識別名:リーパー【完結】   作:兎秤

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『最終回』



少年と少女は・・・

【士道視点】

 

 あの戦いから、1年以上経った。

 その後にも、十香が世界から消えたり、識別名〈ビースト〉と呼ばれる精霊と戦ったりと色々あったが、俺は無事に大学生となった。精霊のみんなは学校へ通ったり等、各々が社会へと復帰している。更に、今年の4月10日は十香も帰って来て、まるであの頃に戻ったみたいだった―――そう、アイツさえいれば・・・

 

「それじゃあ行ってくるよ」

 

 俺はそう残し家を後にした。

 

 

 

 

 

「ん?琴里、シドーは何処にいたのだ?」

「お墓参りよ。今日は8月15日だからね」

「オボンとかいうモノだな!この前、テレビで観たぞ!―――ところで、琴里」

「何回もなによ・・・こっちはあの現象の解析で徹夜なのよ?」

「うむ。その現象について私もマリアに聞いたのだが、シドーに伝えなくてもよかったのか?」

「・・・ぬか喜びさせちゃうかもしれないでしょ?普通は1回でもありえないのに、2度目(・・・)のあの現象が起こるなんて。機械の故障だと言われた方がしっくりくるわ・・・まあ、でも―――どうせならいい知らせをしたいわね」

「うむ!そうだな!」

 

 

 

 

 

【士道視点】

 

「ん?」

「あ・・・」

 

 墓地へたどり着くと先客がいた、金髪碧眼の少女、千陽だ。彼女の髪には2種類のペアピンが左右に付けられており、1つは彼女を象徴するような太陽を模ったものだ。そしてもう1つは、見覚えのある月を模ったものだ。

 

「・・・」

「・・・」

 

 居心地が悪い沈黙が数秒続いた。その沈黙を破ったのは、意外にも千陽の方だった。

 

「士道、まだお参りきてたんだ?てっきり忘れちゃったと思ってた」

「そんなわけ!・・・そんなわけ、ないだろ・・・」

「わかってるよ。士道がそんな奴じゃないって・・・昔からね?からかって悪かったよ。またね」

 

 千陽はにひひと笑い、何でもないように俺の横を通り過ぎ、そのまま去ろうとした。

 

「千陽!なにか・・・なにかあったら俺を頼ってくれよ?」

 

 ―――それが、アイツに頼まれたことだから。

 

 そう思い、千陽へ声をかけるが、返ってきたのは物凄く怪訝な表情だった。

 

「なに・・・?次は、私を口説く気?」

「いや、違くて・・・!」

「大丈夫だって。私これでも社長だよ?士道よりよっぽど先に進んでる大人なの。それに昔と違って私には私の仲間や支えてくれる人達がいるからね。―――まあ、でも嬉しかったよ」

 

 千陽はアイツとよく似た笑顔を残して去っていった。

 魂月重工は、国親が失脚し今は千陽が社長をやっている。能力はそこまで高くないが、その持ち前の明るさと人を引き付けるカリスマ、そして叔母の支えで何とか経営をしているとの事だ。

 どうやら、唯の大学生の出る幕はないらしい。

 

 気を取り直してお墓に向き直る、魂月家と書かれたお墓だ。だが、ここにはアイツの死体は埋まっていない。死体も残さずに消えてしまったからだ。

 唯一残ったのは、アイツが最後に身に着けていた、愛用品である月のヘアピンと俺が誕生日にプレゼントしたネックレスだ。そして、今はヘアピンは千陽が、ネックレスは俺がそれぞれ形見として持っている。

 

「さて、戻るか」

 

 本当は掃除でもして戻るつもりだったが、千陽が殆どやってしまったようで、とても綺麗になっていた。その為、手だけを合わしその場を後にし、そのまま家に戻った。

 

 みんなは出かけたのか、誰もいない家で家事をこなしていると来客を知らせるチャイムが鳴る。

 

「―――ッ」

 

 この時、何故だか俺はモニターを確認することなく、一目散に扉へ向かった。一秒でも早くその扉を開けなければならない、そんな気がしたからだ。

 

 扉を開けた先に居たのは、黒髪黒目(・・・・)の少女だった。目が合うと、恥ずかしそうに、はにかみながらにかみながら三つ編みにした髪の毛を指で弄っていた。

 

 

 ―――会いたかった

 

 

 ――――また会えてうれしい

 

 

 いろんな言葉が脳裏に浮かんだが、一番しっくりくる言葉を俺は自然と紡いでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――おかえり、千夜」

 

「うん、ただいま」

 

 千夜は、笑顔でそう応えたのだった。

 

 

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