携帯獣異聞録シコクサバイバー   作:桐型枠

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うらみを飲み込み糧として

 

 その提案は、この場にいる誰にとっても寝耳に水と言うべきものだった。

 レインボーロケット団の中核をなす、六人のうちの一人が反旗を翻すという。戦力比で見るなら、それは決して悪いことではない。

 しかし。

 

 

(都合が良すぎる……)

 

 

 ナナセは大きな疑念を抱いた。護衛無しの完全な丸腰など、正気の沙汰ではない。

 罠、ということであればむしろその方が自然で、納得はいく。

 だが――。

 

 

「信用できんか。なら、こうしよう」

「……なっ!?」

 

 

 マツブサは、自身のボールホルダーをそのまま、彼に向けて炎を放つ用意をしているばくさんへと手渡した。

 これには受け取ったばくさん自身も困惑しきりだ。目をぱちくりさせて状況を把握しようと努める彼の様子がおかしく映ったのか、マツブサは小さく笑った。

 

 

「……ばくさん」

「キュゥ……」

 

 

 情けない鳴き声を漏らしつつも、ばくさんはナナセにホルダーを投げ渡す。そこにグラードンが入っているマスターボールがマウントされているのを目にした時、ナナセは思わず卒倒しそうになった。

 

 

「こちらは本気だ。これで足りないと言うなら、上から順番に脱いでいこうか?」

「婦女子の前で何を言い出すのか貴様ァ!」

「し、東雲さん……?」

「……っ」

 

 

 常日頃なら冷静に窘めるだろう東雲の激しい怒りに、二人は唖然とした。

 彼も人間だ。当然、怒りを感じることだってある。しかしこれまで、自衛隊員として己を厳しく律してきた彼は、声を荒げることこそあれど、感情的になるようなことなどほとんど無かったのだ。それなりに衝撃は大きい。

 困惑する二人を置いて、東雲は怒りを湛えた表情のままにマツブサへと詰め寄る。

 

 

「デリカシーが欠けていたことは謝ろう、しかし」

「黙れ。問題はそこではない」

「では、何だ?」

「この服に見覚えは無いか」

 

 

 東雲は血を吐くような声音で、マツブサへ問いかけた。

 彼が示しているのは、己の着用している自衛隊の迷彩服だ。一般人が手にすることはまず無いだろうその服には、マツブサも当然ながら見覚えがある。

 彼は額から一筋、汗を流した。なぜなら、それは――――。

 

 

「お前が殺した人間たちを、覚えているか――――!!」

 

 

 ――彼自身がこの世界に来た時に、手にかけた者たちが身に着けていたものだったからだ。

 

 

「上官も同僚も……友人たちも、皆死んだ! お前が殺した!! それを信用しろなどと、何を……何を勝手なことを……!!」

「し、東雲さん……!」

 

 

 気付けば東雲は、怒りに任せて左手でマツブサの胸倉を掴みあげていた。

 この男は友人たちの仇なのだ。許せるはずがない。信じられるはずもない。握りしめた右手から血が滲む。

 その東雲の様子を目にしたマツブサは、ひどく苦々しげな表情を浮かべた。

 

 

「アレは……すまなかったと思っている。私も本意では――ぐっ!」

「しょーごさん!」

「ッ、すまなかったと! 本意ではないと……そんなことを言うくらいなら、初めからするな!」

 

 

 殴り倒されたマツブサは、鉄の味を感じた。

 反論したいこともあったが、今はそれをすべて血と一緒に喉の奥に飲み込んで、東雲たちへと向き直る。

 

 

「身勝手は承知している! ……だが、RR団(ヤツら)に対処するのに猶予はそれほど残されていない。まずは話を聞け」

「何を……ッ!!」

「東雲さん……!」

「しかし小暮さん!」

「気持ちは、分かります……私も、許せません。けど……今は、それどころではない、はずです。違いますか……?」

 

 

 アキラたちが次々と伝説のポケモンの助力を得られていることは、東雲たちも聞いている。

 しかし敵は未だ強大なままで、戦力に不足があることは否めない……というのがナナセの見立てだ。無論、戦えはするだろう。勝ち目も無いわけではない。その過程で出るだろう犠牲を完全に度外視すれば、だが。

 少しでも戦局を優位に導くためにも、少しでも情報が必要だった。

 

 

「……申し訳ありません。少し頭を冷やしてきます」

 

 

 押し殺した声でそう告げると、東雲は足早にその場を去っていった。

 少しして、彼の去っていった方向から鈍い音が届く。怒りを鎮めるために何か、木でも殴りつけているのだろうとナナセとユヅキは察した。その激憤ぶりは、察するに余りある。

 

 

「……話を、続けましょう」

 

 

 ナナセの声も冷えていた。彼女もレジスタンスに自ら加入するほどには義侠心を持ち合わせている。仲間の友人が殺されたと聞いて、穏やかでいられるわけもなかった。

 他方、ユヅキの方は、意外なことにそういった面ではあまり大きな反応を見せていない。人並みの義理や人情を持ち合わせていることは確かだが、明確に「正しさ」を追求し続ける姉と異なり、そのあたりのユヅキの感性はやや独特だ。

 彼女はメロの頭の上に腰掛けると、ぼんやりした瞳で二人のやり取りを眺めることにした。そもそも話に割り込めそうにないとも言う。

 友人(ヒナヨ)ならともかく、ユヅキは難しい話を聞いていると睡魔が大挙して押し寄せてくる。(メリープ)を数える必要すらないほどだった。

 

 

「ともかく……止めはしましたが……私としても、あなたたちのことを信用することは……できません」

「理解している。だからこそ、こちらもグラードンを預けたのだ」

「…………」

 

 

 ナナセはユヅキに視線を送る。

 彼女もアキラほどではないとはいえ、武術に優れており、気を扱う段階にまで到達している。波動使いのアキラとは異なり明確に理解できるわけではないが、人が嘘をついているかどうかを判別する程度のことはできた。

 その彼女が嘘ではない、と首を振る。ナナセも頷き、話を続けた。

 

 

「では……レインボーロケット団への反逆ということですが……それは、なぜ? ……どういうおつもりですか?」

「私は最初からレインボーロケット団に入りたくて入ったわけではない」

「え……?」

「異世界から連れてこられたということだ。帰る手段も無いままな。だから、いずれ機会さえあれば潰す心づもりでいた」

「……これだけ人を殺しておいて……ですか」

「返す言葉も無い。だが」

「――何かそうするだけの理由がある……ということですか」

「……そうだ」

 

 

 見るからに後悔を滲ませる彼の様子からも、それが「やるしかなかったこと」だということは、ナナセも読み取れた。

 

 

「……成果を示して、彼らの一員であると認められる必要があった、などでしょうか」

「半分は当たっている。より正しくは、侵略を進める(・・・・・・)ことが必要な条件だった。レインボーロケット団員全員をひとつの世界に釘付けにするためにな」

「……! 時空転移技術……ですか?」

「そうだ。レインボーロケット団はウルトラホールを介して、いざとなれば異世界へ逃げ込めるだけの技術を持っている。下っ端、幹部、そしてサカキ……奴らを一挙に撃滅できなければ、レインボーロケット団という総体はいずれまた息を吹き返す。そうなった時の被害は、今回の比ではないだろう」

 

 

 特にポケモンのいない世界を狙って襲えば、それこそ今回の四国襲撃とは比較にならないほどの大虐殺が起きてもおかしくはない。

 ヨウタがいたからこそ、今回の事件は寸でのところで滅亡を逃れることができているのだ。次に同じことをしろといわれてもできないことだろう。

 

 

「私は人間とポケモンを愛している。その可能性を信じている。だからこそグラードンの力で大地を(ひろ)げ、強引にでも世界を発展に導こうとしたのだ……それが虐殺などと! 冗談ではない!」

 

 

 マツブサもまた、激昂していた。不甲斐ない自分自身と、それを利用しているサカキに対してだ。

 怒りの炎は彼の奥底で燻り続けていたが――ここにきて、ようやく状況が変わる。

 

 

「つい先日、お前たちが伝説のポケモンを手中に収めたと報告があった。それも二匹だ。私は確信した。レインボーロケット団がこの世界に固執している今しか、奴らを本当の意味で倒すチャンスは無いと!」

 

 

 その「好機」こそ、マツブサが待ち続けてきたものだった。

 アキラがデオキシスを。そして朝木がキュレムを戦力に加えた。その報告を耳にした時、彼はこれしかないと確信する。

 ゲーチスの持つレシラムとゼクロムは、基本的にアキラたちを前にすると機能不全を起こすため、戦力にはなりえない。これを除けば、最大戦力とも言うべき伝説のポケモンは、レインボーロケット団側には九匹。マツブサが裏切れば、残りは八匹。更に、彼の推測ではここから更に一匹と、ともすれば更に二匹が離脱する可能性がある。

 そこまで至れば、「こちら側」の戦力は、レインボーロケット団と拮抗すると言えよう。

 

 

(乗らない理由はありません。ですが……)

 

 

 疑念は一向に尽きない。特に、ナナセの役割は「考える」ことだ。この場にヨウタやアキラがいれば意思決定は彼らに委ねることはできただろう。東雲が正常な状態でも同じことが言える。しかし、今この場にいるのはナナセとユヅキだけだ。

 ちらりとユヅキに視線を向けるが、彼女は疲れからか既にメロと一緒にスヤスヤと夢の中に旅立っていた。今頃は睡魔と百人組手でもしていることだろう。

 

 

「ロトムさん……は……」

「呼んだロト?」

「……はい」

 

 

 極小のウルトラホールの解析と、ほしぐもちゃんたちのモニタリングのためにブリガロン(ロン)やフォレトスといった護衛をつけてその場に待機していたロトムが、彼らを連れて戻ってくる。どうやらマツブサとの戦いになると踏んで隠れていたようだった。

 ほしぐもちゃんたちの表情が心なしか華やいでいるのを見て、ナナセは作戦が成功したことにわずかに安堵した。

 

 

「そいつらは……」

「……今は置いておいてください。それよりも、私だけでは判断が難しい部分がありますので……少し、ヨウタ君たちに、つなぎます」

 

 

 

 ○――○――○

 

 

 

 ナナセからの報告を受けたヨウタたちの様子は、まさしく三者三様と言った風だった。

 ヒナヨなどは、最初こそただの厄介なポケモンファンと化して「えっ!? 敵ボスと共闘!? 何その燃えるシチュエーションは!?」と言ってフンスフンスと息を荒げていたが、しばらくして冷静になったのか「え、罠?」と口にしてアキラとヨウタに白い目で見られていた。

 対するアキラは神妙な面持ちで言葉を口にする。

 

 

「正直、心情的には信用したくないです」

『でしょうね……』

 

 

 信用「できない」ではなく、「したくない」。その原因は、彼女が敬愛する祖母の住まう土地を蹂躙されたことに対する憎悪が多くを占めているだろう。

 しかし同時に、それはあくまで私怨だ。故に彼女はその大部分を切り離して思考する。

 

 

「けど、本当のことを言ってるんだとしたらそれは……いや、今はいい。とにかく、会えば分かります」

『分かりました……ヨウタ君は、いかがですか?』

「僕は、正直なんとも。倒せるときに倒しておかないと後が怖いっていうのはあるけど……」

『ヒナヨさんは……』

「ん~……所感でいい?」

『どうぞ』

「私個人は絶対罠よそれ! って言いたいんだけど、ゆずきちやアキラがそうじゃないって言うならそっち信じるわ」

 

 

 結果的に、三人共にやや消極的ではあるが、各々の気質や感情とは裏腹にヨウタは排除、アキラは対話、ヒナヨは中立という方向に分かれた。

 ではどうするか――と、ナナセが考えたところで、そういえば、とヒナヨが手を挙げる。

 

 

『……どうされましたか?』

「そこにいるの、マツブサなんですよね?」

『はい……そうなります』

「……だったらどうかしら。基準は第三世代のよね。けどレインボーロケット団に加入してる時のマツブサってかなり好戦的、いやでもあの時はアオギリがいたから、異世界であってもある程度は性質が似通ってるはずで、本編からはそう乖離してないだろうしあーでもポケスペの件が」

「ヒナ、一人の世界に入るな。つまりどういうことだ?」

「メンゴ。つまり、信用できる可能性は低くないってことよ」

「そうか……」

『……では、一度合流できませんか? 進展もあったようですし……』

「ですね。じゃあ朝木拾って……三十分くらいで行きます」

『え』

 

 

 そんな無茶な――というナナセの困惑の声が聞こえる前に通話は打ち切られ、アキラは二人へ向き直る。

 

 

「ヒナ、連絡頼む。場所を聞いてくれ。十分以内に合流する」

「分かったわ」

「アキラ、僕たちはどうする?」

「デオキシスに頼んで複製体(シャドー)でレジスタンスに報告お願いして、アイテム取りに来てもらう、かな……」

「そうなるよね……」

 

 

 アキラが奪取してきたアイテムは、質や種類はともかく、量が膨大だ。個人で運ぶことなどできるはずもない。デオキシスに頼むにしても負担は大きいため、手が空いている人間に頼むのが一番効率的だろう。

 しかし逆に言えば、それさえ終わればもうあとはやることが無い。多少時間を持て余しながらヒナヨの連絡を待ちながら準備を行えば、五分ほどで出発できるようになっていた。

 

 

「じゃあ、ここから観自在寺までRTAってわけね」

「あんま不謹慎なこと言うなよ」

「RTAって何?」

「ゲームの……あーいや……長くなるし、後で説明するから。それよりヒナ、ヨウタ、こっちに。デオキシス」

「△△」

 

 

 完全復活したデオキシスが、空間に黒い穴を穿つ。三人そろってそれを潜ると、次の瞬間にはもう朝木が身を潜めている建造物の中だった。

 彼はマニューラたちとうどんをすすっていた。

 

 

「今から行くって言ったよな。何のんきにメシ食ってんだよ……」

「い、いや、だってさぁ? 『今から行く』ってったらホラ、十分とか二十分とか普通かかるだろ? かからない? ね?」

「だからってその十分二十分の間にカップ麺作り始めるな! オラッ!」

「ああああああ俺の晩飯ィィ――――ッ!!」

 

 

 朝木のカップ麺はその場でアキラに奪い取られ、何を嗅ぎつけたかボールから出てきていたヒナヨのモノズの口の中に流し込まれていった。

 アツアツの麺、とは言ってもドラゴンポケモンである。口内も頑丈そのもので熱さにまるで堪えた様子も無かった。

 

 

「もにょ」

「うう……美味いか? 俺の晩飯は美味いか? そうかぁ」

「メシなら後でなんとかするからすぐ準備!」

「わ、分かったよ分かったよ! ……そんなすぐ行かなきゃいけないレベルのもん?」

「敵ボスが直に接触してきてんだぞ。そうじゃなくても人を待たせるのは礼を失した行為だ」

「……いや、敵に礼を尽くしてどうすんだよ」

「そうしないと獣以下になり果てるから礼儀を大事にするんだ。どれだけ嫌いな相手でもこいつと同レベルに落ちるよりマシだと思えば、頭くらいいくらでも下げられる……ってばーちゃんが言ってたぞ」

「……アキラって変なところで育ちが良いわよね」

「うん。僕もお箸の持ち方矯正されたよ」

 

 

 だったらもうちょっとお淑やかになってくれてもいいのに、と朝木は内心でボヤいた。

 とはいえそれが難しい、もっと言えば無理だということは、朝木もアキラを見てきたからこそ知っている。彼女は全て終わらせるまで、気を緩めることも自分を律することもやめはしないと。

 

 

「言い方、もうちょっと柔らかくしたら?」

「いいんだよ。引き締めるのがわたしの役割だ」

 

 

 まず朝木は論外としても、性格からして柔和なところがあるヨウタや物静かなナナセ、良くも悪くも身内贔屓なヒナヨに、朗らかさが勝ってしまうユヅキなど、挙げていけばいくほど場を引き締めるのに向いた者が少ない。必然的に、そういった役割は東雲が負うことが多く、アキラもまたそれを自らの役割と定めていた。そうすることで強い言葉をかけてしまい、嫌われることになっても仕方ない、とも。

 

 

「そんな風に強く言わなくたって、俺だっていざとなりゃあやれるんだぜ?」

「今がその『いざという時』だろ」

「はい」

 

 

 キュレムの件を引き合いに出そうとした朝木の心は即座に委縮した。

 氷点下にまで冷え切ってしまったアキラの声に頷く他無かったのだ。

 

 

「移動は直前までデオキシスのワープホールを使うけど、観自在寺には『テレポート』で到着したように見せる」

「……いざって時に情報が渡ってると怖いものね。分かったわ」

「ヒナヨも、ジガルデを表に出さないようにね」

「もち。そこまで迂闊じゃないわよ」

 

 

 言いつつ、アキラたちは観自在寺へ向けて移動を始めた。

 そうして数十秒後、彼らは当然のように観自在寺の境内に現れた。

 

 

「うおおっ!?」

「……お、お早い到着……ですね……」

 

 

 アキラがデオキシスを手持ちに加えたという事情に通じているとは言っても、それで驚かないかと言われればそういうわけでもない。通常、「テレポート」による移動はやはり短距離テレポートが主流だ。数十、場合によっては百キロを超える距離を行き来するというのは彼にとっても常識の範疇から外れていた。

 

 

「……桁外れだな」

「そうならざるを得なかったからな」

 

 

 マツブサに相対したアキラの態度は、一見普段とそう変わらないようではあったが、見る者が見れば感情を押し殺したものだということが分かる。

 アキラたちの前に出ようか出まいか悩みながら、しかし大人としての責務と捉えてゆっくり前進している朝木などは普段と比べてもやはりおかしな状態になっているのは明白だが。

 

 

「僕らとしては寝耳に水なんだ。どういうことか聞かせてほしい」

「いいだろう」

 

 

 ヨウタがそう切り出すと、マツブサは先にナナセたちに述べたものとほとんど変わらない動機を口にした。

 アキラが逐一波動を見ることで、その言葉に嘘などが無いかを確かめているが、彼女の表情は釈然としない気持ちに満ちていた。

 

 

「やっぱり嘘なわけ?」

「いや……全部、本心から(・・・・)話してる」

 

 

 だからこそ、アキラとしてはある意味で納得がいかないのだ。何で今更、あれだけのことをしておいて、と。

 とはいえそうは考えつつも、彼女は即座に考えを切り替えた。こうしてここに来ている以上、レインボーロケット団の側にも何らかの動きがあったはずなのだ。

 

 

「……だいたい動機は分かった。そういうことなら、ここから先共闘はできると思う」

「そうか、感謝する」

「けど、分かってるだろうな。裏切るつもりなら――」

「――後ろから撃ってもらって結構だ。その方が互いに心置きなく仕事ができる」

 

 

 互いに握手を交わすようなことは無い。「協力」という言葉を一切用いない通り、この関係はあくまで仮初の「共闘」関係だ。

 レインボーロケット団は、無数に存在する異次元の世界、その全てに対する脅威だ。彼らを除き、今後の憂いを断った上で元の世界に戻るというマツブサの目的が達せられるまで、アキラたちに余計な手出しはしない。そういう確約さえ得られれば、彼らとしても文句は無かった。

 

 

「……さて。じゃあ次の話だ。こんな話を持ってきたってことは、何か状況が動いたってことなんだな?」

「その通りだ」

 

 

 そう言うと、マツブサは軽く顎に手を当てた。

 考え込んだように、あるいは何か言いあぐねるように首をひねりながら、しかしそれでも言わなければ始まらない――と、彼は衝撃的な言葉を口にした。

 

 

「レインボーロケット団はシコクそのものを要塞化するつもりだ」

 

 

 ――と。

 

 





 いつも誤字報告ありがとうございます。非常に助かっております。
 手持ちポケモンの進化等についてはまた次回。

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