ロキファミリアの首脳陣に月兎が混じり込むのは間違っている 作:はるみゃ
食事から数十分後。私とリヴェリアは二人でホームへ向かっていた。
「鈴仙と話があるならオレたちは少し遅れて帰っても問題あるまい」
と言うのはガレスの言で、リヴェリアの反対を強引に押しきり、フィンを連れて武器を見に行ってしまった。
その行動がリヴェリアの不興を高く買ったようで、リヴェリアは帰り道ブツブツと謗っていた。
「――ったく、アイツは本当に……一度殺さないと馬鹿は治らないんじゃないか……大体武器なんて見て何が楽しいのだか……何が男のロマンだ馬鹿馬鹿しい。なぁ、鈴仙?」
不意に話題を振られた。
実際のところ俺も武器を見たかったし、男のロマンに同感できるのだが、威圧するような視線に思わず頷いてしまう。
「あ、あはは。そうですね……」
「だろう? 大体アイツはいつも男のロマンで済ませるから――――」
それからも男のロマンをディスる小言は続き、俺は冷や汗を流しながらも頷き続けた。
「帰ったぞロキ」
「ただいま帰りましたロキ」
ホームに帰ると、即座にロキが出迎えてくれた。
「おお、待ってたで~!!」
ガバッと手を広げて抱擁してこようとしてきたので、即座にリヴェリアの後ろに隠れる。
「……ロキ、過度なスキンシップはやめろと言ったよな?」
「い、嫌やなぁ、リヴェリアたん。こんなのはまだ軽いスキンシップ――」
「ロキ?」
「ほんまごめん! 少し魔が差したんや!」
素早く土下座して謝罪するロキにリヴェリアは頭を押さえて嘆息。
(……いや、慣れすぎじゃね? 無駄な動作が一切なかったぞ、今……)
かなり洗練された土下座に呆気にとられていると、リヴェリアは俺の方を振り返り言った。
「良いか、鈴仙。これから私は席を外すが、何かされそうだったら絶対に大きな声で叫ぶんだぞ? すぐ駆けつけるからな」
コクコクと頷くと、リヴェリアは「話が終わったら呼んでくれ」と外へ出ていった。
気まずい感じの沈黙が暫く流れる。
そんな雰囲気を破ったのはロキだった。
「なぁ鈴仙ちゃん」
「はい」
ヘラヘラとした笑みを止め、真剣な表情で口を開いたロキは、少し躊躇って、しかしハッキリと用件を告げた。
「何かウチに隠してることあるやろ?」
「え……」
思いもがけない言葉に固まっている俺に、ロキは淡々と言葉を紡いでいく。
「神にはな、嘘か真か見抜く力があるんや。昨日の自己紹介ん時、鈴仙ちゃんは嘘は言ってへんけど真のことも言ってへんかった――なぁ鈴仙ちゃん、何を隠しとるんや?」
「――ッ!? 」
心当たりはある。むしろ心当たりしかない。
例えば名前。確かにこの体の名称は鈴仙・優曇華院・イナバだ。しかし、本質は俺という全然違う生命体。
そう言ったところで反応したのだろうと思う。
全てを見抜くような神の目。
(全部告げたら楽になるのかな……)
そんな目を向けられた俺は、そう思い、全て白状しようとして――
「……ごめ……んなさい……言え……ません…………」
不意に頭に過ったのは"ファミリアを追い出される最悪の展開"。ロキから、ガレスから、リヴェリアから、フィンからも忌み嫌われ一人になる未来を想像してしまい。
結局俺は謝ることしか出来なかった。
怒られるかと思った。当然だ、聞かれた質問に対して答えを言っていないのだから。
しかし、ロキは、叱りもせずただ、優しい目で笑い掛けてきた。
「……そか。ほんならしゃーないな。待ってるから、言いたくなったらいつでも聞かせてな」
どこまでも優しいロキ……しかしそれでもどこまでも弱い俺は告げることは出来なかった。
「ごめん……なさ……い……」
今は言えない。
だけど、いつか、言えるくらい強くなりますから……
そんな決意を固めながら、また小さく謝罪の言葉を口にした。
次回時間飛びます