FAIRY TAIL The Travelogues of Phantasm 作:水天 道中
まずは、第17話から登場したスティングについて。
前回18話において『
『
次に、第8話にて語られたミレーネの
というのも、以前の文面ではどうにもリズムが悪く、格好がつかないと前々から気になっていたからです。設定集の該当箇所についてもすでに修正済みです。
それでは本編、スタートです!!
「だいたいの事情は手紙で読ませてもらったよ。今回の一件、僕たちも力を貸そう。なにか手伝えることがあったら何でも言ってほしい」
ラグリアの言葉に、ルーシィは顔をほころばせた。
「本当ですか? それじゃあ……」
現状をかいつまんで説明し、スミレ
「わかった、それなら僕が届けに行ってくるよ。返事を書き上げるまでは、ギルドの
「よろしくお願いします」
「──お、おい、ルーシィ?」
背後から呼びかけられて振り向くと、メストが困惑し切った表情でこちらを見ていた。
「……あ」
そこでようやくルーシィも気づく。成り行きでラグリアに任せることになったが、つい先ほど、メストが手紙を届けると決まったばかりではないか。
しかし訂正しようにも、ラグリアはすでにマカロフと話し込んでいるし、労力や時間的な問題を考えても彼の方が適任だろう。
そこまでの一連の思考を面と向かってメストに説明するわけにもいかず、ルーシィは苦笑とともに謝罪の意を込めて彼に手を合わせた。
「なんだよ、そりゃあ……」
事態の流れに置き去りにされたメストが
「
「
「なんだ、知っていたのか」
「当然だ。新聞とか読んでないのか? あー、確かにあの
鼻からひとつ息を吐くと、ルーシィが駆けていった先、赤黒い髪の男性の背を眺めながら続ける。
「ラグリア・オズワルト……あの若さで聖十大魔道に選ばれるとは、相当な
1
「いや、それにしても『
改めて詳しい状況説明を受けたラグリアが、苦笑とともに
それに対し、メイビスは興味
「ウォーロッドを知っているのですね」
「ええ、
「そういえばそんなこともあったのう」
ラグリアの言葉に、マカロフもうんうんと
そこで表情を改めると、ラグリアは二人をまっすぐ
「それで、本日こちらにお
マカロフが
「それは、こちらとしては
彼女の視線を追うと『妖精の尻尾』のメンバーたちに囲まれ、なにごとか言葉を
「はい。カリンはトレジャーハンターですが、
メイビスは一度目を伏せると、静かな
「……わかりました。あなたの判断を信じましょう。八代目も、それで構いませんね?」
マカロフも目を閉じたまま考え込むように
「──ならぬ。これは戦争、
ラグリアは
「──と、言いたいところだがな……」
「え?」
顔を上げると、マカロフは先ほどの厳しい
「お前さんの強さはワシもよう知っておる。争い事を好まんお前さんがそこまでいうからには、なにか思うところがあるんじゃろう。構わん、お前さんのしたいようにすればよい」
ラグリアは深い
「ありがとうございます……ッ」
彼の
「あの……つまり、どういうこと?」
ラグリアはこちらに向き直ると後ろ頭を
「僕が
アルバレスとの戦争のときもそうだ。『イシュガルの四天王』が、この大陸を守るため
「でも、それはラグリアさんのせいじゃ──」
「だからッ。今度こそ、
ルーシィはラグリアの瞳に強い光が宿るのを見て、言葉を失って立ち尽くす。
「カリンとセリナについても心配は要りません。彼女たちは十分に強い。もし危なくなっても、僕なら二人を守りながらでも戦えるはずです」
メイビスが、大きくひとつ
「そうと決まれば、各地の
「しかし……こんな
マカロフの言葉にも、少女は
「なんとしても信じてもらうのです。ここでなにも手を打たず、敵の作戦決行を許せば、
そこでメイビスは表情を
「なによりもまず、ギルドを直すところからですね」
「あ、そのことなんですが……」
ラグリアが軽く手を上げる。
「スミレ
三十分後。
「この辺りのはずなんだけど……」
ルーシィが書き上げた手紙を受け取ったラグリアは独り、スミレ山の
といっても正直、現在地についての確証はない。
周囲の高木が視界を
ミレーネの能力については初対面時に簡単な説明を受けているため、ラグリアもある程度は仕組みを
だが──。
ラグリアは立ち止まり、顔を上向ける。
現在、霧は出ていないが、問題はなぜ出ていないかということだった。
これでは、ミレーネがまだこちらに気づいていないだけなのか、気づいたうえで知人だからと放置されているのか、そもそも自分がいまいる森がスミレ山の麓ではないのか判断ができない。
やはり、なにかしらの合図が必要だろうか。そんな事を考えつつラグリアが
「あややや。どちら様かと思えば、
聞き覚えのある声がして振り向くと、頭に赤い
「おや、君は確か、この間の親善試合で実況をやっていた……」
「はい、スミレ
元気一杯に敬礼してみせる
「そうだった。それに、今回も世話になったね」
「と、いいますと?」
「僕の家とカリンの家、それから『
すると文は照れくさそうに頭髪を
「いやぁ、これは恐れ入りました。まさかすべてお見通しとは。
彼女の
「大したことじゃないさ。スミレ山では、あんなことができるのは君ぐらいなんだろう? 手紙の内容からちょっと類推してみただけだよ」
「なるほど。それで、本日はどんなご要件で?」
その問いに「あぁ」といってコートのポケットから一枚の
「手紙の返事を届けにきたんだ。それから他にも頼みたいことがあるから、案内してもらえるかな?」
文は笑って大きくひとつ
「お安い御用です。それでは──」
そういった
確かにこの速度なら、大抵の人間の目に留まることはないだろう。あるいは敵対勢力に存在を感知する
そこまで考えて、ラグリアはおや、と思う。
と考える間もなく
「すみません、思わず飛ばしてしまいました。では、改めてついてきてください」
苦笑とともに頭を下げる文に、笑って首を振る。
「──あら、私がいつ代理を頼んだのかしら?」
その時、
「あッ、いえッ、これは、その……ッ」
「
鴉天狗の女性に冷たい視線を送っていたミレーネは、だがそこでふっと笑みこぼれると、こちらに向き直って
「話はたったいま聞かせてもらったわ。ウチの当主がお待ちかねよ」
ミレーネに通された部屋の、他より一段と深い
正面の執務机に
その脇には、黄色のグラデーションが入った派手な赤髪に白黒のメイド服の女性が
彼女たちの表情は暗く、部屋の中には
ラグリアから手紙を受け取った
「ひとまず、返事を届けてくれたことに礼を言おう。こんなにも早くに、ご苦労だった。それで、あんたがこれを持ってきたってことは、もう『
「
「そうかい、それならあたしらも、当面は落ち着いてよさそうだな」
ラグリアの後半の言葉に、レンカはバーナと二人で顔を見合わせ、かすかに口元をほころばせる。
「それで、僕からも一つお願いが」
「どうした?」
「ギルドの
「なんだ、そんなことかい。ちょっと待ってな。──アシュリー、お客様がお呼びだ」
レンカが軽く笑って明後日の方向に呼びかけると、彼女の
ナイトキャップのような
「あら、この間の大
「アシュリー、
事情を説明しようとした当主を軽く手で制すると、鬼の
「大方の察しはつくわ。事件の
ラグリアが内心で舌を巻いていると、小さく口を開けたまま固まっていたレンカが爆笑し始めた。
「ははははは、こりゃ参ったね。見事だアシュリー、その通りさ。これからそこのラグリアと
「承ったわ。じゃあ、地下図書館まで来て
「お客様をわざわざ歩かせるわけ? あなたがこっちまで出てくればいいと思うんだけど」
不満げなミレーネの指摘にアシュリーは
「あ、コラッ」
ミレーネはひとつ
「レンカ、アシュリーのトレーニングのスケジュールだけど、今週は倍にしても構わないわね?」
それに対して、レンカは苦笑を漏らす。
「無いよ、そんなものは。お前が勝手に組んでるだけで。まぁなんだ、その……
そこでラグリアも苦笑しつつ割って入った。
「ま、まぁまぁ……僕には
ミレーネが意外そうに
「なるほど。それでさっき、いきなり私の
「あぁ、少し
「それなら簡単だよ。ここの真下だ」
ニッと笑って床を指すレンカに続き、バーナも
「直線
「いや、それは大丈夫。それでは──」
心配そうなバーナの問いに笑って首を振り、後ろに大きく一歩
「『妖精の尻尾』の皆に、よろしく頼んだよ」
その言葉に
「『
ラグリアの転移が無事完了したのを確認してから、レンカは前を向いたまま口を開く。
「いまの魔導士、お前たちはどうみる?」
「素晴らしい人だと思うわ。私たちが人間じゃないと聞いても嫌な顔ひとつせず、少しの
ミレーネに続き、バーナも笑って答えた。
「それに、親善試合の後はアシュリー様とお二人で館を直していただきましたからね。私のワインセラーやコレクションまで元通りにしたあの能力は、
レンカは満足げに
「なるほどね。あたしもひと目見たときから
そこで席を立つと、バーナとミレーネの二人を交互に見ながら続けた。
「さて、お前たちもすぐ出かける準備に取り掛かってくれ。なるべく早くアシュリーたちに追いつけるようにしたいね──ッて、あぁッ」
「あ〜、これはしくじったね……。アシュリーたちが先に行っちまったんじゃ、あたしらは『
頭を
「あれッ、アシュリー様?」
「お
ノックした手を上げたままにやりと笑ってそれだけ言うと、アシュリーは
「私だけ先に行けって言うから、どうするつもりかと思ってたけど、やっぱり戻ってきて正解だったわね。用意ができたら皆で
その言葉に、レンカは気まずげに苦笑した。
2
一時間後。
受付に事情を説明しにいこうとしていると、
レンカたちが、変装用に着ていたフーデッドコートを脱ぎ去り、
続いて、ルーシィたちが『
そんななかで、青髪オールバックの男性・マカオは
「それにしても、あれが鬼か……」
「なんか、
「あぁ……。それに見てみろ、あの一本
「まぁシースルーとかいうし、変な
ステージ中央で
その引き締まった筋肉を
「それに比べてその隣の
「うむ。どっちかってーと『
「「──ッ!?」」
ワカバとマカオは
「おい、まさかいまの会話聞こえて──ッ」
「
次の
「ぐえ……」「あいたァ……」
ウェーブのかかった茶髪ロングヘアーの女性・カナは、ワカバたちに振り降ろした
「『鬼は人間とは比べものにならないぐらい五感が優れてる』ってルーシィが説明してたの、聞いてなかったのかい。
「「ごめんなさ〜いッ」」
「人間の
耳に飛び込んできたよく通る声にカナが顔を上げると、壇上のレンカが一歩進み出るところだった。
「改めて、あたしが
一呼吸置いて、ゆっくり首を巡らせる。
「あたしたちが
さて、アースランドはいま危機に直面しているわけだが、あたしは諸賢ならば、この困難に打ち
レンカの後半の言葉に、カナの周囲の者たちが賛意を表すようにざわめいた。
「そのうえで、本日は諸賢の戦いを後押しするべく、ある策を用意してきた。──バーナ」
レンカが軽く
その片方、派手な髪色が目を引くメイド服の女性は折り目正しく一礼してから口を開いた。
「では、私たちの方から詳しい説明をさせていただきます。私が橙鬼館の地下図書館の司書としてお仕えしているこちらのアシュリー様は、図書館の管理と同時に
バーナの言葉に、ギルドのあちこちからどよめきが上がる。続きを、アシュリーが引き取った。
「あなたたちは、
その言葉を聞いた
「あら、あなたたちはみんな知ってるのね。その他は三人だけ、と。わかったわ、ありがとう。それじゃあほぼ全員知らないようだし、いちから説明するわ」
そこで一度言葉を切ると、アシュリーは正面に向き直り、朗々と語り出す。
「すべての魔導士には、
ここまでは人間の魔導士についての話だったけど、これはなにもあなたたちに限った話じゃない。私たち
説明を聞き終えたとき、
「おぉッ、それを受ければ
「あの……」
その時、レビィがおずおずと手を上げる。
「第二魔法源の解放ならナツが受けてるのを見たことあるんだけどさ……確かそれってすッごく痛いんじゃなかったっけ……?」
その一言で、周囲の空気に困惑が混じった。
「えぇ、確かに『時のアーク』を活用するやり方ならそうなるのは
アシュリーの淡々とした口調に
「ちょ、ちょっと待ちなよレビィ。抑えてやっと問題なく動ける痛みって……その時のナツはいったいどうなってたんだい?」
「え、いやぁ……。そりゃあもう、大声で叫びまくりながらのたうち回ってたよ……」
青い顔で二の
「で、でも、いまの私たちが短期間で強くなるには、これしかないんだろうし、痛みについても抑えたって話だから大丈夫だよ、きっと」
レビィが気丈に笑顔を
その時、壇上のバーナが芝居がかった調子で両腕を広げる。
「おわかりいただけたでしょうか、私たちの用意した策とは
「ホントに、こんな落書きみたいなのが
マカオの
「にわかには信じられないでしょうけどその通りよ。いまに理解できるわ」
アシュリーが魔力を発動するとマカオの全身に描かれた模様が白く発光。マカオが小さく
「うッ、確かにこれはちと
「
順番待ちをしているロメオの指摘に、アシュリーは小さく笑みこぼれた。
「これの目的は確かにそうだけど、健康にも影響するかもしれないわよ?
『
「なんでみんな平気なんだ?
「ナツぅ、さっきの説明聞いてなかったの?」
そこで聞こえてきた声にシャルルが首を横に向けると、青い顔で
先日スミレ
そこでふとあることに気づき、シャルルは仲間たちの列に向けていた視線を横に戻す。
「ハッピー、ちょっと来て」
手招きでハッピーを呼び寄せると、彼の手を引いて歩いていき、ちょうどロメオに
「ねぇ、ひとつ確認したいんだけど」
「どうしたの?」
小首をかしげるアシュリーに、シャルルはハッピーの顔をちらりと見て、続ける。
「実は私たち、まだ第二魔法源を引き出してもらってないのよね。この身体だし、大魔闘演武には出場できなかったから。それ、私たちにも使える?」
「理論上は対象が生物であれば可能よ。ただ、あなたたちに使うとなると、魔力の流れ方から確認する必要があるわね。人間とエクシードでは、身体構造に違いが多すぎる」
「……。……ちょっと見てて」
そう言ってシャルルが魔力を発動すると全身が
『妖精の尻尾』の一時解散中にシャルルが覚えた変身魔法である。
「私はこんなこともできるんだけど、これなら多少は手間も省けるんじゃないかしら?」
変身を完了すると、普段よりもやや低くなった声で
シャルルの
「いえ、やめておいた方がいいわ。その
「う……ッ」
「さっきも軽く説明したけど、潜在能力を引き出すのは簡単じゃないの。短期間で無理にやろうとすれば、それこそ『時のアーク』を使う場合のように、想像を絶する激痛と戦う羽目になる。私のやり方では、そのデメリットをよりゼロに近づける代わり、効果が完全に表れるまでに少なくとも二、三日は掛かるわ。焦りは
確かに、その説明はこの作業を始める直前に受けている。もし仮に、効果が完全に表れるまでにシャルルが変身したり、反対に変身を解いたりすれば、思わぬ事故を招くかもしれない。
「そう……。──。なら、仕方ないわね……」
変身を解いたシャルルが思わず
「でも安心して。あなたたちの
3
「まだ、模様を体に描かれていないという方、いらっしゃいましたらお知らせください」
バーナの指示に、低くさざめいていた話し声が
すべての『
名乗り出る者がいないのを確認すると、アシュリーはひとつ
「じゃあ、これで第二魔法源を解放する準備は整ったわ。その模様は、これから数日かけて、あなたたちのもつ
ただし、注意点が一つだけ。変身系の
その模様はあなたたちのいまの状態に合わせて器を成長させるから、急激な変化には対応できないの」
その説明に、リサーナは思わず後ろにいた巨漢の顔を見上げた。
「てことは私たちはその間、三人とも魔法を使えないわけか……ちょっと大変だね」
兄・エルフマンは、
「しかし、これもより強い
「数日ぐらいなら、仕事ができなくてもなんとかなるわ。あなたたち、よかったらギルドの酒場、手伝ってくれる?」
「おうッ、
「そういえばここ最近は
一方で、稲妻形の二本のアホ毛がある緑色の長髪の青年・フリードは、
「そういうことなら、
フリードが使う魔法は二種類。
この二つのうちフリードが
フリードの
「アンタは『術式』だけでもできる
「念のためだ。万が一の時になにが起きるかわからん以上、うっかりでは済まされんからな」
すると、反対側にいたビックスローも
「お前も
その言葉に苦笑しながらも、フリードはやんわりと首を振る。
「それでもだ。
そこで、アシュリーが再度ギルド内を見渡した。
「他になにか、気になることがある人はいる?」
スティングがなんとなくギルド内を眺めていると、不意に
見ると、長めの黒髪で右目が隠れた青年がこちらに向かって歩いてきていた。
「おぉ、目が覚めたか!」
「ローグ様、体はもう大丈夫なんですね?」
スティングに続いて顔をほころばせたユキノの問いに、ローグは微笑を浮かべて
「あぁ、この通りだ。もう問題はない」
「ローグぅ〜」
「──ッ。フロッシュ!」
その時、舌足らずな声とともに桃色のカエルの着ぐるみを着た緑色のエクシードが走ってくるのが見え、ローグは
「よかった、お前も無事だったか……!」
「もー
「あぁ、
そこで改めて、自分の傷が消えていることや周囲の状況に思い至り、仲間たちの顔を見上げる。
「ところで、いったい何なんだ、この騒ぎは? ここは……『
立ち上がったローグが
「──その通りだぜ」
「お前らがボロボロで駆け込んできたから、俺たちで手当てしたんだよ。ちなみにお前の怪我を治したのはウェンディだ」
「よかった〜、気がついたんだね」
「そうか……。それは、世話になったな」
「いえいえ、ローグさんこそ、すっかり元気になったみたいで安心しました」
苦笑するウェンディの言葉に
「すまない、まだ頭が混乱していて……。これはどういう状況なんだ? いちから説明してほしい」
ローグの問いに『妖精の尻尾』の面々は互いに顔を見合わせて
その
「初めまして。たったいま、ご紹介にあずかった鬼の
ローグはその問いに、力強く頷いた。
「よろしく
「わかったわ。それじゃあまず軽く検査させてもらうわね。それとあなたたち『妖精の尻尾』の
アシュリーは言いながら目の前にホロキーボードを出現させると、さっそく情報の解析を開始する。
その時、やや
首を
「あら、どうしたの?」
しかし、彼女はなにも言わず、代わりに手招きするので、ミレーネは少女に顔を寄せる。
ネフィリムは
「あのね、ここに来たときからちょっと気になってたんだけど、ここ、何人か『黒い人』がいる」
「黒い人?」
見ると、ネフィリムはこくりと頷く。
「なんていうんだろ、
「……。
「あの人とか……」
彼女の視線を追うと、長い黒髪をふたつの
ネフィリムの
つまり、そのネフィリムが何かを感じ取ったということは、この中にも注意すべき要素をはらんだ人物がいることに他ならないわけだが……。
「──待って」
その時、不意に耳に飛び込んできた声に顔を上げると、アシュリーが展開したホロディスプレイの一点を
ミレーネは何事かと思って口を開きかけたが、彼女はすぐに顔を上げ、視線を振る。
「あなたホントに人間よね? なんで悪魔因子なんて持ってるのかしら?」
一同の表情に緊張が走る。鬼と悪魔の確執については『
「待ってくれ。これには事情が──」
「
「──いいよお前ら。
そういってスティングは、前に出ようとしたローグとユキノの肩を押しのけて進み出た。
二年前。
難を逃れたミネルバは、だがそのまま襲撃の首謀者であるキョウカに捕まり、悪魔に改造されてしまったらしい。らしいというのは、スティングたちもエルザからの手紙──しかもその書き方はお
それから、スティングとローグがミネルバを無事に保護。『
つまり、現在のミネルバが悪魔因子を持っているのは悪魔による改造の結果であり、不可抗力なのだ──そこまでを、できる限り
話を聞き終えた鬼の女性たちは、複雑な表情で
「その人、悪い人じゃないよ!」
彼女たちの背後からそんな声が上がり、振り向いたアシュリーは
「ネフィ?」
「だってその人、私がここまで近づかないとはっきり『黒い』って思わなかったもん。本物の悪魔だったらこのギルドに入る前に気づいてるよ」
──黒い?
すると、さらに後方から一人の女性が歩いてきて、ネフィリムの頭に手を
「まぁまぁ、ネフィリムもこう言ってるんだ。そいつを信じる材料としては十分じゃないのかい?」
なだめるようにレンカがそう言うと、アシュリーは大きくひとつ
「わかったわ。お
アシュリーに横目で
「おいアシュリー、その辺でよさないか」
「事情はたったいま説明したろ。これ以上、俺たちになにをしろっていうんだよ!?」
レンカとスティングの抗議の声にも、アシュリーは
「あら、誤解させたのならごめんなさい。でも、私は協力しないなんてひとことも言ってないし、お嬢様の意見にも異論はないって言ったでしょう?」
「あ?」
「今夜はよく晴れそうだったわね。きっと月も
「「「?」」」
『剣咬の虎』の面々が揃って頭上に疑問符を浮かべるなか、ミレーネだけが不意にハッとして
「……なるほどね。わかったわアシュリー、そういうことならすぐ準備に取りかかりましょう」
「人間の街って、夜でもけっこう明るいのねぇ」
スティングたちはアシュリーに連れられて『妖精の尻尾』の正門前まで出てきていた。辺りはすでに日が落ち、街灯が夜道を照らしている。
振り返ると、正門の内側にあるオープンカフェ付近には『妖精の尻尾』のメンバーが詰めかけ、ちょっとした人だかりになっていた。先ほどの
「見たことないのか?」
スティングの問いに、アシュリーは肩をすくめる。
「そりゃそうよ。私たちは人里に降りるとき、人間に変装していくのだけど、こんな
その返答に、それもそうかと
「それで、
ミネルバが
「いいえ、特になにも。
スティングたちは思わず顔を見合わせた。この鬼は、いったい自分たちをどうしようというのか。
アシュリーに手で示された付近までミネルバが進み出ると、アシュリーは持っていた本を開いた。
と、次の
「な、なんだかよくわかりませんが、キレイですね〜ハイ……」
「フローもそーもう……」
レクターの
「これは『
そこまでで一度言葉を切ると
「それじゃあ前置きはこの辺にして、そろそろ始めるわね──ステージ名"アストロラーベ"起動」
すると不意に景色がぐにゃりと
ところどころに花が咲く草原が広がり、ミネルバの足下には巨大な多角形の
「うおッ、なんだよ、これ……」
スティングたちが
「私の空間魔法よ。ホントはこんなステージを設ける必要なかったんだけど、少し明るすぎたからね。あとは
そこでハッとして、スティングは後ろを振り返る。草原がどこまでも広がっているということはなかったが、間近にいたルーシィたち『妖精の尻尾』の一部のメンバーは影響を受け、
その時、
「アンタの力はよくわかったが、そろそろ
「説明していただけないのには、なにか理由があるんですか?」
ユキノの質問に、アシュリーは少し考える
「理由がある……というのは少し違うの。でも、そうね……端的に言うと、説明が難しいから、かしら」
「それでも〜なにかこう、ありませんかね? 説明が難しいからといって省かれると、こちらとしても少々不安といいますか……ハイ」
「フローも気になる」
レクターとフロッシュ、二匹のエクシードに見上げられ、アシュリーは
「申し訳ないけど、実際に見てもらった方が早いわ。その方があなたたちも
「まだなの〜? 私はいつでもいいよ〜!」
スティングたちとミネルバの中間付近にいたネフィリムから声が掛かり、アシュリーは顔を上げた。
「そうね、そろそろお願い。この人たちにあなたの力を見せてあげて」
その言葉に紫髪の少女がニッと笑い、
「あの羽は作り物だったのか……」
ローグの
「ネフィの『
「なるほど、十分暗いから
レクターが言うと、ミレーネはかぶりを振った。
「それもあるけど、いまから使う技には集中力が要るから、あの子も真剣なの。しばらくは極力静かにね。失敗するといちからやり直しになっちゃうから」
ネフィリムは両手で杖を握り込み、目を伏せて集中している。たちまち、環状に並ぶ石柱に向かって
やがて、ネフィリムが動いた。
「『
カッと
数秒後、スティングたちは輝きが薄れたことを確認して、
そっと目を開けて首を
「なんだったんだ、いまの……?」
スティングたちが
アシュリーはホロディスプレイを出現させて操作。少しして満足げにひとつ
「これで私たちの目的は達成ね。たったいま、私の方でも悪魔因子の消滅を確認したわ」
「いま、なんて……?」
アシュリーはちらりとこちらを見て、告げた。
「ネフィの『闇照らす月華』は、対象者がもつ邪悪な心を消滅させる技よ。基本的に殺意とかの明確な悪意にだけ効果があるんだけど、最近になって悪魔因子を取り除けるらしいことがわかったの」
「あと、出せる力は月の大きさで変わるよ。ホントは満月が一番いいんだ。新月でも使えるけどね」
ネフィリムが照れ
「では、ミネルバ様は……ッ」
「えぇ、彼女の体内の悪魔因子は完全に消滅してる。つまり彼女は本当の意味で人間になった──いいえ、人間に戻ることができたのよ」
じわじわと
「
そんな声に顔を上げると、ミネルバは自身に起きた奇跡とも呼ぶべき現象にまだ頭が追いつかないでいるらしく、目を見開いたまま固まっている。
スティングは
「『
こんな時、なんて言ったらいいのかわからないけど──おめでとう。そして改めて、おかえり。これからも
続いてアシュリーも、口元に
「さっきは嫌味みたいなこと言って、ごめんなさい。私も鬼だから、あなたが悪魔の力を持ってるのがどうにも受けつけなかったの。でもいまは、
──私たちスミレ
そこまでが限界だった。不意に、ミネルバの表情がくしゃっと
その時、背後からどっと
見ると『
その中の一人、金髪の女性が走ってくるとミネルバの手を取り笑いかける。
まるで自分のことの
スティングは
──『
どうも皆さん、半年ぶりですね。
最近、ようやくアニメの消化を再開し、ギルダーツとオーガストの戦闘が激化していくところまで視聴しました。今後の展開の大筋も軽く調べて
また、これまでの活動中に
以前、活動報告で、原作メンバー解説を作る予定だという話をしたかと思います。しかし、書き進めていく内に気づきました──あまりにキャラが多い、と。
少し考えれば
よって、当初は原作設定も簡単にまとめる予定だったこの企画、やはり独自設定の解説に重点をおき、原作設定は基本的にわかって頂いている前提で進めようと思います。
この設定集で原作の理解を深めようとしていた読者の皆さんには申し訳ありませんが、気になったキャラについては各自で情報を集めて頂けると幸いです。もし不明な点が出た場合は、それこそ感想というかたちで自分に質問してください。
それでわ、しーゆーあげいん!