FAIRY TAIL The Travelogues of Phantasm 作:水天 道中
イメージは某忍者アニメの主人公の父、年齢は25歳です。
あれ? そういえば本書の時間は原作の最終回のその後、ということは主人公達と彼の年齢の開きが思ったより……。まぁ、その辺りはご容赦下さい。
ちなみに本シリーズの主人公はもちろんナツとルーシィですよ?
1
ラグリアは自宅のドアノブを回すと、ゆっくりと押し開けた。
「ただいま。セリナ? いる──」
「──おかえリぃぃぃッ‼」
どたばたという足音がして、いきなり中から小さな影が飛び出してきた。ラグリアがさっと
「おわッ」「ふぎゃッ」
直後、ラグリアのちょうど真後ろにいたナツにぶつかり、ハッピーも
「な、なに!?」
ルーシィが見ると、倒れ込んだナツの上に一人の少女が乗っていた。歳は十歳くらいだろうか。黄緑色のおしゃれなドレスにミニスカート。長い金色のツインテールを
「ッてぇな、何しやがんだ!」
ナツが上体を起こして
「にしシッ。……あれ? ラグリアじゃなイ」
そう言って辺りを見回すと、こちらを見て満面の笑顔で手を振ってきた。
「あ、いタ。おかえリー」
「まったく、『あ、いタ』じゃないよ。早くそこをどくんだ」
えへへ、と笑って少女がナツから離れると、こちらに向かって歩いてくる。
「えっと……この子が、ラグリアさんの?」
ルーシィが見ると、ラグリアは
「そう。一人で出かけて帰ってくるとよくこうなるんだ。お
ルーシィが苦笑していると、少女がぱっちりしたライトブラウンの
「ラグリア、この人達は
「お客さんだ。
セリナと呼ばれた少女がこちらを見るのに合わせて軽く
と、そこでまだ呼ばれていないエクシードがいるのに気付き、ルーシィは辺りを見渡す。
するとハッピーは先ほどのセリナの
「あ、ハッピー、大丈夫?」
ルーシィの呼びかけから
「あい……なんとか……」
「まったく、だらしないわね」
シャルルのきつい一言に、ウェンディが苦笑していた。ラグリアも苦笑してから口を開く。
「まぁ、とりあえず中に入って。
ルーシィ達は以前にも一度、
序列四位、ウォーロッド・シーケンの家。
無類の植物好きである彼の家は大小様々な
しかしラグリアの家は対照的にインテリアの
「まぁ
ラグリアの言葉に、部屋の中央の大テーブルを囲むように並べられた三脚のソファーに全員が座り、セリナもルーシィの
「セリナ、これを」
「ン?」
そう言って、ラグリアはポケットから観賞用
それを見た
「あ、私の魔水晶! ラグリア、取り返してくれたノ!?」
「うん。遅くなって済まない」
「ううん、ありがとウ!」
魔水晶を大切そうに抱きしめるセリナを微笑を浮かべて眺めていたラグリアは、そこで彼女の肩をポンと
「それじゃあセリナ、改めて皆さんに自己紹介を」
上機嫌で一つ
「私はセリナ。セリナ・ロゼルタ、十歳。よろしくネ!」
「うん。よろしく、セリナちゃん」
ルーシィが言うと、他の皆もそれぞれ返事を返す。ただ、ナツとハッピーだけは微妙な表情を浮かべていた。
「さて、自己紹介も済んだことだし、なにか作るよ。君達、昼食がまだだろ?」
「それなら、なにかお手伝いをしましょうか?」
エルザの言葉に、だがラグリアは軽く右手を上げて辞退する。
「いや、君達はお客さんだ。そこの本でも読んで待っていてくれ」
「本?」
思わずそう聞き返して振り返ったところで、ルーシィは感嘆の声を上げていた。
部屋の一角に巨大な
「ありがとうございます!」
ルーシィが振り返ると、ラグリアは
思い思いの本を手に取り、待つこと数十分。
「はい、お待ちどうさま」
キッチンから戻ってきたラグリアがテーブルに料理を並べ始めた。
「ありがとうございます。……うわぁ……」
ルーシィは大皿の上に盛られた料理を見た
「それと、セリナにはこれ」
そういって、ラグリアはもう一枚の大皿をセリナの前に置いた。
「ラグリアのカレーダ! わーイ!」
「なんで、セリナちゃんだけ別なんですか?」
ルーシィが
「セリナはこう見えて
ラグリアの言葉に改めてセリナが
それからしばらくはラグリアが作った料理の美味しさに皆ものも言わず、ただ
食事がもう少しで終わるというところで、ナツがなにか思い出したように「そういや」といってセリナを見る。
「お前、
「魔法? うん、使えるヨ」
「じゃあ後で
いきなりのナツの放言にセリナがなにか言う前に、ルーシィは
「ちょ、ちょっと待ちなさいよナツ。アンタの力じゃ、セリナちゃんに
「大丈夫だって。ちゃんと
「なにが大丈夫よ。去年だって熱だけで
「確かに、ナツの力では手に余るだろう。私もルーシィの意見に賛成する」
エルザの言葉に、シャルルが皆の顔を眺め始める。
「そうね。だったらこの中では、ウェンディが
「そういうことでいいですか?」
ウェンディが見ると、ラグリアは楽しそうな笑みを浮かべていた。
「あぁ、問題ない。セリナもそれでいいかい?」
セリナもこくりと
「じゃあ決まりだね。言っておくけど、セリナは強いよ。この
2
試合はラグリア宅前の草原が広がる広場で行われることになった。
「うわー、楽しみだなぁ。ねぇ、この試合、どうなるんだろ?」
ルーシィが
「ま、フツーに考えたらウェンディの勝ちじゃねぇか?」
「ウェンディー、
「どっちも負けんなーッ」
「あい!」
シャルル、ナツ、ハッピーも声援を送るなか、ただ一人、静かに笑っている人物がいた。
「どうしたんですか?」
見ると、ルーシィの
「いや、こういうのっていいなと思ってさ。皆いつもこんな感じなのかい?」
「はい。とっても楽しいですよ」
「そうか……。お、始まったみたいだね」
「ではこれより、ウェンディ・マーベル、セリナ・ロゼルタの試合を始める。両者は前ヘ」
「決着は、どちらかが
エルザの説明が続くなか、十メートル前方に立つセリナが笑いかけてきた。
「いっぱい楽しもうネ!」
「よろしくお願いします」
ウェンディも笑顔で
両腕を広げて
その外見からはなんの圧力も感じ取れないが、直感が油断してはならないと告げていた。
「始めッ」
エルザの合図に、先に
「いっくヨーッ」
右腕を高々と上げ、振り降ろす。ウェンディは構えを
次の
──落雷……ッ?
さらにそれは一度に
──これがこの子の
何度目かの落雷に合わせて大きく
「
ウェンディの口から放たれた
しかしその直前、セリナが上げていた腕を垂直に振り降ろした。雷はセリナの目の前に落ち、その
「
そういって、セリナが両腕を引き
頭上に意識をやっていたのが災いして
しかし、ウェンディにとっての不運は、回避の瞬間にわずかに足下を見てしまったことだった。
「『
はっとして顔を上げた時には、セリナの右手がなぎ払うように振られた後だった。一瞬の
──えッ?
なんとか首を曲げて自分の体を見下ろすと、胸の中央に黄色く発光する十センチほどの
しまった、スタン効果のある攻撃……!?
見ると、セリナは
「『
セリナの右手が突き出され、電気の球がウェンディめがけて飛んでくる。
──しかしその直前、ウェンディの身体を黄緑色のベールが包み、体の
十全に余裕をもって風をまとった腕を振り、飛んできた電気の球をあさっての方向に弾き返す。
「えッ、なんデ!?」
「
そこまで言ったところで、ウェンディは信じられないものを見た。
先ほど自分が弾いた電気の球が、ラグリアの家の横手にある林に向かって飛んでいく。次の
「うーン、もうちょっとだったんだけどナー。やっぱり強いネ、アナタ」
ウェンディはなんとか平静を
「セリナちゃんだって、十分強いと思うよ」
「フフッ、ありがとネ。じゃあ……これならどうかナ?」
セリナの動きに意識を集中し、身構える。
両腕を広げたセリナの体が、ふわりと宙に浮き上がったのだ。
ジャンプしたのではない。不可視の羽をはばたかせたかのように移動し、一メートルほどの高さでぴたりと静止した。
「そんな……ッ」
「アハハッ。電気の力ってホント便利だよネー。こーやって空を飛ぶことも出来るんだヨ?」
「な、なにあれ……!?」
ルーシィが叫ぶと、
「『
「どういうことですか?」
見ると、ラグリアはセリナに視線を向けたまま微笑を浮かべていた。
「そのままの意味だよ。セリナは雷や放電だけでほとんどの相手と戦えるから、あの技を使うことは少ないんだ。つまり、セリナも本気を出し始めてるってことだね」
セリナが次々と降らせてくる雷を、ウェンディは必死で
彼女が使う
更に雷の方は予備動作を始めた後も
せめて、少しでも
セリナが放った電気の球を、ウェンディは体を回転させ、できる限り小さい動作で回避。同時に交差させていた腕を、セリナに向けて大きく広げた。
「天竜の
ウェンディの両腕から発生した風の
「わわわワッ」
セリナは
直後に思い切り地を
「天竜の
指先に風をまとわせた右手を、全力で振り抜いた。
しかし、セリナは体勢を
必殺の
──その時、ウェンディの目に、あり得ない光景が飛び込んできた。
セリナの顔が、
「な……ッ」
そんなことを考える間もなく、セリナの
次の
続けてセリナは
──回復が間に合わない……ッ。
掌打を据えられたのと同じ箇所に
違う。これは拳の威力ではない。セリナは拳を打ち込む瞬間、接触面で
全身を
「『
「そこまで! 勝者、セリナ・ロゼルタ!」
エルザの
「わーイ! やっタ!」
ルーシィ達は、ラグリアただ一人を除き、全員が残らず絶句していた。理由は三つある。
一つ目は、ウェンディの敗北を
しかし、これらはむしろ大きな問題ではなかった。
三つ目は、セリナが最後に三連撃を繰り出す直前、信じがたい現象が起きたことだ。
彼女はウェンディの攻撃を
「ラグリアさん、さっき、セリナちゃんは一体……」
「──よっしゃあッ!」
ルーシィがラグリアの方を見たその時、反対側で叫び声が上がった。
ぎょっとして声の方を見ると、ナツが
「今度は
「ちょっとナツ! アンタなにやって──ッ」
ルーシィは叫ぶが、すでに間に合わなかった。
直後、ルーシィ達は再び
ナツの炎をまとった
ほどなくしてセリナがラグリアの
「ふぅ、びっくりしタ〜」
「え、えッ? なんだったの、いまの?」
思わずセリナが先ほどまでいた場所と彼女の顔の間で視線を往復させていると、そうこうする内に
「あが……が……ッ」
彼は
3
ナツはソファーのひとつに
「くっそ〜、まだ
「回復、しましょうか?」
苦笑しながらウェンディが言うが、その提案をシャルルがあっさり
「ほっときなさいよ。
「そうね。子供相手に不意打ちなんかした罰よ」
今回はルーシィもシャルルの意見に賛成した。腕を組んで
「んだよ、ひでぇなぁ」
「どっちがよ。セリナちゃん、
そこでルーシィは、セリナが見せた不可解な現象の事を思い出した。しかしその事を口にする前に、ナツがテーブルに突っ伏したまま、首だけ動かしてラグリアの隣に座るセリナの方を見る。
「つぅかさっきのあれはなんだったんだよ? お前の体、パンチがすり抜けたぞ」
「えぇ!?」
「それは
苦笑するラグリアの言葉に、場に感嘆の
「そっか……。最後のあれは、そういうことだったんですね……」
様々な感情が
「でも本当にびっくりしました。まさかウェンディが負けるなんて……。魔法は、ラグリアさんが教えたんですか?」
そのことを口にした
ラグリアは彼女の背にそっと手を回し「この人たちなら大丈夫だよ」と、優しく
右腕は、
室内に静かな
セリナの手首から
「これは……?」
ルーシィが顔を上げると、ラグリアは深刻そうな顔で言った。
「実は、セリナは僕と出会う前から魔法を使うことができていたんだ。なんでも、雷に打たれてこの腕の傷を負ってから、電気を操る能力が身についたらしい」
コンプレックスでもあるのか、セリナはラグリアが説明する間に、アームカバーも袖も元に戻してしまっていた。グレイがソファーに寄り掛かったまま気のない声を出す。
「魔力を持たねぇ人間は、雷に打たれりゃ大抵は即死するっていうけど、運良く助かったと思ったら魔法を発現していたってわけか」
その言葉に、ラグリアは一つ
「ああ、セリナはこの力のせいで周りから疎外されていてね。そのせいで、僕と出会った時も人間不信に
「そうだったんですか……」
見るとセリナは、いつになく難しそうな表情で
「セリナちゃん、魔法を使えるようになる方法はなにも人に教えてもらうだけじゃないし、不安になることはないよ」
「ルーシィの言う通りだ。誰かに教わって使えるようになる者、自分で学ぶ者。そしてなにかがきっかけで魔法を発現するセリナのような者も、決して少なくはない。私もそうだったからな」
エルザに続き、ようやく回復したらしいナツも笑って親指で自分を指差す。
「
「うん、そうだネ。
ラグリアも安心したように静かに笑うと口を開く。
「セリナを君達と会わせることができて本当に良かった。僕からも改めて礼を言うよ……。それにしても、君達を見ていると楽しんでいるのがよく伝わってくるよ。僕はギルドに所属した事はないんだけどね」
「えッ、そうなんですか?」
ルーシィが
「何度か誘われた事はあるけど、全部断ったんだ。うるさいのはどうも苦手でね。でも、君達は違う。なんというか……温かい。不思議と落ち着くんだ。君達のギルドなら、本もゆっくり読めそうだよ」
ラグリアらしい言い回しだと思いながら、ルーシィはふと思いついた提案を口にした。
「あ、それなら、ウチに来ませんか? よかったら、セリナちゃんも
しかし、ラグリアは
「いや、それはいいよ。その代わり、といってはなんだけど、またギルドに顔を見せに行ってもいいかな?」
「はい、それは
「いつでもいらして下さい」
ルーシィに続き、エルザも笑って答えた。
「それはよかった。君達も、またなにか困った時はいつでも声を掛けてくれ。できる限りの全力で
ラグリアが見ると、セリナは満面の笑顔を浮かべて大きく
「また遊ぼうネ!」
「でも、迷惑になりませんか?」
ルーシィの言葉に、ラグリアは再び微笑を浮かべる。
「セリナと仲良くしてくれるなら、僕は大歓迎するよ」
「はい、勿論です! ありがとうございます!」
と、その時、ナツがなにか思いついたように「あ」といってセリナを見た。
「んじゃあセリナ、ウェンディとも戦ったことだし、今度は
その言葉が終わる前に、ナツの言葉はゴッという重い音と共に
エルザは
「いい加減にしろナツ。お前の力ではセリナに
「う……ッ」
「まったく、もう
ルーシィの言葉にウェンディが苦笑していると、シャルルが紅茶のカップから顔を上げ、
「ていうか、アンタ最初に吹き飛ばされたままなのが
「ぐッ」
「うわ、
「ナツもまだまだ子供だね」
ナツの反応に、グレイが面白がってシャルルの
「く……ッ。うッ、うるせぇ──ッ‼」
ナツが上体を起こして両の
さて、第2話も終わり、そろそろストーリーも盛り上がってくる頃となりました。
これまでの話で登場したオリキャラ達は、ブラック・ブレットの
ちなみに彼女の言葉について、音声的な特徴は考えておりません。読者様のご想像にお任せします。
え? ブラック・ブレットのサブヒロインの『彼女』はどうしたって?
ご安心を。ちゃんと次回出しますよ。お楽しみに。
それでわ、しーゆーあげいん!
〈加筆修正一覧〉
5、