ロキファミリアの首脳陣に月兎が混じり込むのは間違っている 作:はるみゃ
それから数日間、フィンと共にオラリオを目指して旅をして、色々なことがわかった。
曰く、オラリオはダンジョンで盛んな都市。
曰く、ダンジョンに潜るためには恩恵が必須。
曰く、恩恵を得るためには下界に降りた神々のファミリアに入らなければならない。
(……神々が下界に降りているとか、どうなってるんだよ、この世界……)
これらは全てこの世界で生きる住民なら誰でも知っていて当たり前の常識らしい。
しかも、降りているという神々はゼウスやらポセイドンやらと、どれも聞いたことがある有名な神々ばかり。
完全に前の世界と無関係……という訳でも無さそうだった。
極力、ゆっくりと呼吸したりして感情が顔に出ないようにしたつもりだが、それでも驚きを隠しきることが出来たかと言われると自信がない。
しかし、フィンに突っ込まれることも無かったので何とか誤魔化せたのだろうと思っている。
話題はそういった大きなものばかりでなく、個人的な話もあった。
フィンは幼く見えるが、それは小人族の特性故のことで、実年齢はもうすぐ二十になるのだとか。
冒険者になるのはある目的を達成するためだとか。
そんなフィンから見た俺の種族は兎人なのだとか。
この世界では完全にイレギュラーである鈴仙・優曇華院・イナバが兎人に該当されるかは不明だが、端から見ればそう見えるそうなので、いざ種族を名乗る際は兎人と名乗ろうと思ったりした。
そんな感じで情報収集を進めて一週間。
遂にその時はやってきた。
「あっ、ようやく見えてきましたね」
そう言うフィンに釣られて眼を凝らすと、遠くにうっすらと街影が見えた。
遠くから見てるのに、その全貌が見渡せない。
よほど大きいことが伺えた。
発見から小一時間。
流石のフィンも街に着いてすぐにファミリア探しをしようとは思わなかったらしく、何事もなく無事にオラリオにたどり着いた俺たちは、のんびりと街を観光していた。
「流石に大陸最大の都市だけあって広いですね」
「えぇ、ここでなら僕の目的もきっと果たせそうです」
「えっと……確か有名になるためだっけ?」
「はい、正確には少し違いますが、まぁ大体似たようなものですね」
そんな会話を交わしてながら歩いていると、大きな広場に出た。
「君たち、私のファミリアに興味はないかね!?」
「ファミリアに入ってくれるならば、この僕の永遠の加護を約束しよう」
広場では神々によるファミリアへの勧誘ラッシュが行われていた。
俺はてっきり、冒険者が頼み込んでファミリアに入れてもらうと思い込んでいたので、まるっきり想像と反対なこの光景に思わず苦笑する。
フィンも俺と同じような考えを持っていたのか、ぎこちない笑みを浮かべていた。
と、その時、周りで必死に勧誘していた男神の一柱と眼があった。
何となく嫌な予感がしてすぐに眼を背けるが、男神は見逃してくれるどころか、あろうことか大きな声をあげながらこちらに向かって指を指してきた。
「美男美女発見!! 是非是非俺のファミリアに!!」
「え?」
「お?」
「ホントだ!? どうだい俺のファミリアに入ってくれないか――」
「まてまて、そんな奴より私のファミリアに――」
先程まで勧誘していた人をすっぽかしてまでこちらに回る神々がいる始末。
チラとフィンを見ると、フィンは分かってるとばかりに小さく頷いた。
そのままその場でクルリと反転。
押し寄せる神々を背に、俺たちは脱兎の如く逃げ出した。