ロキファミリアの首脳陣に月兎が混じり込むのは間違っている 作:はるみゃ
すっかり日が落ち、月明かりが街を優しく照らし始めた頃。
俺たちは、路地裏に佇みながら、ぜえぜえと荒い息を整えていた。
昼頃から始まった神々との逃走劇。
走りに走ってようやく撒いたのは、ほんの少し前のことだ。
「……それにしてもフィン。逃げ出して、よかったのですか?」
呼吸が落ち着いてきた俺は、今更ながらにフィンにそう問い掛けた。
「いいんだよ。もしかしたら今後一生お世話になるかもしれないんだ。それに僕の場合目的が目的だからね。ファミリアはじっくり吟味した上で選びたい。強引に入れられるのは御免被るよ。……それより鈴仙。君はよかったのかい? あの中には情報を扱っているファミリアも有ったかもしれないのに逃げ出しちゃって」
「私もフィンと同意見ですよ。適当に決めたら絶対後から後悔しますし……それに」
フィンと旅した一週間で、ファミリアに入ることの重要性はよく理解できている。
確かに情報が欲しいのなら情報を扱っているファミリアに入るのが一番良いのだろう。
一般的には。
しかし、俺が求めている情報は、こことは異なる世界の情報。
とてもじゃないが、一般的とは言い難い。
情報を扱っているファミリアでも流石に取得出来ない可能性が高い。
「――それに入るならフィンと同じファミリアに入ろうと考えていますので」
だとしたら、情報を扱っているファミリアより、知っている人がいるファミリアに入った方がいい。
だから俺は、フィンと同じファミリアに入ろうかな、と思っていた。
「……僕が入ろうとしてるのは探索系だけど、それでも良いのかい?」
「ええ、まぁ、私の求めている情報は何年、何十年かかっても手に入らない可能性の方が高いですし。その間ただ待つのも……ちょっと。なので、冒険者になってダンジョンに潜るのも悪くないかな……って」
「突然死ぬかも知れないよ」
「それは日常生活でも同じことでしょ? 突然犯罪に巻き込まれるかも知れませんし……前例がありますし」
「前の時みたいに庇ってあげられないかも知れない」
「当然です。いつまでも助けてもらえるなんて思ってません。だからこそ、私はダンジョンに潜ろうと考えているんです。少しでも強くなって、自分に降りかかる火の粉を払えるように」
そう言うと、フィンは頭をガシガシ掻いて、困ったように笑った。
「あー、うん。君の覚悟は分かった。試すような事を言って悪かったね……じゃあ改めてよろ――」
「――――話は聞かせてもらったで!!」
フィンの言葉を遮るようにして、そんな声が聞こえてきた。
振り返って見れば、そこには赤髪の糸目の女性が立っていた。
寂しいくらい胸がない以外は普通の女性に見えるが、纏っているオーラが違う。
この人は神なのだとすぐに気づいた。
全ての神が、先程追いかけてきた神と同じじゃないと頭では分かりながらも、自然と身体が警戒してしまう。
それはフィンも同様で、俺の眼から見ても分かるほどに警戒心を露にしていた。
「あー、始めに謝っとくわ。ゴメンな。盗み聞きはするつもりはなかったんやけど……ついな。堪忍してや」
しかし、そんな俺たちの様子に気づいていないのか、もしくは気づいていながら放置しているのか赤髪の神は、あっけらかんに笑うと、その目を更に細めた。
「まどろっこしいことは嫌いやから単刀直入に言うで。二人とも、ウチのファミリアに入らなへん? 先に言っとくと、ウチはまだ出来たばかりのファミリアや。せやから今ならそれなりに優遇させてもらうで」
ニヤリと笑みを浮かべる女神。
その笑みは、どことなく胡散臭かった。しかし、フィンはその女神の話に興味を持ったらしく、
「優遇…ですか。でしたら、三つほど入るにあたってお願いしたいことがあるのですが…」
「ウチに叶えられる範囲なら何個でも構わへんで。まぁ、とりあえず立ち話もアレだし、ウチのホームで話そうや」
詳しく説明を聞くため、女神のホームに向かうことになった。
これが俺たちとロキを名乗る女神との出会いだった。