フェアリーテイルの終わり方   作:あんだるしあ(活動終了)

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 妖精 と 時の守り人


五幕 硝子のラビリンス(6)

 そんな少女たちの思案をぶち壊す音が鳴り渡った。

 丘の上から、爆音が轟くのが聴こえたのだ。

 

 フェイはエリーゼと顔を見合わせる。肯き合った。

 

「ローエン、下ろして」

 

 ローエンは一瞬間を置いたが、屈んでフェイを降ろした。アリガト、と告げて地に足をつける。

 

(お姉ちゃん、パパ……!)

 

 

 

 

 フェイたちが駆けつけた時、エルとルル以外のメンバーは傷だらけで膝を突いていた。

 

 フェイは彼らを傷つけたであろう存在を宙に認める。――フェイは混乱した。

 

()()()……()()()()

 

 〈妖精〉である彼女は、アスカのようなエレンピオス側の大精霊を全て把握している。だからこの黒白(こくびゃく)の精霊の正体も看破できるはずなのに。

 

 分からない。これは何の精霊だ?

 

 黒白の精霊は答えず、手をフェイたちに向けた。それだけでマナを圧縮した黒球が生じ、フェイたちに撃ち出された。

 

(エリーゼとローエンに当てちゃだめ)

 

 とっさの思いに応え、フェイの前で地面がトゲ状に幾重にも隆起した。黒球は全て隆起した土塊にぶつかって相殺された。

 

「あなた、一体何なの? ほんとに精霊、なの?」

「戯言を」

 

 その精霊は初めて声を出した。高圧的で不遜。それでいて胸が圧迫されるほど恐ろしい。

 

「精霊以外の何に視える」

「気をつけて! そいつは大精霊クロノス、カナンの地の番人だ!」

 

 ジュードが傷を押して叫んだ。

 

「だってフェイ、あなたなんて知らない。わたしが知らない精霊が、エレンピオスにいるわけないんだから!!」

 

 するとクロノスは、明らかな侮蔑でもってフェイを見下ろした。

 

「籠の中しか知らぬ兎が我らの全てを知っているつもりか。他の精霊どもはどうか知らんが、貴様が我を知っていようがいまいが、我は貴様に興味などない」

 

 興味がない。憎まれるより八つ当たりされるよりずっといいはずの態度。

 そのはずなのに、フェイはショックを受けた。

 

(イタイコトされる〈妖精〉なんてイヤだったはずなのに。わたし、人からも精霊からもトクベツな自分をよろこんでたの? ヤダ。ヤダよ。そんなフェイはイヤ!)

 

 クロノスの掌から闇色のレーザーが放たれた。土、では間に合わない。もっと速く出現してルドガーを、エルを護るモノをフェイは望んだ。

 

 崖を境界線に光る大障壁が現れた。今フェイが出せる最大出力の、白のレーザーを密集させた壁。

 

 光壁を闇色のレーザーが押す。フェイは両腕両足に力を入れて踏ん張った。

 

(頭、イタイ。普段こんな大技使わないから。どうしよう。このままじゃ押し負けちゃうよぉ!)

 

 光壁が撓み、隙間から闇色のレーザーが突き破って入って来ようとしている。歯を噛み砕かんばかりに耐えてもそれを防げない。

 

 もう無理――そう思った瞬間、フェイの前に白い影が躍り出た。

 

「ユリウスさん!?」

 

 その男はルドガーと同じ二本の剣でクロノスのレーザーを受け流している。さらにルドガーと同じなのは、男が精霊の力を鎧として纏っている点だった。

 

「ルドガー、時計を! お前の!」

 

 ルドガーは慌てたようにホルスターから真鍮の懐中時計を出して男に差し出した。彼はルドガーの時計を持った腕を掴み。

 

「うおおおおっ!!」

 

 レーザーを横へ弾き飛ばした。攻撃が当たった空間が丸く〈穴〉を開ける。男はルドガーだけを掴むや、その〈穴〉にルドガーと共に飛び込んだ。

 

「逃げるが勝ちだぜ!」

 

 アルヴィンがエルを抱えて〈穴〉へ続いて走った。

 

「フェイとルルも!」

「「分かってる!」」

 

 ローエンとエリーゼが〈穴〉に飛び込む。レイアがルルを抱えて走る。

 それに続いてジュードがフェイの手を掴んで〈穴〉へと駆け出す。

 

(この手、知ってる。湖の底の人とおんなじ。フェイに霊力野(ゲート)をくれた人と――)

 

 暗い穴に飛び込む。天地四方がぐちゃぐちゃになるような感覚の中で、ジュードの手の力強さだけが確かだった。




 クロノス が あらわれた!
 にげる を 選択 した!
 ……これだけで片が付きますね今回の説明。
 次回から分史ニ・アケリア編が始まります。前作で分史ミラをお待ちくださった皆様、お待たせいたしました。今回はミラさん大いに出番ありますのでご期待ください。
 ラストで不穏なフラグが立ちましたがお気になさらず(*^_^*)V
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