フェアリーテイルの終わり方   作:あんだるしあ(活動終了)

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 妖精 と 王様


八幕 Sister Paranoia(3)

 走って。走って。ぜいぜい喉を鳴らしながら走っていたフェイは、チャージブル大通りで人にぶつかって尻餅を突いた。

 

「ご、ごめんなさ…………王様」

「フェイか。そんなに急いでどこへ行く」

 

 どこへ、と問われてフェイは俯いた。

 どこでもいい。ただ姉とミラが仲良くしている場面を見ないですむ場所へ行きたかった。

 

「――俺は今からマクスバードへ行く。一緒に来るか?」

「いいのっ?」

 

 とにかく遠くへ行きたいフェイには願ってもない申し出だった。

 ガイアスが差し出した手を、フェイは迷わず掴み返して立ち上がった。フェイはガイアスの後ろにぴっとり付いてトリグラフ中央駅に向かった。

 

 

 駅に着いてからは、券売機が苦手だとガイアスが言ったので、切符はフェイが買うことになった。

 

「そうだ。ミュゼは? 近くにいない」

「故あって別行動をしている」

「じゃあ切符はわたしたち二人分でいいね」

 

 買った2枚の切符で自動改札を抜け、フェイとガイアスはマクスバード行列車に乗り込んだ。

 

 列車が発進してからも、ガイアスはフェイに何も問わなかった。

 フェイも何を言いたいわけでもなかったので、向かいの座席に腰かけて、車窓を流れる風景を見るともなく見ていた。

 

 叩かれた頬は、痛みは引いたが、まだ熱い。あの紅葉のような手の平に、姉はそれだけの激情を込めた。他人(ミラ)ではなく、(じぶん)を否定するために。

 

(パパにぶたれるのは慣れてるからいいけど、お姉ちゃんからはハジメテだった。いっつも頼りにしてたお姉ちゃんが、フェイを)

 

 ぐるぐると頭の中で回る現実から立ち直るには、マクスバードへの旅路は短すぎた。

 

 駅到着のアナウンスに合わせて立ち上がったガイアスの後ろを、フェイは子カルガモのように付いて行った。無言で。

 

 

 

 

 マクスバード中央駅を出てすぐの広場には――軽装の警備員らしき人々を指揮する、燕尾のコートの老人の後ろ姿。

 

「ローエン」

「お待ちしておりました。フェイさんも、お久しぶりです」

「うん、ひさし、ぶり」

 

 つっかえながらも何とか答え、ぎこちなく笑った。もちろん百戦練磨のローエンは見破っていようが、今のフェイにはフリでも機嫌よく振る舞うのは無理だった。

 

「どうして二人、マクスバードに来たの? テレビでやってたワヘージョーヤクってやつ?」

「はい。――実は、大きな声では言えないのですが、今日アルクノアがテロをしかけてくるという情報が入りまして」

 

 フェイは目を見開き、ローエンの抹茶色の細目を見返した。

 

「――私はそのテロリストの検挙のために、一足早くマクスバードへ。ガイアスさんにも連絡を差し上げました」

「ワヘージョーヤク……ローエン、ひょっとしてマルシアのおば…首、相も、式に来るの?」

「はい。両国代表同士の調印式ですから」

「――だめ」

 

 フェイは思わずガイアスに取り縋った。

 

「王様、だめ。おばちゃんがキズつくのはダメ。どうしよう、フェイ、どうしたらいい? おばちゃんが、おばちゃんが」

「分かっている。落ち着け」

 

 大声で怒鳴ったわけでもないのに、フェイはすとんとガイアスの言うことを聞く気になった。

 

「事を大きくするわけにはいかない。じきにアルヴィンたちが戻る。そうなれば我々だけでアルクノアを抑える。お前はローエンと待機しろ。お前の〈力〉は、俺とお前の立場上使えん」

 

 〈妖精〉は誰も愛してはいけない。誰にも味方してはいけない。愛された者は世界の命運を握ったも同然。相手の心次第では莫大な犠牲が出る――いつか研究員に聞かされたことを思い出す。

 

 ガイアスはリーゼ・マクシア、外国の王。そしてフェイは〈妖精〉だ。

 

「フェイにできること、ないの?」

「今はない。あるとしたら、マルシア首相の無事を祈って、信じて待つことだ」

「祈る? 何に? 祈ったって、信じたって、精霊は叶えてくれない。そんなふうに思うフェイたちを視えないとこで嗤ってるだけ。それとも、信じてたら王様がおばちゃん、助けてくれるの? くれないでしょう。なのに信じろなんて、祈ってろなんて、言わないでよ」




 オリ主の精霊不信&嫌悪がはっきりした形で明示された初の回だったりします。さすがのガイアスも呆れたみたいですよ妖精さーん。
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