他作と平行して制作していましたが、こちらが先に完成したので投稿します。
各登場人物紹介については後ほど
ヒトが寝静まり、ヒトならざる者達が活発になる時間…俺は、闇に支配された小学校の廊下を歩いていた。
まだ生きていて、小さかった頃はこの空間が怖くて仕方なかった。
夜の学校というのは、ただそれだけでも人間にとって恐怖の対象となるからだ。
ましてや…。
『ケタケタ…』
誰も居ない校内に笑い声やピアノの音色が響くなら、尚更だ。
それこそ、当初はビビって目的地まで歩くのも大変だったが、
「もう集まってるよな…」
小さくため息を吐きながら、制服のポケットから携帯を取り出して時間を確認する。
時刻は23:55。
0時まで後少し、といった時間になっていた。
目的地…
「ちh「おっそーい!」」
挨拶を遮って聞こえる子供の立腹した声に室内を見ると案の定…一人の少女が机に座って頬を膨らませていた。
「10分前行動はマナーよ、マナー!」
「まぁ、落ち着きなよ花。時間には間に合ったんだ、大目に見てやんな」
俺の目の前まで来て、腰に手を当てながら怒る少女にたじろいでいると、深紅の特攻服を纏った女性がフォローをしてくれる。
「サキはワタルに甘いのよ!これで付け上がられたら私たちの面目に関わるのよ!?」
「まぁまぁ団長、落ち着こうぜ?ワタル君が来たからってそんなにテンション上げてちゃ話し合いまで保たないぜ?」
「そうですよ?ワタル君が来るまでじっと扉を見てましたものね?」
花と呼ばれた少女が特攻服を纏った女性…サキの姐さんに反論していると、俺の横から人体のパーツが半分見えた人形…人体模型と白いワンピースにカーディガンを羽織った同年代の女の子がニヤニヤとしながら少女を見て俺に聞こえるように言葉を紡ぐ。
「な、そんな訳ないじゃない!ほら、会合を始めるわよ!」
二人の声がハッキリと聞こえたのだろう花…いや、団長は顔を真っ赤にしながら黒板に向かう。
「気にするんじゃないよ?あぁは言ってるけど、アンタを一番買ってんのは花なんだ」
「アレだよ、最近の人間で言うツンデレってやつ?」
団長とのやり取りに小さくため息をついていると、姐さんと人体模型がヒソヒソと話しかけてきた。
「分かってるよ」
小声で話しているのが気になったのか横目で見てくる団長を見て小さく笑い、俺は理科準備室の椅子に腰を下ろした。
「で、花。今回の話は何だい?」
「ふっふっふ…よくぞ聞いてくれました!」
集まった全員が着席したのを確認した姐さんが声をかけると、待ってましたとばかりに団長は自慢げに笑い、チョークで黒板に文字を書いていく。
「今日は…これを調べるわよ!」
バンッと団長の小さな手で叩かれた黒板には『廃工場の怪』と書かれていた。
廃工場の怪…これはごく最近、それも数日前から噂になってきた話だ。
この町…駒王町の外れにある使われなくなった小さな工場で夜な夜な笑い声が聞こえる、という。
バリエーションとして、そこに入った者は幽霊に殺される、なんて噂も立っている。
「最近子供達が噂してるヤツだね。もしかしたら新入りかな?」
「だと良いんだけど…町外れの廃屋なんて、人間が屯するのに丁度いい場所でもあるよな」
黒板に書かれた文字から件の噂を思い出しながら、俺は隣に座っていた人体模型と話をする。
こういった廃屋の噂なんてのは曰くがなければ俺達のような『怪奇』が生まれることがないからだ。
「それをこれから調べに行くのよ!」
「となると…メンバーは場所関係なく動けるアタシと妃姫子、ワタルの三人になる訳だね」
俺達の話を聞いて半ば興奮した団長の言葉を引き継いで、姐さんがメンバーの割り振りを決定する。
団長と人体模型…以後模っさんは活動の場所に制限があるから学校から離れる事ができない。
つまり、自動的に残った三人に白羽の矢が刺さる事になるのだ。
「それじゃあ、サキとひーちゃん、ワタル。しっかり調べてくるのよ?新入りだったらスカウトしていいから」
「人間だったらどうするんで?」
メンバーも決まり各々準備に取りかかりながら、俺は団長に念のため確認をする。
「決まってるじゃない…私たちの為にも、恐怖の底に突き落としなさい」
俺の言葉を聞いた団長は口角を下弦の月のようにニィ…とつり上げ、良い笑顔を浮かべた。
「で、来てみたものの…」
団長から激励(?)の言葉をありがたく頂戴した俺達三人は噂の現場となっている廃工場に来ていた。
街灯もなく真っ暗で、人間の気配は全く感じ取る事は出来ない。
「人っ子一人居やしないねぇ」
「そうですね…人の気配
妃姫子さんと姐さんも同じようで、辺りを訝し気に見回している。
そう。
ここには確かに
「でも…何か居るのは確かなんだよな」
真っ暗な工場の中を見て小さく呟く。
そんな時だった。
「クスクス…」
工場の奥から人の…それも女の笑い声が聞こえる。
「…こりゃぁ、変だね」
「えぇ、変ですね」
「変だな」
笑い声を聞きながら、俺達三人は口調は違えど同じ言葉を口にする。
この工場からは人の気配を感じなかった。
けど…それとは別に
それが意味する事、それが分からずに俺達は小さく首を傾げた。
「変なニオイがするぞ?人間とは違う、でも私たちとも違う」
女の声が近づいてくると同時に少しずつ、足音が近づいてくる。
それも…地響きを伴ってだ。
一歩、また一歩と近づいてきた足音の主が次第に、ハッキリと見えてくる。
声の通り、女だ。
それも裸体の。
普通の人間で俺が生きてたなら、多少反応しただろう…下半身も普通なら。
「…なぁ、言って良いか?」
「…我慢しな、アタシだって言いたいのを堪えてんだ」
月明かりに照らされた裸体の女…その下半身は、異形の胴体だった。
「どこのB級モンスターパニックだよ」
あまりに予想外な噂の主に、俺は堪える事が出来ずに思った事を口にした。
「…アンタが最近噂になってるヤツかい?」
俺の言葉に頭を抱えながら、姐さんが怪物女(仮称)に問いかける。
だが、怪物女は姐さんの質問を聞いてないんだろう。鼻を鳴らしニオイを嗅いでいる。
「妙なニオイだな、お前達、何だ?」
「…あのさ、質問してんのはアタシなんだよ。勘違いすんなよ?」
話を聞いてない怪物女に苛ついた姐さんが下から見上げながらも鋭く、殺気を込めて睨みつけた。
「まぁ良い。三人纏めて喰うか…まずは…そこの『ブス』からだ!」
「あ”ァん?!」
『あ』
人間だけじゃなく、俺達ですらチビりそうになる姐さんのメンチを意に返さないどころか…怪物女は事もあろうに
俺、兵藤一誠は元人間だ。
彼女…といっても、俺の中にある力を危険視した堕天使の夕麻ちゃんに殺された後、リアス・グレモリー先輩に助けられ、悪魔として生き返った。
悪魔の仕事、としてビラ配りを毎晩やっていたんだけど、今日ははぐれ悪魔?ってのを退治するように先輩へ依頼が来たらしく、今俺は町外れの廃工場に来ている。
「イッセー、今日は貴方に悪魔の駒の特性を教えるわ」
そう言って先頭に立つ赤い髪の女性。
この人が、俺のご主人様であるリアス・グレモリー先輩だ。
先輩が先導し、俺達オカルト研究部のメンバーは工場の中へ入っていく。
「!部長、バイザーの他に妙な気配を感じますわ」
何かに気付いたように部長へ声をかける黒髪の女性は部長の『女王』であり副部長の姫島朱乃先輩。
「血の匂いがします…」
俺の隣で小さく呟く白髪の女の子、塔城小猫ちゃん。
それと、金髪イケメンの木場。
この5人がオカルト研究部のメンバーだ。
『ギャァァァァ!』
姫島先輩の言う気配ってのが分からずに辺りを見回していると、耳を劈くような大きな悲鳴が響き渡る。
「こっちよ!」
いち早く悲鳴の聞こえた場所を察知した部長が駆け出したのに気付いた俺達は、遅れないように暗い工場の中を走っていった。
「…何よ、これ」
悲鳴が聞こえた場所へ駆けつけた俺達が見たもの、それは異常な光景だった。
目の前には、血の海に沈む裸体の女の人。
ただ、その下半身が化物な事から部長の言っていたバイザーってので間違いないだろう。
だけど…バイザーは息絶えていた。
体の至る所を刃物でズタズタに切り裂かれ、無事な箇所を探すのが難しい。
何より…一番惨いのが顔だ。
その顔は、口元が耳まで切り裂かれていた。
「う、ぷ…」
今までの人生で見た事のない惨状に胃の中の物が逆流しそうになる。
でも、異常な出来事はこれだけじゃなかった。
「もう…禁句を言われたからって暴走しすぎですよ?」
「まったくだよ…抑える俺達の身にもなってくれよ」
こんな惨状のなか、何処か暢気というか…当たり前のような会話が聞こえてくる。
突如聞こえてきた会話に、俺を除いたオカルト研究部のメンバーが身構えた。
「いや、悪かったよ。今度アイスか何か奢るから許しておくれよ。な?」
足音と共に会話が近づいてくると、月明かりに照らされて声の主が明らかになる。
赤い服を着た女性、白いワンピースを着た女の子。
そして…駒王の制服を着た男。
「…って、誰だい?アンタら」
向こうも俺達に気付いたんだろう。
訝し気な目で此方を見てくる。
でも…俺はそれどころじゃない。
俺は信じられなかった。
バイザーの死体を背に立つ三人の中の一人。
駒王の制服を着た男は…もう、この世に居ないヤツだからだ。
「…って、イッセーじゃん。なんで此処に居んの?」
目を見開いている俺をよそに、そいつ…白上渉はあっけらかんとした表情で聞いてきた。