High school D×H   作:ジャッキー007

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真夜中の会合 後編

駒王学園旧校舎…此処にあるオカルト研究部の部室で、俺達5人は集まって話し合いをしていた。

「ソーナ会長に頼んでいた彼の調査結果が出ましたわ」

「そう、ありがとう朱乃」

姫島先輩が部長に数枚の紙を纏めたレジュメを渡すと、部長はそれに目を通し始める。

書かれている事は…あの工場で出会った死んだはずの友達、白上渉についてだ。

「…イッセーの言う通り、彼は2週間前に亡くなっている。というのは事実のようね」

「それも裏の調べによると…『侵入した形跡のない寝室で、体を滅多刺しにされていた』ようですわ」

姫島先輩の言葉に、俺と木場、小猫ちゃんの三人は息を呑んだ。

誰かと争った跡もないのに刃物で刺されて死んだ、なんて自殺だとしか考えられない。

そうじゃなければ…俺達の計り知れない何かが起きた、と言える事になる。

「でも…そんな彼が生きていた、となると考えられるのは一つ」

「彼も、私達と同じ悪魔になった、ですわね」

レジュメを机に置きながら、部長と先輩な同じ考えに至ったのか、言葉を紡ぐ。

でも…。

「本当にそうなのでしょうか…?」

小猫ちゃんが、何処か腑に落ちないといった表情で呟いた。

「小猫、何が言いたいの?」

「…あの先輩からは、私たちと同じ悪魔の気配を感じませんでした」

小猫ちゃんの言葉に、俺達は首を傾げた。

特に、渉が居た事に驚いていた俺は、その違いにすら気付けなかった。

「…確かに、思えば彼らは僕たち悪魔とはまた違う、異質な気配を持っていました」

「…謎は深まるばかりね。とにかく、彼らが再び接触を図るまで警戒しておいて」

木場の言葉に小さく溜息を吐きながら呟いた部長の言葉に全員返事をして解散しようとした…その瞬間だった。

「っ!?」

「…兵藤君、どうしたの?」

一瞬だけ感じた妙な気配に辺りを見渡していると、木場が俺を心配そうに見てくる。

「…いや、なんでもねぇよ」

木場の質問に小さく呟くと、違和感を振り払うように頭を振って部室から出た。

そうだ…気のせいだろう。

あの一瞬…俺達の他に、誰かに見られている気配を感じた、なんて。

 

 

 

 

「おかえり、スーさん」

ニノさんや赤い部屋に手伝ってもらい疑問を解消して準備室に戻った俺は、誰も入れる筈もない棚の隙間(・・・・)に声を掛ける。

誰も居ない筈の隙間…そこには、一人の女性が立って此方を見ていた。

隙間女、という噂を聞いた事はないだろうか?

ある男がアパートで生活していた。

ある日、家に帰ってきた男は、部屋の中で誰かの視線を感じる。

初めは気のせいだろう、と気にしなかったが…それは、何日も続いた。

毎日毎日、家に帰ると誰かが男を見ている。

気味が悪くなった男が視線の主を捜して…遂に見つけた。

誰も入れる筈のない、ほんの数センチの隙間…そこに、女性が立って男のことをじっと見ていた。

という噺を。

彼女が、その隙間女…通称「スーさん」だ。

「じゃあ、ワタル…調べものについては分かったのね?」

俺がスーさんに声をかけたのを見計らい、団長が声を掛けてきた。

「随分と時間が掛かったけどね。まさかこんな存在が居たとは驚きだよ」

団長の言葉に小さく首肯きながら、俺は机に調べ上げた物をまとめた紙を広げた。

団員が其々手に取って眺めるそれは…グレモリーというものについて調べた資料だ。

リアス先輩のファミリーネームについて疑問を持って調べてみれば…こんなところに行き着いた。

「俺の考えが正しければ、あの赤髪の人…リアス・グレモリーは悪魔ってことになる」

「あの女が悪魔、ね…。だったら、あの時に感じた妙な気配にも納得いくってもんだね」

俺の仮説を聞いた姐さんが、腕組みをしながら小さく溜息を吐く。

「でも、悪魔なんて実在するのかい?姐さんの噺を聞いてると悪魔を騙るイタい人にも感じるけど」

「私たち怪奇が存在しているのよ?今更悪魔が居るなんて言われても納得しかできないじゃない」

資料を見て眉唾物だと感じたんだろう。模っさんは訝し気な表情を浮かべるが団長に一蹴されてしまった。

俺も、生前なら悪魔なんてフィクションの存在だと一蹴して終わるだろう。

でも、人とは違う存在になり、霊や団長達と関わってからというもの、その認識は変わってしまった。

つまりは、悪魔や天使が居ても「あぁ、やっぱりか」と思ってしまえるのだ。

 

「で、奴さんとの会合は明日の0時という訳だが…」

団長達の噺が落ち着いた頃合いを見て、姐さんがニィ、と嗤った。

こういう笑顔を浮かべる時…それは大抵悪戯や人を怖がらせようと意気込んでいる時だ。

「それまでの間に、あの外来種達にもアタシ達からヒントをやろうと思わないかい?」

 

 

 

 

彼らと出会った翌日…私、リアス・グレモリーは普段通り学校に通っていた。

この土地を管理しているとは言っても、私は学生。

本分である勉強を怠ける訳にもいかない。

そして、今…私は休み時間にその…トイレに来ていた。

「ふぅ…」

用が済んだ私は、手洗い場で手を洗いながら、今夜に行われる会合について考えていた。

私たちとは違う存在…彼らがこの町で勝手な事を働く、というのであれば私たちとしても見過ごすわけにはいかない。

(彼らの正体…絶対に聞いてみせるわ)

決意を新たに鏡を見た…そのときだった。

「っ!」

私の後ろに、女の子が映っていた。

赤い服と白いシャツを着たおかっぱ頭の女の子。

その子が…血の気の引いた白い顔をこちらに向け、口角をつり上げて嗤っていた。

咄嗟に後ろを振り返るけど…そこには誰も居なかった。

改めて鏡を見ても、其処に写っているのは私だけ。

(気のせい、かしら…?)

小さく溜息を吐いてトイレから出ようとした…その時

『くすくす…』

私以外誰も居ないトイレの中から、小さな女の子の笑い声が聞こえた。

 

 

 

「はぁ…」

夜の0時、何時ものようにオカルト研究部の部室に集まっていた俺達…。

だが、部長の様子が明らかに可笑しかった。

なんと言うか、疲れているというような雰囲気だった。

「部長、その…どうかしたんですか?」

「イッセー…。いえ、何でもないわ。ちょっと疲れているだけよ」

俺の言葉に部長は小さく笑って答える。

それに少し安心した俺達だけど…聞いてしまった。

「そうよね…トイレに女の子が居たなんて、少し疲れてたのよね」

そう、小さく呟く部長の声を。

「…え?」

木場や小猫ちゃんは小さく首を傾げるだけだった。

でも…俺と姫島先輩は、部長の言葉に少しだけ、顔を青くした。

「…イッセー、朱乃?どうしたの?」

部長が小さく首を傾げるけど、俺と先輩は互いに顔を見合わせた。

「部長…その女の子、どんな格好をしてました?」

部長の言葉に反応を見せた姫島先輩が問いかける。

その表情は、過去に忘れていた記憶を掘り起こされたかのような表情を浮かべている。

俺も、きっと同じ表情を浮かべているだろう。

「え?えっと…たしか、白いシャツに赤いスカートを履いたおかっぱ頭の女の子…だったかしら。どうしたの?二人とも」

俺達の表情に疑問を浮かべながらも部長が話す女の子の特徴に、記憶の片隅にあった特徴が一致していった。

俺と先輩は、再び見合わせた後…生唾を飲んで部長に伝えた。

「部長…それ、きっと…『トイレの花子さん』です」

 

『トイレの花子さん』。

それは…日本の小学校に通った事がある子供なら、誰もが聞いた事がある『学校の七不思議』、『学校の怪談』の一つ。

女子トイレの手前から三番目のドアを三回ノックして『花子さん遊びましょう』というと現れると言われる少女の幽霊。

地方によって呼び出し方や姿に違いはあるけど、トイレにまつわる怪談の代名詞と言えるものだ。

一説にはトイレの中に引きずり込まれる、なんて話もあれば返事を返すだけ、という話もある。

「でも…それは小学生に流行っている噂でしょう?」

「しかし「そうでもないんだよな、これが」」

俺達の話を聞いて疑惑の目を向ける部長に姫島先輩が説明しようとしたとき、此処に居ない筈の声が聞こえた。

「渉!」

「よぉ、イッセー。昨日ぶり」

振り返った先…部室のドアの前には、渉を初めとして昨日出会った三人が立っていた。

 

 

 

「初めまして、で良いかな。白上渉です」

「えぇ、オカルト研究部部長のリアス・グレモリーよ。それで…」

俺の挨拶に返事をした先輩は俺達三人を品定めするように見据える。

今此処に居るのは俺と姐さん、妃姫子さんの3人だ。

「あぁ、他のメンバーなら既に此処に来ているよ」

「!…それなら、此処に来てほしいものなのだけれど?」

俺の言葉に一瞬目を見開いた先輩は、挑発的な口調で言葉を紡ぐ。

その姿に姐さんは眉間に皺を寄せるが、昨日のように事を構えようとする気配はない。

「まぁ、一人はもうすぐ来ますよ。トップ…団長はちょっと手順を踏まなきゃ来れませんが」

「もうすぐ?それってどういう「あ〜、やっと着いたよ」…ひっ?!」

俺の言葉に先輩が疑問の言葉を発しようとするが、新たに部室に入ってきた影を見て小さく悲鳴をあげた。

「う、嘘だろ…?!」

「人体、模型…?」

グレモリー先輩だけじゃない。イッセーや他の人たちも各々驚いた表情を浮かべている。

「旧校舎って聞いてたけどオカルト研究部の部室の場所なんて知らなかったからさ〜。ワタル君、ちゃんと説明してよ」

「俺達も校門で待ってた生徒会の人たちに案内されたから、場所までは知らなかったんだよ」

オカルト研究部の人たちが驚いている中、俺は部室に入ってきた影…人体模型の模っさんの愚痴に付き合う。

「まぁ良いじゃないか、無事に合流出来たんだ。団長を迎えに行くよ」

「ちょ、ちょっと待って!あなた達、いったい何なの?!」

姐さんの一声で部室を出ようとした俺達に、自分たちが経験した事のない出来事に混乱したグレモリー先輩が声を掛けてきた。

「それは団長を呼んでから話すよ、悪魔の皆さん?」

せっかちというか、なんと言うか…小さく溜息を吐いた俺は、オカルト研究部の面々を見て、口角を吊り上げた。

 

「あの部室、立地がベストなとこだよな」

「まったくだ、俺達にとって最高の環境じゃないか?」

俺達はオカ研の部員を引き連れて、部室から出てすぐの位置にあった女子トイレの前に来ていた。

「な、なぁ…なんで女子トイレに来てんだよ」

闇に包まれた旧校舎、それも女子トイレなんて所に来た事にイッセーが疑問の言葉をかけてくる。

大方、人間だった頃の恐怖心がまだ残っているんだろう。

「なんでって、うちの団長を呼ぶ為だよ」

そう言って、俺は女子トイレに入り…三番目のドアをノックした。

「はーなこさん、あそびーましょ」

俺の一連の動作に5人は驚いたように後ずさる。

団長が事前に挨拶代わりに驚かした、なんて言っていたけど少し効果はあったみたいだ。

誰も入っていないトイレに呼びかけた後、俺は一歩後ろに下がって待つ。

すると…。

キィ…。

無人のトイレのドアがゆっくりと開き…小さな手がドアを掴んだ。

「な…」

誰かが小さく、声にならない声を上げる中、無人だったトイレから一人の女の子が現れた。

白いシャツに赤いスカートを身に纏うおかっぱ頭の少女。

それが…俺達の団長。

「遅いわよ、ワタル」

「遅くなりました、団長」

学校の怪談の代名詞…トイレの花子さんだ。

 

 

「さて、改めて互いに自己紹介でもしましょうか?」

団長を呼びに行った後、俺達は再びオカ研の部室に集まっていた。

ソファーには左から姐さん、団長、俺。

その後ろに模っさんと妃姫子さんが立っている。

対面に座っているのはグレモリー先輩ただ一人。

他の部員は立って俺達を奇異の目で見ている。

中でもイッセーは恐怖を含んだ視線を向けてきている。

「えぇ、そうね…改めて、私がオカルト研究部部長のリアス・グレモリーよ」

「同じく、副部長の姫島朱乃と申します」

「木場祐斗です」

「…塔城小猫です」

「えと、兵藤一誠です」

グレモリー先輩が自己紹介したのに続いて、他の部員達も各々自己紹介をしてくる。

けど…奇異と警戒の目は変わらず、だ。

「そう。私は花子…そうね、人間には『トイレの花子さん』と言った方が分かりやすいかしら」

「霧咲紅…『口裂け女』って言った方が早いかね」

「森妃姫子と言います…『ひきこさん』で構いませんよ?」

「俺ぁ見ての通り人体模型だ。『模っさん』で構わないぜ?」

「白上渉です」

返すように俺達が自己紹介をすると、部員は様々な表情を浮かべる。

中でも、イッセーと姫島先輩は目を見開いていた。

まぁ、それもそうだろう。

小さい頃に聞いた怪談話に出てくる存在が今、目の前にこうして居るんだから。

「会合を始める前に一つ。此処からは一問一答で互いに話をしようか?その方が互いに混乱しないだろう?」

「そうね、では私たちから」

事前に俺が会合の担当を任された事もあり先輩に提案すると、先輩は質問を始めた。

 

「まずは、あなた達はいったい何なの?何処の眷属の悪魔かしら」

「答えはNoだ。俺達はアンタとは別の存在、と言っておこう」

俺の説明を聞き終わると、グレモリー先輩は考え始める。

「今度は俺のターンだな…グレモリー先輩の言葉で大半の謎が解けたが、この世界には悪魔や天使が実在する。それは間違いないな?」

「…えぇ。確かに悪魔や天使、堕天使は存在するわ…でも、何時気付いたのかしら?」

「最初に疑問を感じたのは昨日、先輩のファミリーネームを思い出したときだ。その後に調べてみれば、行き着いたのは一つ…ソロモン72柱に数えられる悪魔『グレモリー』だった訳さ」

グレモリー…ゴモリーとも呼ばれる悪魔はソロモン72柱の序列56番に数えられる悪魔だ。

地位は公爵、過去・現在・未来、そして隠された財宝について知り語るほか、老若問わず女性の愛を齎す力を持つとされている。

「…グレモリーなんて名前、探せば人名でも使われないかしら?」

「それこそ無いな。わざわざ家名に悪魔の名前を掲げる人間なんて何処にも居ない」

試すような先輩の言葉に肩を竦めて反論すると、先輩は観念したように溜息を吐いた。

「驚いた…まさか、たった一晩で調べられるなんて思わなかったわ」

「それはどうも。うちには優秀な諜報員が居るものでね」

俺の言葉を聞いた先輩は、顎に手を添えて考え始める。

でも、その表情は腑に落ちないというものだ。

「…でも、分からないわ。人間を生き返らせる、なんて方法は私たち悪魔や天使以外の方法の他に無い筈よ?」

「その答えもNoだ。俺は生き返っている訳じゃない…俺は、死んでいるんだよ」

遺体も焼かれて墓の中さ、と付け加えると、先輩は考えが纏まらないのか微かに苛立ちを見せ始めた。

「じゃあ…あなたは、あなた達は何なの?」

「…俺達は人が作り、語り継ぐ噂が自我と実体を得た存在。『怪奇』、と自称しているよ」

 

「…それでも、あなたの事が分からないわ。他の人たちはイッセーから小さい頃に学校で広まっていた噂だと聞いているけど…」

団長や姐さんのように、分かりやすい怪奇の形については理解出来たんだろう。

だが…先輩は俺を見て考えるそぶりを見せる。

「俺は怪奇の中でも特殊な存在だよ。怪奇を知り、語り継ぐ人の意思の集合体…語り部(・・・)という怪奇、それが俺…」

 

「『語り屋』こと、白上渉だ」

 

 

「…あなた達の事は分かったわ。でも…この土地はグレモリーが管理する土地よ、勝手に動かれては困るわ」

「それは無理な相談だね。さっきも言ったが俺達怪奇は『噂』が実体を得た存在…人が俺達を語る限り、俺達は在り続けるし行動しなきゃいけない」

それに…そう言って俺はグレモリー先輩を見る。

「言ってしまえばアンタ達悪魔は外来種(・・・)だ。日本に輸入されて生態系を脅かすブラックバスやアメリカザリガニと同類なんだよ」

俺は、殺気を込めてグレモリー先輩を睨んだ。

その殺気を浴びて、先輩は息を呑む。

当然だ…俺は噂を語る人の意思の固まり、いわば日本に住む人間から一斉に殺気を向けられたのと同じなのだから。

「だが、ここで衝突したらアンタ達の後ろ盾(・・・)…ひいては悪魔を敵に回しかねない。だから条約を結ばないか?」

「条約…?」

先程まで放っていた殺気を納め提案をすると、浅く呼吸を整えながら先輩は俺を見てきた。

「あぁ。今後、俺達はアンタらの事情に首を突っ込まない…引き換えに、アンタらも俺らに関与しない。一種の不可侵条約さ」

「そんなもの…許される訳ないじゃない…!」

俺の言葉の内容に先輩は息を整えながらも此方を睨みつけてくる。

荒事は面倒なんだが…仕方ない。

「だったら…アンタ達には此処から退いてもらう。何なら、世界中の同胞をかき集めて全面戦争でも起こすか?」

俺は、博打に打って出た。

怪奇、なんてのは何も日本にだけ存在する訳じゃない。

人々が噂し、恐怖した存在は世界中に居る。

彼らと結託すれば…戦争も容易いだろう。

だが、それは結託すれば、の話だ。

彼らはきっとこう答えるだろう。

『他所の厄介事をうちに持ち込むな』、と。

だから、俺は祈った。

此処で折れてくれ…と。

そして…。

「…分かった、あなたの条件を呑むわ」

俺の願いは、叶った。

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