~冥界~
「オギャー!オギャー!」
「ミーシャ!産まれたのか!」
「はぁ、はぁ。ええ、見てくださいエドガー。ほら?あなた譲りの綺麗な金の瞳の元気な赤ちゃんよ。」
(ッ!何だ!一体何が起こったのだ!)
つい先ほどまで最愛の伴侶であるエセルドレーダとともに宇宙で漂いながら永遠の時間を過ごしていたはずだったマスターテリオン。だがふと気がつけば何時の間にやら若く美しい女性に抱かれ、その横からこれまた整った顔つきの男が此方のことを覗き込んた。言葉を発しようとしても赤ん坊特有の泣き声にしかならず体を動かそうにも手足をバタバタさせる事しか出来ない。
(落ち着いてくださいマスター)
(その声はエセルドレーダか!これは一体どういう事だ。つい先ほどまで余達は宇宙にいたはず。それにお前はいったい何処にいるのだ)
(申し訳ありませんマスター。私も気づいたらこの状況でした。それと私は今マスターの中に居ます。契約しているというよりは宿っているという言葉が適切かもしれません)
(宿っているだと?どういう事だ。ナイアルラトホテップの仕業か?いやしかし奴は大十字九郎とアル・アジフの手によって……)
この不可解な自体を引き起こしたのはかの憎き邪神の仕業なのか、いくら考えても現時点でその答えが出るはずもない。それよりも今は目の前の男女の事だ。二人はまさに今が幸せの絶頂期であるかのような顔をしている。
「よし、お前の名前はアレイスターだ!元気に育てよ!」
「あら、良い名前ね。きっとこの子も貴方に似てかっこ良くなるわね。将来が楽しみだわ。」
マスターテリオンの顔を覗きながらそう楽しそうに会話する二人の名前はどうやらミーシャとエドガーというらしい。そして恐らく会話の内容から二人の子供として生まれたという事が推測できた。
(余がこの平凡そうな二人の子供であるというのか!)
前世というべきなのかは分からないが以前は邪神ヨグ・ソトースと人類最強の魔術師ネロとの間に生まれ、邪神に翻弄され続けた生涯を送ったマスターテリオンにとって誕生を喜んでいる幸せな両親というのは全くの未知のことであった。
(何だ?急に眠気が……)
(マスター。いくらマスターといえども今のお姿は生まれたての赤ん坊です。警戒は私がしておりますのでどうぞご安心してお眠り下さい)
(ああ、任せたぞエセルドレーダ……)
「あらあら、どうやらアレイスターはおねむの時間見たいだわ」
「うお!寝顔も可愛いじゃないか!アレイスター、よく寝てよく育つんだぞ」
そういうやいなやマスターテリオンは眠りに落ちて行く。
こうして大十字九郎の手によって邪神ナイアルラトホテップの呪縛から解放されたマスターテリオンの新天地での生活が始まった。この世界はマスターテリオンにとって優しい世界なのか?それはまだ分からないが眠るマスターテリオンを見つめる両親の顔は慈愛に満ちあふれているのであった。
プロローグなので短め
プロットはできているのでエターにはならないと思います。
マステリ様はもっと報われてもいいと思うの…