FAIRY TAIL The Travelogues of Phantasm   作:水天 道中

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前々から書きたい内容は大まかに決まっていたのですが、更新作業がなかなか軌道に乗らず、いままで掛かってしまいました。楽しみに待っていて下さった読者の皆さん、申し訳ありません!
今回は皆さんお待ちかね(かどうかはわかりませんが)、久々の裏設定・小ネタ解説集です。全体的にこれまでのストーリーを圧縮したようなかたちになっているので、ネタバレが苦手だという方は第13話まで読んでから目を通すことを強く推奨します。


裏設定・小ネタ解説集(鬼)

・レンカについて

 第6話で遂に登場したスミレ山の統括者・レンカについて、本編では描写し切れなかった小ネタ要素などを紹介していきます。

 まず始めに、彼女のモデルである東方Projectの勇儀(ゆうぎ)と比べて、レンカの容姿のどこがどう違うのか伝わりづらかったと思うので解説しておきます。

 

 レンカの髪型は本編の中で『頭の両側から後方に向かって部分的に()ねた栗色(くりいろ)のロングヘアー』と描写していました。これに対して勇儀の髪型を自分の言葉で表現するなら『前髪を(ひたい)の真ん中で分けた金髪ロングヘアー』といった感じになります。

 どういうことかというと、勇儀が自分の髪を角の位置に合わせて分けている状態なのに対して、レンカは頭の横の髪を跳ねさせている。前髪は邪魔にならない程度に切り、あとは流れるに任せている、ということでした。また、勇儀の角は星マークが入っていることが大きな特徴ですが、レンカの角はただの赤い円錐(えんすい)形という違いもあります。

 

 服装については、勇儀からほとんど改変していません。体操服をモチーフにしたシャツと、ブルマの上に半透明のロングスカートを穿()き、足には下駄(げた)。手足に(かせ)は着けていません。

 

 続いて、レンカに関して作中で描写した小ネタ要素について説明していきます。

 まず『人外の種族関連情報No.2』では橙鬼館(とうきかん)に務める妖精(ようせい)メイド達の種族についてひと通り紹介しました。その中の土妖精(ノーム)の説明文に『大工担当だが、他のメイド等がすぐにものを壊してしまうせいで過労気味の妖精が後をたたない』と書かれていたと思います。

 この部分、よく読むと『他の妖精メイド等』となっていますよね。『等』ということは、妖精メイドの他にもものを壊してしまうヒトがいるというわけで、その筆頭がレンカということです。

 彼女はかなり大雑把(おおざっぱ)な性格ですから、あまり周囲のことを考えません。勿論、当主としての気配りはしっかりやっていますが、日常的な行動では力加減を間違うこともしばしば。例えば椅子(いす)に座る際に勢いをつけ過ぎて肘掛(ひじか)けを折ってしまったり、感情の(たかぶ)りに任せて(つくえ)(たた)いた拍子(ひょうし)に叩き割ってしまったり。

 土妖精たちは本来の大工仕事に加えて、そうした調度品の破損への対応にも追われ、慢性的に過労となってしまっているのです。

 

 ちなみにこの話、レンカは鬼の中でもずば抜けた身体能力をもつので特例ではありますが、他の鬼なら大丈夫というわけでもありません。鬼は人間と同じように身体能力や体質に個人差こそありますが、肉体の強度は基本的に皆高いです。

 よってアシュリーのような身体が弱い鬼でも、床に押しつけられると足を怪我(けが)する前に床にヒビが入る、といったことになってしまいます。

 

岩武踊(いわぶよう)

 土や岩を操る武法(ぶほう)。ジュラが使う土系魔法と違い、引力を発生させて浮き上がった地面の破片を操るような技が多く、拳一つで簡単に地面を破壊する腕力をもつ鬼と相性が良い。

 精神を研ぎ澄まして大地と一体となることで、より大規模な技を発動できるようになる。

 ちなみにナツとの戦いでは、自分の手の内を隠しつつ彼の力量や手の内を探るために体術で床を破砕してからその破片を操っていましたが、足場が傷ついていない状態でも技を発動することはできます。

 

砂礫球(されきだま)

 地面に手をかざし、周囲の地面の破片を球状にまとめて撃ち出す。球の大きさは自在に変化させることができ、大きさに比例して威力が上がる。

 また、以下のような応用が出来る。

 

1.(てのひら)の上に留めて相手に(たた)きつけ、相手ごと吹き飛ばす。技の効果の由来は「NARUTO疾風伝」のうずまきナルトの「螺旋丸(らせんがん)」。

 

2.自分の頭上に保持した状態から撃ち出す。同時に保持できるのは九個までで、それぞれを個別に操作することも出来る。

 

礫機銃(つぶてきじゅう)

 小さな紡錘(ぼうすい)形の地面の破片を大量に放つ。

 また、以下のような応用が出来る。

 

1.浮かせた破片に「破空拳(はくうけん)」(後述)を打ち込む。通常時より速度と貫通力が上がり。破片を避けても「破空拳」の空圧が相手を捉え吹き飛ばす。

 

・大地の衝角(しょうかく)

 地面を巨大な円錐(えんすい)状に隆起させる。連続で放ったり同時に複数放つことができ、視界すべてが攻撃(こうげき)範囲。

 

天蓋崩落(てんがいほうらく)

 両腕を上げて地面の破片を巨大な円盤(えんばん)状にまとめ、腕を振り降ろすと共に上空から相手に落とす。

 

[山妖式戦闘術]

 レンカが長年の経験から編み出した、鬼の怪力を最大限に活かした特殊体術。基本的な打撃技に加え、魔法(まほう)にしか見えないような絶技も存在する。

 

破空拳(はくうけん)

 超音速の正拳突(せいけんづ)きで空気を圧縮して撃ち出す。約五十メートルという驚異的な射程を誇る。アッパーカットで軌道を上空に向けることも可能。

 技の効果(ただし最後以外)の由来は「NARUTO疾風伝」のマイト・ガイが使う体術「八門遁甲(はちもんとんこう)の陣」奥義「夕象(セキゾウ)」。

 

無刀(むとう)居合(いあ)

 高速で手刀(しゅとう)を振って鎌鼬(かまいたち)を発生させる。射程は約二十メートルと「破空拳」ほどではないが、横に拡がりながら飛んでいく為、水平に放つと広範囲を切断することができる。

 

岩津波(いわつなみ)

 足下の地面を蹴りつけて粉砕し、そのまま脚を振り抜くことで衝撃波によって前方の地面すら砕きつつ、無数の破片を巻き上げて相手に叩きつける。

 

業火扇(ごうかせん)

 手を掌打(しょうだ)の形にして(ひじ)を曲げ、腕を高速で斜めに振り降ろすことで腕全体と空気との摩擦熱により炎を生み出す。炎は腕を振ったことで発生した風を受けてさらに燃え上がり、(おうぎ)状に展開しながら進んでいく。

 

 

・ミレーネについて

 次は、第5話から登場し、ストーリーを一気に盛り上げることに一役買ってくれたであろう彼女、ミレーネについての小ネタ解説です。

 

 まず、彼女の容姿について。ミレーネの容姿はTwitterの方でキャラクター作成アプリ「カスタムキャスト」を使って自分のイメージを再現したものを投稿しています。

 容貌のイメージはほとんど再現できたという自負があるのですが、問題は角。作中では「左右非対称の流線形で紺色(こんいろ)」ということしか描写されておらず、カスタムキャストの再現度にも限界があったのでここに注釈を入れておきます。

 

 ミレーネの角のモデルは、第5話の後書きでも述べた通り、ポケモンのアブソルがメガシンカした姿「メガアブソル」の角です。ここで一度あのポケモンの姿を思い出して頂きたいのですが、あの角、平面的でしたよね?

 そうなんです。ミレーネの角は、他の鬼と比べて奥行きが少なく、板のようになっています。この設定が直接本編に関わってくるということは無いはずなんですが、かなり(こだわ)ったところですから、カスタムキャストの再現画像や作中の描写だけでは誤解していた、という方はここで覚え直して頂けると幸いです。

 

 続いて、ミレーネに関して作中で描写した小ネタ要素について、もしかしたら伝わっていないかも、というところを解説していきます。

 まずはFT恒例のサービスシーン、第6話で描写された入浴シーンについて。この時、ミレーネが何を考えて居心地悪そうにしたのか、という点です。

 この部分はそれぞれのキャラクターの位置関係をしっかり考えて作ったので伝わっていると思いたいですが、イメージができていない方向けに少し注釈を入れます。

 説明を始める前に、イメージを助けるために手元に文房具か何か小さいものを用意してください。そして、その一つひとつを各キャラに見立てて並べると簡単に状況が把握(はあく)できるはずです。

 最初、ルーシィの右隣(みぎどなり)にミレーネが座り、二人でスミレ(やま)のマークについて話していました。話がひと区切りついたところでルーシィの二つ左隣からエルザが会話に参加します。

 続いてミレーネのさらに右隣に、事務整理を終えたレンカが座りました。さて、ここまでの情報をまとめるとどうでしょうか? 右から順番にレンカ、ミレーネ、ルーシィ、一つ飛ばしてエルザと並びます。あとは彼女達の体型に注目すれば……わかりましたね? つまりはそういうことです。

 

 また、この後のシーンでルーシィとエルザの間にはウェンディが居たことがわかりますが、ここについても少しだけ注釈をば。

 男湯のシーンに移行し、ナツが例によって記憶力ネタを披露してくれましたが、その際ウェンディがなんとなく自分の話をされていることに気づいていました。この部分は、漫画やアニメでよくある『離れた場所で自分の噂話(うわさばなし)をされていることは何故(なぜ)か察知できる』という意味しか含んでいません。

 橙鬼館(とうきかん)は全体が石造りの洋館で、『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』にある大浴場のように男湯と女湯で会話できるような、部分的に空間が繋がった構造ではありません。更に、ウェンディが滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だから他人(ひと)よりも優れた聴力で聞き取ったということもないので、少なくともこのシーンに限っては深読みする必要はないです。

 

 次は、ミレーネの台詞(せりふ)回しについて、(こだわ)った部分の紹介です。

 鬼は酒と勝負事が大好きで、(うそ)と悪魔が嫌いという設定でしたが、この『嘘が嫌い』という部分を印象づけるために細かい表現を工夫しました。

 鬼は嘘や嘘をつく者を嫌いますが、それはなにも『真実と異なること』を徹底的に嫌悪するという意味ではありません。第11話のミレーネの台詞が良い例で、彼女たちは嘘と冗談(じょうだん)の区別をしっかりつけて話していることが読み取れます。

 また、作中で度々『嘘を()く』というように漢字表記を使っているのも、他人を(だま)し害をもたらす『嘘』に対する彼女たちの嫌悪感を込めたからです。

 ちなみにミレーネの初登場時にルーシィのモノローグで入れた『鬼が嘘を嫌う種族であるというからには、ハッタリではないのだろう』という一文も、鬼が嫌うという『嘘』の許容範囲をルーシィたちが理解し切れていないことに加え『ハッタリも事実と異なる以上、鬼が仕掛けるはずはないだろう』という推測の意味を込めることで、前述したような後々の細かい描写の印象を逆説的に強める効果を(ねら)いました。

 

 最後は、第10話における試合の余波で遂に橙鬼館が崩壊(ほうかい)し始めるシーンの、ミレーネの心情描写についてです。

 このシーンでミレーネが(あや)のことを放置した一番の理由は当然、第9話で自分の()ずかしいシーンを激写されてしまったことへの仕返しですが、裏の意味もあります。

 それに深く関係しているのは『設定集No.4』で述べていた、橙鬼館メンバーからの文に対する信頼度です。文は常時ヘラヘラしており、言動の端々どころかそのすべてから胡散臭(うさんくさ)さが溢れ出ているような掴みどころのないキャラクターです。しかし、記者としての信念はしっかりともっており、時にその情報収集能力は橙鬼館の興廃すら左右してきたといっても過言ではありません。

 それでも普段のいい加減な言動が(しゃく)(さわ)るということで鬼の皆さんから毛嫌いされているわけですが、ミレーネもあの場で本当に文が危険な目に遭ってもいいと考えるほど冷酷ではありません。

 

 では彼女が胸中で(つぶや)いた『まぁ、いいか』という言葉の真意とは何だったのか。

 簡単にいうと、あの程度のことで(あや)が負傷するなどあり得ない、というのが正解です。

 文を始めとしたスミレ山に暮らす妖怪たちは、過去にも何度か橙鬼館が崩壊しかねないほどの大惨事を乗り越えてきたわけで、それはつまり、あの場で放置された程度で大事に至るようなら、そもそもいま現在無事に息をしている道理がない、ということになります。これはそういった過去の辛い経験が裏付ける事実であって、ミレーネ個人の感情による判断ではありません。

 また、それでも文はあの時、余計な行動ができないようミレーネに(しば)り上げられていました。しかしそこはそれ。彼女の隣にはミレーネが信頼を置くメープルが座っているのです。たとえメープルが危険に見舞われても、目の前で縛られている文を置いて逃げることは絶対にしない。ミレーネはそこまで計算に入れた上で、縛り上げたままの文を放置しても問題ない、と判断していたわけです。

 長々と裏設定を語ってみましたが、結局のところミレーネは『あのカラスうっとうしいから少しこらしめてやろう。本当に危なくなったらメープルもいるし大丈夫』程度にしか考えていません。自分もあのシーンは単純にネタとして楽しんで頂ければそれで良いと思っています。

 

霧雨(サイレントレイン)

 水分を操る武法。ジュビアが使う「水流(ウォーター)」と違い、水の密度や圧力など、水そのもの以外も操ることができる。

 ミレーネは自身の使う武法に絶対の信頼を寄せており、「この世に高圧の水ほど硬い物質はない」というのが彼女の座右の銘。

 空気が乾燥しているほど負担は大きくなってしまうが、ごくわずかでも空気中に水分があれば使用できる。

 

 ミレーネの武法については第11話でほぼ説明し切っていますが、小ネタ解説を本編でやるわけにはいかないということで、改めてここにまとめ直します。

 

雲散霧消(ウォーターバニッシュ)

 対象物が含む水分を瞬間的に沸騰(ふっとう)、蒸発させる。使い方によっては水や氷、その他水分を含むものを操るあらゆる魔法(まほう)及び呪法(じゅほう)を打ち消すことができる。基本的に無生物に対してしか使用できない。

 

 第11話の橙鬼館(とうきかん)メンバー紹介のコーナーで唯一(ゆいいつ)説明できていなかった技ですね。この技は対象に含まれる水分の温度を操作しているので、対象が水分を含んでさえいれば、その性質に関係なく無力化することが可能です。

 

濃霧帯(ホワイトアウト)

 空気中の水分の密度を上げることで、一定の範囲内に濃霧を発生させる。

 この濃霧は武力(ぶりょく)を通じて術者の触覚と連動しており、術者は技の効果範囲内の地形などを動くことなく知ることができる。橙鬼館の住人以外がスミレ山に入ると必ず発生する謎の濃霧の正体。

 また、以下のような応用ができる。

 

1.(てのひら)サイズの球状に圧縮して足下に投げつけることで目眩(めくら)ましに使う。

 

2.応用1の状態から密度を下げて空気を加湿する。ある程度狭い室内でのみ有効。

 

白霧刀(はくむとう)・シラナミ

 水に凄まじい圧力をかけることで、細い円筒(えんとう)形の氷の(つか)と、同形の超高水圧の水の刀身をもった剣を造り出す。円筒形の刀身は(やいば)をもたないが、その水圧はあらゆる対象物を切断破壊する。ミレーネの座右の銘の由来にして、彼女の愛剣(あいけん)でもある主武装(メインアーム)

 技の効果の由来は「SAO」のGGOでキリトが使う武器「光剣(こうけん)」。

 

霧衣迷彩(ミストローブ)

 水蒸気を全身にまとい、任意に光をねじ曲げて辺りの風景に溶け込む、()わば光学迷彩のような技。足跡だけは消すことが出来ないが、足音を殺すことで驚異的な隠密(おんみつ)性を発揮する。また、この技は使用する武器(ぶき)にかけることも可能。

 『濃霧帯』の霧の中で侵入者を追い払う「見えない何か」の正体はこの技を使っている時のミレーネ。

 

水滴千里眼(ドロップスコープ)

 空気中の水分を小さな水の球に圧縮して空中に(とど)めることで、それを通して遠くを見通す。一つだと百メートル前後が限界だが、複数を同時使用することでより遠くを見通したり、光の屈折を利用して同時に二つ以上の方向を見ることができる。

 主に警備の仕事用に使用する技で、橙鬼館の住人以外がスミレ山に入った時点で必ず『濃霧帯』を発動できるカラクリの種。最高で約二キロメートル先の対象物を見分けることが可能。

 

 

・バーナについて

 続いて、ミレーネと同じく第5話から登場し、彼女とは正反対のキャラクター性で鬼の多様性を体現してくれたバーナについての裏設定解説です。

 彼女の容姿はTwitterの方でキャラクター作成アプリ「カスタムキャスト」を使って自分のイメージを再現したものを投稿した他、2020年11月時点現在のTwitterアカウントのアイコンにも使ったりしています。

 そんな彼女の容姿について、カスタムキャストの再現度の限界により伝え切れていない部分の注釈を入れておきます。

 

 彼女の髪色の設定は、東方Projectの(ひじり)をイメージして頂けると理解が早いと思います。頭頂部から耳辺りまでは黄色もしくは金髪で、そこからグラデーションが始まって一気に赤色になる、というカラーリングです。

 第7話のエルザとの試合で、本気を出したバーナの髪が逆立(さかだ)って炎のように見えるという描写をしましたが、実はバーナの角と髪色の設定は、このシーンを描きたいがためだけに作ったといっても良いです。

 細かいことを言いだすと、容姿モデルである東方Projectの小悪魔と決定的に違う外見的特徴が欲しかった等ある程度は動機づけが出来ます。しかし正直なところ、第11話までの彼女の描写で最も力を入れたのはあのシーンであり、そこに向けて設定を組み上げました。

 

 また、同シーンの描写で特に(こだわ)ったのは、バーナの武法の特性が判明した直後の打ち合いです。

 この部分は展開のスピード感を重視して詳細説明を大胆に撤廃し、バーナが造り出した武器(ぶき)の名前だけを羅列しましたが、動きの詳細なイメージはしっかりもちながら描いていました。

 順を追って簡単に説明すると、

 

 バーナが(やり)を消して『千本刀(サウザンド・ブレード)』を発動、左手を再びフリーに。

 

→エルザの突進に合わせて、右手の剣と左手に造り出した太刀(たち)で二連続の()り降ろし。

 

→左手首を返して斜めに斬り上げ、同時に引き戻した右手の剣に武力を注いで大剣(たいけん)に変更、刺突(しとつ)

 

→エルザが二の太刀を防ぎながら刺突をかわし、(ふところ)に飛び込んできたところで太刀をナイフに変更。高速の連撃(れんげき)で押し返す。

 

→十分な間合いを確保したところで両腕(りょううで)を振り上げてナイフと大剣を融合、戦金槌(ウォー・ハンマー)に変えて振り下ろす。

 

→戦金槌を引き戻し、更に距離を取ろうと後退するエルザに向かって踏み込みつつ長槍に変えての刺突。

 

→エルザに(はじ)き上げられた長槍の穂先(ほさき)が慣性力に流されるのに逆らわず振り上げる動作に転用し、穂先を薙刀(なぎなた)に変えて斬り下ろす。

 

→更に踏み込み距離を詰めながら薙刀の穂先を斧槍(ハルバード)に変更、右手首を返して横一文字に()ぎ払う。

 

といった流れになります。バーナはこのように鬼の膂力(りょりょく)を活かした、人間では実現不可能な連続攻撃を得意としているのです。

 ちなみにバーナは様々な武器を造り出して戦いますが、人間なら両手を使わなければ扱えない大型の武器でも、鬼の膂力をもって片手で充分振るうことができます。

 

[フォージ]

 超高温のマグマから金属製の様々なものを造り出したり、マグマのような高熱を操る武法(ぶほう)。前者は造形魔法に似ているが、一度造り出したものをマグマに戻して直接別のものに造り変えたり、造り出したものの形状を保ったまま一部分だけをマグマに戻したりできる。

 また、造り出す金属は(すさ)まじく硬い上に伸縮自在という特殊な性質をもち、レンカの髪はこの金属で造った(はさみ)でしか切ることができないらしい。

 

 フォージの設定を初めて読んだ時、読者の皆さんの中には『マグマ自体を攻撃に使えばいいじゃないか』と思った方もいらっしゃると思います。この点については、はっきり言って個人的な(こだわ)りによるところが大きいと思います。

 しかし一応「造形魔法とは似て非なる武法」を作りたいという思いが最初にありました。それから、バーナの実力は鬼の中では最弱クラスです。故に『マグマを操る』という設定にしてしまうと余りにも強くなり過ぎるから、という論理的な理由もあることをご理解頂けると幸いです。

 

千本刀(サウザンド・ブレード)

 自分の周囲に浮かべた無数の小さなマグマの球からナイフを造り出して一斉(いっせい)に放つ。

 技の効果の由来は「東方Project」の咲夜(さくや)の投げナイフ(能力使用時)。

 

熔炎の鎧(バーニング・スケイル)

 体の各所にプレートタイプの防具をまとう。防具の表面をマグマに戻すことで、直接攻撃をした相手に逆にダメージを与えることもできる。

 

灼熱の光環(ブレイズベール)

 立っている地面が溶けるほどの熱波を体から放ち、水分を含むものを操るあらゆる魔法(まほう)及び呪法(じゅほう)を打ち消す。

 また、以下のような応用ができる。

 

1.高熱で相手の武器を変形させて使用不能にする。

 

2.飛び道具や遠距離系の魔法及び呪法を無力化する。

 

烈火岩鎚(ボルカニック・ボム)

 造り出したメイス系武器の頭部表面をマグマに戻し、振り降ろした勢いで(つか)から切り離して飛ばす。

 

火炎の一薙ぎ(フレイム・リーパー)

 表面をマグマに戻した状態の三節棍(さんせつこん)を振って対象物を切断する。三節棍は遠心力で伸びるため、元の全長の何倍もの射程距離をもつ。

 技の名前(漢字)と効果の由来は「七つの大罪」のバンが使う技「死神の一薙ぎ(アサルトハント)」。

 

 

・アシュリーについて

 今回最後に小ネタ解説をするのは、橙鬼館(とうきかん)に暮らす鬼のうち残る一人、アシュリーです。

 彼女の容姿もミレーネやバーナ同様に「カスタムキャスト」で再現したものをTwitterの方に投稿していますが、他の二人とは違いかなり上手くイメージをかたちにできたと思います。ただ、やはりそれでも注釈を入れておきたい部分が無いわけではありません。

 

 まず、彼女の容姿はほぼ完全に、モデルである東方Projectのパチュリーを改変せず使用しています。寝間着のような服には原作のパチュリーと違って縦縞(たてじま)が入っていたり、顔の両側に垂らした髪を(くく)るリボンの数や色が違ったりと細かい部分で違いを出そうとはしてみましたが、無数の二次創作の設定によって様々な容姿が存在する東方キャラの前では誤差範囲に収まってしまうようですね。

 しかし、原作のパチュリーとの明確な違いはしっかりもたせてあります。まずは第6話の後書きでも述べた彼女の角。東方Projectの萃香(すいか)の角の小型版と説明していたこの角には、彼女と違ってリボンを着けていません。そしてここからがアシュリーの容姿について最も(こだわ)った部分。

 

 と、本題の前にほんの少し予備知識の紹介をしておきます。

 自分がたびたび創作のお世話になる一大コンテンツ『東方Project』。「神主(かみぬし)」の愛称で親しまれるZUN氏を原点に、無数のキャラクターや物語、そして派生作品を世間に送り出し続けるこのコンテンツの原作において、ZUN氏が生み出した独創的な帽子(ぼうし)、通称『ZUN帽』というものが存在することを、読者の皆さんはご存知でしょうか?

 有名どころですと、橙鬼館のモデルとなった紅魔館(こうまかん)の当主たる吸血鬼・レミリアやその妹のフランドール、レミリアの親友にしてアシュリーのモデルとなった魔法使い・パチュリーのナイトキャップ等が挙げられます。

 そしてこの三人が身に着けるナイトキャップ。その見た目からドアノブカバーに例えられるこれらですが、レミリアのものは単純な円形なのに対して、パチュリーのそれは両サイドに(ふく)らみをもったデザインとなっています。

 パチュリーは魔法使いですから、容姿は人間と変わりませんし、この膨らみもただの装飾でしょう。しかしこの設定を知った時、自分はこれを有効活用する方法を思いつきました。

 

 第9話で少し触れましたが、橙鬼館に暮らす鬼たちはその昔、故郷を追われて大陸の各地を放浪(ほうろう)していました。

 いかなヒトとヒトならざる者たちが当たり前の(ごと)く共存する時代といえど、両者は上手(うま)()み分けをしていたため、多くの人間が暮らす街中を鬼がうろついていては、人外というだけで目立ってしまいます。人間とは明らかに異なる性質をもち、容姿も特徴的な彼女たちは時に目撃されただけで恐れられもしたことでしょう。それ故に、原則として素性は隠さなくてはならない。特に自分達がヒトではないことを喧伝(けんでん)してしまう角はなんとしても見られてはならないのです。

 ミレーネは自身の武法(ぶほう)によって光を任意にねじ曲げ、角を隠すことができますが、アシュリーの場合役に立ったのは、先ほどから説明している帽子でした。

 角をもつキャラクターが帽子を被る場合、恐らく角に掛からないように被る姿をイメージされる方が多いと思いますが、アシュリーは違います。

 先ほど紹介したパチュリーの帽子のようにサイドに膨らみをもったデザインであることを活かし、そこを角の収納スペースにしているのです。これこそが、彼女の容姿設定に盛り込んだ小ネタで自分が特に拘った部分だというわけでした。

 

古代図書館(エンシェントアーカイブ)

 情報を武力で圧縮し、管理したり対象者に与えたりする武法。ヒビキが使う「古文書(アーカイブ)」と同じくホロキーボードのようなものを呼び出すことで情報の検索や分析ができる。対象者にただ情報を与えるだけでなく、情報を実体のある本の形にすることも可能。

 また、本から情報を読み取ることもできるため、図書館で暮らすアシュリーと相性がいい。

 

魔法(まほう)

 アシュリーが独学で学んだ魔法。彼女が肌身離さず持っている巨大なハードカバーの魔法書(まほうしょ)には、一つにつき一種類の属性変化ができる「魔法石(まほうせき)」や、どの属性にも分類できない特殊な魔法が無数に記録されている。鬼であるアシュリーが魔法を発動するには欠かせない、彼女の半身ともいえる本。

 ちなみに「魔法石」の色は基本的に、妖精の服のベースカラーと一致させてあります。そう考えてから読み返して頂けば楽に情報を整理できるでしょう。

 

・浮遊魔法

 対象物を浮かせて操る。使用する魔法の中では最も使用頻度が高い。

 

・思念伝達魔法

 言葉や映像などを伝える魔法。他者の念を術者を介して相手に伝えることもできる。

 

・空間魔法

 空間を操作する魔法。ある程度(せま)い空間であればその時と場合に応じて、細かい環境すらも一瞬(いっしゅん)で、それも現実に忠実に再現することができる。

 魔法の効果の由来は「ブラック・ブレット」の司馬(しば)重工のVR訓練施設。

 

 空間魔法については、作中で描写できなかった部分があるのでここに注釈(ちゅうしゃく)を入れておきます。

 第11話の試合終了後のシーンで、橙鬼館の修繕(しゅうぜん)作業について簡単に説明しましたが、その時の文面は以下のようなものでした。

 『ラグリアが時間を巻き戻し、更にアシュリーが復元の魔法をかける、という二段構えが図らずも完成していた』。

 しかし、ここまで『裏設定・小ネタ解説』を読んでくださった皆さんなら、この一文に隠れた違和感を見つけられるのではないでしょうか? 『具体化(リアライズ)』の特徴を改めて思い返してみて下さい。そう、橙鬼館ほどの大きな建物を修復する作業は、ラグリアには荷が重いのです。

 

 このような表現にした理由は、グレイを一人称視点にしたことによるラグリア本人との感覚のズレを描写したかったからです。グレイはこの時、他の人達と共にアシュリーとラグリアの作業を見守っていましたが、当然ながら二人がどのタイミングで魔法を使っているのかずっと注視していたわけではありません。

 よって説明文にグレイの主観が混じり、ラグリアが主導で作業を進めたものと思い込んでいることを演出していたのです。この思い違いはカリンとセリナ、そしてナツたち他の『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』メンバー全員にも同様にいえることです。

 実際のところ、この時ラグリアは、アシュリーの空間魔法だけでは手に負えない、細々(こまごま)した部分の修繕しか担当していません。その中にはナツとレンカの試合中に壊されてしまったバーナのワインセラーもちゃんと含まれており、彼女は無事、自分の大切なコレクションを取り戻すことができていたのです。

 

 

 最後に、ここまで説明してきた四人の鬼達の位置づけをまとめておきます。

 まず、ミレーネは特に『鬼』という種族の、人間とは異なる価値観にフォーカスを当てています。発見した侵入者には徹底して冷徹な態度を貫きますが、門番として館を守る使命を念頭においた上で相手がみせた誠意にはきっちりと応える。

 更に、勤務中のストイックな姿勢が目立つミレーネですが、部下に対しては個々人の性格を見極めた上で向き合うため寛容(かんよう)な態度をみせることも少なくなく、水妖精(ウンディーネ)を始めとした妖精(ようせい)メイド達から尊敬の眼差しで見られています。

 

 また、戦闘(せんとう)時の描写では敏捷(びんしょう)性を強調しました。その機動は視認すら難しく、移動音もほとんどしないため、彼女の武法(ぶほう)と合わさると攻撃(こうげき)の予測は困難を極めます。

 ちなみに、足音を殺す技術にかけて彼女の右に出る者は橙鬼館(とうきかん)内にはおらず、ミレーネも『(くつ)()いたまま音を立てずにフローリング等の硬い足場を走ることもできる』と自負しているレベルです。

 

 次にバーナは、メイド長としての職務を(まっと)うしようとする真面目(まじめ)さや、どんな相手にも優しく接する包容力など、ミレーネと対照的に言動の端々から人間味を感じられるように意識しました。

 しかしその穏やかな物腰(ものごし)は時にメイド達の気の緩みを招いてしまい、彼女の気苦労はいつも絶えません。気弱な部分もあって頼りない印象が強いですが、それらのキャラクター性はミレーネがつくり出すシリアスな雰囲気をコミカルさで中和し、バランスをとる役割を果たしていると思います。

 また、戦闘描写では、平常時と異なり気魄(きはく)(あふ)れる姿に力を入れました。おどおどした普段の態度から一転し、凛々(りり)しい表情を見せたあのシーンは皆さんの印象に強く残っているのではないでしょうか。

 

 次にレンカについては、モデルとなった勇儀(ゆうぎ)の立ち振る舞いを可能な限り忠実に再現することに拘りました。がさつで豪快な思考回路をもちながら、その言動にはどこか愛嬌(あいきょう)があり、類稀(たぐいまれ)なるカリスマ性で個性豊かな橙鬼館の住人たちをまとめ上げる。

 

 そんな彼女の戦闘描写は、正に鬼の頂点に君臨する彼女に相応(ふさわ)しく思い切りぶっ飛んだものを目指しました。第10話と第11話で描写した試合の白熱ぶりから、少しでも原作フェアリーテイルに近いものを感じとって頂けていたら、これほど嬉しいことはありません。

 オリキャラ達ばかりがスポットを浴びて未だに活躍の場がほとんど無い主人公・ナツですが、せめて原作を知っている方には、自分が彼の勇姿に込めた想いが伝わっていることを祈っています。

 

 最後に、アシュリーについて。

 彼女は体が弱く、鬼らしい特徴をまったくもっていません。ネタ要員としての性質が強い設定は、初めから(ねら)って作ったわけではありませんが、それでもその意外性でもって、自分が組み上げた鬼のイメージをあえて壊し、物語にコミカルさを加えることはできたと思います。

 戦闘も得意ではないので描写が少なく、そこに込めた想いを語ることも現時点では難しいですが、今後のストーリーで活躍するシーンは幾らか考えてあるのでご期待下さい。




以上、裏設定・小ネタ解説集第2弾でした。
今後の『裏設定・小ネタ解説集』は『設定集No.3』の後書きでも述べた通り、橙鬼館(とうきかん)の住人たちについて順を追ってまとめていくことになります。
しかし、活動報告にてお知らせした現在計画中の幕間(まくあい)増量企画を進めていく内に、そちらの方を先に投稿した方が伝えられることが多いと思い至りました。
よって今後の『裏設定・小ネタ解説集』の更新は一旦お休みにして、本編の新しいお話の執筆に注力したいと考えています。
これまでの期間でかなり構想はまとまってきているので、いままでの本編と同程度のクオリティでお届けできるように頑張ろうと思っています。読者の皆さんはいましばらく気長にお待ち下さい。

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