年漫画が結構理に適ってたってことだろう?」

「そりゃ……かも……しれねえけどさ……」

「流石にちょっと手加減して段階を踏んだ方がいいと思うよ僕は……」

「でもさ、悠長にしてたらそれだけあんな風に理不尽な目に遭うかもしれない人が増えていくんじゃないか?」

 

 

 ヨウタの言うことももっともだが、同時にアキラの言うことも現実に即した言葉だった。

 そしてその事実は、ヨウタと朝木にとって何よりも間近に迫っていたことだ。避難所での一戦は、一歩間違えれば誰かが、あるいは誰もが死んでいたという状況に身を置いていたのだから、それは痛いほどによく分かる。それはそれとして全身への負荷のせいで激痛は走っているが。

 

 

「よし、休憩終わり。五倍だ」

「▲▲」

「ぐええええええっ!」

「ぎゃあああああっ!」

「こ……この調子で訓練がキツくなってったらどっちみち死……」

「安心しろ」

「セーブしてくれんの!?」

「要領は分かった。心臓くらいなら止まっても動かせる」

「人殺しぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 

 ポケモンたちは「ひんし」になれば勝手にボールに戻りはするが、人間はそうもいかないものだ。

 が、他ならぬ気と波動に特化した達人であるが故にアキラの言葉に嘘は無い。

 無いからこそ、そうなることも確実に訪れる未来であろうことを予感して、三人は声にならない悲鳴を上げた。

 

 

 

*1
ヒナこら太ー!







手持ちポケモン

〇朝木レイジ
クロバット♂:Lv40
ニューラ♀:Lv41
ジャローダ:Lv37
ブロスター♂:Lv39
ガブリアス♂:Lv49


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