フェアリーテイルの終わり方   作:あんだるしあ(活動終了)

67 / 103
 妖精 が 気づいてしまった コト


九幕 湖畔のコントラスト(6)

 父の料理が出来るまで、ルドガーたちはテーブルで、フェイはエルと並んでソファーに座って待っていた。

 手伝う、と姉妹共に申し出たのだが、断られた。その断りに、フェイは確かな寒暖の差を感じ取った。

 

「パパってばフェイのこと分かんないなんて、ハクジョーモノっ」

「しょうがないよ。髪も目も、どころか歳も違うんだもん。お姉ちゃん、あんまりパパを責めちゃだめだよ」

「なーんかナットクいかない」

 

 ソファーでルルを抱いてふて腐れる姉が可愛すぎて、フェイはつい小さなエルの体に思い切りすり寄っていた。エルは満更でもないらしく、垂れたフェイの頭をよしよしした。

 

 やがてヴィクトルから声がかかる。

 

「用意が出来たから席に着きなさい」

「はーいっ」

 

 その優しい声はやはりエルにだけ向けられたものだと、習い性で思ってしまう。

 うきうきとイスに向かうエルを追って、フェイも無言で席に着いた。エルはルドガーの隣、自分はジュードの隣に座った。

 

 テーブルにはすでに人数分のスープが並べられている。

 

 フェイは毒でも置かれた気分で、目の前のスープをゆっくりと掬って口に運んだ。

 

 

 

 

 

「ごちそうさま。結構なご馳走だったよ」

 

 ミラがナプキンで口元を拭って賛辞を贈った。ヴィクトルは答えずただ微笑んだ。

 

「おいしかったでしょ、ルドガー!」

「……あー。そうだな。俺の負けだ」

「君もこれくらいはできるようになる。そう……10年も経てば」

 

 意味深な確約にルドガーは眉根を寄せた。だが、ヴィクトルは気にした様子もない。

 

「ふふふ。こんなに楽しい食事は10年ぶりだ」

 

 するとエルがとろんとした目で舟をこぎ始める。

 

「食べすぎ、ちゃった。パパがエルの好きなのばっか、作る、から」

 

 ヴィクトルが席を立つ。エルが甘えて伸ばした両腕を、ヴィクトルは首に回させ、エルを大事に大事に抱き上げた。頑張ったごほうびだよ、と――睦言のように告げて。

 

 食卓から離れたソファーにエルが横たえられたところで、ルドガーが口火を切った。

 

「あなたは――何者なんだ?」

「この子の父親だよ」

「けど、あなたは」

「分史世界の人間、だろう? だが私は正真正銘、このエルと……そこのフェイリオの父親だよ」

 

 ――鼓膜が、今の一言で、破裂したかと錯覚した。

 

(パパが、あのパパが、ついででも「フェイリオの父親だ」って人に言った。こんな奇跡が起きる日が来るなんて)

 

「では、エルさんとフェイさんも……」

 

 ヴィクトルが立ち上がった。

 

「娘が起きてしまう。話は外でしよう」

 

 ルドガーたちの返事を待たず、ヴィクトルは玄関へと歩き出した。

 ドアに手をかけたところで、ヴィクトルが今日初めて、フェイを顧みた。

 

「お前は姉さんとここに残りなさい。パパたちの話が終わるまで、外には出てくるな」

「……はい」

 

 ルドガーたちがぞろぞろと席を立って玄関へと向かう。途中ジュードがフェイの肩に手を置き、「大丈夫?」とフェイの顔色を覗き込んでくれた。

 

 フェイは薄く笑んで肯いて見せた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。