二亜さんとの売上勝負は、現状としては何とか引き離されないようにするのが精一杯でした。
「やっほー!十香ちゃーん、きたよー」
「すごい人の数だねー」
「コンゴの湿地戦を思い出すわー」
クラスの友達を呼び。
「あっ、いた。折紙!一体何なのよ、きゅうによびだしたりして」
「折紙さん!お久しぶりです!」
「あー、もしかして髪切りました?思い切りましたねー」
かつての同僚を呼び。
「ーーーーーここか?カタログにないサークルっていうのは」
「しかし、新輿にしていきなり壁ってのはどういう理由だ」
「あぁ・・・・・なんでもあの名伯楽、MUNECHIKAがいるらしい」
「まさか!彼が目を付けたサークルは全て超大手にのし上がり、イチオシされた作家は商業での大成功を確約されたも同然と謳われた、あの!?」
「何だって!?萌えアニメ選手権伝説の7代目チャンピオン、MUNECHUKAが!?」
「超銀河大番長MUBECHIKAが復活したって!?」
その他の話題性により、何とか二亜さんのサークルの売上量にくらいついていました。折紙さんのAST時代の同僚が現れた時は、ヒヤヒヤしました。みんな精霊の格好をしてますし・・・・・まぁ、折紙さんが有無を言わさぬ調子で対応してくれたので何とかなりましたけど。
あと、中津川さん?あなた本当に何者ですか?
「ふっ、今の私はしがない機関員でござりますよ」
・・・・・まぁ、中津川さんの事は置いておいて、問題はそろそろペースが落ちてきてしまうことです。サクラもほとんど来てしまいましたし、話題性も一時的なもの。5000部なんて量を捌こうと考えると、まだまだ足りない。実績がある二亜さんに勝つには尚更です。
「し、シドー・・・・・人が途絶えてしまったぞ」
「・・・・・ど、どうするのよ、一体」
「何か・・・・・何か手は無いのか!・・・・・このままじゃ・・・・・」
恐れていたことが始まりました。結構な量を捌くことは出来ましたがやはり足りません。くっ、せめてもう1回起爆剤があれば・・・・・
「うふふ、諦めるなんて、だーりんらしくないですよ〜?まだ、勝負は終わってません。むしろ、これからです」
そう声をあげたのは美九さんでした。一体何をするつもりなんでしょう?
「さぁ二亜さん、勝負です」
「・・・・・何をするつもりかわからないけど、さすがにここから換回するのは難しいんじゃない?」
「うふふ、それはどうでしょうねぇ〜。ねぇ、二亜さん。長い間DEMに捕まっていたらしいですけど、SNSっていうのはご存じですか」
「ソーシャル・ネットワーキング・サービスでしょう?一応、知ってるよ。仮にも全知の天使の宿主だからね」
「・・・・・でも私のことは知らなかったんですねー。調べるような興味もなかったですかー、そうですかー」
「・・・・・いや、ごめんって」
「とにかく!今SNSは、全国民の半数以上が使用しているサービスなんです!そして、今この会場にいる人たちの年齢層だと、その割合はもっと上がるんじゃないですかね〜」
・・・・・あっ、まさか!
私は慌ててスマホを取り出し、アプリを起動させます。そこにはーーーーー
『Miku Izayoi:お友だちのサークルのお手伝いでコミコに来てまーす!今東Aー20・5サークル〈ラタトスク〉で本の受け渡し会を実施中!写真もOKですよー!』
ーーーーーとコメントが表示されていた。
「だーりんや皆さんが必死になって頑張っているのに、私だけ全力を出さないなんて、我慢できません。私だって皆さんの力になりたいんです」
美九さんの男性嫌いは緩和されたとはいえまだまだ健在。そんな状況でも士道の為に、皆の為に変わろうとし行動を起こしたのでした。
「さぁ、見てせあげますよ二亜さん。あなたが知りもしなかった女の力を。そして、心に刻んであげます。この私ーーーーー誘宵美九の名を!It's show time!」
美九さんが手を掲げ、指をパチンと鳴らすと、それに応じたように会場におびただしい数の足音と共に人々が〈ラタトスク〉のブースに目掛けてやって来ました。
「わっ!ホントに美九たんじゃん!?」
「マジか、本物!?なんでこんな所に・・・・・!」
「あ、あの、お渡し会やってるって聞いたんですけど、本当ですかね?」
本当に凄い人気ですね・・・・・おっと、ぼーっとしている暇はありませんね。ここから追い上げるために、準備をしませんといけません。
「耶倶矢ちゃんと夕弦ちゃん、列の整理を!士道以外の男性陣は私と本の補充と、お金を払った参加者の誘導をしますよ!琴里ちゃん、料金の回収のチームのまとめはお願いします!」
「っつ、了解!士道、十香、折紙、四糸乃は私と一緒に料金の回収をするわよ!七罪は販売をしつつ美九が疲れたら体力回復のために抱きつかせてあげて!」
「なんか私だけ役割おかしくない!?」
そこから、〈ラタトスク〉の怒涛の追い上げが始まりました。そしてーーーーー
「〈ラタトスク〉完売です!」
「〈本条堂〉完売です!」
二亜さんのサークルと同時に5000部売り切りました。