ネギは目を瞑って来る衝撃を受け止めようとした。だが、それはいつまでも待ってもやってこない衝撃にゆっくりと目を開ける。そして、ネギの視界に映ったのは両目を覆う眼帯をつけた美少女だった。そのバックには夜桜が綺麗に咲き誇っている。ルーテシアと合わせて幻想的な雰囲気になっている。
「る、ルーテシア……?」
「ん……迎えに来た……ご飯……」
「あっ」
ネギはすっかりとルーテシアの事を忘れていた。それも1人で家にいたのだ。タカミチも基本的に遅いのだ。
「で、でもどうやってボクは助かったんだろ……」
「ん。抱えて走った」
「え……?」
ありえない言葉を聞いて現状を確認すると、ネギは驚いた。まず、自分がルーテシアの華奢な身体に抱えられている事と、地面に残った線の後にだ。それは綺麗な線に見えるが、一部がへこんでいる。これは瞬動を圧倒的な速度で連続して行う事によって爆発的な加速を得る時にできる。
「ここは……」
桜通りから離れている場所で、見下ろせる位置にある花見などの宴会で使われている事がある場所だ。
「めっ、愛衣さんは!」
「ん」
ルーテシアが下に見える桜通りを指差す。すると、そこには携帯をかけながら帰っていく愛衣の姿が見えた。愛衣が去っていく姿を見て、ネギは安心と同時に恐怖を思い出した。
「……ボクはあのままじゃ殺されていた……」
圧倒的な熱量を持った巨大な魔法で作られた炎の剣が襲いかかって来る光景が脳裏にフラッシュバックする。それはネギの幼い精神を震わせるには充分だった。
「ぅぅ……」
「……大丈夫……守る……」
震えるネギの身体をルーテシアが抱きしめる。それで、次第に震えが落ち着いていき気を失う。そんなネギを抱きしめながらルーテシアは後ろを向く。その遥か後方には三角帽子を被り、麻帆良学園の制服の上にマントを着た夕映と完全武装の鈴音が立っていた。
「これは予想以上の加速なのです」
「結界すら突破するとはネ。ただ、これが天馬を使わずの加速カ……流石は伝説の存在ネ」
「問題は色々とありそうなのですが……」
「まあネ。肉体の構成に魔力が必要ヨ。気は自前で問題ないガ、魔力をパートナーから貰わないとその戦闘能力は発揮できないネ」
「身体の内部で常に咸卦法を発動しているのですか……」
「そうヨ。もちろん魔力も持っているガ……パートナーの力を得て肉体内部で咸卦法を行い、増幅に増幅を繰り返しているヨ」
「生半可な存在じゃ勝てないのです」
ルーテシアのフルスペックの戦闘能力はナギ並ではある。その上である可能性も充分にある。無論、宝具無しでだが。そんな会話をしながらルーテシアの状態をチェックしていく鈴音。
「やっぱり体内魔力がだいぶ減ってるネ」
「補給は必要……いえ、しばらく様子見をしましょう」
「そうネ。じゃあ、帰るヨ」
二人はそのままルーテシアを放置して帰宅する。今回、結界を張っていたのもこの二人だ。そして、二人が帰ると同時にルーテシアもネギを抱えて移動する。
家に帰ったルーテシアはネギをベッドに寝かせる。ただ、ルーテシアも一緒に眠りにつく。まあ、実際はネギがルーテシアを離さなかったのだ。いや、それ以前に一緒に寝ただろうが。
「……魔力、補給……」
ネギの身体の外に無意識に出している魔力をくっつく事で吸収して自身の力にしているのだ。正式な契約をしていない為、ルーテシアにはこうするしかない。