識別名:リーパー   作:兎秤

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本日ラスト

次回からは二亜クエッション編に入ります(多分)!もしかしたら、オリジナル章を入れるかもしれませんが・・・・・

次の話を投稿するまで少しかかると思いますが、気長にお待ちください。

今回、微鬱回&伏線微回収回


少女は妹の事を問いただした

 アイザックとエレンさんが帰ってから、私は家の中に入ります。中居さんがお茶を持って来てくれ、私とおじいちゃんの前に置きました。

 

「で、どうしたんだ?急に会って話がしたいんだなんて」

「記憶を取り戻しました」

「・・・・・そうか」

 

 おじいちゃんは私を言葉を聞くと、ゆっくりお茶を飲み、そして深くため息をつきました。

 

「実は聞きたいことがあるんですが・・・・・」

「千陽の事をじゃろ?その前に、ワシの会社とDEM社の関係を話そうか」

 

 おじいちゃんの言葉に私は多少驚きます。前は聞いても教えてくれなかった会社のことだけではなく、DEM社との関係まで教えてくれるのなんて、一体どういう風の吹き回しでしょうか?

 

「まず、ワシの会社の名前は魂月重工業という。工業関連の日本一の会社であり、そして対精霊装備(・・・・・)の制作、実験もしておる会社じゃ」

「対、精霊・・・・・」

「うん?どうしたんじゃ?どうせ、記憶を取り戻したということは五河士道関連で思い出したんじゃろ?なら、精霊の事は知っていると思ったのじゃが?」

「いえ、精霊については知っています」

 

 私が驚いたのは、まさかこんなに近く――――――身内の中に精霊と敵対している者がいた事でした。

 

「つまり、おじいちゃんの会社はASTやDEM社のCRユニットを作っているんですか?」

「いや、基本的にはASTのだけじゃ。DEM社とは共同開発をしておる。夏休みに海外に行ったのは実験の進み具合を実際に見るためじゃな」

 

 今までの事が線となり、私の中で繋がっていきます。戸惑う私を余所におじいちゃんは話を続けます。

 

「次に、千陽の事じゃが。DEM社のウィザードとして精霊と戦っておる」

「なんで、私が生きている事を伝えていないのですか?」

「そこまで、知っているとは・・・・・そうじゃの、簡単に言えば精霊への憎しみを持たせた方が戦わせるのに最適じゃったからじゃ」

「・・・・・私に千陽の事を教えなかったのは?」

「教えるも何も覚えておらんかったじゃろ?」

 

 分かりません。おじいちゃんが千陽を精霊との戦闘という、危険な場所へ送り込んだかが、私には分かりません。私の中のおじいちゃん像がどんどんと崩壊していっています。

 

「千陽をなんでDEM社に、精霊との戦いなんて危険な事をやらしているんですか!」

 

 感情のまま怒鳴りつける私を見ても、おじいちゃんは少しも顔を変えず淡々と返します。

 

「千陽が忌々しかったからじゃ」

「・・・・・は?」

 

 私は、おじいちゃんの口から出た言葉に耳を疑いました。何故?おじいちゃんは孫に甘い、いいおじいちゃんではなかったのか?と私は、もう全てが訳が分からなくなっていました。

 

「いや、言い方が悪かったな。千陽の見た目が嫌いじゃったんじゃ」

「見た、め?なんで、それが理由になるんのですか!?」

「知らんだろうが、お前の父と母は恋愛婚じゃった」

「恋愛?それの何が問題なのですか!?」

「大ありじゃ!結婚は一種の契約じゃ、結婚相手次第で様々な繋がりが出来、会社はさらに大きくなる!結婚相手もステータスとなる!生半可な相手を選んではその後の契約や会社の運営に影響が出るのじゃ!それなのに、アイツはあんな女に誑かされようって・・・・・」

 

 この瞬間、完全に私の中の優しいおじいちゃん像が崩れました。つまり、おじいちゃんはお母さんの事が嫌いだったという事です。そして、お母さんの見た目を引き継いだ、千陽の事を排除しようとしていたのです。

 今、思い返せばお父さんとお母さんが生きていた時に、おじいちゃんと会った記憶がありません。私が初めておじいちゃんと会ったのは、大火災の後でした。

 

「これで、知りたいことは全てかの?」

「・・・・・最後に、何故この事を私に話したんですか?前みたいに適当に誤魔化せば隠せたじゃないんですか?」

「おぉ!そうじゃった、そうじゃった。忘れるところじゃったわ。実はお前が高校を卒業したら、ワシの秘書になって貰おうと思ってな。そして、ゆくゆくは魂月工業の社長なってもらおう」

「なにを・・・・・言って・・・・・」

「その為にも、色々準備は必要じゃから、高校を卒業したら色々なことを教えてやろう」

「・・・・・黙って」

「それに、結婚相手の事じゃが、中々いい男がおってな、家柄もバッチリじゃ!ゆくゆくはその男と結婚してもらう」

「黙って」

「五河士道なんて家柄も能力もない男なんて放っておいて、少しでも女を磨くといい」

「黙れ!」

 

 士道の事を馬鹿にされた事が最後の引金となって、私は反射的におじいちゃんに手をあげようとしました。しかし、その瞬間に誰かが私の前に入りこみ、その手を受け止めました。

 

「中居、さん?」

 

 物凄い勢いで私の前に飛び出てきたのは、中居さんでした。

 

「驚いたじゃろ?これが、わしらが作っているものじゃ。完全に発動しておらんでも、ここまでの出力が出る」

 

 目には見えてませんが、魔力を使った装置を中居さんは発動しているようです。

 

「改めまして、お嬢様。魂月工業の社長秘書兼社長護衛をしております、中居です。よろしくお願いいたします」

「高校を卒業したら、中居君に色々と教えてもらうといい」

「・・・・・今日は帰らせて頂きます」

 

 私は魂月家を出ていきました。私の帰るときの足取りは、とても重いものでした。

 




誰かこの暗い雰囲気をどうにかしてくれ!

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