FAIRY TAIL The Travelogues of Phantasm 作:水天 道中
それでは予告通りバトル回になる第7話、どうぞ!
意識が、
薄く
ぼやけた視界が焦点を結ぶにつれ、よりはっきりとそのシルエットが見えてくる。紫色のサイドテールの少女だ。
彼女はこちらの意識が戻ったことを確認するなり、振り上げていた右
「わあッ」
ルミネアが
ルミネアは
「はぁ……。そういうことは心臓に悪いので
少女、ネフィリムは、杖を
「えへへ〜。そろそろ時間だよ、ルミネアちゃん」
ネフィリムを横目で見ながらも、ルミネアは事務的に返した。
「そうですか、ありがとうございます」
一礼すると、
しばらくして所定の場所にたどり着き、ルミネアは就寝前の再演の
「この山と森に住まう者達よ、眠りから目覚めよ……『
──ルミネアが放った特殊な音波はスミレ
「……ん、あぁ……。もうこんな時間か」
ベルクスの
「『起床曲』。一定範囲内の対象者の意識を覚醒させる、ルミネアの技だ。効果範囲が広い割に
へぇ、とグレイが一つ呟くと、二人で着替え始めた。
着替えが終わり、人心地つくと話題もなく、
「ベルくん、起きてる?」
しばらくして、控えめなノックの音がした。
「リリスか?」
「うん。良かったら、ちょっと
部屋を出ると黒いネコ耳に赤髪の少女が出迎えた。ベルクスは
「お前、この時間でどうやってここまで来た? 女子
ベルクス達が暮らす
そして正面から館を見て、右側が男子寮、左側が女子寮となっているのだが、その二棟を繋ぐのは正門側の通路と、館の背後に
館内での飛行は──あまり気にしている
以上の情報を
「それはまぁ、あたいの隠れた自慢かな」
意味不明な返答をする
「まぁいい。……にしても、アシュリー様はなんでこんな部屋割にしたんだ? ルミネアの
部屋の中ではグレイの下の段で、ナツとリドラが折り重なって眠っている。ルミネアの『
ベルクスのぼやき半分の問いかけにリリスは苦笑すると、簡潔に答えた。
「まぁ……テキトー?」
「ッ、あのヒトらしい……」
ベルクスが
「それを言うなら、ウチの鬼様達は勝手なヒトばっかりだよね。お
「それ、
「わかってるって。これはあたい達二人の秘密ってことで」
リリスが出した
「ルミネアちゃんが技を使ったってことは、もうあんまり時間ないよね。それじゃベルくん、また後でねー!」
リリスは廊下の中ほどまで駆けていくと、おもむろに手近な窓に手をかけたのだ。何をするつもりかと眺めていると、リリスは窓を開け窓枠に片脚を掛ける。
と、そこで振り向いた彼女と目が合った。
「あッ、おいリリス──ッ」
ベルクスが
ベルクスがやり場のない怒りをどうにか表現しようと
まるで『
リリスは
ベルクスは窓枠に両手を掛けたまま、がくりと
──ッたく、あのアホネコ……。
1
リリスが
リリスは首を巡らせて静かな
ここに集まっている妖精だけで、どれだけの数になるだろうか。リリスも真剣に数えたことがない為総数は
しばらく待っていると、この山では聞き慣れた
『あ、あー、マイクテス、マイクテス。……さあッ、いよいよこの時間がやって参りましたッ。人と鬼、両者間の親交を深め合う親善試合! 名付けて、スミレ
『ミレーネさんが戦うところ、見たいんじゃないんですか?』
『うぅ、それは、そうですけど……』
メープルが
『司会進行と実況はこの
『ええッ? 私がやるんですか!?』
明らかにメープルの声が裏返ったが、文は無視して続ける。
『それでは早速、この方にご登場して頂きましょう。このスミレ山を
その声に、地をどよもすほどの爆発的な歓声が上がった。リリスも、二階バルコニー部分に
レンカはひとしきり妖精メイド達に手を振り返すと、最後に文達のいる司会者席──本来は同じく二階バルコニーの一部だが──に手振りで謝意を表し、手すりに両手を突くとよく通る声で話し始めた。
「やぁ、橙鬼館に勤める妖精メイド諸君、そして人間の
一呼吸を置いて、レンカは集った面々にゆっくりと首を巡らせる。
「まずは、あたしの一存でこの場を設けてしまったことに謝罪したい。特に深い考えもなく、
さて、夕刻にも連絡したように、この館には現在、人間の
その言葉に、妖精メイド達が色めき立つ。
「ブン屋の情報によれば、彼らはこの大陸・イシュガルにおいて最強の勢力を
レンカはやにわに両手を持ち上げると、手すりを
「そこでッ、あたしは彼らの持つ力、思いの力を試すことにした。そのための親善試合だ。この山では、鬼も妖精も天狗もみな仲間同士! 種族の違いなど関係ないッ。そんな垣根を越えたあたしらの思いの力がどれほどのものか存分に
再びの地をどよもす歓声。リリスも思わず手を叩いて
「以上で、あたし、レンカ・ハーネットからの、開会の
『はい、熱いお言葉、どうもありがとうございました!
それでは続きまして、この試合のルール説明に移らせて頂きます。ルールは至ってシンプル! 我々スミレ山の住人と魔導士ギルド『妖精の尻尾』の一対一の三回勝負! 先に二勝を収めた方の勝利となります。試合に出場する順番は、各チームでの相談。じっくりと考え、両チーム共に作戦を練って下さい!
また、どうしてもこの試合に参加したいッ、という方は、
「フッ、そう来ると思ってたわ。任せて
そう言うと、人混みの中にいた鬼の魔術師は持っていた本を開き、複数の
「シチュエーション1 ステージ名"コロッセウム"起動」
すると景色がぐにゃりと
これこそが、『静かなる鬼の魔術師』、アシュリーの空間魔法の真骨頂。その時と場合に応じて、ある程度
闘技場二階、観客席に移動していたリリスは、同じく移動してきた大勢の妖精の中に見知った背中を見つけ、小走りで
「ネフィちゃん、ルミネアちゃん!」
片方の紫髪の少女はすぐにこちらに気づいて手を振り返してくるが、もう一方の少女は背を向けたまま何の反応も
「ルーミーネーアーちゃんってば」
一歩
「あぁ、リリスさん。すみません。文さんの声が大きかったので、音声を干渉して耳を閉じていました」
「……。にゃはははッ、確かにブン屋の声は
リリスの言葉に、ルミネアは微笑を浮かべて応える。
「大丈夫です。そこはネフィリムさんがちゃんと──」
「──聞いてないよ?」
ルミネアが一瞬固まってから
「だってさっきまでセリナちゃんのとこ行ってたし」
微妙な空気が流れる中ルミネアはゆっくりとこちらに顔を向け、
「それでは仕方ありません。リリスさんで良いです」
「仕方ないってなにさ、『で』って何?」
ルーシィたち『妖精の尻尾』のメンバープラスアルファ、ラグリアたち三人は、闘技場地下に
アシュリーの空間魔法については見事の一言に
「うーん、三回勝負ってことは、この中の半分以上が出られないことになる訳よね……。
「一番手は
「ナツ、アンタねぇ……」
単純なナツの発言を制したのは、他でもないエルザだった。
「まぁ落ち着けナツ。考えることはいくつかある」
「そうだね。一回状況を整理しよう」
エルザの言葉に、ラグリアも同意を示す。
「相手は恐らく、三試合すべてを勝負事が好きな鬼で占めてくるだろう。そして、彼女たちは人間とは比べものにならない能力をいくつも持っているとミレーネは言っていた。そこで、私に考えがある」
「この勝負──第一試合は、私が引き受けよう」
2
『さあッ! まもなく制限時間一杯となりますが、両チームとも、出場メンバーは決まったのでしょうか! ……解説のメープルさん、お互い、どう来ると思いますか?』
『はい。まず、スミレ山チームですが、
だが、普段から緊急事態に対処している警備部隊長の
『次に『妖精の尻尾』チームですが、こちらについてはまだ私たちが知らない事が多く、よくわからないというのが正直な感想です』
『なるほど、ありがとうございます! 面白い取り合わせが出てくると良いですね!
……さて、どうやら試合開始の時間が近づいてきたようです。アシュリーさんが設定した"コロッセウム"二階の観客席には大勢の妖精メイド達が詰めかけ、開戦の時をいまかいまかと待ちわびているのが伝わってきます!』
その時、観客席の右端で
『はい、たったいま、制限時間一杯となりました! 観客の皆さん、いま一度ご着席願います!』
『それでは早速、出場者にご登場頂きましょう。
──まずは『
闘技場一階、右手側から
「エルザ・スカーレット、参るッ」
『……続いてスミレ山チーム。まず先陣を切るのは、この方!
闘技場の反対側から鬼の女性が現れ、観客席、特にエルザから見て左手側の
「バーナさーん、頑張って下さーい!」
その中の一人、確か名前をアイリスといった黄緑色のポニーテールの少女の叫びに、バーナは笑顔で両手を大きく振り返して応えた。
しかし次にエルザの方を見ると、ぎょっとして
「げッ、確か
「あ、あぁ、そうだが……そう、なるのか……?」
エルザが困惑して答えると、バーナはがくりと
「うわぁ、どうしよう、勝てる気がしない……」
しかしバーナはそこで
「レンカ様のため、このバーナ・トールス、推して参ります」
その言葉と共に、彼女の手が背に差した剣に伸びるのを見て、エルザも異空間にしまってあった剣を取り出し構える。それを見て、バーナは再びぎょっとした表情になった。
「ええッ? 貴女も剣遣いなんですか!?」
「……そうだが、どうした?」
「それでミレーネさんに勝ったなんて、ホントに勝てる気がしないよぉ……」
エルザは内心苦笑しつつ彼女の様子を眺めながら、その
こちらに剣の
剣を持っている、ということは彼女の
館の見回りをしていた際、彼女は
やはり気を付けるべきはあの身体能力か。そう考えながら、エルザはぐっと剣の
開戦の合図は何もなかった。にもかかわらず、二人が地を
突進の勢いもそのままにバーナが突きの構えを取るのを見て、エルザは刀身を横に寝かせて
右手外側から剣を振り抜き、
これが鬼の反射神経。エルザは相手に
受け側に回ったバーナの
十数合にも及ぶ攻撃の
「なかなかやるな……ッ」
「有り
だがエルザは、この時点においてまだバーナ・トールスの
バーナが剣を握るのは、いつしか右手のみになっており、左手はフリー。それに気づいた瞬間、その左手に
危険を察知してバーナを突き
十分に距離を取った──はずだった。しかし彼女の左手に生まれた光が細長い
「ぐッ」
「それがお前の
「その通りッ。私の『フォージ』は、超高温のマグマから金属製の様々な
バーナが槍を消して左手をなぎ払うように振ると、今度は彼女の周囲に無数の小さなマグマの球が出現する。それがナイフに変じると、バーナはこちらに向かって
「『
しかし、その直線的な軌道を読み
「
すると、エルザの全身を
異空間にしまってある武器や鎧を
この鎧は火属性の魔法に耐性をもつ。彼女は自身の武法を、『超高温のマグマから武器を造り出す』ものと語った。そこから、火属性の攻撃も可能であると類推するのは
バーナが、走り込むエルザを迎え入れるように両手を開く。と、次の
剣と
彼女の操る武法『フォージ』は、基本的にはエルザの換装魔法やグレイの造形魔法に似た特徴を有している。だが、一度造り出したものをマグマに戻して直接別のものに造り変えたり、造り出したものの形状を保ったままその一部分だけをマグマに戻したりできる。
バーナの視線の置き方や両手の動きに集中していれば、次の攻撃がどこから来るか大方の予想は可能だ。一部をマグマに戻した武器による攻撃も、この火属性の剣を使っている限りは十分受け切れるだろう。だがそれだけでは現状を打開するには足りない。
斧槍の一撃を大きく跳んでかわした直後、エルザは再び
「換装、
すると今度は髪型はハーフアップに、鎧はワンピースのビキニとロングドレスが組み合わさったような戦闘スーツに変じていた。背後には、あたかも鳥の羽の如く複数の
防戦一方だった不満を爆発させるがごとく、エルザは
「うわッ」
バーナは危なげなく攻撃を受け、または
そしてエルザは知っている。この鎧の真の恐ろしさは、この密なる連環攻撃には無いことを。
宙を自在に舞うすべての剣をバーナが弾き、そこに一瞬の油断が生まれた
「……?」
頭上に疑問符を浮かべるバーナに背を向けたまま、エルザは静かに口を開く。
「私の剣は……──斬ったことに気づかせない‼」
次の瞬間、
「ぐあああぁぁぁッ!」
『おぉっと、これは凄まじい一撃が入りましたッ! バーナ選手、大丈夫かッ? ──? あれは……?』
決着を確信したエルザだったが、その
──エルザの剣が、至るところからドロドロと溶け出している。
あわてて背後、悲鳴を上げるバーナを振り返ると、そこにはエルザをして
「あああぁぁぁ…………っと、いやぁ、
そこには、体の各所に
『あれは……。バーナ選手の『
3
バーナの体から凄まじいオーラが
ルーシィは、バーナが見せた技の数々に感嘆を禁じ得なかった。
エルザの
その時、ボシュッという音とともに本日何度目かになる「あうッ」という声が
「あの、さっきから何やってんの?」
声の主、ミレーネは、片手を軽く持ち上げた
「あの子が本気出すとこっちまで熱波が届くから暑いのよ」
その言葉にルーシィは
ただ、霧をまとっていてエルザたちの戦闘が見えているのか
「ねぇアシュリー、あなたなら、簡単に消えない霧を出すくらいできるでしょ? ちょっと私に使いなさいよ」
「まったく、いつも冷静なクセにこういう時だけ
エルザの体は驚愕に
──幽絶の
「
思考を立て直したエルザの髪はストレートに戻り、代わりに全身に白銀に輝く美しい鎧をまとっていた。その背には、飛行能力こそ無いものの巨大な
──
天輪の鎧──エルザが持つ鎧の中でも、特に多彩な攻撃法をもつ鎧である。
エルザは高く飛び上がると、その周囲に無数の剣を展開する。
「天輪・
エルザの周囲に浮かんだ剣たちは、変幻自在な軌道を描きながらバーナに
「無駄ですッ。『
バーナが叫ぶと、彼女の身体を中心に周囲の床面が溶けるほどの熱波が放射された。
そのすべての
エルザは着地すると、反撃に備えて更に距離を取りながら魔力を発動。
「逃しませんよッ。『
──換装、
エルザが
遠心力により元の全長の何倍にも伸びた三節棍は、その一節の表面をマグマに変え、超高温により
盾を放棄し反撃に転じようと魔力を発動したところで、バーナが再び叫ぶ。
「く……ッ。それなら……ッ」
彼女が三節棍を目の前に水平に
次の
その光景を、バーナは果たしてどんな気持ちで見ただろうか。それは、彼女の青ざめた顔を見れば明らかだった。
「えぇ!? 銃弾を
「? 何の話だ? そんなルールは聞いていないが」
言葉の意味を判じかねたエルザの返答に、バーナはがくりと
「いや、そういう意味じゃなくてですね……。まぁ、いいです」
彼女は一転してキッとこちらを
「
そう言うと、バーナは両
「これで、決めます……ッ。『
彼女が出したメイスの頭部表面が真っ赤に
──
「黒羽・
下段に構えた剣を
換装、
「天一神・
黄金と青で統一された鎧に一瞬にして身を包んだエルザは、同時に手にした
「ぐあああああぁぁぁぁッ‼‼」
エルザは目を伏せたまま着地。
『け、決着、決着、決着ーッ‼ エルザ選手の
はい、第一試合は見事エルザさんの勝利!
まぁ、エルザさんは
なお、投稿が大幅に遅れてしまったお詫びと言ってはなんですが、これまでのストーリーをちょっとだけ加筆修正しておきました。自分のモットーは『何度読んでも楽しめる作品』を作ることですから、改めて読み返したいという方は大歓迎してお待ちしております。
それでわ、しーゆーあげいん!
〈加筆修正一覧〉
5、10