ロキファミリアの首脳陣に月兎が混じり込むのは間違っている   作:はるみゃ

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5 入団

「ほな、ここがウチのホームや」

 

 神々に見つからぬよう人通りの少ない路地道を歩き続けて数十分。

 

 ロキが指で指す方向には大理石で出来た巨大な建築物があった。

 

 頑丈そうな門に広い庭園、建物へと続く石畳の道に沿えるように並べられている屈強な戦士の像。

 

「そ、それじゃ案内するで」

 

 さすがは神。立派なホームを持っているものだ、と内心感心していると、何故かロキは気まずそうに眼を反らし、その建物を素通りした。

 

 そして、ロキの足はその後ろの日陰にひっそりと立っていた、小さくボロい木造の小屋に向かっていく。

 

「え……まさか……これがホームなんですか? 小さすぎません?」

 

 どう見ても神とその眷属が拠点にできる大きさには見えない。

 

 恐る恐る訊ねると、ロキは小屋を背に無い胸を張って、宣った。

 

「せやで! これがウチのホームや! 汗水垂らして働いて手にいれたホームや! 何か文句あるか!?」

 

 神の威厳は何処へやら、もうヤケクソに叫んでいるようにしか見えないロキから、俺は静かに視線を外し、フィンを見る。

 俺の視線に気づいたのかフィンは、苦笑いを浮かべた。

 

「……まぁ、出来たばかりって言っていたからね。想像はしていたけど……。とりあえず神、ロキ。中に案内してくれませんか?」

 

「おお、せやな。入り、入り」

 

 本気で蹴り飛ばしたら簡単に壊れてしまいそうな扉を開けると、中は外見からは想像できないほどの広さで……なんてことはなく外見通りの狭い室内で、ロキの眷属なのだろう。

 

 酒臭い男性に耳の尖った女性が言い争いをしていた。

 

「――――これだから石頭のエルフは」

 

「なんだ戦るのか? この脳筋ドワーフが……ん? なんだ、ロキ。帰ってきてたのか……そいつらは?」

 

「新しい入団希望者や! ……ええと、名前は……」

 

 こちらに気づいた女性の問いにロキは満面の笑みで応える。

 

「僕はフィン・ディムナ。気軽にフィンと呼んでください」

 

「私は鈴仙・優曇華院・イナバです。鈴仙とお呼びください。……と言っても、まだ入団するって決めた訳じゃ無いんですけど」

 

「なるほど、ロキに連れてこられた口か。先駆者として忠言だが、こうなったロキはしつこいからな。早めに折れることをオススメする。おっと、申し遅れた。私はリヴェリア・リヨス・アルーヴだ、リヴェリアと呼んでくれ」

 

「オレはガレス・ランドロックだ。まぁ、そればかりはエルフに賛同する。ロキに見初められたのが運の尽きだったと思ってくれ」

 

 同情するような眼を向けてくる二人に、何があったのか……とてもじゃないが聞けなかった。

 

「ウチの扱い酷過ぎへん!?」

 

 場の空気に居たたまれなくなったのかロキから突っ込みが入るが、誰も「言いすぎた」とか「冗談」とか、謝ったりしない。

 

 つまりは、そう言うことなんだろう。

 

「――それよりもロキ。条件について少し二人きりで話したいんだけど、いいかな?」

 

 一頻り笑いあったあと、ようやくフィンが本題を切り出した。

 

「あー……リヴェリア、ガレス、……鈴仙、ちょっと外出てもらっとてもええ?」

 

 真剣な表情のロキの言葉に、俺たちは頷かざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

 結論を言おう。

 

 フィンの出した条件は、無事受理されたようで、フィンがロキ・ファミリアに入ることになった。

 

 無論、フィンと同じところに入団すると言った手前、俺も同じくで。

 時は過ぎ、その日の夜。ロキは唐突に叫ぶようにして言った。

 

「じゃあ、お待ちかねの恩恵の授与タイムやで! ほな、まずは鈴仙ちゃんから行こか! 上着を脱いでウチに背中向けて座ってな。男は外に出とってや」

 

 いきなり脱げと言われて戸惑うが、リヴェリアの平然とした顔を見る限り、ロキの暴走ではなく、恩恵の授与に必要な行程らしい。

 

 フィンとガレスが外に出たことを確認してから、ロキの指示通り、上着を脱いで、ロキに背を向ける形で用意された椅子に腰を下ろした。

 

「ぐへへ、綺麗な背中やな……んじゃジッとしててな」

 

「はい」

 

 身の危険を感じながらも頷くと、ロキは自分の指の腹に針を刺して、血が滲む指を俺の背中で走らせた。

 

 妙に手つきが厭らしいと感じるのは俺の気のせいだと信じたい……

 

 おおよそ数分。作業が完了したのか、ロキの手が止まった。

 

「うし、恩恵の授与はちゃんと成功したわ。これで鈴仙ちゃんは正式にウチの眷属になったわけや! 今後ともよろしゅうな!」

 

「よろしくお願いします、ロキ」

 

 

 

 こうして、俺はロキ・ファミリアの一員となったのだった。

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