傷を消す自体は治癒術でもそう時間はかからない。ただし治癒術で治せるのは傷だけで、痛みや違和感が患部に残るのが常なので、結局は時間薬なのだ。
フェイもまた、エリーゼが銃創自体は綺麗に消したが、足に食らった分で立ち上がれるまで待つことになった。
「フェイさん、聞いてもよろしいですかな」
「なぁに?」
「先ほどは庇ってくださってありがとうございます。ですが何故あのようなやり方を?」
「ワルイコト……だった?」
「いいえ。ですが私が無事でも、フェイさんが傷ついて、私が悲しいと思ったのですよ」
「んとね。〈温室〉に居た頃、
それはつまり、間違えばジランドを殺しかねない術を放つことができたと言っているも同然だった。
ローエンは悟る。この少女は精霊術を通常とは逆の意味で使いこなせていないのだ。術を発動すれば100%の威力で100%成功する。手加減を知らないのだ。
「じゃあ、どうしてアスカにはあんな……」『ヒドイことしたのー?』
「ヒドイ、コト?」
『封印した時、アスカ痛がってたよー。フェイはアスカ、キライなの?』
その時、ずっと眠そうな半眼だったフェイの赤目が、険しさと憎らしさをはっきり示した。
「フェイが精霊、キライなんじゃない。精霊が、フェイをキライなの」
「精霊が? どういうことですか」
「エレンピオス人は
「そんなのメチャクチャです! フェイが悪いことしたわけじゃないのに!」『リフジンだー!』
フェイは思い出すように赤い眼をぼんやり漂わせる。
「アスカの光眩しくて、体真っ赤になって、皮がペリペリむけた。シャドウに真っ暗なとこに入れられて、元に戻ったら目よく視えなくなってた。実験とか計測とか、着けてた機械からバチバチって流れ込んできたのはヴォルトかな」
淡々と語られる所業には主体性がない。受けた苦痛を、まるで己でないかのように認識をすり替えることは、防衛機制として珍しくない。軍人だったローエンは、新米兵士がそれを無意識の内に実行する様を多く見てきた。
「微精霊からもマナいっぱい取られて息止まりそうになった。後から研究所の人に聞いたら、本当は精霊に言われた量ほどたくさんマナあげなくてよかったみたい」
「ひどい…っ」
エリーゼがティポをぎゅっと抱いて悲しげに漏らす。エリーゼを気にしてか、フェイは付け加える。
「今はヘーキ。もうイタイコトしてこないよ」
「だからって!」
若草色の目ににじむのは、悔し涙か、憐憫の涙か。
「だからって、過去にされた痛いことがなくなるわけじゃ、ないじゃないですかっ」
こういうチートキャラって力の源(精霊や式神)に愛されてて猫可愛がりされているのをあちこちで見かけます。なので作者はその逆を行こうと思いました。
精霊を使う才能=霊力野を持ちながら、その才能ゆえに精霊に憎まれる。でも精霊はその才能があるからオリ主に力を提供せざるをえない。悪循環というかドロドロの関係というか。
最初から何もかもチートだと面白くありませんからね(ニヤリ