これも全てあるサーヴァントのロールプレイがしにくいから…(言い訳)
「お前が、俺のマスターか?」
目の前に現れたサーヴァントは、奇妙な格好をしていた。
呼び出されたのは、東洋の、ある島国。和とも呼ばれる文化の服装を着こなす少女。その額には二本のツノが生え小さな悪魔のようだった。
こんな少女が聖杯戦争を生き残れるのかと、ジェイルは不思議に思うが、その考えはすぐに覆された。
体から溢れ出る濃密な魔力。それは、神代の頃にあった真エーテルにも勝るとも劣らない程なのでは無いだろうか。
「お前が俺のマスターかと聞いているんだ。」
現代では神そのものとも言えるかもしれないその濃密な魔力を受け、それに見惚れてしまったジェイルは、少女の言葉を聞き、ハッとする。
「あ、あぁ。俺がマスターだ。」
その溢れ出る力に怖気付きながらも、ジェイルははっきりと答える。
少女は返答に対し何かを感じたのか、満面の笑みでうんうんと頷く。
「ど、どうした。何がおかしい。」
「いや、ようやく俺を呼び出すようなマスターを見つけられたからな。俺はアーチャー。俺の真名は…っと。監視は居ないか?。」
「大丈夫。だと思うぞ。専門職で無いにしろ防音の結界ははったし。この部屋自体がもともと防音室だからな。」
「いや、そういう問題じゃないんだが…。聴覚ではなく、視覚で誰かが見ている。この気配。サーヴァントだ。」
「何だと!?。しかし、俺は感じないぞ…。」
「じゃあこの視線は俺にしか向けられていないようだな。ふむ、敵意は感じないが、試すような意思を感じる…。」
「そんな事がわかるとは…さすがサーヴァントだな。」
「マスター、呑気にしている場合ではないぞ。何者かはわからんが、俺たちの場所を知っているのだ。いつ攻められてもおかしくは無い。」
「あ、ああ。そうだな。」
ジェイルは、促されるまま、警戒態勢を強める。
ゆっくりと、階段を登りながらチョークを手に持つ。
「それが、マスターの武器。というわけか。」
その様子を見た少女は、感心しながらジェイルの前へと立つ。
「いや、これは非常用のチョークだ。ていうかお前、何で前に立つんだよ。」
「馬鹿者め。貴様、マスターが死んでしまえばもとも子も無いのだぞ。」
「あぁ、そうだったな。すまん。」
「ちゃんと気をつけておけば良い。」
ゆっくりと地下室の出入り口の扉が開く。
扉の隙間から周りを警戒する少女は、しばらく観察した後「大丈夫だ。この家の周りに敵は居ない」とマスターに合図をし、地下室を出た。
「どうやら敵では無いらしい。」
「何を言ってるんだ。というかお前さっきからめちゃくちゃだぞ?。敵に見られているだとか敵じゃ無いだとか。」
「解りにくい性格で悪かったな… 。だが、相手が敵では無いというのは本当かもしれん。」
「それは、どういう。」
「サーヴァントにはあらかじめ、聖杯戦争のルールがインストールされている。って言うのは知ってるよな。」
聖杯戦争のルールのインストール。それは聖杯戦争を行う上で、戦いの主軸となるサーヴァントだからこそ、大切な聖杯からのバックアップの1つでもあった。
「聖杯戦争やる上での大切なルールだからな。そりゃ、知ってる。だが、それがどう関係してるんだ?。」
「何者かは知らんが、そいつのメッセージがそのルールのようにして頭の中にインストールされている。」
それは、ありえない。ジェイルはそう言おうとして、気付く。
サーヴァントとは、人類史上にて重要な役割を担った人。である英雄達の霊。つまり英霊を使い魔として召喚したものである。
いかに聖杯戦争に挑む魔術師とて、その英霊一人一人の逸話を覚える事など出来はしないだろう。
その為、ジェイルが知らないだけであっても、そう言う事の出来るサーヴァントもいるのかもしれない。
目の前のサーヴァントの真名すら予想をする事の出来ないジェイルは尚更、そういったサーヴァントがいないとは言えない。
「そうか、そいつは何て言っているんだ?。」
「この感じだと、俺が通訳みたいになるのか…。」
少女は、全力で嫌そうな顔をする。
それはなんだか、自分が何かの仲介役となる事に対して嫌悪しているように見えた。
「…仕方無いってか。まぁ、ちょっとそいつと話してくるからマスターはここで待ってろよ。」
「おい、話が飛躍している。というか魔力供給が出来ないだろ?」
「その相手が直接呼んでんだ。俺一人で来いってな。それに俺は単独行動が出来る。…今更だが、クラスがアーチャーだからな。」
アーチャー、弓兵のクラススキルである単独行動は、マスターからの供給が断たれても、ある程度の戦闘が行えるアーチャーのスキルである。
だから少女は1人でも行けるのだが、ジェイルにはどうしても納得が出来ない。
「いくら1人で来いって言われたとしてもだ、勝ちに行くなら出来るだけ状況を確認しておきたいし、俺としては戦いの主軸であるサーヴァントをできるだけ温存したい。だから、どうしてもというなら行動を共にするのが一番だ。」
「それでも駄目だ。相手は多分、俺よりも遥かに格上だ。そんな所で襲撃されたとしたら、俺はお前を守り切る事は出来ない。」
「なら、俺をこの家に置いたままで行く方が断然リスクが少ないと。そう思った訳か。」
「魔術師が1番力を発揮できるのはその魔術師が住む家の中。なんだろう?。」
魔術師の工房がある場所は研究の秘匿という目的から、侵入者を必ず始末する仕組みになっている事が殆どだ。
彼女はその情報からジェイルの家の対侵入者用の機構を見抜いたのだろう。
「……わかった。言って来い。ただ必ず情報を持ち帰ってくれ。」
「あぁ、じゃあ。行ってくるぞマスター。」
そう言って彼女の姿が搔き消える。
霊体化をし、姿を隠したのだろう。
その証拠に、ジェイルはアーチャーの気配を捉えていた。
そうしてジェイルは変わらぬ表情で彼女を見送った。
ふと、何処からか現れた金色の粒子が、霊体化しているアーチャーを包む。
初めは数えられる程度だったその粒子は時間を経るごとに増加し、更に広くアーチャーを包んだ。
「どんな英霊だというのだ、あやつは…!。」
ある種の昂揚感を含んだその声は、黄金の粒子が含む異空へと消えていく。
「お、おい待て!。」
アーチャーの気配が声の様に黄金の粒子に呑まれかかっている事にジェイルは気付き彼女を引き戻そうと手を伸ばすが、時既に遅し。間に合わずその手は虚空を掴んだ。
「クソッ。いきなりアーチャーがいなくてなっちまったし。何がなんだかわかんねぇ…。」
「ここは……!」
目を開くと、見渡す限りの黄金。
先程自らの体を包み込んだ黄金の粒子にも引けを取らないどころか、それを超える程の輝きを放つ黄金が、目の前の景色を埋め尽くしていた。
黄金で出来た煌びやかな杯や装飾の無い、しかし単純な美を含む武器群、天を貫く様な輝きを放つ鎖などが、きちんと整理され展示されている。
宝物庫。そう形容するしか無いような空間であった。
「ふむふむ。」
中には中国の方天戟や、日本の刀なども飾られており、この宝物庫の主人が、かなりのコレクターである事がうかがえた。
「うむ?」
ふと隣を見ると、武器とも関係無い物が置いてあった。
現代でいうコンピュータやバイクなども、しっかりと並べられて置いてある。
その列は、宝物庫果てまで並べられていて、この宝物庫には、人類が獲得した全ての叡智が集まっているのでは無いかと思える程である。
「ふむ。これがあいつの宝具か…。」
その事には、感嘆するしかない。人が神をも超える威光を持つ宝物庫を作り上げるなど。アーチャーのいた時代では考えられなかった。
不意に気配を感じ、アーチャーが振り向く。
広がる黄金の空間の中心あたり。
そこに7つの黄金の粒子が現れた。
その全てが敵であろうサーヴァントの気配である。
おそらく、その内1つが今回の監督役として聖杯に召喚されたルーラーであると考えられる。
直後、景色が急激に変化する。
周りに金色の壁がせり上がり、四方への視界を断絶させた。
その為、視線は自然と壁の無い上方向へと向かう。
そこには、1人の美丈夫が当然のように空に立ち、こちらを見下ろしていた。
黄金と遜色ない綺麗さ、そして黄金にはない流麗さ。その両方を含んだ絹のローブを羽織るその男は、圧倒的なカリスマを以って自然とアーチャーを威圧した。
何故か、すぐにでも彼を敬服してしまいたいという気持ちを駆り立たされる呪いにも似たカリスマ。それはおそらく壁の向こうにいるだろうほかのサーヴァントの全てが威圧されているだろう。
たとえカリスマがなかろうと、その戦闘力はほかのサーヴァントの追随を許さず。オールバックにした微塵の汚れも無い金髪と、その赤い双眸が、自然と周りを引き寄せ、魅了しただろう。
「ふむ。面子はまぁまぁか…。貴様らに我が財をくれてやるつもりは無い…が、取り敢えず観戦は余興程度にはなるだろうな。それに、なかなか面白い願いを持った愚輩がいるかも知れん。」
そのサーヴァントの真名は英雄王ギルガメッシュ。
それは、頭にインストールされた情報に書かれてあったクラスルーラーの英霊であった。
聖堂協会の手が回っていないこのアーカムでの、聖杯に呼ばれた"監督役"であるらしい。
おそらくそれは他のサーヴァントも知っているのだろう。
「さて、ここに貴様らを呼んだ理由だが…。ルーラーとして、聖杯戦争の始まりをここで宣言しようと思ってな。」
サーヴァント七人しか聞いていない中で、宣言しようと恐らく意味は無いだろう。なにより、狂化したサーヴァントがこのルーラーが話したことを、マスターに伝える事が出来るのかというのが気になるところである。
ルーラーは周りを一度見渡すと、
「異論は無いな。では、これより聖杯戦争の儀式を執り行う事を宣言したい、のだが、生憎と我も召喚されたばかりなのか、この体が馴染んでいないため、この戦いの後片付け、つまり神秘の秘匿が出来ない状況にある。そのため、開始は明日の夜にさせてもらう。」
その事に異論があるサーヴァントなどはいなかった。
神秘が衆目に晒される場合、それは神秘ではなくなる。
つまり神秘の持つ力が弱くなるのだ。聖杯とてそれは例外ではない。
万能の願望器である聖杯の神秘が薄まると、聖杯の叶えられる願いに制限ができてしまうほか、聖杯の補助があり、無事召喚されたサーヴァント達にもそれぞれ影響が出るだろう。
バーサーカーだとしても、他のサーヴァントにしてもこれを理解出来なかった者は居ないだろう。
「では、召喚され、ここに集いし英雄達よ、各々のマスターに伝えておくがよい。せいぜい我を楽しませろ。とな。」
無理である、満ち足りていて尚何処か空虚であるこの男を楽しませる事には相当な苦労と力が必要だろう。
それこそ、特別なサーヴァントが召喚されていない限りは。
ふと腕を見ると、黄金色の粒子によって包まれていた。
その粒子は先程とは違い、渦をなし、急速に体を飲み込んでいく。
やがて、その渦がアーチャーを完全に飲み込むと同時に、他のサーヴァントもまた、粒子に呑まれ消え、ルーラーのみがその場に残っていた。
「うむ?」
アーチャーが金色の粒子と共にジェイルの家へと戻ってくると何故かジェイルは床に仰向けのような状況で倒れ込んでいた。まるで何かに驚いたかのような姿勢だ。
「どうしたんだ?マスターよ。なんで倒れてんだ。」
「いや、お前がいきなり出てくるからだろ。」
その状態のまま、ジェイルは返した。
「あぁなるほど、驚いたというわけか。マスターは意外と面白いのだな。」
「まぁ、そうなんだが……。」
「なんだ、言い返してこないとは、意外とつまらんかも知れないな。」
「どっちなんだよ。」
「どっちなんだろうな?」
アーチャーは嬉しそうに笑った。
ギルガメッシュはめんどくさい。
……ルーラーギルとかいそう。
あ、見た目的にはキャスターギルみたいな感じ?ですかね。