「一体何が・・・・・」
「分からないようだから教えてあげる。【
なんですか、そのチート。つまり、多人数で攻撃をした場合に自滅させ合ったり、攻撃を霊力が尽きるまで永遠と避けることが出来るということじゃないですか。
「なに?絶望しちゃった?なら、さっさと
はるちゃんが絶え間なく放つ、〈
「はぁっ!」
私は足を止め土埃を立て視界を塞ぎます。私は霊力ではるちゃんの位置が特定出来ているので問題ありません。はるちゃんが完全に私の姿を見失ったのを確認してからはるちゃんの死角から飛び込み斬りかかります。
「【
やはり、ねじ曲げられて避けられてしまいました。それだけでなく、私の飛び込んできたタイミングに合わせて大技を撃ってきました。はるちゃんの持つ権杖に雷が纏まり、巨大な槍へと変化します。その槍は私の心臓の位置を完全に捕え、そして貫きました。
「やっ、やった!ははっ!ざまーみろ、やーちゃんを騙った罰だよ!あははははっ・・・・・あれ?血が出てない?それに、霊装が解除されない?―――まさか!?」
「もう遅い!【
痛いのを我慢し、はるちゃんの手に触れて能力を発動させます。そして、私とはるちゃんの魂を繋ぎ、はるちゃんの深層心理に無理やり私の意識を送り込ました。
心の中の時間は現実より早く、現実では一瞬の出来事でもかなりの猶予があります。その間に、はるちゃんと向き合い和解を目指すのです。
「ここが、はるちゃんの心の中ですか・・・・・」
はるちゃんの心の中はうす暗くベトベトした黒いヘドロのようなものが床を覆っていました。その中心で金髪の小学生ぐらいの女の子が泣いていました。はるちゃんです。
「はるちゃん?」
「お姉ちゃん誰?」
小さなはるちゃんは目をうるうるさせながら私の方を見ながら首をコテンっと傾けました。
「そうですね・・・・・通りすがりの死神のお姉ちゃんです」
「死神のお姉ちゃん?」
いつかの凛緒ちゃんの時の名前を使います。私はそっと小さなはるちゃんの隣に断りを入れてから座りました。
「それで?どうして泣いてるのですか?」
「私ね?お姉ちゃんがいるの。お姉ちゃんはわたしが居ないとダメダメだからいつも引っ張ってあげてたの。でもね、そのせいでお姉ちゃんが死んじゃったの・・・・・わたしが外に出ようって、みんなのところに行こうって、お姉ちゃんを連れ出したから。お姉ちゃんは待とうって言ったのにわたしが・・・・・ぅう―――」
そこにはいつも明るくてどんな時でも前向きな私の憧れで特別だったはるちゃんは居らず、ただ1人の普通の少女がいるだけでした。
「そうですか・・・・・はるちゃんは、そんな風に思っていたんですね。でもね、はるちゃんのお姉ちゃんはそうなったのが、はるちゃんのせいとは思っていませよ?」
「・・・・・え?」
「むしろ、いつも引っ張ってくれてありがとう。私もはるちゃんみたいになりたいなって思っていたんです」
「でも、やーちゃんは私のせいで・・・・・」
「だから、今回は君のお姉ちゃんを連れて行くのは止めましょう。忘れましたか?私は死神のお姉ちゃんですよ?死神は魂を運ぶ存在です。今回は、はるちゃんのお姉ちゃんも生きていますよ。だから、安心してください」
「本当に?やーちゃんは、怒ってないの?死んでないの?」
「はい。だから、はるちゃんはいつも通りの笑顔で迎えてくれればいいんです。はるちゃんが悲しそうだとお姉ちゃんも悲しいです」
「うん!」
はるちゃんがいつものような笑顔を取り戻すと、次第に周囲が明るくなり、ヘドロのようなものが段々と消えていきました。そして、私の意識は現実へと戻されます。現実に戻ってきて始めに目に入ったのは、はるちゃんの顔でした。その顔は、先程までの負の感情溢れる顔ではなく、安堵と歓喜。そして、少しの怒りが混じった顔をしていました。その瞳からは温かい涙が流れ落ち、口をわなわなと震えさせていました。
「・・・・・遅いよ」
「はい」
「どれだけ待ったと思ってるの?」
「ごめんなさい」
「本当に・・・・・本当に良かった。生きててくれて良かった」
はるちゃんは、権杖を投げ捨て私に抱きついてきます。私はしっかりと受け止め、子供をあやすように優しく背中を叩いてあげます。
「ほら、そんなに泣かないでください。笑顔ですよ、笑顔」
「うっさいな・・・・・やーちゃんだって泣いてるじゃん」
はるちゃんに指摘されて、私の頬にも涙か滴っていることに気がつきます。止めようと思っても止まらず、次から次へと流れ落ちていきます。
「おかえり、やーちゃん」
「ただいま、はるちゃん」
こうして、私達の5年もの間止まってしまっていた時間は、再び動き始めたのでした。