FAIRY TAIL The Travelogues of Phantasm 作:水天 道中
今回はシリアスメイン、バトルサブの二本立てストーリーでいきます。
それでは第9話、どうぞ!
「──止まれミレーネッッッ‼‼」
ルーシィがびっくりして耳を
『えー、し、勝負の結果は……』
「──
『あ、ハイ……』
有無を言わせぬレンカの
レンカはバルコニーの手すりに右手
着地
「おい、どういうことだミレーネ。いまの
ミレーネはそれでも動かなかった。しかし、やがて右腕を降ろすと、シラナミを消して
「どこに行く。おい、ミレーネ……ッ」
レンカの制止も聞かず、鬼の少女は一人、闘技場の奥ヘと消えていってしまった。
レンカはしばらく黙っていたが、すぐに二階バルコニーを見上げてよく通る声を出す。
「済まない、
そう言うが早いか、彼女もミレーネを追って闘技場の奥ヘと走っていってしまう。
その様子を、誰もが
1
「あわわ、ど、どうすれば……」
「落ち着きなさいレイン。──ベル
「わーってる。アシュリー様、どうすんだこれ!?」
闘技場反対側の観客席にいるアシュリーは、至って冷静だった。
「私達は、お
そう言って、複数の
『
──この近距離で、『念話』使う必要あったか?
レンカは一人、スタスタと先行する鬼の少女に追いすがるように手を伸ばす。
「ミレーネ、おい、ミレーネッ」
しかし彼女は振り向かず、レンカの
「
「いいや、離さないね。ちょっとこっちに来い」
半ば強引にミレーネの腕を引くと、自分の執務室まで連れてきて入らせる。
「さあ、
妖精メイド達が次々と挙手した結果、アシュリーが提案した立候補制の試合は
ギィン、という音と共に二振りの剣が打ち合わされ、反動で双方が靴跡を引きながら吹き飛ばされる。
水色の長髪を一つの三つ編みにした少年、ベルクスは銀の
「剣遣いって知った時から、アンタとは一回手合わせしてみたかったんだよ」
水属性の
「それは奇遇だな、私も同じ事を思っていた」
そこでおもむろにベルクスが大剣を引き
「『
水をまとった刀身が突き込まれると同時に、
防御しようと
「手元に気をつけな。さもなきゃ
「フッ、では私も忠告しておくとしよう。
「あ? なに言って……──ッ」
不意に頭上に
エルザは剣を切り払うと、告げる。
「私の魔法は、
ベルクスは
「ツッ……。つくづく底が知れねぇな、アンタって人は」
「
ナツが振り抜いた
「ッてぇな、なんだよ、そりゃあ?」
球状のバリアが消え、中から現れた少女は滞空したまま、
「なにって、だから影だって言ってるじゃん」
「硬すぎんだろッ!」
余りの防御力にツッコミを入れるが、ネフィリムはケタケタと笑う。
「こんなことも出来るよ?
すると、彼女の持っている
「ゲッ」
ナツが
「うわッ、とッ」
ナツは上体を
「うわああああッ」
ルーシィは悲鳴を上げながら矢の雨を必死で
リリスが操るのは、
「あたいの『
「くう……ッ。それなら……ッ」
ルーシィは
「開け、
するとルーシィの右手を中心に金色の光が
「おおッ、なんだい、そりゃ!?」
「あたしの魔法、
次にルーシィは、持っていた人馬宮の鍵を胸に突き立てた。すると今度はルーシィの全身が金色の光に包まれ、黄緑色のドレスをまとった姿に変化する。その両手には、弓矢を
──ルーシィの第二の魔法、変身魔法である。
「
「反撃開始、でありますからして〜もしもしッ」
独特の口調で話すサジタリウスとともに弓を構え、お返しとばかりに
「スターショットッ!」
「
猫よろしく
「にゃあッ!」
「やったッ。 ──ッて、えッ?」
──リリスの姿が無い。
どうにかして回避したのかと思ったが、どうもそういう
やがて、変化が訪れる。
──リリスがいた位置に小麦色の光が
最後に光が
「あはは〜、油断しちゃったにゃ」
「どッ、どういう、こと……?」
「あぁ、彼女たち妖精はね、死なない代わりに、一定以上ダメージを受けると
「そんなのアリッ?」
アシュリーの説明に裏返った声を出すルーシィだったが、その
だがそんな状況でも、
「戦闘中によそ見できるほど
──
アシュリーはちらりと横目でこちらを見ただけだった。次の
「あら、ごめんなさい。でも、親善試合なんだから気楽にいきましょうよ」
その言葉に、グレイは
「こっちは一回死にかけたんでね……ッ」
アシュリーは悲しげな表情で応じる。
「あの
そう言うと、彼女は開いた本から複数の赤い
しかし、それよりも一瞬早く、グレイも
アシュリーが驚愕に息を飲む音がした。
「炎が、
「ヘッ、
グレイの言葉に、彼女がにやりと笑う気配。
「フッ、ますます興味深い……」
2
レンカの問い掛けからしばらくして、ようやくミレーネは重く閉ざした口を開いた。
「……あの人……グレイは、悪魔の力を使った」
「確かにその通りだ。あいつは明らかに
ミレーネは
「でも……ッ。人間が、
レンカは一度目を
「お前は、あいつ
「え……?」
「あたしは見た。鬼のあたしを前にしても
ミレーネは
「そう……。やっぱり、私はあなたとは違うわ」
「そうでもないさ。……なぁミレーネ。そもそも、鬼や悪魔、人間の違いってなんだと思う? 能力的な意味で」
ミレーネは
「そうね……。まず鬼が使うのは『
「そうだな。人間や悪魔が様々な思いの力をエネルギーにするのに対し、あたし達鬼は大自然からそのエネルギーの一部を借りて技として放つことができる。だから理論上の限界は存在しないと言っていい。
でもここで重要なのは、人間も悪魔も、何かしらの思いを力に
アシュリーがよく言ってるだろ? 『魔法の可能性は無限大だ』って」
「でもそれは、いまの話と関係ないわ。だってアシュリーがいつも言ってるのは、魔法にできないことなんてないだろうって話だから……」
「あぁ、確かにそうだな。でも、あたしはこうも考えられると思うんだ。武法に理論上の限界が存在しないように、魔法や呪法にも無限の
「私にも、人間と悪魔を対等にみろっていうの?」
ミレーネが
「おいおい、あたしはそんな事、ひとことも言ってないだろ? らしくないぞ、ミレーネ」
ミレーネは目の前の鬼の女性を直視できず、視線を
「……?」
「いや、悪い。お前を笑ったんじゃないんだ。ただ、ちょっと面白いことに気づいてね」
ミレーネが無言で先を
「お前、"武法"って言葉についてどう思ってる? 何でもいい。なにか言ってみな」
「……は?」
ミレーネは
真っ白になりかけた頭を軽く振り、ミレーネは思考を立て直す。
「そうね……。特にそんなに深く考えたことはなかったけど、別に好きでも嫌いでもないわ。使えるものは使う。ただ、それだけ」
「なるほど。まぁ、お前が考えそうな意見だな」
「じゃあ、あなたは? レンカはどう思うの?」
レンカは不敵に笑うと、こちらの質問を待っていたとばかりに
「"武法"って響き、あたしは好きだね。いかにも戦う種族って感じでさ」
あまりに彼女らしいその返答に、ミレーネは思わず笑みこぼれた。
「まったく……ホント、あなたってブレないわね」
レンカはその言葉に照れくさそうにひとつ笑うと、両手を頭の後ろで組み、背もたれに寄り掛かって
「いやぁ、にしても、こうしてお前と話してると、最初にお前
その言葉に、ミレーネの思考も遠い記憶の
それからミレーネが最初に出会った鬼は、アシュリーだった。同じ種族同士であるため、武法で隠していた
何人かの鬼たちでいま、再び新たな地に帰る場所を作ろうとしている。彼女はそういった。そして願わくば、またすべての鬼が
「そこに、あたしが飛び入りで入ってきたんだよな」
そう。彼女──レンカの登場は
いきなり自分たちの前に現れたかと思うや、彼女は勝負をしようと持ちかけてきたのだ。鬼たる者、
結果は、言うまでもない。ミレーネたちの
そこからレンカは、鬼を集める計画の先陣を切って話を進めた。
鬼たちが帰って来る『場所』の設立。そのためにまず、各地に点々と暮らしていた
つまり、彼女の力なくして、いまの
「……落ち着いたか?」
「えぇ、
レンカは再び
「ところでミレーネ、お前、なんでお前があたしを名前で呼ぶことを許可してるかわかるか?」
「それは……。この橙鬼館の基本理念が、自由主義だから、かしら?」
「確かにそれもある。でも、本当はもう一つあるんだ」
「実はな、ミレーネ。──あたしは、お前をいずれ、次期橙鬼館当主に任命しようと思っている」
ミレーネは、ぎょっとして彼女を見る。
「えッ? でもそれって……」
「
レンカはニッと笑うと、続けた。
「でも、明確な理由が一つある。それはやっぱりお前の言葉を、お前自身を信じたいっていうことだ。これは、『
レンカの視線は、いつしか優しいものに変わっていた。
その言葉にミレーネは居住まいを正すと、口を開く。
「はい、お
しかしレンカは
「な、なによ……」
「いやいや、まったくお前ってやつは
そこでレンカは立ち上がると、こちらに向かって歩いてくる。
「さて、そろそろ戻らないとな。皆を待たせちまってる」
すれ違いざまにミレーネの肩に手を置くと、レンカはもう一度ニッと笑った。
「これからも期待してるよ──相棒」
3
『妖精の尻尾』と妖精たちの戦いは、見事なまでに
ナツと向かい合って
「あ、後ろ」
「ヘッ、その手はくわねぇぞ」
「いや、ホントだって、ホラ」
「あ?」
「──
ナツが振り返った瞬間、後頭部を杖で思い切り
「あ、ミレーネさん……」
バーナが次に気づき手を止めると、向き合っていたアイリスを始めその場にいた全員が徐々に手を休め、闘技場の一角に視線を集める。
「おぉ、やってるやってる」という明るい声と共に、やや胸を張って歩いてくる長身の鬼の当主とは対照的に、
やがてレンカが立ち止まり、少し遅れてミレーネも立ち止まる。
橙鬼館メンバー、『妖精の尻尾』、ラグリア、セリナ、カリン。全員の視線が集まる中、鬼の少女はおもむろに頭を下げた。
「皆……ごめんなさい。私の勝手な行動で試合を中断させてしまって、皆の気分を台無しにして。……
「──あぁ迷惑だな、迷惑極まりないッ!」
「ち、ちょっと、
リリスが顔面
「確かにアンタは
いまやってた
そこまでいうと頭を下げた姿勢のまま固く目を
「──そんなことで、
「え……?」
ゆっくりと顔を上げたミレーネに、ベルクスは周囲の妖精メイドたちを見回しながら続ける。
「アンタはウチの中でも特に優秀な
そこでベルクスはにやりと笑ってみせた。
「──その方が、
「…………。……フッ、そうね。アンタの言う通りだわ、ベル──ありがとう」
ルーシィたちがここ、橙鬼館に来て初めてミレーネの見せる満面の笑顔に、ベルクスは顔を逸らして
「いやなに、俺は、当然のことを言ったまでだ……」
そこで、彼の背後にこっそり忍び寄っていたリリスが彼の顔を
「あれ? もしかしてベルくん照れてる? にゃははははッ、かわいい」
「かわッ、テメ、なに言ってやがるこのクソネコッ」
「あー、ベルくん
「どっちでもいいわ!」
「あぁ……シェフ、素敵ぃ……」
「フン、良いこと言うじゃん、ベル
今回はシアンも、フロウの天然ぶりは放置することにした。
ひとしきりベルクスとリリスの掛け合いが終わると、メイドたちは徐々に闘技場の奥ヘと歩いていく。その背中を見ながら、ルーシィはいつしか笑みこぼれていた。
「一時はどうなることかと思ったけど、なんか良い感じに収まったんじゃない?」
「あぁ、だな」
近くにいたグレイも
その時、不意に「きゃッ」という悲鳴が上がって、ミレーネの姿が消えた。全員で動きを止め、そちらを見る。
どうやら落とし穴に落ちたらしい。
「ミレーネさん? だい、じょうぶ、か……?」
すると闘技場の一角からけたたましい笑い声が上がった。見ると、確か名前をリドラといった
「ぎゃははははッ、は、腹
「あぁもう、だから止めようって言ったじゃんリドラぁ」
「私が引っ掛かる予定だったんですか……」
泣きそうな表情であわてるアイリスと、困り果てるバーナ。
「終わったわね」
シアンが冷静なコメントを
ベルクスを始め穴を眺めていた全員の顔が、一様にビクリと引きつった。
「お、おい、アンタ、大丈夫、だよな……?」
「──私を
肩まで穴から乗り出した彼女の
「あわわ、落ち着いて下さいミレーネさんッ」
「アンタが落ち着きなさいレイン」
「あぁ……怒ってるミレーネさんも素敵ぃ……」
「フロウ、アンタはアンタでなに言ってんの……」
ミレーネはそのまま床を突き
「うわあッ」というシアンの悲鳴と、
リドラはその全身を闘技場の
「……殺さなかっただけ有り
と、その時、どこからか、カチャカチャとなにかを操作する音が聞こえる。
「それと……──
ミレーネの視線を追って背後を見ると、柱の陰に隠れて「いやー、リドラさんは良い仕事をしてくれましたよ。ミレーネさんの
次の瞬間、ルーシィの
「待ちなさいッ。そのカメラ、絶対にぶち壊すッ」
「やですよ、私の商売道具になにするんですかッ」
はい、というわけで前回の暗い雰囲気を見事
……と言いつつ、一方で納得がいっていない自分がいる今日この頃です。というのも今回までの数話は、鋭い読者の皆さんならお気づきかもしれませんが、文字数が初期の頃よりやや少なめになっています。
文字数を稼ぎたい気持ちはさらさらありませんし、それでも面白いと言って下さる読者様の言葉は嬉しい限りなのですが、結果としてスペース多用による文字数稼ぎをしてしまっているのもまた事実です。
そこで、次回にはちょっぴり素敵な
それでわ、しーゆーあげいん!
〈加筆修正一覧〉
1、3、7、9